株式交換の法務手続きを徹底解説!【2025年最新情報・事例付き】

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

株式交換は、企業買収における有力な手法の一つです。自社の株式と交換することで対象企業を完全子会社化し、シナジー効果による企業価値向上を目指します。手続きは複雑ですが、資金調達の必要がないなどのメリットもあります。本記事では、2025年最新情報に基づき、株式交換の法務手続きを詳しく解説します。

目次

  1. 株式交換とは?基本概念とM&Aにおける活用方法
  2. 株式交換のスケジュールと期間
  3. 株式交換の法務手続き:14のステップを詳しく解説
  4. 株式交換における法務上の注意点:リスクを回避するためのポイント
  5. 株式交換のメリット・デメリット:M&A戦略における適切な選択
  6. 株式交換の相談先:専門家によるサポートの重要性
  7. 株式交換で成功するポイント:戦略的なM&Aの実現に向けて
  8. 株式交換におけるデューデリジェンスの重要性
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1. 株式交換とは?基本概念とM&Aにおける活用方法

株式交換とは

株式交換とは、買収企業(親会社)が自社の株式を対象企業(子会社)の株主に対して交付し、その対価として対象企業の全株式を取得するM&A手法です。これにより、対象企業は買収企業の100%子会社となります。組織再編手法としても活用され、企業グループ内での効率的な経営資源配分を実現します。

上図は株式交換のイメージ図になりますが、株式交換によって親会社となる企業を完全親会社、子会社となる企業を完全子会社と呼びます。

同じく完全子会社化する手法に株式移転がありますが、こちらは新たに会社を設立して完全親会社とする、新設型組織再編と呼ばれる手法です。それに対して株式交換は、吸収型組織再編と呼んでいます。

株式交換が選ばれる理由

株式交換のメリットは、すべての株主から承認を得なくても完全子会社化できる点です。公開取引市場で株式を買い集める場合やTOBで株式を買い集める場合、例外的な方法を除いて、基本的にはほとんどすべての株主から同意を得て株式を取得する必要があります。

しかし、株式交換であれば、株主総会で3分の2以上の同意を得られれば全ての株式を取得可能です。このような理由から、子会社の完全子会社化などグループ企業再編の際に株式交換がよく採用されています。

株式交換は子会社の株式を得た対価として親会社の株式を交付できるため、買収資金を用意する必要がないこともメリットの1つです。

会社合併会社分割事業譲渡などのM&A手法と比較した場合、株式交換により生じる完全子会社はその名のとおり会社として独立した存在です。組織変更などの経営統合が行われることはないので、これまでどおりの事業運営に障害が生じない点もメリットといえます。

株式交換の注意点

株式交換には、デメリットになりかねない点もあるので注意が必要です。

まず、手続きの煩雑さによりミスが誘発される危険性があります。債権者保護手続きや株主総会の招集・特別決議など数多くの手続きを、いずれも会社法の規定に従い間違いのないよう進めなければなりません。その際にミスが生じないよう、本記事も十分にご参照ください。

 
完全子会社となる会社の株主が、株式交換によって新たに完全親会社の株主に加わります。つまり、完全親会社の株主構成に変化を生じさせることになるのは避けられません。

完全親会社が上場企業であった場合、対価としての株式交付により1株当たりの利益が減少します。この場合、そのことを嫌った株式市場で株価が下落するリスクをはらんでいる点は認識しておきましょう。

株式移転との違い

事業拡大や新規事業への参入、共同経営などさまざまな経営戦略を進めるうえで、株式交換や株式移転を活用するケースが多いです。いずれも親会社・子会社の関係になる点は一緒ですが、手法は異なります。

株式交換は既存の会社が子会社となり、親会社は子会社が保有する全部の株式を取得し、完全親子会社の関係になります。株式交換は、経営統合やグループ再編で効果を発揮する手法です。

