2021年11月08日更新
株式取得時にかかる税金一覧まとめ!計算方法も解説!
株式取得時にかかる税金は、取得するプロセスやその他条件により課税名目や計算方法が変わるので、慣れないとわかりにくい部分もあります。そこで本記事では、株式取得時にかかる税金一覧とその計算方法、株式取得時にかかる税金の注意点について解説します。
目次
1. 株式取得とは
株式取得とは、企業が発行する株式の大部分を取得して買収するM&A手法のことです。
個人が投資目的で株式を買ったり、親族の株式を相続したりするのも株式の取得ではありますが、「株式取得」という用語は、企業買収のことをさすのが一般的です。
株式を取得するシーン
企業や個人が株式を取得するシーンはさまざまであり、目的もそれぞれ異なります。この章では、株式を取得するシーンの中から主なものを5つ解説しましょう。
【株式を取得する主なシーン】
- 投資による取得
- M&Aによる取得
- 相続による取得
- 贈与による取得
- 新株予約権などで取得
投資による取得
投資による株式の取得は、売却益や配当などで利益を得ることを目的として行われます。
上場株式の株価は市場で常に変化するので、株価が安いときに買って高くなったときに売れば、その差額が利益です。株式は所有しているだけでも、配当金や株主優待などの利益を得られます。
M&Aによる取得
M&Aによる株式取得とは、企業を買収するために、その企業が発行する株式の全てまたは大半を買い取ることです。
発行株式の50%以上を取得すると取締役を選任できるので、事実上その会社の支配権を得ることになります。
買収する企業が発行する株式を100%取得すると完全子会社化、50%以上取得すると子会社化となります。
相続による取得
親族が持っていた株式の相続で、株式を取得するケースもあります。預貯金の相続は、妻が2分の1で子供たちが残りを均等に分けると定められていますが、株式の相続にはこのような規定はありません。
家や土地など、他の遺産とのバランスを見ながら、遺産分割協議で誰が相続するかを決めます。
贈与による取得
個人や企業から株式を贈与されるケースもあります。相続税対策のため、親が存命のうちに早めに子供に株式を譲る「生前贈与」がよくある事例です。
他にも、会社の事業を後継者に譲る「事業承継」のために、後継者に株式を贈与するケースもあります。贈与先は、個人の場合もあれば資産管理会社などの法人の場合もあります。
新株予約権などで取得
新株予約権とは、あらかじめ定められた価格で株式を購入できる権利のことです。例えば1,000円で株式を購入できる新株予約権を持っていると、そのときの株価が1,000円以上だったとしても、1,000円で株式を購入できます。
新株予約権は、主に資金調達や役員報酬、敵対的買収の阻止などの目的で発行されます。
2. 株式取得時にかかる税金一覧と計算方法
株式取得時にかかる税金は、どのような形で取得したか、個人か法人か、上場株式か非上場株式かなど、さまざまな条件によって変わってきます。
株式取得する際は、それぞれのケースにおける税金の計算方法を正しく知っておくことが重要です。株式取得時にかかる税金には主に以下の6つがありますが、これら全ての税金がかかることはなく、このうちの1つか2つが課税されます。
この章ではこれらの税金について、課税されるケースと税金の計算方法を解説しましょう。
【株式取得時にかかる税金】
- 相続税
- 贈与税
- 所得税
- 住民税
- 法人税
- 寄付金課税
①相続税
相続税とは、親などの親族が亡くなり、その遺産を相続したときにかかる税金をいいます。
相続税の対象となる財産は、家や土地などの不動産・預貯金や株式などの金融資産・その他家具などの物品・著作権や特許権などです。
相続税がかかる株式取得とは
株式を相続して、さらに相続した財産の総額が基礎控除額を超えた場合は、超えた部分に対して相続税が課税されます。
相続した株式の額が基礎控除以下でも、預貯金などを含めたトータルの財産が基礎控除を超えていると相続税がかかるので注意が必要です。
相続税の計算方法
相続税の基礎控除額は、相続人が1人の場合は3,600万円、2人の場合は4,200万円、3人の場合は4,800万円と、相続人が1人増えるごとに600万円ずつ増えていきます。
