株式交換とは?企業に与える影響・効果や注意点・成功事例を紹介

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

完全子会社化するために用いられる株式交換ですが、企業に与える影響は良いことばかりではありません。本記事では株式交換の目的や効果、手続き、注意点、成功事例などについて解説します。どんな手法でも、企業や状況に合わせたM&Aを実施しなければ十分な効果が得られなくなるでしょう。

目次

  1. 株式交換とは
  2. 株式交換と株式移転の違い
  3. 株式交換のメリット
  4. 株式交換のデメリット
  5. 株式交換の主な手続き・流れ
  6. 株式交換の注意点
  7. 株式交換の会計処理
  8. 株式交換の税務処理
  9. 株式交換の税務上の注意ポイント
  10. 株式交換を使ったM&Aの成功事例【2024年最新】
  11. 株式交換によるM&Aの相談先
  12. 株式交換のまとめ
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1. 株式交換とは

株式交換とは、主にグループ企業を形成する際や、グループ企業の再編などに用いられる手法のことです。この記事では、株式交換とはどのような手法なのか、英語での読み方、似た手法の株式移転や吸収合併と比較しながら解説します。

株式交換の英語読み

株式交換は、英語で「Share Exchange」または「Stock Swap」と表現します。Shareとは英語で株式のことです。Exchangeとは英語で交換を意味します。Stockも英語で株式を意味し、Swapとは英語で交換を意味します。

株式交換の手法・仕組み

株式交換では、親会社となる企業が自社の株式を対価として、相手企業の株式と交換します。親会社となる企業は子会社となる企業の株式をすべて取得することで、相手企業を完全子会社とする手法です。

株式交換によって親会社となる企業を完全親会社、子会社となる企業を完全子会社と呼びます。親会社が対価として子会社の株主に渡す対価は、株式以外でも可能です。

株式交換には、株式交換で親会社となる企業ではなく、その親会社が株式を交換する仕組みである三角株式交換の手法もあります。

三角株式交換の手法・仕組み

買い手企業の株式ではなく買い手企業における完全親会社の株式を使って行う株式交換を、三角株式交換と呼びます。

買い手企業グループの甲①社、その完全子会社である甲②社、株式交換により完全子会社になる乙社を例にすると、通常の株式交換では、乙社株主が保有する乙社株式の対価として甲②社が交付するのは、甲②社の株式です。

一方、三角株式交換では、乙社の株主が保有する乙社における株式の対価として甲②社が交付するのは、甲①社の株式です。

甲②社が甲①社の株式をいったん保有して乙社の株主と取引する形式になるため、乙社の全株式は甲②社が保有します。つまり、甲①社から見て甲②社が完全子会社、乙社が完全孫会社です。

三角株式交換は、法務上の必要性から、外国会社を株式交換で買収する際に使われることの多いスキームです。

売却側企業の新株予約権の処理

売り手企業が消滅会社となる「会社合併」のようなスキームと異なり、株式交換では売り手企業が存続するためすでに発行された新株予約権は消滅しません。

株式交換により既発行株式をすべて譲受し完全子会社化しても、その後新株予約権が行使されれば持株比率が希薄化し完全子会社ではなくなってしまいます。

こうした事態を避けるため、新株予約権に付された取得条項を発動し、売り手企業が新株予約権の買取処理を行う必要があります。

取得条項は、売り手企業の裁量により、売り手企業が自己新株予約権を取得できる規定で、一般的な新株予約権にはあらかじめ定められている条項です。新株予約権を取得する対価は、現金が渡される場合や、買い手企業の新株予約権が渡される場合があります。

立場別の留意点

ここからは、実施する立場からみた株式交換の留意点をそれぞれ順番に取り上げます。

買収側の留意点

株式交換がチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項が付与されている契約の場合、譲渡企業が第三者と締結している契約内容に一定の制限がかかる場合があるため注意しましょう。

COC条項とは、M&Aなどを理由として契約の一方当事者に支配権の変更、つまり経営権の移動が生じた場合、契約内容に何らかの制限がかかったり、他方の当事者によって契約を解除することができたりする規定のことで、別名「資本拘束条項」とも呼ばれています。

株式交換では、譲渡企業の保有資産・負債のうち、不要なものがあったとしても、事前に資産整理などを行わない限り、そのまま引き継ぐこととなるため、簿外債務などのリスクも引き継ぐことになる点も留意しましょう。

対価を株式として株式交換を実行する場合、譲受企業の株主に譲渡企業の株主が加わることから、譲受企業の経営に一定の影響力を及ぼすことがある点にも留意しなければなりません。

売却側の留意点

株式交換は、譲渡企業の法人格が維持されることから、M&A実行による譲渡企業への影響が比較的少ない手法だと考えられています。

譲渡企業の税務上の取扱は、原則として時価移転であるものの、税制適格要件を満たす場合は簿価移転となるため、特段の課税関係は生じません。

譲渡企業の株主に関して、株式交換の対価に譲受企業の株式以外が含まれない場合、特段の課税関係は生じないものの、現金などの株式以外の資産が対価に含まれるならば、投資の清算として譲渡企業の株主に譲渡損益が計上される点に注意しましょう。不明点があれば、専門家にご相談ください。

吸収合併との違い

吸収合併は英語で「Absorption Merger」と表現します。MergerとはM&AのMにおける部分で、英語で合併を表す単語です。吸収合併とは、2つ以上の法人が統合されて1つの法人になる手法です。この際、吸収される側の法人格は消滅します。

株式交換は、一方の企業を完全子会社化する手法ですが、法人格は消滅しません。法人格が残るか消えるかが手法として大きく違う点です。

  • 株式交換=相手企業を完全子会社化する(法人格の消滅なし)
  • 吸収合併=2つ以上の法人が統合により1つの法人になる(吸収される側の法人格は消滅する)