一方、株式移転は、子会社となる既存会社の発行済株式を新設する会社に取得させて完全子会社化する手法です。株式移転は、ホールディングスなどの持株会社を設立する際の組織再編で活用されることが多いといえます。

株式交換と株式移転は、取り組みや目的は大きく異なります。とりわけ親会社が新設されるかどうかが大きな相違点です。株式交換の親会社はすでに設立された会社であるのに対して、親会社が新設された場合は株式移転です。

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2. 株式交換のスケジュールと期間

株式交換のスケジュールは、案件の規模や複雑さによって変動しますが、一般的な流れと期間を把握しておくことは重要です。効力発生日を10月1日と仮定した例を以下に示します。
 

日付 完全親会社 完全子会社
7月上旬 デューデリジェンス、基本合意書締結 デューデリジェンス、基本合意書締結
7月下旬~8月上旬 株式交換契約書のドラフト作成、交渉 株式交換契約書のドラフト作成、交渉
8月中旬 取締役会決議、株式交換契約締結、開示書類作成 取締役会決議、株式交換契約締結、開示書類作成
8月下旬~9月上旬 株主総会招集通知、債権者保護手続き、株式買取請求 株主総会招集通知、債権者保護手続き、株式買取請求
9月中旬 株主総会決議 株主総会決議
9月下旬 株式交換効力発生日設定、必要書類準備 株式交換効力発生日設定、必要書類準備
10月1日 株式交換効力発生、株式の交付、登記申請、事後開示 株式交換効力発生、株式の交付、登記申請、事後開示

株式交換では債権者保護が必要ないケースもあるので、その場合は上記のスケジュールよりも短期間で完了します。株主総会を省略できるケースが会社法によって定められているので、その場合もスケジュールを短縮可能です。

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3. 株式交換の法務手続き:14のステップを詳しく解説

株式交換の手続きは、主に以下の流れで進めます。

①基本合意とデューデリジェンス

M&Aの基本的な流れに沿って、まずは基本合意を締結し、対象企業の財務状況や法務リスクなどを詳細に調査するデューデリジェンスを行います。

②株式交換契約書の締結

デューデリジェンスの結果を踏まえ、交換比率や効力発生日などの重要な条件を定めた株式交換契約を締結します。

株式交換当事会社間で株式交換契約を締結します。株式交換契約書の内容の中には会社法によって定められている記載事項があり、その項目は以下のとおりです。

  • 株式交換によって株式を全部取得する旨
  • 当事会社の商号と住所
  • 株式交換比率
  • 単元未満株の取り扱い
  • 株式交換による資本金などの変動
  • 効力発生日
  • 株主総会開催の有無
  • 善管注意義務について
  • 契約の変更・中止条件
  • 契約の効力条件
  • 協議事項
  • 当事企業代表者の署名

【関連】株式交換契約書の記載事項、作成時の注意点、手続きの流れを専門家が解説【ひな形あり】| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

③事前開示書類の備置

株式交換の当事会社は、株主への情報開示のために、事前開示書類をそれぞれの本店に備え置くことが会社法で定められています。事前開示書類に記載する主な内容や添付書類は、以下のとおりです。

  • 株式交換契約書
  • 交換対価の相当性に関する事項
  • 交換対価の参考事項
  • 新株予約権の定めの相当性に関する事項
  • 計算書類などに関する事項
  • 株式交換効力発生日以降における完全親会社の債務履行に関する事項

事前開示書類は、以下のうち、早い日から株式交換の効力発生日以降6カ月間、備え置く必要があります。

【株式交換完全親会社の場合】
  • 株主総会の2週間前
  • 反対株主の株式買取請求公告日か通知日
  • 債権者保護手続きの公告日か通知日

【株式交換完全子会社の場合】
  • 株主総会の2週間前
  • 反対株主の株式買取請求公告日か通知日
  • 債権者保護手続きの公告日か通知日
  • 新株予約権買取請求日の公告日か通知日
  • 株式交換契約締結から2週間後