つまり、最低でも3,600万円以上の相続財産がない場合は、相続税を収める必要はありません。
株式の相続額の計算方法は、上場株式の場合は株価の終値などから額を算定し、非上場株式の場合は会社の純資産や類似企業の株価などから額を算定します。税率は累進課税で10%から55%となるのです。
②贈与税
贈与税とは、個人から財産を譲り受けたときにかかる税金です。贈与したのが法人の場合は、贈与税はかからない代わりに所得税がかかります。現金や株式を始めとする全ての財産が贈与税の対象です。
贈与税がかかる株式取得とは
相続税対策として株式を生前贈与した場合は、基礎控除を超えた部分に対して贈与税がかかります。
基礎控除を超えないように少額ずつ贈与すれば、後でまとめて相続するより節税になるでしょう。例えば、1人に対して何年にも分けて贈与したり、複数人に少額ずつ贈与したりする方法があります。
贈与税の計算方法
贈与税の基礎控除額は110万円です。110万円を超えた部分に対して贈与税がかかります。税率は累進課税で10%から55%です。
なお、直系尊属からの贈与は特例税率となるため、税率や控除額が多少優遇される形になります。
③所得税
所得税とは個人の所得に対して課せられる税金です。会社員やアルバイトの給与所得・自営業者の事業所得・株式の配当所得などが課税対象となります。
所得税がかかる株式取得とは
株式を売却して利益を得た場合や、配当や剰余金を得たときなどに所得税がかかります。直接株式を購入していなくても、投資信託などで運用して利益が出た場合には、所得税がかかるのです。
所得税の計算方法
株式の所得税の税率は、総合課税か分離課税かで異なり、総合課税の場合は累進課税で5%~45%、分離課税の場合は一律で15.315%となります。
国内株式の配当に関して、総合課税で確定申告した場合は配当控除を受けられますが、申告分離課税の場合は配当控除が適用されないので注意しましょう。
④住民税
住民税とは、自分が住んでいる都道府県や市町村に収める税金です。住民税には「所得割」と「均等割」の2種類があります。
所得割は、所得に対して課せられる税金で、総合課税では道府県民税と市町村民税を合わせて10%になります。
一方の均等割は、所得金額にかかわらず課せられる税金で、税額はおおよそ数千円程度です。
住民税がかかる株式取得とは
住民税がかかる株式取得のケースは所得税の場合と同じです。株式を売却して利益を得たり、配当や剰余金を受けたりすると課税されます。
住民税の計算方法
所得税の場合と同様に、株式の住民税の税率は、総合課税か分離課税かで異なります。総合課税の場合は一律10%、分離課税の場合は一律5%です。
所得税と同様に、総合課税で確定申告した場合は、配当控除を受けられます。
⑤法人税
法人税とは、会社など法人の所得に対して課せられる税金です。法人税には、会社単位で課税する通常の法人税と、子会社を含めた企業グループに課税する「連結所得に対する法人税」があり、どちらかを選択できます。
社団法人や学校法人など営利目的ではない公益法人は、原則として非課税です。
法人税がかかる株式取得とは
M&Aで株式譲渡した場合や、投資信託で運用益を得たときなど、法人が株式で所得を得ると法人税が課されます。
時価よりも安い価格で株式譲渡した場合、安く手に入れたことが利益とみなされ、譲渡を受けた側に法人税が課されることもあるでしょう。
法人税の計算方法
株式の法人税は他の事業所得と損益通算して計算します。例えば、事業が赤字で株式投資がプラスの場合は、株式の所得を事業の赤字と相殺して税額を抑えられます。
法人税率は、中小法人か公益法人かなどによって多少変動しますが、一般的な普通法人の場合は23.4%です。
法人の所得には、法人税以外に地方法人税・法人住民税・法人事業税が課されるので、トータルの税率(法人実効税率)は約37%となります。
⑥寄付金課税
法人が政治団体などに寄付をした場合、基本的には経費として損金に算入され、課税対象にはなりません。
しかし、寄付金を無制限で経費として認めてしまうといたずらな節税対策につながるので、一定以上の金額の寄付は法人税が課されます。
個人の寄付は、寄付金控除で所得から控除するか、税額控除の適用を受けるかを選択可能です。
寄付金課税がかかる株式取得とは
