2025年04月08日更新
石川県・金沢市の事業承継動向と公的支援策【成功事例も紹介】
金沢市を擁する石川県では、少子高齢化に伴う後継者不足が大きな課題です。近年、官民を挙げて伝統産業を守り地域経済を維持するため、事業承継支援に積極的に取り組んでいます。この記事では、石川県・金沢市の事業承継(M&Aを含む)の最新動向や企業事例、公的支援策について解説します。
目次
1. 石川県・金沢市の産業・経済状況
石川県が発表した「石川県の産業を取り巻く状況・課題【基礎データ】」によると、石川県の人口は1,111,466人(令和5年6月現在)ですが、2040年頃には100万人を割ると予想されています。石川でも少子高齢化が進んでおり、後継者不在の課題を抱えている会社も増えているのです。
石川県は製造業が基幹産業です。主に生産用機械、電子部品・デバイ ス、繊維工業が盛んです。繊維産業は、昔から「繊維王国いしかわ」として全国に広く知られており、繊維産業とそれを支える繊維機械が発展してきました。また、伝統工芸が受け継がれており、加賀友禅や九谷焼など国指定の伝統工芸が有名です。
石川県では、県内の支援機関と協力して、起業家、学生、ベンチャー企業などを積極的に支援しています。そのため石川県は、新規参入や成長の可能性が十分見込めるでしょう。また、高齢化に伴い、後継者確保のためのM&Aは増えてくることが予想されます。
参照:石川県「石川県の産業を取り巻く状況・課題【基礎データ】」
2. 石川県・金沢市のM&A・事業承継の動向
石川県・金沢市のM&A・事業承継の動向を3つの観点から解説します。
後継者不在率は6年ぶり改善の56.0%
2024年の石川県内の後継者不在率は56.0%となり、前年より2.5ポイント低下しました。6年ぶりに改善が見られたものの、コロナ前の2019年と比較すると依然として高い水準です。
官民の相談窓口の普及や支援メニューの拡充により、小規模事業者への支援が広がったことが改善要因と考えられます。しかし、全国平均を上回る状況は続いています。事業承継を中断・見直すケースもあり、特に高齢の経営者では計画が頓挫する傾向が強まっています。
参考:帝国データバンク「石川県「後継者不在率」動向調査(2024 年)」
休廃業・解散件数は能登地震の影響により昨年比46%超の増加
2024年に北陸3県で休廃業・解散した企業は1370件に達し、前年より22.7%増加しました。これは2年連続の増加で、2000年の調査開始以来最多となりました。特に能登半島地震の影響を受けた石川県では512件と全体の約4割を占め、前年より46.7%増加しています。さらに、原材料費や人件費の上昇も企業の休廃業を後押しする要因となりました。
参考:日本経済新聞「県休廃業が最多 昨年22%増 能登地震の影響で 民間調べ」
石川県企業によるM&A件数
2021年のM&A支援機関の報告によると、石川県の企業が関与したM&Aは、売却(譲渡)案件が34件、買収(譲受)案件が38件でした。これは、北陸地方の他県と比較しても高い水準にあります。例えば、富山県では売却31件・買収24件、福井県では売却13件・買収17件と、いずれも石川県を下回っています。このデータから、石川県の企業がM&Aを積極的に活用していることがうかがえます。
参考:中小企業庁「M&A支援機関登録制度実績報告等について」
3. 石川県・金沢市近郊のM&A・事業承継の案件一覧
ここでは、石川県・金沢市近郊のM&A案件をご紹介します。
【北陸地方/安定した事業展開】警備・点検業
石川県・金沢市近郊のM&A案件は、北陸地方で2号警備を中心とした警備業を展開する警備・点検業です。後継者不在を理由に事業承継を検討しており、2024年中の譲渡を希望しています。
売上高 | 5000万円〜1億円 |
営業利益 | 〜1000万円 |
総資産額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡希望額 | 1000万円〜5000万円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【業歴80年以上/北信越エリア】40種以上の商品を展開する製茶業・仏事関連業
