2022年09月18日更新
家業や親の会社を継ぎたくないと悩んだ時の対処法【経験談あり】
近年では、家業を継ぎたくない・親の会社を継ぎたくないと悩みを抱えている人が増えています。子供が家業を継ぐ割合は年々減少している状況です。この記事では、家業を継ぎたくない・親の会社を継ぎたくないと悩みを抱えている時の対処法を、経験談とともに紹介します。
目次
1. 家業や親の会社を継ぎたくない人は多い
東京商工リサーチが2016年に実施した『企業経営の継続に関するアンケート調査』によると、中規模企業の約2%・小規模企業の約8%が、それぞれ廃業を検討している状況です。廃業を検討する企業の33.3%が「後継者を確保できない」ことを廃業理由に挙げています。
これまでは、経営者の長男をはじめ子供が事業を引き継ぐケースが主流でした。しかし、子供が継ぐ割合は年々減少しています。現在では役員・従業員への親族外承継のほか、M&Aによる第三者への承継件数が増えています。
親の会社を継ぎたくないと考える子供が増えている背景には、経営者が子供の自由な生き方を尊重するようになった点が挙げられるでしょう。それ以外にも、変化の速い時代で事業の将来性が見落とせない不安が深刻化している点などが深く関係していると考えられます。
2. 家業や親の会社を継ぎたくない理由
家業を継ぎたくない・親の会社を継ぎたくない人はさまざまな理由を挙げています。ここでは、代表的な理由として以下の5つを紹介します。
- 人の目や声が気になる
- 事業の将来性が不安
- 今までのキャリアを捨てたくない
- 経営者として自信がない
- 引っ越しに対して家族が反対する
それぞれの理由を順番に見ていきましょう。
①人の目や声が気になる
家業を継ぎたくない理由の一つに、周りの目や声が気になる点が挙げられます。親の事業を継ぐと、親の仕事ぶりと比べられるケースが多いでしょう。従業員からさまざまな不満が噴出したり、取引先から不信感を持たれたり、顧客からがっかりされたりクレームが入ったりします。
このように、周囲の目や声に耐えてまで、家業を継ぎたいと考える人は少ないです。ここでは、父親の洋食屋を継いだHさんのケースを紹介します。
Hさんは、高校卒業後は調理専門学校に通い、東京の名店で修行を積みました。料理の腕に自信を持って洋食屋を継いだものの、常連客は父親の時の方がおいしかったと不満をもらします。
そこで、Hさんは業務の効率化を進めましたが、従業員・取引先から裏で不満を持たれていることを知りました。洋食屋を継いで10年以上経った現在、周囲から認められるようになったものの、信頼を得られるまでには少なくとも3年以上かかったと話します。
②事業の将来性が不安
家業を継ぎたくない理由としては、事業に将来性を感じない点も多く見られます。もともと事業の将来性については、継ぐ側だけでなく、継がせる側も不安を感じているケースがほとんどといえるでしょう。
東京商工リサーチが2016年に実施した『企業経営の継続に関するアンケート調査』によると、廃業を予定している中小企業の30.7%が、廃業理由として「会社に将来性がない」ことを挙げています。
ここでは、地方で塗装業・運転代行業を営む父を持つTさんのケースを紹介します。Tさんは高校卒業後に工務店に就職したものの、2年で退職して父親の仕事を手伝うことになりました。
しかし、父親はTさんに仕事を継がせるつもりはなく、早く別の仕事を探すよう促し続けています。Tさんとしても親の会社を継ぎたくないと考えていますが、やりたい仕事がなかなか見つからないために、漫然と父親の仕事を手伝い続けている状況です。
このように、事業の将来性に不安を感じているものの、対策を取れずに身動きが取れなくなっている中小企業は数多く存在します。
③今までのキャリアを捨てたくない
家業を継ぎたくない理由として、今まで積み重ねてきたキャリアを捨てたくない点を挙げる人も多くいます。もともと家業と関係のない仕事に就いている場合、家業を継ぐ直前までキャリアの方向転換に悩む人や、家業を継いでから後悔する人が多い傾向です。
ここでは、大手IT企業で20代を過ごした後に、実家のパン屋を手伝い始めたAさんのケースを紹介します。パン作りの経験が全くなかったことから、手伝い始めてから数年間はうまくいかず悩み続けました。
しかし、IT企業での経験を活かして、実家のパン屋をインターネットでPRした結果、現在では人気のパン屋に成長しています。とはいえ、本事例のようにうまくキャリアを活かせたケースもあれば、家業に適性がなく追い詰められるケースも少なくありません。