法人が株式を寄附した場合、寄付金控除を超えた額に対して、法人税が課せられます。
株式を時価より高く売却した場合、その差額は寄附とみなされ寄附金課税がかかります。差額が損金に算入できる限度額を超えている場合、超えた部分に対して法人税が課せられるでしょう。
寄付金課税の計算方法
国や地方自治体、日本赤十字社などへの寄付金(指定寄付金)は、全額が損金に算入され課税されません。指定寄付金とは、公益性が高いとして国が承認している寄付金のことです。
その他一般の寄付金の場合は、資本金と所得額をベースに損金算入限度額が算定され、それを超えた部分に対して法人税が課せられます。
3. 株式取得時にかかる税金の注意点
株式取得にかかる税金の制度には複雑な部分やわかりにくい部分もあります。正しい確定申告をするためにも、株式取得時にかかる税金の注意点を理解しましょう。
①個人でも確定申告が必要
株式取得で利益を得た場合、たとえ個人でも確定申告をする必要があります。
特に会社員の方は確定申告をする習慣がないことも多いので、うっかり申告を忘れてしまったり、自分には関係ないと勘違いしたりするケースもあるかもしれません。
「確定申告がよくわからない」「面倒である」といった方は、特定口座で証券会社に源泉徴収してもらうことをおすすめします。
②個人と法人とでは課税名目が変わる
株式取得にかかる税金の課税名目は、個人か法人かによって変わります。基本的に個人の場合は所得税、法人の場合は法人税がかかり、それぞれ税率が違います。税率を勘違いして、いざ確定申告の際に思った以上の税金を取られて困ることのないようにしましょう。
③取得額と適正時価との差額で課税名目が変わる
株式譲渡や贈与などで株式取得すると、適正価格より安く株式が手に入ることがあります。しかし、この差額は利益とみなされて課税対象になることがあるのです。
例えば株式譲渡では、個人から安く株式取得した場合はみなし譲渡、法人からの場合はみなし配当として、それぞれ所得税がかかります。そして安く譲渡された場合はみなし譲渡として贈与税がかかります。条件によって課税名目が変わるので注意しましょう。
④株式の取得価額が不明のときは確認する
株式の税金を計算するときは、株式の購入価格に手数料などの付随費用を加えた「取得価額」を使います。ここを間違えて、株式の購入価格(株価×株数)を使うと税額が変わってしまうので注意が必要です。
証券会社で上場株式を取得する場合は、取得価額は株式の購入価格に手数料と消費税を加えたものなので、そこまで難しくはありません。
しかし、非上場株式を相対取引で取得したときなどは、取得にかかった交通費や謝礼金などが取得価額に含まれることになり、計算が複雑になります。
取得価額がはっきりわからない場合は適当に算定せず、必ず正しい額を確認するようにしましょう。
証券会社に確認する
取得価額は株式取得時に証券会社から交付される取引報告書を見ればわかります。取引報告書を紛失しても証券会社は取引データを保存しているので、問い合わせれば取得価額を記した書類(顧客勘定元帳)を手に入れることが可能です。
発行済株式券を確認する
証券会社に確認してもわからない場合は、発行済株式券に記載されている取得日を確認し、ネットの投資情報サイトや当時の新聞などで株価を調べる方法もあります。
⑤株式の譲渡益は利益に対して課税される
株式の譲渡益は譲渡価格全体ではなく、譲渡価格から取得価額を引いた利益に対して課税されます。適正価格より安く譲渡した場合、その差額も利益とみなされるので注意が必要です。
⑥株式は持っているだけでも課税対象
株式の利益には、売却によるもの以外に配当金(インカムゲイン)もあり、当然配当金も課税対象となります。株式を長期保有する場合は、配当金の確定申告を忘れないようにしましょう。
⑦確定申告不要の特例がある
株式で利益を上げた場合は、原則的に申告が必要となります。しかし、中には確定申告が不要なケースもあるのです。どのようなケースであれば不要になるのか、詳しく説明しましょう。
他の申告義務要件に該当せず譲渡所得が20万円以下
会社員で給与の支払いを1カ所から受けており、かつ年収が2,000万円以下の場合、20万円以下の株式の利益は確定申告する必要がありません。