石川県・金沢市近郊のM&A案は、茶葉の仕入れから選別、ブレンドまで一貫して行う製茶業です。地域では一定の知名度があり、各小売店への販路を確保しています。
売上高 | 2.5億円〜5億円 |
営業利益 | 赤字経営 |
総資産額 | 5億円〜7.5億円 |
譲渡希望額 | 5億円〜7.5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
【北陸三県/高収益】産業用機械製造業
ユーザーに合わせたカスタムメイドな製造を得意としています。協力会社と一体で設計から製作まで一貫対応しています。
大手機械メーカーとの取引もあり、エンドユーザーの領域は半導体・自動車・食品等多岐にわたります。設立から右肩上がりで成長しており、自己資本も一定の水準を確保している点も強みです。
売上高 | 5億円〜10億円 |
営業利益 | 5000万円〜1億円 |
総資産額 | 非公開 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 会社のさらなる成長のため |
【北陸/左官工事業】大手ゼネコンから安定受注
業歴が長く、左官工における受賞歴も多数です。地域からの信頼が厚く、公共施設の施工も手掛けています。大手ゼネコンからの受注が安定しているほか、2023年から無借金経営を実現しており、純資産は毎期増加している状況です。
売上高 | 5000万円〜1億円 |
営業利益 | 〜1000万円 |
総資産額 | 非公開 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | さらなる事業成長のため譲渡 |
4. 石川県・金沢市のM&A・事業承継・会社売却の事例
石川県・金沢市のM&A・事業承継・会社売却事例をピックアップしてご紹介します。
売り手は、将来性のある企業や大手の企業への売却や事業承継によって、事業成長や後継者問題の解決、雇用の継続につながります。自社のM&Aを検討する際の参考にしてみましょう。
古河電気工業による白山の買収
古河電気工業は、2025年1月30日付で、白山(石川県金沢市)の株式約67%を取得する契約を締結しました。白山は、多心型光MTフェルールの世界第2位のシェアを持ち、光通信関連の部品開発・製造を手がける企業です。
この買収の背景には、生成AIの普及に伴い、ハイパースケールデータセンターの需要が拡大する見込みがあることが挙げられます。データセンターでは、大量の光ファイバを効率的に接続するMTコネクタの需要が高まり、特に低損失型MTコネクタは通信の安定性向上や電力消費削減に貢献すると期待されています。
古河電気工業は、本件M&Aを通じて、同社の技術力と白山の開発力・コスト競争力を融合させ、MTコネクタ事業の拡大を目指します。最終的には、低損失型MTコネクタ市場において世界第1位の地位を確立することを目標としています。
オカモトによるスタハの買収
2024年9月、オカモトはスタハの全ての株式を取得し、M&Aを実施しました。
オカモトはオカモトグループ全体の経営管理を行っています。オカモトは主にガソリンスタンド事業、自動車整備事業、ホームエネルギー事業、など多岐に渡ります。
対象会社のスタハは、石川県内18拠点において個別演習型学習塾「スタディハウス」を運営しています。
今回のM&Aにより、幅広い事業展開し企業価値向上を目指します。
クスリのアオキHDによる木村屋の買収
2024年7月、クスリのアオキホールディングスは木村屋の全ての株式を取得しました。
今回の買収は、クスリのアオキを存続会社とする吸収合併方式であり、消滅会社である木村屋は解散することになります。クスリのアオキホールディングスは、全国展開をしておりドラッグストア及び調剤薬局の運営を行っています。対象会社の木村屋は、千葉県に食品スーパーを4店舗展開している。