株式譲渡との違い



株式交換と株式譲渡は、似ている言葉ですが目的や現金支出の有無に大きな違いがあります。株式交換は、売り手を完全に子会社化することが目的です。

一方、株式譲渡では、経営権の移転を前提としているものの、必ずしも子会社化するとは限りません。また、株式交換では、買い手は自社株の一部を提供するため現金支出は発生しませんが、株式譲渡では買い手は現金を支払います。

株式交換は買い手が自社株を提供することで売り手を子会社化する手段であり、現金が流れることはありません。一方、株式譲渡では現金が必要なため、買い手の財務状況や資金調達能力が影響することがあります。

株式交換が行われる目的・活用場面

株式交換は主に以下の目的で用いられることが多い手法です。

  • M&Aの手段として
  • 不利益をもたらす株主を排除するため
  • ホールディングス化を目指すため

M&Aの手段として

株式交換は相手企業とM&Aを行うための手法として用いられます。M&A手法として株式譲渡を用いた場合、ある程度の株式を手に入れられますが、株式を100%取得することは簡単ではありません。

株式交換の場合は、株主の承認を得られれば、完全子会社化できる仕組みになっています。

ただし、買収する企業がもともと子会社であったり、長年提携関係にあったりするケースでなければ、株主総会で株主における3分の2以上の承認を得ることは容易ではありません。まずは株式譲渡によってある程度の株式を取得して子会社化し、残りを株式交換によって取得する手法を用いることがあります。

不利益をもたらす株主を排除するため

子会社の株式を親会社以外の株主が保有している場合、円滑な経営ができなくなる可能性があります。過半数以上の株式を親会社が持っていても、M&Aなどの重要な経営判断は否決されるかもしれません。

会社を乗っ取ろうとする株主が出てきた場合に備え、子会社はなるべく完全子会社化したいと多くの経営者は考えます。株式交換であれば、仕組み上株主総会で3分の2以上の承認を得れば完全子会社化できるので、親会社にとってメリットの大きい手法です。

ホールディングス化を目指すため

株式交換は、グループ企業を持株会社化する手法としても用いられます。持株会社とは、英語でホールディングカンパニーです。子会社を管理する仕組みを持ったグループ形態をさします。

持株会社は子会社の株式を保有して子会社を管理し、自身は事業を行いません。持株会社の仕組みを採用することでグループの再編成などが行いやすくなり、他企業からの敵対的買収も実質不可能です。

【関連】株式移転と株式交換の違いとは?各手法の特徴や手続き方法・メリット・費用も解説【事例あり】

2. 株式交換と株式移転の違い

株式移転は英語で「Share Transfer」と表現します。Transferは英語で移動させる意味です。

名前のとおり、株式移転とは、新しく会社を設立し既存企業の株式を移す手法であり、新設された会社は親会社となり、既存の企業は子会社となる仕組みになっています。

株式移転と株式交換では、会社を新設するか、既存の企業間で行うかが手法として異なる点です。株式移転は主に持株会社を設立することが目的ですが、株式移転は相手企業を完全子会社化することが主な目的となります。

株式交換は、組織再編で完全子会社でない会社の株式を100%有し、完全親子会社の関係にして、グループ連携を強めるために主に実施されますが、株式移転は、主に持株会社(ホールディングスカンパニー)を設けるために行われます。

株式交換は、株式交換契約書で定めた効力発生日に効力を生じますが、株式移転は、新設した会社の成立日に効力を生じる点で違います。

上記の違いを表にまとめました。
 

  株式交換 株式移転
親会社 既存会社 新設会社
活用する主な目的 「グループ内における子会社の完全子会社化」
「会社の譲受」
「スピーディーな対応が困難で譲受に不向き」
「ホールディングス設立などで主に活用」
効力の発生時 株式交換契約書で定めた効力発生日 新設会社の成立日

3. 株式交換のメリット

株式交換のメリットは、主に以下の6つです。

  • 買収資金が不要
  • 子会社も親会社の経営に参画可能
  • 買収後も別法人として存続できる
  • 少数株主から株式の吸い上げが可能
  • 完全子会社化に株主全員の同意が不要
  • 経営統合の円滑化

買収資金が不要

株式交換のメリットは、自社株式で買収できる手法なので、現金が必要ない点です。買収の際は主に自社の内部留保金で行うか、銀行から融資してもらうか、株式を対価にするかを選びます。

内部留保金を使った買収手法は、返済する必要がなく資金の有効利用として株主にもメリットがありますが、会社の内部留保が減ることをデメリットと捉える経営者もいます。銀行からの融資は大きな資金を借りられる可能性のある点がメリットですが、審査を通らなければならないことと返済がデメリットです。

子会社も親会社の経営に参画可能

株式交換は完全親会社が完全子会社の株式をすべて取得する手法ですが、完全子会社は一方的に支配されず、グループ企業として協力関係にあります。グループ企業として公正な関係を持てる点がメリットです。

このメリットを生かして、株式交換の仕組み上は完全親会社と完全子会社の関係でも、実質対等な関係を築く企業もあります。

買収後も別法人として存続できる

株式交換の仕組み上、完全子会社が別法人として事業を継続できる点がメリットです。特に従業員のモチベーションを大きく下げない点が大きなメリットとなります。

M&A手法によっては社内の再編も伴いますが、株式交換では株式交換前後でも通常どおり日常業務を行えることもメリットです。

少数株主から株式の吸い上げが可能

グループ企業を構築する際、親会社としては子会社を完全子会社化したほうが円滑に意思決定できるメリットがあります。少数株主が敵対的であった場合、グループ企業として崩れることにもなりかねません。

株式交換は、子会社に存在する少数株主の保有株式を回収できる点がメリットです。

完全子会社化に株主全員の同意が不要

株式交換の場合は、株式譲渡の場合と異なり、株主全員の同意を得る必要がありません。株式交換による完全子会社化は、株式交換の当事者である企業間の合意を前提に、株主総会の特別決議で実施できます。

