居酒屋の売却の流れ・方法とは?売却相場、高い金額で売るコツも解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

居酒屋を売却する際の手順や方法を網羅的に解説します。「売却相場はどれくらいか?」「高額で売却するためのポイントは何か?」など、売却について気になるポイントもお伝えします。居酒屋の売却を検討しているオーナーは参考にしてみてください。

目次

  1. 居酒屋業界の現状
  2. 居酒屋の売却方法
  3. 居酒屋の売却事例
  4. 居酒屋の売却を行うメリット
  5. 居酒屋の売却の相場価格
  6. 居酒屋を高値で売却する6つのコツ
  7. 居酒屋の売却時に専門家に相談すべき理由
  8. 居酒屋の売却の流れ・方法まとめ
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1. 居酒屋業界の現状

2022年5月に経済産業省の経済解析室から、「飲食関連産業の動向(FBI 2021年):低調が続く『飲食店、飲食サービス業』、2年連続で低下となった2021年のフード・ビジネス」というニュースが公表されました。

2019年までは好調だった飲食店、飲食サービス業の中でも、特に、店舗内での酒類を含む飲食業態では、2020年に入り、新型コロナウイルス感染拡大による営業制限や外出自粛が大きな影響を受けていることがうかがえます。

下のデータは、飲食店、飲食サービス業の内訳系列の推移です。2015年を100としたフード・ビジネス・インデックス(Food Business Index、以下FBI)を見ると、「パブレストラン、居酒屋」の数値は、最も低くて14.4と、2020年・2021年2年連続で大幅な低下が確認できます。

FBIとは、生活に身近な飲食料品に関連する「食料品工業」「食料品流通業」「飲食店、飲食サービス業」の活動状況を把握できるよう試算した経済指標です。

コロナ関連以外の市場規模減少の背景には、「少子高齢化・人口減少」「若者層のアルコール離れ」「健康志向の高まり」「家飲み・ちょい飲みへの変化」「スーパーやコンビニの惣菜市場規模の拡大」などが影響していると見られます。

居酒屋業界の現状

経済産業省「経済解析室ニュース」

出典:https://www.meti.go.jp/statistics/toppage/report/archive/kako/20220520_1.html

店舗・会社売却とは

居酒屋の店舗・会社売却とは、会社の株式を他社に全て売却することを指します。その会社に属した事業(居酒屋の運営)や資産は、全て他社へ譲渡されるでしょう。

似ている売却方法に事業売却(事業譲渡)があります。事業売却とは、会社組織は手元に残し、特定の事業を個別に他社に売却することです。

両者とも、M&A(Mergers and Acquisitions)の手法になります。Mergersは合併、Acquisitionsは買収を意味する言葉です。

2. 居酒屋の売却方法

居酒屋の主な売却方法には以下の2つが挙げられます。

  • 居抜き
  • M&A

それぞれについて以下で詳しく説明していきます。

居抜き

居酒屋を売却する際、最も多いといわれている方法は「居抜き」です。使っていた店舗を、設備や家具などをそのままつけて売り渡すことをいいます。売り手は、解体費用や設備などを処分することなく売却できるため、コストを削減できます。

ただし、居抜きで売却したい店舗が賃貸店舗の場合は貸主との交渉が必要です。無断で賃貸店舗を売却することはトラブルに発展するため注意しましょう。交渉を成功させるためにも、貸主との人間関係を良好に保っておくことが重要です。

また、買い手は、全店舗の設備などがそのまま使えるため、初期投資がかなり抑えられるでしょう。設備などをそろえるのにかかる時間も短縮できるので、開店までの時間も早くできるのがメリットです。

M&A(事業譲渡・株式譲渡)

居酒屋を売却する際、M&A(事業譲渡・株式譲渡)も活用できます。まず、事業譲渡は、居酒屋の事業そのものを譲渡するという方法です。買い手に営業権を譲渡し、オーナー経営者や役員が事業譲渡後も経営に関わり続けことも可能です。そのため、業態転換などを図るためにも活用できるでしょう。また、複数の店舗を展開している企業であれば対象店舗のみの事業譲渡も行えるでしょう。

株式譲渡の方法を採用すると、株式を譲渡することで買い手の子会社となります。子会社ではあるものの自立性を保ちつつ、買い手のグループ企業として事業拡大を目指せるでしょう。株式譲渡の場合、事業譲渡よりも手続きが簡便です。