④株主総会の招集通知発送

株式交換では株主総会での承認手続きが必要とされるため、株主総会開催のための招集通知を株主に送ります。

上場企業の場合は、株主総会開催の2週間前までに招集通知を発送する決まりです。非上場企業の場合は通常、株主総会開催の1週間前までに招集通知を発送します。

ただし、非上場企業のうち書面での議決権や、メール・Webサイトなどでの議決権を認めている会社の場合は、株主総会開催の2週間前までに招集通知を送らなければなりません。

なお、非上場企業で取締役会がなく、書面やメール・Webサイトなどでの議決権を認めていない会社の場合は、定款で定めていれば1週間よりも短い期間内での収集通知発送が可能です。

⑤株主総会による株式交換契約の承認

株式交換契約を有効とするには、株主総会の特別決議による承認を得ることと会社法で定められています。特別決議で承認されるには、議決権を持つ株主の過半数以上が参加し、そのうち3分の2以上の株主から承認を得なければなりません。

しかし、株式交換当事会社同士の状況によっては、株式交換を行っても株主に悪影響が出ないケースがあります。その場合は、株主総会を開催せずに手続きを進めることが可能です。

完全親会社が株主総会手続きを省略できる制度を簡易株式交換制度、完全子会社が株主総会手続きを省略できる制度を略式株式交換制度といいます。

簡易株式交換

簡易株式交換とは、株式交換による完全親会社株主への影響が小さい場合に完全親会社が利用できる制度です。簡易株式交換を利用するには、完全親会社が完全子会社に渡す対価の金額が純資産額の5分の1以下でなければなりません。

上記の要件を満たしていても、以下に当てはまる場合は簡易株式交換とは認められない決まりです。

  • 完全親会社に損失が出る
  • 完全親会社が譲渡制限付株式を保有していて、対価として譲渡制限付株式を交付する
  • 完全親会社株主の6分の1以上が株式交換に反対している

略式株式交換

略式株式交換とは、株式交換による完全子会社株主への影響が小さい場合に完全子会社が利用できる制度です。略式株式交換は、親会社が90%以上の株式を保有している特別支配会社である場合に利用できます。

⑥債権者保護の手続き・株券などの提供公告

組織再編を行い当事会社の資本金が減少すると、債権者に不利益が生じる場合があります。会社法によって、株式交換を行う際は債権者保護手続きを行う決まりです。

株式交換の場合は基本的に株主が変わるだけなので、債権者保護手続きが必要な債権者は限られます。株式交換の際に債権者保護手続きが必要となる債権者は、以下のとおりです。

  • 完全子会社への対価として株式以外を交付する場合
  • 新株予約権付社債を完全親会社が引き継ぐ場合

債権者保護手続きを行うには、官報公告と個別通知によって債権者に異議申立ての権利があることを周知します。債権者保護手続きは、株式交換の効力発生日1カ月前までに行う決まりです。

株券発行会社は、株式交換の効力発生日までに株券を提供するよう、株主に公告・個別通知します。公告・個別通知手続きは、効力発生日の1カ月以上前に行わねばなりません。

⑦反対株主からの株式買取請求

少数株主保護のため、株式交換に反対する株主は、会社に対して株式買取請求を行う権利があります。買取請求手続きを成立させるには、まず株主は株式買取請求通知書を会社に送らなければなりません

株式買取請求通知書には株式の種類や株式数、請求の根拠となる法令などを記載します。そのうえで、株主総会で株式交換に反対の意思を示すことも必要です。この時点で基本的に会社には、買取請求を拒否する権利はありません。

株式交換の場合、原則として債権者保護手続きは不要です。ただし、下記の場合に該当する際は手続きが求められます。

  • 新株予約権付社債を承継する場合
  • 対価として親会社の株式以外を交付する場合
  • 株式資本等変動額に対価自己株式の帳簿価額を加えた額のうち、自己株式の処分対価に相当する額を除く部分の金額を資本金・資本準備金にするのではなく、その他資本剰余金を増加させた場合