今回のM&Aにより、ドラッグストアの持つヘルス&ビューティーや調剤薬局とスーパーを組み合わせることで、地域顧客への利便性拡大を目指します。
ホテル金沢がサムティホテルマネジメントへ株式譲渡
2024年3月、ホテル金沢がサムティホテルマネジメントへ株式譲渡しました。
サムティホテルマネジメントは「S-PERIA」シリーズのホテルを中心に、国内にて9ホテルを展開しています。対象会社のホテル金沢は、サイトリグループの子会社です。サイトリグループはリアルアセット事業、メディカル事業などを手掛けている会社です。
今回のM&Aにより、サイトリグループはメディカル事業に主軸をシフトしていく予定です。
K‐ブランドオフによるRECLOの買収
2024年4月、K-ブランドオフはRECLOの株式を取得し、子会社化しました。
K-ブランドオフは、石川県金沢市に本社を置き、海外の中古ブランド品買取・販売、オークション事業、質業などを展開する企業で、コメ兵ホールディングスの子会社です。対象会社のRECLOは、ハイブランドを専門としている「RECLO」事業を展開している企業です。
今回のM&Aにより、グループの中長期的な収益拡大、海外事業の強化、EC事業の強化などを目指します。
エムスリーがM&Aによりロジックを子会社化
2022年3月、エムスリーはロジックを子会社化しました。
エムスリーは医療ポータルサイト「m3.com」のサービスを行っている企業です。対象会社のロジックは石川県金沢市に本社を置き、介護・看護事業所の業務効率化のためのソフトウェアを開発・提供しています。
今回のM&Aにより、ロジックの技術とノウハウを共有することで、介護・看護分野での市場拡大とサービスの向上を目指します。
地元企業同士による事業承継の成功例
金沢市では、後継者不在に悩む中小企業同士のM&Aによって事業承継が実現した成功例もあります。その一つが、特殊塗料の製造販売施工を手がける株式会社アクセスホールディングス(石川県金沢市)と、インフラ建設事業を展開するタマダ株式会社(同じく金沢市)とのM&A事例です。
アクセスホールディングスは創業約30年、年商約5億円規模の企業ですが、社長が60代となり後継者不在の問題を抱えていました。一方のタマダ株式会社は創業70年以上、石油関連インフラ工事やタンク製造などで年商約100億円を誇る地元大手企業です。アクセスホールディングスの社長は自社の事業の将来を考え、信頼できる地元企業に事業を託すことを決断しました。
その結果、同じ金沢市内のタマダ株式会社がアクセスホールディングスをグループ会社として迎え入れる形で事業承継が成立しました。譲渡企業にとっては従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら事業を存続でき、譲受企業にとっても新たな事業領域を取り込むことでグループの発展につなげることができる理想的なマッチングとなりました。
実際に譲受側のタマダ社長は「同じ金沢に本社を置く企業同士のM&Aであり、お互いの企業文化や地域への責任感を尊重し合えるため最善の選択だった」と述べています。このケースは、地域の中小企業同士がM&Aによって後継者問題を解決し、双方の企業価値を高めた成功例として注目されました。
金沢市ではこのように、地元企業同士の信頼関係をベースにした事業承継型M&Aが実現するケースも出てきており、地域経済にとって好ましいモデルとなっています。
5. 石川県・金沢市のM&A・会社売却・事業承継案件を探す3つの手段
続いて、石川県・金沢市周辺のM&A・会社売却・事業承継の案件を探す手段を紹介します。案件を探す手段は、主に以下の3種類があります。
①地元の金融機関などに相談する
まずM&A・事業承継の案件を探す際には、地元の金融機関などに相談する方法があります。
普段から付き合いのある地方銀行であれば、会社の経営状態を把握しているため事業承継に関する相談も気軽に行いやすいメリットがあります。その一方で、事業承継先は銀行の取引先が優先的に選ばれる可能性があり、実務は提携先のM&A仲介会社に任される手間が発生するなどがあります。