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3. 居酒屋の売却事例

ここでは、実際に居酒屋が売却された事例について紹介していきます。

鳥貴族ホールディングスによるダイキチシステムの子会社化

 2022年9月、鳥貴族ホールディングスはダイキチシステムの株式を取得し、子会社化しました。

鳥貴族ホールディングスは、「焼鳥屋 鳥貴族」として600超のチェーン店を展開する事業会社の持株会社です。対象会社のダイキチシステムは、500超の「やきとり大吉」を運営しています。

今回のM&Aにより、両ブランドの共存共栄を図りつつ、両社が保有するノウハウや独立制度などを活かすことで、事業拡大を目指します。

YCPホールディングスによるARUKIの子会社化

2022年8月、YCPホールディングスはARUKIの全ての株式を取得し、子会社化しました。

YCPホールディングスは、YCPグループの持株会社としてマネジメントサービスと投資事業を展開している企業です。対象会社のARUKIは、海鮮居酒屋「海味はちきょう」の飲食事業を展開しています。

今回のM&Aにより、グループの知見・ノウハウなどの強みを共有し、事業拡大を目指します。

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4. 居酒屋の売却を行うメリット

居酒屋を売却して得られるのは、さまざまなメリットの享受です。ここでは、数多くの売却メリットの中から、以下の5点を取り上げます。

  1. 後継者問題を解決できる
  2. 心理的な不安を解消できる
  3. 従業員の雇用先を確保できる
  4. 個人保証・担保を解消できる
  5. 売却益を獲得できる

①後継者問題を解決できる

日本のどの業種でも、中小企業は後継者不足問題を抱えているといわれています。居酒屋業界もその例外ではありません。

後継者不在のため廃業を検討せざるを得ないような場合、M&Aで店舗・会社売却を行うことにより、後継者問題を解決できます。居酒屋の運営状態が赤字の場合は、なかなか買い手を見つけられなかったり、M&Aの交渉の段階で難航したりするなどの可能性はあるでしょう。

そのような事態を避けるためには、居酒屋業界の店舗・会社売却前は事業分析や整理などを行い、店舗・会社の価値を上げておくことが大切です。

②心理的な不安を解消できる

居酒屋に限らず経営者は、経営状態や今後の展望などのプレッシャーを常に感じています。心理的な不安を感じ続けることで、次第に経営から退きたいと考えることもあるでしょう。

居酒屋の店舗・会社売却へと踏み切ることによって、このような心理的な不安から解放され、心の健康を取り戻せます

③従業員の雇用先を確保できる

自社を廃業・清算した場合は、従業員を解雇しなければなりません。事業売却・会社売却を行うと、従業員も引き継がれるため、従業員の雇用を守れます

④個人保証・担保を解消できる

居酒屋の売却を行うことにより、個人保証・担保を解消できます。居酒屋を含めた中小企業の経営者は、金融機関から借り入れを行った際の個人保証・担保に悩む人も少なくありません。

2016(平成28)年に中小企業庁がまとめた「中小企業白書(2016年版)」によると、中小企業経営者が利用している融資手法の実態として、代表者などの保証による融資(76.3%)、不動産を担保とする融資(69.1%)という結果が出ています。

個人保証・担保があるために親族への事業承継が難しいケースもあります。M&Aでの売却を選択すれば、個人保証・担保は原則的に解消されるでしょう。

⑤売却益を獲得できる

居酒屋の店舗・会社売却を行うと、経営者は売却益を得られます。売却価格は、売却する事業の現在価値に加え、将来生み出す利益により算出されます。かなりの現金を得られるでしょう。

一度に多くの現金を得られる反面、売却益には税金がかけられることを覚えておきます。どれくらいの税金がかかるかを算出しておくなど、あらかじめ対策を立てておくことも必要です。

5. 居酒屋の売却の相場価格

居酒屋の居抜きの場合、店舗の規模や立地、造作の内容・状態によって売却の相場は変動しますが、一般的な小規模居酒屋の相場は100万円~250万円程度です。

一方、居酒屋のM&Aの場合、個別の事情に応じて大きく異なるため、相場価格を一概に提示することは非常に困難といえるでしょう。なぜなら、それぞれの居酒屋の状況によって、売却価格は大きく異なるからです。

