2023年05月30日公開
小規模企業共済とは?メリット・デメリットや加入方法などをチェック!
小規模企業共済は、個人事業主や中小企業などが加入していることが多いです。
今回は、これから小規模企業共済への加入を考えている個人事業主や中小企業に向けて、メリット・デメリット、加入方法などについて解説します。
目次
1. 小規模企業共済とは?
小規模企業共済とは、個人事業主や中小企業の経営者や役員の積立によって、廃業時や退職時に退職金が受け取れる退職金制度のことです。
また、小規模企業共済は、政府機関「独立行政法人 中小企業基盤整備機構」によって運営されており、全国で約160万人以上が加入しています。
個人事業主や中小企業の経営者や役員の場合、大企業や大規模な企業のように退職金がもらえない可能性があります。
しかし、小規模企業共済で積み立てを行うことによって、退職や廃業した場合に退職金をもらうことができます。
小規模企業共済の加入資格
小規模企業共済に加入するためには、個人事業主や中小企業の経営者である必要があります。
また、加入資格は主に以下の通りです。
- 建設業、製造業、運輸業、サービス業(宿泊業・娯楽業に限る)、不動産業、農業などを営む場合は、常時使用する従業員の数が20人以下の個人事業主または会社等の役員
- 商業(卸売業・小売業)、サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または会社等の役員
- 事業に従事する組合員の数が20人以下の企業組合の役員、常時使用する従業員の数が20人以下の協業組合の役員
- 常時使用する従業員の数が20人以下であって、農業の経営を主として行っている農事組合法人の役員
- 常時使用する従業員の数が5人以下の弁護士法人、税理士法人等の士業法人の社員
これから小規模企業共済への加入を検討している個人事業主や中小企業の経営者・役員の方は、以上の5つの加入資格を十分に理解して、申し込みを行いましょう。
また、個人事業主や中小企業であっても、以上の加入資格がない場合は、加入できないので、十分に理解した上で、事業規模の拡大や従業員数の増員を行いましょう。
増員後に、減らすことはなかなか難しいので、加入するための対応がかなり遅れてしまいます。
小規模企業共済の月額の掛金
小規模企業共済の月額の掛金は、毎月1,000円から70,000円までの範囲で、500円単位で設定できます。
また、月払い、半年払い、年払いの3つから選択でき、掛け金は経営状況によって途中で減額や増額が可能です。
小規模企業共済の積立は、以上のような柔軟な条件なので、経営状況が不安定な場合でも無理のない範囲で行えます。
2. 小規模企業共済への加入方法
小規模企業共済に加入することで、個人事業主や中小企業の経営者や役員でも、退職金を受け取れるようになるので、まだ未加入の場合は加入を検討してみてください。
また、小規模企業共済への加入方法は、主に以下の通りです。
- 必要書類の入手
- 必要書類の記入
- 中小機構が業務委託している団体・金融窓口に提出
- 中小機関から書類の受け取り
以上4つの手順で小規模企業共済へ加入できます。
ここでは、それぞれ解説します。
①必要書類の入手
加入方法の1つ目のステップは、必要書類の入手です。
小規模企業共済に加入するために必要な書類は、主に以下のものがあります。
- 契約申込書
- 預金口座振替申出書
- 確定申告書の控え(個人事業主の場合)
- 開業届の控え(事業を始めたばかりの場合)
- 役員登記が確認できる書類(法人の役員の場合)
- 個人事業主と締結した共同経営契約書の写(共同経営者の場合)
- 青色申告決算書・白色申告決算書及び賃金台帳や国民健康保険税など(共同経営者の場合)
主に以上のような書類が加入するためには必要です。
②必要書類に記入
必要書類の用意ができたら、続いて用意した必要書類に記入します。
個人事業主や法人の役員、共同経営者に必要な書類は、控えや写などがほとんどなので、記入することがありません。
しかし、全共通で必要な契約申込書と預金口座振替申込書には記入が必要です。
そのため、必要書類の用意が完了したら、不備がないように書類に記入しましょう。
③中小機構が業務委託している団体・金融窓口に提出
必要書類の記入が完了したら、中小機構が業務委託している団体・金融窓口に提出します。
中小機構が業務委託している団体・金融窓口は、主に以下の通りです。
- 商工会
- 商工会議所
- 中小企業団体中央会
- 事業協同組合
- 青色申告会
- 都市銀行
- 信用金庫
- 信用組合
- 農業協同組合 など