④経営者として自信がない
家業を継ぎたくない理由には、経営者に就任する不安も挙げられます。家業を継ぐパターンとしては、しばらく家業を手伝ったうえで継ぐパターンと、別の仕事をしていて急に継ぐことになるパターンの2種類が代表的です。
2016年に中小企業庁が作成した『事業承継ガイドライン』によると、後継者が事業を継ぐための準備期間として5年から10年以上は必要とされています。しかし、家業を継ぎたくないと考えて別の仕事をしていた場合、準備期間が全く設けられず急に家業を継ぐことになり得るのです。
ここでは、子供の頃から親の経営する老舗ホテルを継ぐ予定で育ったKさんのケースを紹介します。Kさんは観光科のある大学に進学し、卒業後は有名温泉地の旅館で数年修行していました。
30代後半で実家のホテルに副社長として戻り、その後は社長になったものの、経営がうまくいかない日々が数年続きました。このように、数年経験を積んでいても、なかなかうまくいかないケースは数多く見られます。
経営未経験の状態で継ぐ場合には、深刻な苦労が伴うケースも多いでしょう。
⑤引っ越しに対して家族が反対する
結婚して子供がいる場合、現在住んでいる場所を離れるのが嫌で家業を継ぎたくないとの理由も多く挙げられます。「妻が夫の家族と暮らしたくない」「子供の転校がかわいそう」というように、家族の反対がある場合には問題がより複雑化するのです。
ここでは、実家の保育園経営を継ぐことになったNさんのケースを紹介します。妻と子供がいるため、まずはNさんのみ実家に戻って保育園経営を覚えたうえで、子供が小学校を卒業すると同時に妻子もNさんのもとに引っ越す形を取りました。
上記の期間中にNさんは実家を増築し、親と別々で暮らせる環境を整えています。このように家族がいる場合、Nさんが取ったような入念な準備が必要となるケースが多いでしょう。
3. 家業や親の会社を継ぎたくないと悩んだ時の対処法
家業を継ぎたくないと悩んで対応を先延ばしにした結果、追い込まれてしまうケースは多いです。これを未然に防ぐには、以下のような対処法を講じるとよいでしょう。
- 状況を整理する
- 自分の視点で考える
- メリットとデメリットを洗い出す
- 家族や周囲の人に相談する
- 事業計画や展望を検討する
- 事業の承継先を探す
- M&Aに向けた話し合いを行う
それぞれの対処法を詳しく紹介します。
①状況を整理する
家業を継ぎたくないことに後ろめたさを持っていると、家業について家族と十分に話し合えていないケースが多くみられます。最良の選択をするためにも、家業の状況を十分に知っておく必要があるでしょう。
家業の状況をよく知るには、親の経営に対する「思い・強み・魅力・弱み・課題」などを明文化しておくことが大切です。商工会議所や事業承継・引継ぎ支援センターなどに相談すると、事業の価値を見直すための経営レポートの作成を支援してもらえるケースもあります。
事業を継ぐのか継がないのか、最終的な選択を含めて、資料を用いた十分な話し合いが大切でしょう。
②自分の視点で考える
家業を継ぐかどうかは、自分の視点から考えるべきです。後継者候補は周囲からさまざまなことをいわれるでしょう。家業を継ぎたくないと思っていても、周囲のプレッシャーから継がざるを得ない状況も少なくありません。
自分が納得できていないまま家業を継いでも、余計に悩んでしまうこともあるでしょう。1度実家を離れて、家業とは全く関係のない仕事をしてきた方が、結果的に覚悟を決めて家業を継いでいるケースも見られるのです。
たとえ遠回りになってでも、自分の視点を持つことが必要といえます。
③メリットとデメリットを洗い出す
最終的な決断を下す前に、改めて家業を継ぐことのメリット・デメリットを網羅的に把握しておくとよいでしょう。これにより、家業を継ぐ・継がないを問わず、最良の選択を取れるようになります。
家業を継ぐメリットの代表例は、以下のとおりです。
- 事業が軌道に乗っていれば収入が安定する
- 家族経営であればある程度の融通が効く
- 柔軟に休暇や労働時間を定められる
- リストラや定年の心配がなくなる
その一方で、家業を継ぐデメリットには、以下のようなものがあります。
- 重い責任を負う
- 会社員よりも仕事が忙しくなる
- 業績次第で収入が不安定になる
- 廃業に追い込まれるリスクがある
このようなメリット・デメリットを踏まえたうえで、いかなる選択をすれば最大限の利益が期待できるのか十分に検討してみましょう。
④家族や周囲の人に相談する