例えば、居酒屋が駅近くにあり、収益性の高いビジネスモデルの場合などは、売却額が高くなる傾向にあります。居酒屋の相場価格は、立地・店舗の広さ・集客具合などさまざまな要素から決定されます。

相場価格はこの程度であると断言するのは難しいです。M&A専門家に企業価値の算定を依頼すれば、大まかな目安を把握できるでしょう。

売却価格を算出するには

一般的には、以下の3つの方法で会社の売却価格が算出可能です。

  • ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法
  • 収益倍率(マルチプル)法
  • 年買(ねんばい)法

ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法

ディスカウントキャッシュフロー(DCF)法は、企業や債券において、時間が経過することで変動するリスクや金利などを加味したうえで、期待キャッシュフローを割引率で割り引きして企業価値を算出する方法です。「割引キャッシュフロー」と表現されることもあります。

収益倍率(マルチプル)法

収益倍率法(マルチプル)法とは、本質的な収益力(営業利益を基準とする)をもとに、類似する上場会社が証券市場でどの程度評価されているのかを参考にし、株式価値を算出する方法です。

場合によっては、収益倍率(マルチプル)法とディスカウントキャッシングフロー(DCF)法に加え、純資産の時価を評価することもあります。実際の計算は複雑な算出過程となるでしょう。会社の収益力をもとに評価するのが基本的な考え方といえます。

年買(ねんばい)法

年買法は、中小企業のM&Aで多く用いられる方法です。「営業権=利益×年数」で求められます。

企業評価における営業権の算定方法で、平均利益額や超過利益額などに、将来継続して運営する年数を参考に推定された適正な年数を乗じて算出します。M&Aアドバイザーが、計算例を用いて分かりやすく解説している動画がありますので、ぜひご覧ください。

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6. 居酒屋を高値で売却する6つのコツ

居酒屋を高値で売却するためには、どのような点を意識して行えばよいのでしょうか。売却相場に影響を与えるのは、主に、居酒屋の「立地」「清潔感」「評判」でしょう。ここでは、それらを詳しく見ましょう。

自店舗の立地条件の強みをまとめる

居酒屋を高値で売却するためには、立地条件の強みをまとめておくことが大切です。立地条件により、どの程度利益を上げたのかなど、運営に携わった人間でなければわからない具体的データを提示することにより、交渉を有利に進められるでしょう。

事業規模や収益性をまとめる

居酒屋の買い手にとって、事業規模と収益性は、買収を行うか否かを決定する重要な判断基準の一つになるといえます。居酒屋の高値売却を成功させるためには、事業規模や収益性を具体的な数字でまとめた資料を作成し、買い手にアピールするのが大切です。

運営する居酒屋の期待収益率も、同時に提示しておくとよいでしょう。

経営する店舗の雰囲気がきれい

少々あいまいな表現になるかもしれませんが、経営する店舗の雰囲気がきれいである点も、高値での売却につながるポイントの一つといえるでしょう。別のいい方をすれば、店舗の雰囲気がきれい=清潔感につながります。

雰囲気がきれいだったり、おしゃれな内装だったりすれば、口コミなどによる集客アップやリピート客の獲得にもつながるでしょう。高値で売却できる可能性が高まります。

売却前に簡単なメンテナンスをして、見た目の印象を変えられるのであれば、自社で行っておくなどするのもよいでしょう。

店内設備の充実

居酒屋の店舗・会社売却において、特に店舗を居抜きで売却する場合、調理室をはじめ、空調設備や給排気設備の充実度、店内レイアウトや面積・形状などは、重要な検討材料になり得ます。

設備類はメンテナンスを実施し、故障や不具合などは改善しておきましょう。それが売却額を上下させる要因にならないとも限りません。

店舗の評判が高い

居酒屋の店舗・会社売却では、店舗そのものの評判も売却相場へ大きな影響を与えるのは必定となります。居酒屋の評判に影響を与える要素には、味・価格帯・雰囲気・顧客層などがあります。

高い評判・評価を得るには居酒屋のノウハウや人材、顧客ニーズの取り込みなどが必要です。そのような要素を持っている居酒屋であれば、市場競争における長期的な需要を確立できると考えられるため、売却価格が高くなるといえるでしょう。

M&A・会社売却の専門家に相談する

居酒屋を高値で売却するには、M&A・会社売却の専門家に相談することが一番の近道といえるでしょう。居酒屋を売却するためには、M&Aに関する知識だけでなく、経営・会計・税務・法務などの専門知識も必要となります。