特別決議とは、株主総会で議決権における3分の2以上の賛同が得られた場合に可能な決議のことです。

経営統合の円滑化


株式交換は、買収された企業を完全子会社化するための手段です。売り手企業の法人格を残したまま、経営統合を進めることができます

そのため、組織再編が必要となる株式譲渡に比べ、経営統合が円滑に進む可能性が高いと言われています。株式交換を採用することで、買収される企業が独自性のある技術を持っていた場合でも、従来の組織体系を大きく変えることなく、経営統合を進めることが可
能です。買収後に技術者が退職することを防ぐことができます。

また、買収後の企業風土の変化を最小限に抑えることができるため、従来の持ち味を生かしたまま経営統合を進めることができ、買収した企業のブランド価値や技術力を維持し、経営の効率化を図ることが可能であるといえるでしょう。

経営統合には多くの課題がありますが、株式交換を採用することで、組織再編を回避し、円滑に買収した企業の独自性を生かしながら経営統合を進めることができます。
 

4. 株式交換のデメリット

株式交換には主に以下のデメリットもあります。

  • 上場企業を買収した場合は株価下落の可能性がある
  • 買い手企業の株主に買収先企業の人間が加わり株主比率が変わる
  • 複雑な手続きを行う必要がある

上場企業を買収した場合には株価下落の可能性がある

完全子会社が上場企業の場合、株式交換後に株価が下がるリスクがあります。株式交換によって株価が大きく上昇しメリットを得られますが、下落のデメリットとも隣り合わせです。

特に注目度の高い企業同士の株式交換では、株価が短期間で激しく上下することがあります。完全子会社の収益が赤字であったり負債を抱えていたりする場合は注意が必要です。

買い手企業の株主に買収先企業の人間が加わり株主比率が変わる

株式交換では完全子会社の株式を取得するので、完全親会社の株主構成が変わるのはデメリットです。完全子会社の株主が加わることで、相対的に議決権比率が下がる既存株主も出てきます。

株式交換後に株主比率がどう変化し、経営にどのようなデメリットがあるか把握しなくてはなりません。

複雑な手続きを行う必要があり多くの時間がかかる

株式交換を手法として用いる場合、債権者保護や株主保護、株券などの提出公告など、煩雑な手続きが必要です。場合によっては株式交換の手続きが長引くなどのデメリットがあるうえ、株主や債権者が多いほど手続きが煩雑になるので注意しましょう。

株主総会の特別決議が求められる

一般的に、株式交換では株主総会の特別決議が求められます。議決権の過半数を持つ株主が出席し、議決権における3分の2以上の同意が必要です。これにより、時間や手間がかかります。

株式交換に反対する株主が3分の1を超えると、株式交換自体が実行できません。

不要な資産や簿外債務を引き継がなければならない



株式交換には、買収対象企業の不要な資産や簿外債務を引き継がなければならないというリスクがあります。買い手企業は、事前に詳細調査を行い、買収対象企業の財務状況や債務の状況を把握することが必要です。

また、買い手企業は、買収対象企業の財務状況を慎重に分析し、引き継ぐべき資産や債務を明確にしなくてはいけません。買収対象企業の負債を引き継ぐことで、買い手企業の財務状況が悪化する可能性があるため、リスクを最小限に抑えるためにも、事前の慎重な対応が求められます。

希薄化することもある



株式交換において、買い手が新株を発行して対価とする場合、株式の希薄化が生じる可能性があります。希薄化により、株主1人あたりの持分比率が低下し、株主総会での発言力や配当金が減少する可能性が否定できません。

特に買い手が上場企業である場合は、希薄化によって評価が下がり、株価が下落する可能性もあるため、希薄化はデメリットと言えるでしょう。株式交換を実施する場合には、希薄化のリスクを十分に把握し、買い手が新株を発行する場合には、株主に対して納得のいく説明が必要です。

5. 株式交換の主な手続き・流れ

株式交換は株主や債権者に影響をおよぼすため、保護する手続きが必要です。株式交換の主な手続きは以下のとおりです。

  1. 取締役会決議
  2. 株式交換契約の締結
  3. 適時開示(上場企業)
  4. 事前開示書類の備置
  5. 株主総会の招集通知発送
  6. 株主総会による株式交換契約の承認
  7. 債権者保護の手続き・株券などの提供公告
  8. 反対株主からの株式買取請求
  9. 金融商品取引法上の手続き
  10. 株券・新株予約権の証券提出手続き
  11. 株式交換の効力発生
  12. 新株発行・設立・変更の登記申請
  13. 公正取引委員会への手続き
  14. 事後開示書類の備置・開示
  15. 株式交換無効訴えへの対応

①取締役会決議

法務上の手続きとして、株式交換のために、まず会社の経営陣で株式交換契約の内容を協議・合意する必要があります。合意の取締役会(取締役会非設置では取締役)決議後、買い手企業と売り手企業で株式交換契約を締結します。

前記のとおり、株式交換の最終段階で必要なのは、株主における3分の2が株式交換契約に賛同することです。

②株式交換契約の締結

売り手企業は、取締役会で承認を得て株式交換を行う買い手企業との間で株式交換契約を締結します。株式交換契約書の内容は会社法で定められており、株式交換の目的、当事会社の概要、株式交換比率、株式交換比率の算定根拠、スケジュールなどを規定しなければなりません。

③適時開示(上場企業)

上場企業の場合は、取締役会などで重要事項が決定した際(適時)に、公表(開示)を求められます。適時開示対象になる内容は、組織再編成、事業譲渡、子会社などの異動を伴う株式取得や譲渡などさまざまです。

株式交換では、株式交換契約の締結が重要事項にあたるため、契約締結後直ちに開示が必要です。

④事前開示書類の備置

株式交換の情報を開示するため、当事会社は事前開示書類を本店に備置しなくてはなりません。事前開示書類とは、株式交換契約書や決算報告書、注記すべき事項など、株主や債権者が株式交換を判断するための書類です。