家業や親の会社を継ぎたくないと悩んでいる時は、まず身近な家族や周囲の人に相談してみるとよいでしょう。家業を承継するかどうかは、身内や親族にとっても重要な問題でしょう。
家族や親族に相談すれば、親身になって悩み事を聞いてくれるでしょう。周囲の知人などに相談すれば、身内とは異なる視点で捉えられるため、自身では考えつかないようなアドバイスがもらえるかもしれません。
一人で思い悩んでいるよりも、まず誰かに相談してみると、よい解決策を思いつくこともあるでしょう。
⑤事業計画や展望を検討する
中小企業や小規模事業者の場合、事業計画書がなかったり、以前に1度作ったきりだったりというケースが大半です。事業の展望がわかる資料がないと、将来の不安から家業を継ぎたくない気持ちが強まることもあるでしょう。
事業計画書では、事業の現状分析・今後の予測・事業の方向性・目標設定・課題の整理などを詳細に検討し、明確にする必要があります。計画書を作成して、今後すべきことが明確になれば、不安から家業を継ぎたくないと考えていた思いが変わる可能性もあります。
たとえ家業を継ぎたくない気持ちが変わらなかったとしても、その後の対応策をスムーズに考えられるようになるでしょう。
⑥事業の承継先を探す
家業を継ぎたくないが廃業は避けたい場合は、他に事業承継する人を探す必要があります。事業の承継先は、親族・従業員・第三者の3種類です。後継者候補を複数用意しておきながら、時間をかけて適性を見極めるとよいでしょう。
事業承継先の選定および教育を含めて、事業承継の手続きを円滑に進めるには時間がかかります。経営者が元気で発言権を持っているうちに進めておく必要があるでしょう。
⑦M&Aに向けた話し合いを行う
自分は家業を継ぎたくないうえに、親族や従業員も会社を継ぎたくない場合、M&Aによって第三者へ事業譲渡する選択肢が有効策といえます。近年では、中小企業でも、M&Aによる事業売却に抵抗のない経営者が増えています。
しかし、M&Aの実施方法や相談先がわからない経営者も依然として多いのが現状です。そのような場合、商工会議所、事業承継・引継ぎ支援センター、取引先の銀行・税理士、M&A仲介会社などの中から、自分が相談しやすい機関に相談してみましょう。
アドバイスや専門家の紹介をうけると、道筋が見えてくることもあります。M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーが、M&Aによる事業承継をフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)です。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
4. 家業や親の会社を継ぎたくない人の経験談
ここでは、実際に家業を継ぎたくないと悩む方たちの経験談・体験談を紹介します。
- 親の会社を継ぎたくない20代女性
- 家業を継ぎたくない30代男性
- 介護施設を経営する親の会社を継ぎたくない男性
- 家業を継ぎたくないという夫
- 建設会社の家業を継ぎたくない兄弟
自身の状況と照らし合わせながら、それぞれの経験談・体験談を見てみましょう。
①親の会社を継ぎたくない20代女性
この女性は大学を出ると、すぐに父親の会社で働き始めています。もともとその仕事に興味があったわけではなかったため、いずれ別の仕事に就きたいと考えていました。しかし、父と母からは家業を継ぐようにプレッシャーをかけられ続けており、けんかになる日もたびたびありました。
会社では40代の先輩女性からいじめ続けられていて、家にも会社にも息抜きできる場所がありません。次女である妹は大学入学で家を出たまま1人で自由に暮らしている一方で、長女であるこの女性にはまったく自由がない状態です。
現在は、親とは縁が切れてもよいとの気持ちで、仕事と住む場所を探しています。
②家業を継ぎたくない30代男性
この男性は、父親が電気工事会社を営んでいます。男性は高校を出た後に1年間アメリカに短期留学しました。日本に帰ってきてからは、地元のアパレル会社に就職しています。
アパレル会社では社長から気に入られ、海外での服の買い付けも任されるようになりました。しかし、30歳の時に父親が病気で倒れたことをきっかけに、父親の電気工事会社で取締役として働くことになったのです。
男性は工業高校出身で、電気工事士の資格を持っています。業務未経験の若い取締役となった男性に対して、周囲の従業員は不満を持っていて、折り合いの悪い日々を過ごしていました。