地元の金融機関などに相談するケースとしては、普段から取引している銀行などの金融機関にまずは相談してみる選択肢も有効です。
②M&Aマッチングサイトなどを活用する
M&A・事業承継案件を探す際には、M&Aマッチングサイトなどを活用する方法もあります。
M&Aマッチングサイトを活用するメリットは、柔軟に候補先企業探せることです。デメリットとしては、自分でM&Aの手続きを進める必要があるため、企業内に事業承継・M&Aに関する専門家がいない場合には不向きでしょう。
もし社内に事業承継・M&Aに関する専門家がいる場合には、石川県だけではなく、全国のM&A・会社売却・事業承継案件を探せるため、費用を抑えるという面でもおすすめです。
M&A総合研究所
M&A総合研究所のマッチングプラットフォームはAIシステムを採用しており、精度の高いマッチングを実現しております。
買い手・売り手様とも無料で利用でき、専門家による仲介が必要となった場合は、実務経験が豊富なM&Aアドバイザーによる専任サポートを利用することも可能です。
Batonz (バトンズ)
Batonz(バトンズ)は、全国の豊富な案件の中からマッチングが可能となっています。
料金はプラットフォームの利用のみであれば、売り手買い手とも利用料無料で、仲介を依頼したい場合は、全国の提携専門家の中から地元のアドバイザーを紹介してもらうことも可能です。
トランビ(Tranbi)
トランビ(Tranbi)は、M&Aマッチングプラットフォームの運用で、近年急成長している会社で、登録ユーザー数が30,000人を超えるマッチングプラットフォームとなっています。
現在では、国内で豊富な案件数を保有しており、小規模事業者でも手軽に利用できるシステムや手数料が特徴です。
③M&A仲介会社・専門家に相談する
M&A・事業承継の案件探しの際に、最もポピュラーな方法がM&A仲介会社・専門家に相談することでしょう。M&Aを専門に扱っているため豊富な知識と経験があり、独自ネットワークを活用して相手先を探してもらえます。
また、大手の仲介会社であればM&Aの実務で必要となる手続きに精通している公認会計士、弁護士、税理士などの専門家を有しており、一貫して手続きを進められるため、スムーズなM&A・事業承継につながるでしょう。
もし相談先にお悩みの場合は、実績の豊富なM&A仲介会社を選んでおけば間違いないでしょう。
6. 石川県・金沢市でM&Aをする際に仲介会社を選ぶ5つのポイント
ここでは、石川県・金沢市でM&Aをする際に仲介会社を選ぶポイントを解説します。
①該当する分野の専門的知識・M&A実績を持っている
M&A・会社売却・事業承継は、企業によって異なるため、全く同じ方法が良いとは限りません。M&A・会社売却・事業承継をスムーズに行うには、業界ごとの変化に対応できることが重要です。
相談する分野の専門的知識・M&A実績がある仲介会社であれば、適切なサポートができます。
②案件規模・地元M&A実績などがある
M&A・会社売却・事業承継を仲介会社に依頼する際は、相談する自社と同じ程度の案件を行った実績があるのか、地元でM&A・会社売却・事業承継の実績があるかが重要です。
これらの実績があれば、多くの地元企業・地元の金融機関・士業専門家などとのつながりが強いことになるため、スムーズにM&A・会社売却・事業承継を行えます。
③M&Aに関する幅広い知識・経験を持っている
M&A・会社売却・事業承継の専門家は、財務会計、業界の専門知識などのさまざまな知識が必要でしょう。M&Aなどの案件は案件ごとに全て異なるため、持っている知識を案件ごとに使いこなせることも重要です。
④手数料・相談料・報酬体系がわかりやすい
仲介会社によっては、手数料・相談料・報酬体系が非常に複雑な体系の場合があります。料金体系がわかりづらい仲介会社の場合、予想していなかった費用が発生する可能性があり、トラブルになることもあります。
仲介会社との信頼関係を築き、M&Aを安心して任せるためには、報酬体系がシンプルで手数料が安い仲介会社を選ぶことが重要です。