⑤株主総会の招集通知発送

株式交換を行うには、株主総会で承認を得なければなりません。株主総会を開催するために、当事会社は株主に招集通知を発送します。

招集通知は、上場企業であれば2週間前まで、非上場企業であれば1週間前までに発送しなければなりません。招集通知には、株主総会を開く目的や日時などを記載しますが、株式交換を行う旨を株主総会の招集通知とともに送付できます。

⑥株主総会による株式交換契約の承認

株式交換を行うには、株主総会の特別決議で議決権のある株主から3分の2以上における承認を得なければなりません。株主総会は株式交換の効力発生日前日までに行います

簡易株式交換と略式株式交換の要件に当てはまれば、株主総会での承認がなくても株式交換が可能です。簡易株式交換とは、完全親会社となる企業が利用できる仕組みで、略式株式交換とは完全子会社となる企業が利用できる仕組みになります。

簡易株式交換

簡易株式交換とは、完全親会社となる企業が完全子会社となる企業に交付する対価が、純資産額における5分の1以下である場合に適用される仕組みです。このとき、完全親会社となる企業は、株主総会の開催を省略できます。

ただし、非上場企業で定款に株式譲渡制限を定めていて、対価として譲渡制限株式を交付する場合は、簡易株式交換を利用できません。反対株主が6分の1以上に至った場合にも、簡易株式交換を利用できません(会社法797条1項但書)。。

略式株式交換

略式株式交換とは、親会社が子会社の議決権付き株式を90%以上持っていて、株主総会を開いても承認されることが間違いない場合に適用される仕組みです。このときに、完全子会社となる企業は株主総会を省略できます。

ただし、子会社が上場企業で、対価として譲渡制限株式を受け取る場合は略式株式交換を利用できません。子会社が株式交換で完全親会社となり、定款で株式譲渡制限を定めていて、対価として譲渡制限株式を交付する場合は略式株式交換を利用できません(会社法785条2項2号カッコ書、797条2項2号カッコ書)。

⑦債権者保護の手続き・株券などの提供公告

完全親会社となる企業が株式以外の対価を交付する場合、債権者に不利益が生じる可能性があることから、債権者保護手続きを行う必要があります。債権者保護の手続きは、債権者に対して官報公告と個別通知で周知します。

周知する内容は、株式交換を行う旨や異議を受け付ける旨、株式交換により変動する資産・負債などです。

完全子会社となる企業が株券発行会社の場合、株主に対して株券を提供するよう求めます。債権者保護手続きと株券等提供公告は、いずれも効力発生日の1カ月以上前に行わなければなりません。

⑧反対株主からの株式買取請求

株式交換は株主総会で3分の2以上の賛成があれば承認されるため、株式交換に反対する少数の株主が不利益を被ります。少数株主の利益を守るため、当事会社は反対株主から株式の買取請求があった場合、買取に応じなければなりません。

当事会社は反対株主に株式買取請求権があることを周知します。株主総会の通知と同じタイミングで、当該周知ができます。

⑨金融商品取引法上の手続き

金融商品取引法では、組織再編があった場合は適正な情報を開示しなければならないとされ、事前開示書類もその1つです。

ほかにも、株式の募集または売り出しがあった場合は、有価証券届出書を提出する必要があります。株式交換の場合は、親会社が非上場企業の場合に有価証券届出書の手続きが必要です。

⑩株券・新株予約権の証券提出手続き

完全子会社となる企業が株券を発行して株主に交付していたり、新株予約権証券を発行したりしている場合は、株主に提出を求める公告を行います。

株主は株式交換の効力発生日までに保有株券を提出しなければなりません。提出しなかった場合、企業側は対価を渡さなくても良いです。株券の紛失などやむを得ない事情がある場合は、他の方法を取れます。

⑪株式交換の効力発生

株式交換契約で定めた効力発生日を迎えたら、完全親会社は完全子会社の保有株式をすべて取得します。

⑫新株発行・設立・変更の登記申請

新株の発行や新会社の設立、資本金の増減などがあった場合、完全親会社は効力発生日以降速やかに登記を行わなければなりません。完全子会社は株主が変わるだけなので、登記は不要です。

⑬公正取引委員会への手続き

業界で大きなシェアを持つ企業同士が株式交換を行う場合など、市場に大きな影響をおよぼす可能性がある企業は、独占禁止法の規定により公正取引委員会へ届け出る必要があります。

株式取得の届け出制度は、公正取引委員会のホームページ「株式取得の届出制度(独占禁止法第10条第2項、第5項)」に解説が掲載されていますので、参考にしてください。

⑭事後開示書類の備置・開示

株式交換の当事会社は株式交換後6カ月間、事後開示書類を本店に備置する必要があります。事後開示書類とは、株式交換の手続き結果や、差止請求、反対請求、買取請求、異議申立の状況などを記載するものです。

⑮株式交換無効訴えへの対応

株式交換を終えた後、手続きの不備や株式交換契約の虚偽、株主や債権者の保護不履行などが発覚した際は、株主や債権者、当事会社の取締役は、株式交換の無効を訴えられます。無効の訴えは、効力発生日から6カ月以内に行いましょう。

6. 株式交換の注意点

株式交換には特有の注意点があります。株主や完全子会社が株主交換で注意するべき点を解説します。

  1. 売り手企業が取得した買い手企業による株式の扱い
  2. 子会社による親会社株式の保有期間
  3. 株主の保有株数の変化
  4. 所有する株式が単元未満になる可能性がある
     

①売り手企業が取得した買い手企業による株式の扱い



株式交換によって売り手企業が取得した買い手企業の株式は、会社法によって子会社による親会社の株式取得が禁じられているため、例外的に扱われます。株式取得後は「相当の時期に」処分することが求められています。

株式交換の場合も例外ではなく、可能な限り早期に処分する必要があるといえるでしょう。取締役会で自己株式の処分を決定し、相当の時期を経過する前に対応することも1つの選択肢です。