自社のみで進めるのは困難であるといわざるを得ません。M&A・会社売却の専門家に依頼すれば、交渉先の選定・最適なスキームの選択・戦略策定・交渉など、M&Aに必要なサポートを受けられます

無料相談を受け付けているM&A仲介会社や専門家も多いです。居酒屋の売却を検討し始めた段階で、まずは相談するとよいでしょう。

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7. 居酒屋の売却時に専門家に相談すべき理由

ここまで、居酒屋を高値で売却するためには、さまざまなポイントを押さえて行う必要があり、M&A専門家のサポートは不可欠であると説明しました。そこで、M&Aの専門家に相談すべき理由を、さらに詳しく解説します。

自店舗の売却額を知れる

居酒屋の売却相場はさまざまな要因によって左右されやすいため、自店舗の売却額を把握するのは困難です。居酒屋のM&A・売却の専門家に相談すれば、居酒屋を査定してくれるので、おおよその売却額を把握できるでしょう。

企業価値を上げるための具体的なアドバイスも受けられます。高値での売却を希望する場合は、専門家に相談することは不可欠といえるでしょう。

売却先を見つけてもらえる

居酒屋の店舗・会社売却を成功させるには、まず自社の希望・条件に合った売却先を探さなくてはなりません。自身で売却先を探すことも可能です。

しかし、なかなか相手先が見つからなかったり、条件が合わなかったりして、売却のタイミングを逃してしまう可能性もあるでしょう。M&A・会社売却の専門家に依頼すれば、豊富なデータから適切な売却先を見つけてピックアップしてくれます。

タイミングを逃さず売却が可能となるでしょう。売却先を探す時間と手間も省けるので、居酒屋を経営しながら売却の準備を進められる点がメリットといえます。

交渉や書類作成を任せられる

居酒屋のM&A・会社売却を進める際は、相手先との交渉に加え、さまざまな書類の作成も行わなければなりません。いずれも専門的な知識や経験が求められるため、自社のみで進めていくことは非常に難しいといえます。

作成する書類には複雑なものが多く、交渉を何度も重ねる必要があります。専門家に依頼することで、これらに要する時間と手間を省けるでしょう。

トータルでのサポートを任せられる

居酒屋のM&A・会社売却の専門家に相談・依頼すれば、トータルでのサポートを任せられるでしょう。居酒屋の売却を行うためには、多くの過程を経る必要があります。交渉や複雑な書類作成などには、M&Aに関する幅広い知識が求められます。

時間や手間も要するため、居酒屋の経営と並行して行うことは非常に難しいといえるでしょう。M&A仲介会社などの専門家は、交渉や書類作成なども代行してくれます。

時間と手間が省けることに加え、豊富な知識や経験によりサポート・アドバイスしてくれるため、希望に沿った売却の実現が可能になるでしょう。

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8. 居酒屋の売却の流れ・方法まとめ

居酒屋の売却を行う際は、売却時に必要となるデータをまとめたり、業界の動向や売却相場を把握したりするなど、事前に準備をして計画的に進めることが大切です。

本記事の概要は以下のようになります。

【居酒屋の売却の流れ・方法】

  1. M&A仲介会社などに相談する
  2. 売却先の選定
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンスの実施
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング
  7. 買収側による統合プロセスの実施

【居酒屋を高値で売却するコツ】
  • 自店舗の立地条件の強みをまとめる
  • 事業規模や収益性をまとめる
  • 経営する店舗の雰囲気がきれい
  • 店内設備の充実
  • 店舗の評判が高い
  • M&A・会社売却の専門家に相談する

【居酒屋の売却時に専門家に相談すべき理由】

  • 自店舗の売却額を知れる
  • 売却先を見つけてもらえる
  • 交渉や書類作成を任せられる
  • トータルでのサポートを任せられる

居酒屋の店舗・会社売却を進めるうえでは、相手先との交渉や契約関係の書類作成など、専門的な知識や経験が必要となる場面も多いのが現実です。

手続きを進めていくうえで予期せぬトラブルが起きた場合、状況に応じて最適な手段を講じなければなりません。その判断にはM&Aに関する幅広い見識が求められます。

居酒屋の売却をスムーズに進めて成功させるためには、M&A仲介会社などの専門家のサポートを受けて行うことがおすすめです。

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