以上の場所で、必要書類の提出を受け付けているので、提出する際は近くの団体・金融窓口を探しておきましょう。
④中小機構から書類の受け取り
最後に、中小機構から書類の受け取りを行えば、加入完了です。
上記で紹介した団体・金融窓口で必要書類の提出が完了したら、約40日ほどの審査期間を経て中小機構から主に以下2つの書類が届きます。
- 小規模企業共済手帳
- 小規模企業共済加入者のしおり及び約款
以上2つの書類を受け取れば、小規模企業共済への加入ができます。
これかあら小規模企業共済への加入を考えている方は、ここで解説した加入方法を参考にしてみてください。
3. 小規模企業共済のメリット
小規模企業共済のメリットは、主に以下の4つです。
- 所得控除による節税ができる
- 無理のない範囲で積み立てができる
- 貸付制度を利用できる
- 退職金代わりになる
ここでは、以上4つのメリットをそれぞれ解説します。
所得控除による節税ができる
1つ目のメリットは、所得控除による節税ができることです。
小規模企業共済の掛金は、確定申告で小規模企業共済掛金控除として全額所得控除の対象になります。
さらに、前納した場合も支払った分全てが控除の対象です。
そのため、加入期間が長くなるほど、積立金が多くなり所得控除される金額も多くなるので、とてもお得です。
また、所得が高いほど節税効果が高くなるので、おすすめです。
無理のない範囲で積み立てができる
2つ目のメリットは、無理のない範囲で積み立てができることです。
小規模企業共済は、毎月の掛金を1,000円から70,000円の間であれば500円単位で自由に決められます。
さらに、経営状況が厳しい場合などに備えて、毎月の掛金を減額または増額できます。
そのため、一定の金額を積み立てし続ける保険などと違って、無理のない範囲での積み立てが可能です。
また、月払い、半年払い、年払いの3つから選べるので、経済的に余裕のあるタイミングでまとめて支払うこともできます。
貸付制度を利用できる
3つ目のメリットは、貸付制度を利用できることです。
小規模企業共済には、低金利で貸付ができる「契約者貸付制度」があるので、積み立てている金額の範囲内であれば、共済から資金を借りられます。
また、貸付制度には、福祉対応貸付や事業承継貸付、廃業準備貸付などさまざま種類が存在しているので、状況に応じて資金調達が可能です。
そのため、借入を行う可能性のある場合には、とても効果的です。
退職金代わりになる
4つ目のメリットは、退職金のかわりになることです。
小規模企業共済で積み立てた掛金は、退職や廃業時に共済金が退職金として受け取ることができるので、個人事業主や中小企業経営者、役員にはとてもおすすめです。
個人事業者の場合では、以下のような場合に共済金が受け取れます。
- 個人事業の廃業・死亡
- 65歳以上で180ヶ月以上積み立てをした人
- 法人成りして、加入資格を失った時
- 任意解約など
4. 小規模企業共済のデメリット・注意点
小規模企業共済にはさまざまなメリットがありますが、その反対にデメリット・注意点もあります。
主なデメリット・注意点は、以下の4つです。
- 元本割れのリスクがある
- 掛け捨てのリスクがある
- 共済金受け取り時に課税される
- 規模が大きいと加入できない
ここでは、以上4つのデメリット・注意点をそれぞれ解説します。
元本割れのリスクがある
1つ目のデメリット・注意点は、元本割れのリスクがあることです。
小規模企業共済は、20年(240ヶ月)未満で任意解約をした場合、受け取れる共済金が元本割れを起こしてしまいます。
元本割れとは、積み立てした掛金の合計よりも受け取れる共済金が少ないことです。
節税対策や退職金の獲得などを目的に加入したにも関わらず、元本割れしてしまうと加入した意味がなくなってしまうので、注意が必要です。
しかし、事業を20年先まで見据えて行動することは難しいので、小規模企業共済の最大のデメリット・注意点でもあります。
掛け捨てのリスクがある
2つ目のデメリット・注意点は、掛け捨てのリスクがあることです。
小規模企業共済の納付月が12ヶ月未満の場合、共済金を受け取れないので、掛け捨てになってしまいます。
例えば、毎月70,000円を11ヶ月間納付していた場合、770,000円が掛け捨てになってしまうので、とても大きな損失です。
そのため、小規模企業共済への加入を検討している場合は、以上のデメリット・注意点を十分に理解しておきましょう。
共済金受け取り時に課税される
3つ目のデメリット・注意点は、共済金受け取り時に課税されることです。