⑤担当スタッフの対応や相性がいい
M&A・会社売却・事業承継など会社の将来に関する重要なことを任せるためには、担当者との信頼関係が非常に大切になります。M&A・会社売却・事業承継などの案件は1つずつ異なるため、自社に対する経営者の考え方などを理解し、誠実に対応してくれる仲介会社を選びましょう。
7. 石川県・金沢市内のM&A・事業承継に役立つ公的支援
石川県・金沢市内でM&A・会社売却・事業承継を検討する場合、公的機関に相談するのもよいでしょう。石川県では、以下の3つの機関・事業があります。
- 七尾事業承継オーケストラ~事業承継ネットワーク~
- 石川県事業承継・引継ぎ支援センター
- プッシュ型事業承継支援高度化事業
①七尾事業承継オーケストラ~事業承継ネットワーク~
七尾事業承継オーケストラ~事業承継ネットワーク~とは、地域における経営者の高齢化や後継者不在による廃業を防ぐため、事業承継支援体制の強化に向けて発足しました。
七尾市内の事業承継関係機関など、官民連携の支援ネットワークと連携した地域における事業承継支援のための取り組みです。後継者人材の確保・育成、事業承継計画策定、伴走型経営支援、税制や資金関係、各種許可関係など、幅広いサポートを行います。
②石川県事業承継・引継ぎ支援センター
石川県事業承継・引継ぎ支援センターは、円滑な事業承継を支援し、次世代への経営資源のスムーズな承継を促進させるために設立された機関です。
石川県では、事業承継問題の先送りなどが起こり、結果的に企業が廃業し、雇用が失われるといったことが増加しています。高齢化の進んだ中小企業の経営者が抱える、企業の存続の課題や悩みを解決・支援するために設立されました。
石川県事業承継・引継ぎ支援センターでは「後継者人材バンク」事業も行っています。
後継者人材バンクとは、後継ぎを探す中小企業や個人事業主と、事業を引き継ぎたい企業や個人とのマッチングを支援する機関です。後継者人材バンクでは、事業承継に関する情報提供やアドバイスをしたり、M&Aの専門家や金融機関を紹介したりしています。
【後継者人材バンクの主な目的】
- 後継者の不足を解決する
- スムーズなM&Aや事業承継を行えるようにアドバイスをする
- 起業を行いたい者に対する人材を支援する
事業承継・引継ぎ支援センターの活用を政府も後押し
国による支援事業として、各都道府県に事業引継ぎ支援センターが設置されています。
石川県事業承継・引継ぎ支援センター内には後継者人材バンクが設けられ、石川県内の小規模事業者や個人事業主の後継者マッチングは、後継者人材バンクを通じて行われています。
後継者人材バンクの活用によって、石川県・金沢市内の事業者と後継者のマッチングを行うことが可能です。
日本政策金融公庫による資料
日本政策金融公庫では、事業承継ネットワークや事業承継・引継ぎ支援センター、後継者人材バンクなどへの理解を深め、事業承継を広く周知させるために、「経営情報」の定期刊行物を発行しています。
「経営情報」はインターネット上でも閲覧できるため、事業承継ネットワークや事業引継ぎ支援センター、後継者人材バンクなどを詳しく知りたい場合におすすめの資料といえるでしょう。
このようなことから、国が力を入れて事業承継支援を行っていることがわかります。
事業承継ネットワーク事業について
事業承継ネットワーク事業とは、中小企業庁の委託により地方自治体が中心となって、商工会議所・商工会・金融機関・士業専門家などと、密に連携を取っていくための事業です。
事業承継ネットワーク事業は、平成29年度に地域における事業承継支援体制の強化を目的として、各都道府県に拠点を置く事業承継に関わる組織を連携させ、実施されました。
事業承継・引継ぎ支援センターや後継者人材バンクも「事業承継ネットワーク事業」の一つです。少子高齢化に伴う後継者不足などが大きく影響しているため、後継者人材バンクを通じて国全体で事業引継ぎを後押ししています。
③プッシュ型事業承継支援高度化事業