②子会社による親会社株式の保有期間

会社法上、子会社は親会社の株式を保有できません。仮に子会社が親会社の株式を持っている場合は「相当の期間」における間に処分しなければなりません。

子会社が自己株式を保有していた場合、株式交換により親会社の株式を保有します。この状態を回避するため、自己株式は株式交換前に処分するのが一般的です。

③株主の保有株数の変化

株式交換によって、被買収会社の株主は、所定の交換比率で親会社の株式を交付されます。被買収会社における株主の中でも保有株数の少ない株主が、単元未満株しかもらえないことで、議決権行使ができなかったり株主優待がもらえなくなったりする場合があるため、注意が必要です。

株式交換比率の算定方法

株式交換では、通常、買い手企業の株価が高く、売り手企業の株価が低いです。1株と1株を交換するのではなく、株数に差を設けて同じ価値を持つ株数を交換しなければいけません。

例えば、1億円の企業価値を持つA社の株式数が1,000株なら、A社の株価は100万円です。対して、5億円の企業価値を持つB社の株式数も1,000株なら、B社の株価は500万円です。A社とB社が株式交換をするなら、交換比率は1:5になり、これは0.2:1とも書けます。

株価変動リスクへの対応方法

株式交換契約締結後、効力発生日までには数カ月の期間が空くので、その間に会社状況が変化し、企業価値と株価が変動する場合があります。

株価変動が交換比率におよぼす影響を調整する方法は、固定比率方式と変動比率方式です。固定比率方式では、効力発生日までの株価の変動は考慮されず、当初の株式交換比率で取引します。

変動比率方式では、株価変動に応じて株式交換比率を調整します。株価が上がるか下がるかで損得が変わるため、比較的投機的な手法です。

④所有する株式が単元未満になる可能性がある

株式交換比率によっては、対価として受け取った株式に単元未満株が出る可能性があります。単元未満株は市場で売却できません。完全親会社の定款や会社法では、単元未満株式を買い増しできる仕組みや、買い取る仕組みを定めています。

単元未満株式と端数株式の処理方法

単元株式は、定款で定められた最低売買単位であり、それを下回る株式が単元未満株式です。株式交換では交付される株式が単元未満株式になる場合があります。会社法上、単元未満株式を持っている株主は、会社への買取請求権や単元株式になる買増請求が可能です。

1株に満たない株式を、端数株式といい、株式交換では端数株式を持つ株主が多く生まれます。端数株式が発生した場合、その端数分に相当する株式を競売により現金化するか、会社が買い取る手続きを行う必要があります。

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7. 株式交換の会計処理

株式交換の会計処理は立場によってさまざまです。ここでは、以下に挙げるケースごとの会計処理を解説します。

  1. 完全親会社の会計処理
  2. 完全子会社の会計処理
  3. 完全親会社の株主の会計処理
  4. 完全子会社の株主の会計処理

①完全親会社の会計処理

完全親会社の会計処理は、完全子会社との関係によって変わります。以前までグループ企業内での株式交換では、持分プーリング法を用いていました。プーリングとは英語で蓄える・出資といった意味です。

英語の意味のとおり、プーリング法は株式の売買とはみなされないので、売買にかかる税金も発生しません。持分プーリング法では簿価により計算できます。

現在は株式交換の会計処理にパーチェス法を用います。パーチェスとは英語で購入を意味する言葉です。

英語の意味のとおり、パーチェス法では相手企業の株式を購入したものとみなします。株式の取得額を計算する際は時価です。時価と簿価に差額が生まれ、のれんが発生します。

②完全子会社の会計処理

完全子会社の場合、株主が変わるだけで資本などに変化はないので、会計処理は必要ありません。自己株式を保有している場合や新株予約権証券を発行している場合には処分が必要です。

自己株式とは、株主から自社の株式を買い取って自社で保有している株式をさします。新株予約権証券とは、一定の価格・任意のタイミングで株式を購入できる権利です。

株式交換の目的上、自己株式と新株予約権証券があると支障が出るため、完全子会社となる企業はこれらを処分する必要があります。

③完全親会社の株主の会計処理

完全親会社の株主は株主交換にかかわらないので、会計処理は発生しません。ただし、親会社の持分比率が株式交換によって大きく変わった場合は、例外的に株主の会計処理が生じる場合もあります。

④完全子会社の株主の会計処理

完全子会社の株主に交付された対価が株式のみの場合、会計処理は発生しません。株式交換後に株式を清算したとみなされた場合は、会計処理が発生することもあります。

【関連】株式交換の仕訳・会計処理!親会社・子会社の違い、のれんの処理方法も解説

8. 株式交換の税務処理

株式交換の税務処理は、適格株式交換に該当するか、非適格株式交換に該当するかで変わります。この章では、ケースごとに発生する税務処理を解説します。

原則として求められる税務

株式交換が行われる際に税務上問題となるのは、「子会社化される会社Bの株主の取引」と「親会社となった会社Aが取得した資産」です。

  • 会社Bの株主:会社Bの株式を譲渡し、会社Aの株式を得る
  • 会社A:会社Bを通じて会社Bの資産を間接的に取得する

税務の原則は発生した利益と損益が課税計算の対象で、株式交換でもそれは同様です。以下で詳しく解説します。

株式の譲渡損益に課される税金

会社Bの株主は、株式取引による譲渡損益が発生し、譲渡損益の計算方法は、株主が個人の場合と法人の場合で異なります

【個人の場合の計算方法】
譲渡損益=譲渡価格(株式交換直時のA株式の株価)-取得価格(B株式の購入価格)

【法人の場合の計算方法】
譲渡損益=譲渡価格(株式交換直時のA株式の株価)-B株式の帳簿価格

譲渡損益に、個人の場合は譲渡所得課税が、法人の場合には法人税などが課されるので、詳細は税理士に相談すると良いでしょう。

会社Aが非上場の場合は、国税庁の通達などにしたがって株価を決定します。通達の内容は、株式の種類によって異なりますが、純資産額や最近の売買価格をもとに定められるケースがほとんどです。