⑧金融商品取引法上の手続き

金融商品取引法では、投資家保護などのために企業に対して情報の開示を求めています。金融商品取引法上、必要となるのは以下の手続きです。

  • 臨時報告書
  • 有価証券届出書
  • 有価証券通知書

臨時報告書

上場企業や企業情報を継続的に開示している企業は、株式交換などの組織再編によって投資家に影響が出るような重要な変更があった場合に、臨時報告書の提出が義務付けられています。

臨時報告書は提出から1年間、誰でも閲覧できる状態で公開されなければなりません。

有価証券届出書

非上場企業や継続開示を行っていない企業が完全親会社となり、上場企業や継続開示企業を完全子会社として株式を交付する場合、完全子会社の株主は情報が不明確な株式を取得します。

株主が50名以上となり、かつ株式発行価額が1億円以上となる場合は、有価証券届出書の提出が必要です。

有価証券通知書

株式交換で株式発行価額が1,000万円以上1億円未満の場合、上記の有価証券届出書ではなく有価証券通知書を提出します。なお、企業が有価証券届出書や有価証券通知書を提出しているかどうかは、EDINET(電子開示システム)によって確認可能です。

⑨株券・新株予約権の証券提出手続き

株券・新株予約権証券発行会社の提出公告・個別通知を受けて、株主は株券などの提出手続きを株式交換の効力発生日までに完了させる必要があります。もしも効力発生日までに提出しなかった場合、当事会社は株主から提出があるまで対価の交付をする必要がありません

⑩株式交換の効力発生

株式交換の効力発生日を迎えたら、完全親会社は完全子会社株主に対価を交付します。完全親会社が上場企業であれば、株主への交付手続きは比較的簡便に進みますが、完全親会社が非上場企業の場合は効力発生日にさまざまな事務手続きが発生するので注意しましょう。

⑪新株発行・設立・変更の登記申請

株式交換によって登記申請が必要となった場合、株式交換の効力発生日から2週間以内に登記申請手続きを行います。登記申請手続きが必要となるのは、完全親会社が新たに株式や新株予約権を発行した場合や、完全子会社が新株予約権を処分する場合です。登記申請手続きの際は、登録免許税がかかります。

⑫公正取引委員会への手続き

独占禁止法では、企業結合によって誕生したグループ企業が市場の競争を阻害する恐れがある場合に、企業結合を阻止する決定がなされることがあります。一定の条件下にある企業結合の場合は、公正取引委員会に届け出なければなりません。届出要件は以下のとおりです。

  • 株式交換によって完全親会社となる企業や、そのグループ企業の国内売上高合計額が200億円以上
  • 株式発行会社とその子会社の国内売上高合計額が50億円以上
  • 株式交換によって完全親会社となる企業のグループ企業が持つ議決権保有割合が20%または50%以上となる

届け出た企業は、30日の審査期間の間、株式交換を進められません。公正取引委員会の判断によっては審査期間がさらに長くなることもあります。

⑬事後開示書類の備置・開示

完全親会社と完全子会社は、株式交換の効力発生日から6カ月の間、事後開示書類をそれぞれの本店に備え置くことと会社法で定められています。主な事後開示事項は、以下のとおりです。

  • 株式交換の効力発生日
  • 株式買取請求手続きの経過
  • 新株予約権買取請求手続きの経過
  • 債権者保護手続きの経過
  • 交換株式数
  • その他重要事項

⑭株式交換無効訴え

株主や債権者、取締役は効力発生日から6カ月以内であれば、株式交換の無効を訴えることが可能です。

株式交換が無効となる事項は会社法で規定されていませんが、株式交換契約の内容に不備や虚偽があった場合、株主や債権者が保護されない場合などが該当します。

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4. 株式交換における法務上の注意点:リスクを回避するためのポイント