公益財団法人石川県産業創出支援機構では経済産業省中小企業庁から委託を受けて「プッシュ型事業承継支援高度化事業」を行っており、詳細は以下のようになっています。
プッシュ型事業承継支援高度化事業とは
プッシュ型事業承継支援高度化事業とは、市町村・地域の商工団体・金融機関・専門家などを組織化し、アンケート調査票を通じて、企業に早期かつ計画的に「事業承継」の準備への気付きを与えるものです。
そのようにして出てきたニーズに対して、地域の各分野の専門家が連携し、より踏み込んだ事業承継支援を実施します。
8. 国の事業承継支援制度(補助金・税制など)の活用
石川県・金沢市の事業者は、上記の地域支援策に加えて国による事業承継支援制度も活用できます。代表的なものに「事業承継税制」と「事業承継・引継ぎ補助金」があります。
事業承継税制(法人版)
中小企業の代表者が後継者(親族や役員など)に自社株式を贈与または相続する際に、一定の要件のもとでその株式に係る贈与税・相続税の納税を猶予・免除できる制度です。
平成30年の税制改正で10年間の特例措置が設けられ、納税猶予の対象株式数の制限撤廃や猶予割合100%(相続税80%→100%など)への引き上げが行われました。
この税制を利用することで、後継者が多額の相続税負担で事業承継を断念するといった事態を防ぐことができます。ただし適用には都道府県知事の認定と税務署での手続きが必要であり、事前に計画策定と申請が求められる点に留意が必要です。石川県でも経営承継円滑化法に基づき、この事業承継税制の認定・支援を行っています。
後継者が決まっている親族内承継の場合は、こうした税優遇を活用して円滑に株式を引き継ぐことが推奨されます。
事業承継・引継ぎ補助金
中小企業庁が実施する事業承継支援の補助金制度で、事業承継(事業再編・統合を含む)を契機として新たな取組みを行う中小企業や、M&Aによる経営資源引継ぎを行う中小企業などに対して、その経費の一部を補助するものです。
補助枠はいくつかありますが、例えば「専門家活用枠」ではM&A支援業者への手数料やセカンドオピニオン費用等を最大600万円まで補助(補助率2分の1~3分の2)してくれます。
また「経営革新枠」では事業承継後に新商品開発や設備投資など経営革新に取り組む費用を補助し、「再チャレンジ枠」では後継者不在で廃業する事業者の円滑な事業整理やその後の創業支援などに対する補助があります。令和5年度までに複数回公募されており、直近の令和6年(2024年)も追加公募が行われました。
この補助金を活用すれば、専門家費用の負担軽減や承継後の新規事業への投資支援が受けられるため、事業承継をきっかけに企業の更なる発展を図りたい場合には大きな助けとなります。実際、「事業承継・引継ぎ補助金」によりM&Aによる経営資源引継ぎを後押しする支援が行われています。
石川県の事業者も該当すれば全国の事業者と同様に応募可能ですので、承継計画に応じて積極的に活用を検討すると良いでしょう。
9. 石川県・金沢市のM&A・事業承継・会社売却のまとめ
石川県・金沢市における事業承継・M&Aの現状と支援策について、動向データから具体的事例、公的支援制度まで幅広く解説しました。後継者不足の問題は一朝一夕には解決しませんが、官民の支援体制充実や経営者の意識変化により徐々に改善の兆しも見えています。地域の伝統ある企業や地場産業を次世代につなぐためには、公的機関のサポートや専門家の力を借りつつ、計画的かつ戦略的に事業承継に取り組むことが重要です。
金沢市・石川県で事業承継を成功させるには、早めの準備と情報収集が欠かせません。公的支援機関(事業承継ネットワークや引継ぎ支援センター等)を活用し、補助金や税制優遇も視野に入れながら、自社に最適な承継プランを練り上げましょう。その上で、実際に承継相手を探す段階では、信頼できる専門家(M&A仲介会社や金融機関)に相談し、客観的な助言を得ることをお勧めします。
10. 石川県の成約事例一覧
11. 石川県のM&A案件一覧
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