国税庁のホームページに、譲渡した株式などの取得費における考え方の解説があるので、参考にしてください。

資産の評価損益に課される税金

株式交換を行うと、会社BのBSが会社AのBSに連結されます。このとき、子会社である会社Bの総資産を時価評価しなければなりません。

総資産の時価が簿価を上回った場合でも下回った場合でも、BSの借方と貸方がバランスしなくなります。税務上、このずれを損益として認識する処理を行います。

下記が株式交換の際に時価評価の対象になる資産ですが、一部例外もあるので留意が必要です。

  • 固定資産
  • 土地(土地の上に存する権利を含み、固定資産に該当するものを除く)
  • 有価証券
  • 金銭負債
  • 繰延資産

9. 株式交換の税務上の注意ポイント



株式交換においては、税務手続き上の観点でも留意すべき点があります。株式交換は、適格株式交換と非適格株式交換の2種類に分けて税務処理を行わなければなりません

適切な手続きを進めることができるよう税務処理については、税理士や会計士に相談することが推奨されます。

非適格株式交換における課税


非適格株式交換においては、買収された子会社やその株主に課税される可能性があります。非適格株式交換とは、親会社が子会社を取得する際に、法定要件を満たしていない場合に適用される税務上の区分です。

例えば、買収後の子会社の資産が売却された場合や、株主が株式を譲渡した場合には、譲渡益が発生し、それに対して課税される可能性があります。また、株式交換によって得た株式を売却した場合にも、譲渡益が発生し課税されることになります。
 

適格株式交換における課税



適格株式交換では、法人税と所得税の課税が免除されますが、反対意見によるスクイーズアウトには注意が必要です。適格株式交換においては、適格要件を満たす限り、親会社及び子会社の法人税、子会社の旧株主に対して所得税は課税されません。

ただし、反対意見によるスクイーズアウトが行われた場合は、譲渡益が発生し、課税対象となります。スクイーズアウトとは、株式交換の提案に反対する少数株主の株式を親会社が強制的に取得することです。

この場合、取得された株式の時価と取得価格の差額が譲渡益として課税されます。したがって、適格株式交換においては、スクイーズアウトに対するリスクを考慮し、事前に対策を講じることが重要です。

特例的な税務処理

一定の要件を満たす株式交換は「グループ法人税制による特例」「組織再編税制による特例」「買い手企業株式のみが交付されるケース」となり、子会社の元株主や親会社が税務メリットを得られます。

グループ法人税制は、完全子会社支配関係間で株式交換が行われる場合に適用されます。税務メリットは、売り手企業における資産の時価評価の免除です。簡易株式交換でもグループ法人税制の利用ができます。

買い手企業株式のみが交付されるケース

子会社株主への対価が現金を含まず親会社の株式のみの場合には、子会社株主は税務上のメリットを受けられます。譲渡損益が発生しない特例です。

個人株主の場合は株式の譲渡がなかったものと扱われ、法人株主の場合は売り手側株式の帳簿価格で買い手企業側の株式を取得したと扱われます。

国税庁のホームページに、株式交換により株式を譲渡したときの譲渡所得などの特例における解説がありますので、参考にしてください。

組織再編税制が適用されるケース

組織再編税制は、下記表の条件を満たす場合に売り手企業における資産の時価評価が免除されます。簡易株式交換では組織再編税制は利用できません。
 

  売り手側の株式を100%保有 売り手側の株式を50%以上かつ100%未満保有 支配関係なし
(事業共同化目的の株式交換)
支配関係の継続 100%の支配関係の継続見込み 50%超の支配関係の継続見込み 株式交換後、完全親子関係が維持される見込み
従業員引継ぎ - 従業員の80%以上の雇用継続見込み 従業員の8割以上を雇用継続見込み
事業の継続 - 主要事業の継続見込み 主要事業の継続見込み
事業の関連性 - - 双方の事業にあり
事業規模の相当性/役員の経営参画 - - 買い手企業の事業規模(売上、従業員数、資本金など)が売り手企業の500%以内
または取引後、売り手企業における特定役員の1人以上が続投
株式保有の継続 - - 売り手企業の支配株主が、交付を受けた買い手企業株式を継続して保有する

適格株式交換とは

株式交換制度には、税制適格要件が設けられており、適格要件を満たすか否かで税務の扱いを分けています。適格要件を満たす株式交換が「適格株式交換」、適格要件を満たさない株式交換が「非適格株式交換」です。

適格株式交換の要件は、企業間の支配関係などにより異なりますが、主に以下の項目です。

  • 金銭等不交付要件(株式以外の対価が交付されないこと)
  • 継続保有要件(株式交換後の支配関係などが維持されること)
  • 事業移転要件(株式交換後に従業員の8割以上が同じ業務に従事すること)
  • 事業継続要件(株式交換後にも主要な事業が継続して営まれること)

適格株式交換の要件を満たす場合、完全親会社は株式交換の取得価額を帳簿価格または簿価純資産で計算します。完全子会社の株主は、対価が株式のみの場合は譲渡がなかったと扱われます。

適格株式交換の税務は、表のとおりです。
 
完全親会社 取得価額は簿価または簿価純資産で算出
完全子会社 税務処理なし
完全親会社の株主 税務処理なし
完全子会社の株主 ・株式のみの場合非課税
・株式以外の交付がある場合譲渡損益が発生

適格株式交換の場合

適格株式交換の財務は、以下のとおりです。

完全親会社

適格株式交換における完全親会社株主の税務は、株主の人数によって変わります。

株式交換前の子会社の株主が50人未満
株式交換前の子会社における株主が50人未満の場合、株式の取得価額をもとに算出します。このとき、完全親会社に税金は発生しません。

株式交換前の子会社の株主が50人以上
株式交換前の子会社における株主が50人以上の場合、簿価純資産をもとに算出します。簿価純資産とは、帳簿の資産を企業価値として算出する方法です。完全親会社に税金は発生しません。