父親はいずれ子供に会社を継いでもらいたいと考えています。しかし、子供側の男性からすると、海外で仕事ができる職に就きたいと思っており、ひそかに準備を進めている状況です。
③介護施設を経営する親の会社を継ぎたくない男性
この男性は大学で情報処理を学んだ後、IT企業でシステムエンジニアとして働いていました。しかし、激務と上司のパワハラから体調を壊したことで、実家に戻っています。
半年ほどメンタルクリニックに通いながら療養して、徐々に体調も戻ってきたことから、実家の介護施設でアルバイトとして手伝い始めました。しかし、男性はもともと人とのコミュニケーションが得意ではありません。
職場の人となかなかなじめなかったうえに、仕事にもなかなか慣れませんでした。男性はストレスから体調が悪化したことで、仕事を辞めたいと考えるようになっていました。しかし、親はいずれ介護施設を子供に継ぐことを期待しています。
体調が悪い状態で1人暮らしをしながら他の仕事ができるとは考えにくいことです。とはいえ、実家にいるといずれ介護施設を継がなければなりません。男性は、こうした葛藤を抱えながら現在も悩み続けています。
④家業を継ぎたくないという夫
この女性の夫は、東京で銀行員として働いています。夫の実家は従業員を30名以上抱える農業法人で、地元では有名な会社です。
農業法人の代表である夫の父親は、家族そろって地元に帰ってきてほしいと再三訴えていました。しかし、女性の夫は「妻が自分の実家でうまくやっていけるか」「子供の学校生活は大丈夫なのか」など、さまざまな不安から行動に移せていません。
しかし、女性は、夫がそもそも家業を継ぎたくないことをうすうすわかっていました。女性とその子供は田舎で暮らすのも悪くないと考えていますが、夫にそれを伝えると機嫌が悪くなります。
女性はどう折り合いをつけたらよいのかわからず、悩み続けている状況です。
⑤建設会社の家業を継ぎたくない兄弟
この兄弟の両親は、建築会社を長年にわたり経営しています。兄は大学卒業後に中堅の商社で働きだした一方で、弟は大学卒業後にインターネット広告会社で営業をしていました。
しかし、建設業界の慢性的な人手不足から、兄弟そろって両親の建設会社で働くことになります。2人とも建設業にやりがいを感じているものの、この事業に将来性はないと考えている状況です。
両親としても事業に将来性はないと思いながらも、従業員・取引先・生活のことを考えると、やめるにやめられない状況が続いています。兄弟ともに、仕事内容が好きで、親のためにも家業を継ぎたいとの思いはあります。
しかし、事業の先行きを考えると、家業を継ぎたくない葛藤を抱えている状況です。
5. 家業や親の会社を継ぎたくない人の相談先
家業を継ぎたくないが、他に事業を継ぐ候補がいない場合、まずはM&A仲介会社に相談する方法が有効策といえるでしょう。M&A仲介会社に相談することで、事業承継の最適な方法のアドバイスが得られ、事業の引継ぎ先を探せます。
M&A総合研究所では、経験豊富なM&Aアドバイザーが、M&Aによる事業承継をフルサポートいたします。当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)です。
無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
6. 家業や親の会社を継ぎたくないと悩んだ時の対処法まとめ
本記事では、家業を継ぎたくない・親の会社を継ぎたくないと悩んだ時の対処法を、経験談とともに紹介してきました。親の会社を継ぎたくないと考える子供の割合は年々増加傾向です。
廃業または親族以外への事業承継を検討する中小企業・小規模事業の経営者は増加しつつあります。家業を継ぎたくない理由としては、周囲の目や声が気になる・事業の将来性が不安・今までのキャリアを捨てたくない・経営者として自信がないなどの悩みが代表的です。
親の会社を継ぎたくないと悩んでいるのであれば、以下の対応策を講じることをおすすめします。
- 状況を整理する
- 自分の視点で考える
- メリットとデメリットを洗い出す
- 家族や周囲の人に相談する
- 事業計画や展望を検討する
- 事業の承継先を探す
- M&Aに向けた話し合いを行う
特に近年では、M&A仲介会社をとおして事業を譲渡するケースが増えています。M&Aによる事業承継であれば、事業が継続されるだけでなく、譲渡益を得ることも可能となるでしょう。
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