株式交換の法務手続き上、注意すべき点は以下のとおりです。

  1. 公正取引委員会の判断で株式交換が禁止される場合がある
  2. 債権者保護手続きの期間が1カ月間ある
  3. 株式交換には会社法・金融商品取引法・独占禁止法によるそれぞれの規定がある
  4. 株式交換が行えるのは株式会社のみ
  5. 株式交換比率の影響により株主が単元未満株式となる
  6. 新株予約券には承継義務がある
  7. 子会社が発行している転換社債の取り扱いに注意
  8. ストックオプションの処理
  9. 自己株式や種類株式は処理しなければならない
  10. 上場廃止に関する注意

①公正取引委員会の判断で株式交換が禁止される場合がある

株式交換を行う企業の売上高などが独占禁止法の規定に該当する場合、公正取引委員会に届け出なければなりません。場合によっては、株式交換手続きが差し止められることも考えられます。

独占禁止法:一定規模以上の株式交換は、公正取引委員会への届出が必要となり、場合によっては企業結合が禁止される可能性があります。

大規模企業が株式交換を行う際は、事前に公正取引委員会への相談をスケジュールに組み込み、申請が認められるかどうか確認しておくことが大切です。

②債権者保護手続きの期間が1カ月間ある

債権者保護手続きは、株式交換の効力発生日の1カ月前までに行うことと会社法で定められています。しかし、債権者保護手続きに手間取ると、1カ月のスケジュールでは間に合わなくなるかもしれません。

株式交換で該当する債権者がそれほど多くなくても、債権者がいる場合にはスケジュールに余裕を持って債権者保護手続きを行う方が良いでしょう。

③株式交換には会社法・金融商品取引法・独占禁止法によるそれぞれの規定がある

株式交換は株主・債権者・関係市場などに影響を及ぼします。公正な株式交換が行われるよう、会社法・金融商品取引法・独占禁止法によって、さまざまな規制が定められています。

仮に株式交換手続きの過程で会社法・金融商品取引法・独占禁止法のいずかに抵触すると、株式交換の期間・スケジュールが変わるだけでなく、株式交換自体が中止に追い込まれかねません

④株式交換が行えるのは株式会社のみ

株式交換を行える会社形態は会社法で定められており、完全親会社では株式会社か合同会社、完全子会社の場合は株式会社のみです。

⑤株式交換比率の影響により株主が単元未満株式となる

株式交換では、完全親会社と完全子会社の1株当たり価値から、株式交換比率を決めます。比率によっては、完全子会社の株主が単元未満株を保有することはやむを得ません。

そうなった場合、会社法や定款の定めに従って完全親会社に買い取ってもらうか、単元株に足りない分を買い増さなければなりません。

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⑥新株予約券には承継義務がある

完全子会社が新株予約権を発行している場合、そのままにしておくと完全子会社化ができません。完全子会社となる企業は、あらかじめ定款に新株予約権の承継に関する事項を定めておき、株式交換契約で完全親会社との合意と、株主総会での承認を得る必要があります。

⑦子会社が発行している転換社債の取り扱いに注意

完全子会社が転換社債を発行している場合、注意が必要です。転換社債は任意のタイミングで株式に転換できるので、完全子会社化する際の障壁となります。

2002(平成14)年の商法改正後に発行されたものであれば処分できますが、それ以前に発行されたものは償還期日まで処分できません

⑧ストックオプションの処理

完全子会社となる企業の従業員が福利厚生の一環としてストックオプションを保有している場合にも注意が必要です。株式交換後にストックオプションが行使されると、新たに完全子会社株主が生まれることになり、完全子会社化を行えなくなります。株式交換を行う前に確認しなければなりません。