完全子会社

完全子会社の場合、株式交換の取引を実際に行うのは株主なので、完全子会社に課税は発生しません。自己株式を保有している場合は処理が必要です。

完全親会社の株主

完全親会社の株主は株式交換にかかわらないので、課税は発生しません

完全子会社の株主

完全子会社の株主は、交付された対価が株式のみの場合、譲渡損益の繰延が可能です。譲渡損益の繰延とは、グループ企業内で資産を移動する際に適用される仕組みです。完全子会社の株主には課税されません

非適格株式交換とは

非適格株式交換とは、適格株式交換の条件に当てはまらない株式交換のことです。非適格株式交換では、完全親会社は完全子会社の株式を時価で取得します。完全子会社は、土地や有価証券など一部の資産を損金算入する必要があります。

非適格株式交換での税務をまとめると、表のとおりです。
 

完全親会社 取得価額を時価で算出
完全子会社 時価評価資産の損金算入が必要
完全子会社の株主 ・株式のみの場合非課税
・株式以外の交付がある場合譲渡損益が発生

非適格株式交換の場合

非適格株式交換の税務は、以下のとおりです。

完全親会社

非適格株式交換の場合、完全親会社は時価で完全子会社の株式を取得します。このとき、完全親会社に課税は発生しません

完全子会社

完全子会社は、固定資産や有価証券など、特定の資産が時価評価され、課税が発生します。グループ企業内における非適格株式交換の場合は非課税です。

完全親会社の株主

完全親会社の株主は株式交換にかかわらないので、課税は発生しません

完全子会社の株主

非適格株式交換では、完全子会社の株主は保有株式を時価で譲渡するので、簿価と時価の差額に対して課税されます。適格・非適格に関係なく、対価が株式のみの場合は譲渡損益の繰延が可能になり、課税されません

10. 株式交換を使ったM&Aの成功事例【2024年最新】

ここからは実際に株式交換を行った企業の事例を解説します。

  1. 京成電鉄による株式交換
  2. EduLabによる株式交換
  3. 日本電産による株式交換
  4. アイビーシーによる株式交換
  5. ユニーによる株式交換
  6. パナソニックによる株式交換
  7. フェイスによる株式交換
  8. オイシックスによる株式交換
  9. RVHによる株式交換
  10. 三菱ケミカルHDによる株式交換
  11. クスリのアオキによる株式交換
  12. セブン&アイHDによる株式交換
  13. ユーグレナによる株式交換

①京成電鉄による株式交換

京成電鉄と関東鉄道(関鉄)は、2024年4月の取締役会で、京成電鉄を完全親会社、関鉄を完全子会社とする株式交換を決定しました。この決議は、6月に開催される関鉄の定時株主総会で承認された後、9月1日に効力を発生する予定です。

京成電鉄は、1932年に直営のバス事業を開始し、1933年には不動産業にも参入しました。さらに1950年代以降、流通業やレジャー・サービス業にも進出し、現在は83社の子会社と6社の関連会社からなるグループを構成しています。

関東鉄道は、鉄道とバスによる地域公共交通を提供し、11社の子会社とともに関東鉄道グループを形成しています。

両社はこれまで、中・長期経営計画の策定と実行を通じて企業の体質強化を図り、競争力を高めてきました。しかし、将来の不透明な経営環境の中で持続的な成長を実現し、地域に根ざした企業として社会的責任を果たすためには、関東鉄道が京成電鉄の完全子会社になることが最良の選択と判断しました。

これにより、両社は強固な協力関係を構築し、スケールメリットや事業ノウハウなどの経営資源を活用して企業価値を向上させることを目指しています。

京成電鉄株式会社による関東鉄道株式会社の完全子会社化に関する 株式交換契約締結及び臨時報告書提出のお知らせ

②EduLabによる株式交換

2020年4月、EduLabは株式交換により教育デジタルソリューションズを完全子会社化しています。M&Aの目的は、教育デジタルソリューションズの強みである大学入試広報エリアでのメディア事業を強化し、新サービスを創り出すことです。

両社は2020年に株式交換を締結し、株式交換比率は、EduLabの株式211株に対して教育デジタルソリューションズの普通株式1株となりました。

簡易株式交換による株式会社教育デジタルソリューションズの完全子会社化に関するお知らせ

③日本電産による株式交換

2019年12月、日本電産が日本電産エレシスを完全子会社化しました。もともと日本電産エレシスの株式95%は日本電産が持っていて、残り5%も日本電産の関連会社が保有していたので、典型的なグループ内組織再編といえます。

この取引により、日本電産は日本電産エレシスの株式100%を保有する株主になり、完全子会社化を達成しました。本件株式交換は簡易株式交換によって行われたため、日本電産は自社株式ではなく現金1,560百万円を対価として交付しています。日本電産による日本電産エレシスの完全子会社化は、両社のシナジー強化を図ることが目的です。

日本電産株式会社による日本電産エレシス株式会社の完全子会社化に関する株式交換契約締結に関するお知らせ

④アイビーシーによる株式交換

2019年4月、IT関連サービスを展開するアイビーシーは、サンデーアーツを簡易株式交換により完全子会社化しました。簡易株式交換とは、簡易手続きによって株主総会での承認を必要とせずに株式交換を行う手法です。株式交換比率はアイビーシー株式1株に対して、サンデーアーツ株式410.51株でした。

アイビーシーはサンデーアーツのブロックチェーン開発に関する最先端の技術力を取得することで、高度なIT技術を用いた新たな事業を生み出すことを目的としています。

簡易株式交換により株式会社サンデーアーツを完全子会社化

⑤ユニーによる株式交換

ユニーは2018年5月、UCSを株式交換によって完全子会社化しました。UCS株主への対価は、27.8%のプレミアム価格が加えられています。ユニーはショッピングモールや総合スーパーなどを運営しています。