小規模企業共済で積み立てを行うことで所得控除の対象になりますが、共済金を受け取る時には、課税されます。
また、共済金は受け取った時にまとめて課税されるので、多額の税金を1度に支払う必要があるので、とても負担がかかります。
そのため、小規模企業共済は課税されないようにするためのものではなく、課税を先送りにするものという認識を持っておくことが大切です。
規模が大きいと加入できない
4つ目のデメリット・注意点は、規模が大きいと加入できないことです。
小規模企業共済は、その名の通り小規模企業や小規模事業者を対象にした共済なので、各業種で決まった従業員数を超えている場合などは、加入できません。
しかし、規模が小さい段階で加入した場合は、その後従業員数が増えた場合でも引き続き加入し続けられます。
そのため、小規模企業共済は規模が小さい段階から加入しておくようにしましょう。
5. 小規模企業共済と類似制度との比較
小規模企業共済と類似している制度には、主に以下の3つがあります。
- iDeCo
- 国民年金・厚生年金
- 生命保険
そして小規模企業共済と以上3つの類似制度を比較した時、どのような違いがあるのか気になります。
類似していると言っても制度の内容やメリット・デメリットなどは異なるので、ここではそれぞれの制度と小規模企業共済を比較して解説します。
iDeco
iDeCoとは、個人型確定拠出金のことで自分で小規模企業共済と同じ老後保証制度の1つです。
iDeCoと小規模企業共済の違いは、主にiDeCoが誰でも加入できることに対して、小規模企業共済は個人事業主や1部の中小企業のみしか加入できないことです。
また、加入月数に関係なく元本割れのリスクがあることや掛金を自分で運用するかどうかなどの違いがあります。
iDeCoと小規模企業共済は、掛金全額が所得控除になることや積立金を受け取る時に課税されることなどはどちらも同じです。
そのため、個人事業主や中小企業の経営者、役員でない場合は、iDeCoに加入することをおすすめします。
国民年金・厚生年金
国民年金・厚生年金は、全ての国民に加入義務がある老後保障制度の代表的な存在です。
小規模企業共済とは、加入対象者や義務での加入などの違いがあるので、国民年金・厚生年金には絶対に加入します。
また、小規模企業共済は、毎月の掛金を1,000円〜70,000円の間であれば、500円単位で自由に掛金を決められます。
しかし、国民年金・厚生年金は、毎月の支払額が決まっており、所得や経営状況などに応じて掛金を減額や増額することができません。
ただ、支払った保険料は全額が所得控除の対象になることは、どちらも同じです。
生命保険
生命保険も老後保障制度の1つであり、小規模企業共済の類似制度です。
ただ、生命保険は小規模企業共済やiDeCo、年金などと違い、最大120,000円までしか控除が受けられないので、類似制度の中では最も少額です。
また、生命保険による掛金は、所得控除の対象ではなく生命保険料控除の対象になっています。
加入するためにも、健康状態が関わってくるので、小規模企業共済やiDeCoと違い審査が厳しく融通も聞きにくいことが特徴です。
そのため、生命保険は誰にでもおすすめできる老後保障制度ではありません。
生命保険は、人によって融通の効かない老後保障制度ではありますが、生命保険を活用した効果的な事業承継対策などが可能です。
詳しくは下記のリンクからご覧ください。
6. メリット・デメリットを理解して小規模企業共済の加入も検討しよう
小規模企業共済に加入することによって、個人事業主や中小企業の経営者・役員などは、大手企業や規模の大きい企業の経営者や役員のように、退職金を受け取ることができます。
さらに、掛金が所得控除の対象になることや貸金制度が利用できるなどのさまざまなメリットがあるので、また加入していない方は、加入を検討することをおすすめします。
しかし、メリットだけでなくデメリット・注意点などもいくつか存在しており、理解して加入しなければ損をしてしまう可能性もあります。
将来のために始めた積立で元本割れや掛け捨てになってしまうと意味がないので、これから加入を考えている方は、以上のデメリット・注意点を十分に理解しておきましょう。
メリットとデメリット・注意点をしっかりと踏まえた上で、加入する場合には自社もしくは自分にとって大きな効果が期待できるようになります。
また、廃業にかかる費用を知っていれば、共済金で賄えるのか判断できるので、詳しく知りしたい方は下記のリンクをご覧ください。
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