⑨自己株式や種類株式は処理しなければならない

以下の場合、株式の処理が必要です。

  • 完全子会社となる企業が完全親会社の株式を持っている
  • 完全子会社が自己株式を持っている

完全子会社となる企業が種類株式を発行している場合、完全親会社となる企業が種類株式を保有する株主に交付する株式の種類と数は、当事会社が交渉したうえで株主総会によって決定します。交渉と承認次第では、完全親会社は種類株式ではなく普通株式を交付するのも可能です。

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⑩上場廃止に関する注意

上場企業同士が株式交換を行う場合、完全子会社となる企業は上場廃止基準に当てはまることにも留意しましょう。したがって、完全子会社は株式交換の効力発生前に上場廃止となりますが、効力発生日には完全子会社の株主に完全親会社の株式が交付されます。その間、株主は株式の売買ができないので注意が必要です。

5. 株式交換のメリット・デメリット:M&A戦略における適切な選択

株式交換の手続き面におけるメリット・デメリットをそれぞれ説明します。

株式交換のメリット

まず、株式交換のメリットを挙げます。

  • 資金調達の必要性がない:株式交換では、現金による買収とは異なり、自己株式を対価とするため、多額の資金調達を行う必要がありません。
  • 少数株主の反対があった場合、子会社株主の3分の2以上の賛成があれば、株式交換を実施できる
  • 株式交換では「株式を保有する株主」のみ変更となり、会社や組織は現状維持が可能で、親会社・子会社ともに独立した経営が可能

株式交換のデメリット

株式交換のデメリットは主に以下のとおりです。

  • 株主総会の特別決議を筆頭に、債権者の保護手続きなど、株式交換を実行するまでに複雑な手続きが必要でクロージングまで期間を要する
  • 新株の発行により親会社の株式総数が増加するため、1株当たりの価値が小さくなり、株価が下落する可能性

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6. 株式交換の相談先:専門家によるサポートの重要性

株式交換は複雑な手続きを伴うため、弁護士、公認会計士、税理士などの専門家への相談が不可欠です。専門家は、法務手続きのサポートだけでなく、税務上のアドバイスやデューデリジェンスの実施など、M&Aプロセス全体を支援します。2025年現在では、M&A仲介会社なども数多く存在し、より専門性の高いサポートを受けることが可能です。

M&A総合研究所では、株式交換に豊富な実務経験と知識を持つM&Aアドバイザーが徹底サポートしますので、スムーズにM&Aを進行できます。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時受け付けていますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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7. 株式交換で成功するポイント:戦略的なM&Aの実現に向けて

株式交換とは、当事企業同士で株式を交換する方法によって、100%親子関係を築く組織再編手法です。株式交換の手続きには完全親会社、完全子会社、株主それぞれに注意すべき点があります。

株式交換を行う際は、メリットやデメリットを把握し、それぞれ対策を講じておきましょう。株式交換手続きのスケジュール・期間を迅速に進めれば、M&A専門家のサポートを受けることがおすすめです。

8. 株式交換におけるデューデリジェンスの重要性

株式交換を成功させるためには、対象企業の財務状況、法務リスク、事業内容などを詳細に調査するデューデリジェンスが不可欠です。デューデリジェンスを適切に行うことで、想定外の事態を防ぎ、M&A後の統合プロセスをスムーズに進めることができます。

財務デューデリジェンス

財務デューデリジェンスでは、対象企業の財務諸表、資産負債状況、収益性などを分析し、企業価値を評価します。2025年現在では、AIを活用した財務分析ツールなども登場しており、より精度の高いデューデリジェンスが可能となっています。

法務デューデリジェンス

法務デューデリジェンスでは、対象企業の契約書、許認可、訴訟リスクなどを調査し、潜在的な法務問題を洗い出します。法務デューデリジェンスによって、M&A後のトラブルを未然に防ぐことができます。

事業デューデリジェンス

事業デューデリジェンスでは、対象企業の事業内容、市場環境、競争状況などを分析し、将来の成長性を評価します。事業デューデリジェンスは、M&A後のシナジー効果を見極める上で重要な役割を果たします。

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