給与以外の所得とは、株の利益やその他の資産運用、副業を行っている場合、それらの所得も含まれます。ただし、不要となるのは確定申告のみであって、住民税の申告が不要になるわけではありません。
一般的に確定申告や年末調整によって所得税が確定された場合、税務署は各自治体へこれを知らせるため、別途住民税を申告するといったことはほとんど発生しません。
そのため、確定申告がないと住民税も必要がないと勘違いをしてしまうケースがあるのです。なお源泉徴収ありの特定口座では、双方の税額が自動的に差し引かれるため、手続きが面倒な方は源泉徴収ありの特定口座を選択すると良いでしょう。
源泉徴収ありの特定口座だけを運用している
ただし、特定口座で源泉徴収ありを選択している場合は、20万円以下でも源泉徴収されてしまうので注意しましょう。
証券会社の口座には一般口座と特定口座があり、さらに特定口座は「源泉徴収あり」と「源泉徴収なし」を選択できます。
特定口座で源泉徴収なしの場合は、証券会社が発行する年間取引報告書をもとに確定申告が必要です。一般口座の場合は年間取引報告書が発行されないので、損益の計算も自分で行い確定申告もしなければなりません。
NISA口座だけを運用している
NISA(少額投資非課税制度)が2014年から始まり、2016年には年間の非課税枠が100万円から120万円へと引き上げられました。
NISAは名称に非課税と付いているように、口座開設から5年間は非課税期間となり、株式の売却益や配当金に税金はかかりません。
年間で得た利益が配当金だけである
年間で得た利益が配当所得のみである人は、確定申告をしても構わないとされています。申告を行った場合は手続きに手間がかかるため、配当控除などの特典が受けられるでしょう。
4. 株式取得の税金と確定申告について
ここでは、株式取得の税金と確定申告を解説しましょう。株式取得で税金が発生するのは、利益があったときで、一律20%(所得税15%、住民税5%)が課税されます。株式取得で生じた税金は、基本的に確定申告を行って支払います。
確定申告の方法
確定申告の際は、以下の書類を事前に用意しましょう。
- 源泉徴収票
- 特定口座年間取引報告書
- 株の取引に要した経費証明書類
源泉徴収票は会社から渡されるもので、特定口座の取引報告書は金融機関から送付されるものです。経費証明書類は、自身で用意しなければならないため、領収書などは保管するようにしましょう。
確定申告書の作成にあたっては、国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用するのをおすすめします。
5. 株式取得の税金と損益通算・繰越控除について
株式は利益が出ることもあれば、株価が下がって損失が出ることもあります。損失が出た場合はその損失額を確定申告しておくことで、来年以降利益が出たときに損失と相殺して節税できます。
この繰越控除は最大3年間可能で、申告しなければ控除できません。損失の申告は義務ではありませんが、必ず行うようにしましょう。
繰越控除を活用するためには、毎年確定申告を行うのが前提です。株にかかる税金を少しでも抑えたい人はと、毎年確定申告は行うのが大切です。
配当所得にも損益通算・繰越控除が適用される
損益通算や繰越控除に適用されるのは譲渡所得だけでなく、配当所得も含まれます。したがって配当に対しても、株の売却損を割り当てて相殺するのが可能となります。確定申告を行えば、配当所得は配当控除の適用が受けられるでしょう。
確定申告を行うと、総合課税などの税率の適用を受けるのも可能であり、総合課税による税率は累進課税となっているため所得が少ないほど節税効果が高いです。
株による利益が少ない場合でも軽減税率などの適用される可能性もあるため、確定申告を行うのがおすすめです。
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7. 株式取得の税金まとめ
株式取得時にかかる税金は取得するシーンによって異なり、また、個人か法人、金額の大小など、さまざまな要因でも変わります。
株式取得する際は、どの税金がかかるのかを計算方法とともに理解しておくことが大切です。
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