電子マネーやクレジットカードなどの金融システムを運営しているUCSを完全子会社化することで、カード会員の獲得など、顧客基盤の強化を進めていく計画です。

ユニー株式会社による株式会社UCSの株式交換による 完全子会社化に関するお知らせ

⑥パナソニックによる株式交換

パナソニックは2017年10月、パナホームを株式交換によって完全子会社化しました。パナソニックは総合電機メーカーの老舗企業です。パナホームは、長年パナソニックグループの住宅部門を支えてきました。

株式交換比率はパナソニックの株式1株に対してパナホームの株式0.8株です。当時、パナホームの時価総額は約1,900億円で、パナソニックは株式交換前から半数以上の株式を保有していました。

パナホームはこれまでもパナソニックグループの一員として住宅部門に貢献してきましたが、さらにパナソニックグループ全体として住宅関連事業へ進出するために、今回の株式交換に至っています。

パナホーム株式会社の社名およびブランドの変更について

⑦フェイスによる株式交換

2017年8月、音楽配信会社のフェイスは連結子会社であった老舗レコード会社の日本コロムビアを株式交換により完全子会社化しました。本株式交換は、日本コロムビア株式0.59株に対して、フェイス株式1株を交付する比率で行われました。

本株式交換の目的は、組織運営の柔軟性を確保し、事業戦略の一元化と意思決定のスピードアップ、ノウハウ・人材などリソースの効率的な活用です。

⑧オイシックスによる株式交換

オイシックスは2017年3月、合併による経営統合に先立ち、大地を守る会との株式交換を行いました。株式交換比率は、オイシックスの株式1株に対して大地を守る会261株です。オイシックスと大地を守る会は、主に安全な野菜を宅配する事業を営んでいます。

野菜宅配サービスでは、らでぃっしゅぼーやが高いシェアを持っていますが、両者の経営資源を合わせることで、シェア拡大と収益率の向上を目指しました。株式交換の後、両者は合併し、社名をオイシックス・ラ・大地と変えています。

オイシックス株式会社と株式会社大地を守る会の経営統合(合併)に向けた 株式交換に関するお知らせ

⑨RVHによる株式交換

RVHは2017年2月、たかの友梨ビューティクリニックを運営する不二ビューティを簡易株式交換によって完全子会社化しました。株式交換比率は、RVHの株式1株に対して不二ビューティが44株です。

RVHはまず株式譲渡によって不二ビューティ株を取得し、残りを株式交換によって取得しました。株式譲渡とは、企業買収でよく用いられるM&A手法です。RVHは美容脱毛サロン「ミュゼプラチナム」を運営しています。

知名度の高いたかの友梨ビューティクリニックをグループ企業として展開することで、美容業界での競争力向上を図っています。

お知らせ

⑩三菱ケミカルHDによる株式交換

三菱ケミカルホールディングスは2017年1月、子会社の三菱化学を通じて、三角株式交換による日本化成の完全子会社化をしました。株式交換比率は、三菱ケミカルホールディングスの株式1株に対して日本化成0.21株です。

日本化成における当時の時価総額は160億円でした。三菱化学と日本化成は1960年の資本提携から長年ともに事業を行ってきましたが、さらなる事業シナジー創出のため、今回の三角株式交換に至っています。

⑪クスリのアオキによる株式交換

クスリのアオキは2016年11月、クスリのアオキホールディングスを完全親会社として、株式交換により持株会社体制に移行しました。株式交換比率は、クスリのアオキホールディングスの株式1株に対してクスリのアオキ株式1株です。

クスリのアオキにおける当時の時価総額は、約2,000億円でした。競争が激化しスピードが求められるドラッグストア業界において、クスリのアオキは意思決定を迅速に行うため、株式交換によって親会社に監督機能、子会社に事業遂行機能を分離しています。

株式交換による持株会社体制への移行に関するお知らせ

⑫セブン&アイHDによる株式交換

セブン&アイ・ホールディングスは2016年11月、完全子会社のセブン&アイ・ネットメディアを通じて、ニッセンホールディングスを三角株式交換によって完全子会社化しました。

三角株式交換とは、当事例でいうと、ニッセンホールディングスの完全親会社となるセブン&アイ・ネットメディアの株式ではなく、親会社であるセブン&アイ・ホールディングスの株式を用いて株式交換を行う手法です。

株式交換比率は、セブン&アイ・ホールディングスの株式1株に対して、ニッセンホールディングス株式0.015株でした。ニッセンホールディングスにおける当時の時価総額は、約44億円でした。セブン&アイ・ネットメディアは、セブン&アイグループのIT・サービス事業を担っている中間持株会社です。

セブン&アイ・ホールディングスは、通販業界の競争激化により深刻な赤字状態に陥っていたニッセンホールディングスを救うとともに、販売チャネルを増やして他者との差別化を目指して株式交換を行いました。

株式会社セブン&アイ・ホールディングスの完全子会社である株式会社セブン&アイ・ネットメディア の株式交換による株式会社ニッセンホールディングスの完全子会社化に関するお知らせ

⑬ユーグレナによる株式交換

ユーグレナは2015年9月、エポラを簡易株式交換によって完全子会社化しました。ユーグレナは、ユーグレナ(食用ミドリムシ)の研究開発を行っている会社です。

エポラはユーグレナの製品を販売し、売上のほとんどをユーグレナが占めています。株式交換によってユーグレナは事業のコスト削減を実現でき、エポラはユーグレナのブランド力を活用できます。

簡易株式交換公告
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11. 株式交換によるM&Aの相談先

株式交換の手続きは株主や債権者への対応など、煩雑で時間がかかり、株式交換比率の算定は専門家による綿密な調査分析が必要です。M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーに依頼をすれば、煩雑な株式交換の手続きを一貫して行えます。

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12. 株式交換のまとめ

株式交換は主にグループ企業の組織再編手法として用いられますが、実施を検討する際はメリットやデメリットを事前に把握することが必要です。株式交換を行う際の手続きは煩雑なため、あらかじめ流れを確認しておきましょう。

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