2022年06月06日更新
農業・林業のM&A・売却・譲渡!業界動向・相場・ポイントを解説【成功事例あり】
近年、農業・林業業界におけるM&Aが活発に行われるようになっており、後継者問題や事業の将来性に不安を感じることによる売却・譲渡の増加しています。本記事では、農業・林業のM&A・売却・譲渡のポイントや業界動向の解説、成功事例を紹介します。
目次
1. 農業・林業のM&A・売却・譲渡とは
近年は、後継者問題や事業の将来性に対する不安などの理由から、農業・林業のM&A・売却・譲渡が行われる件数が増加しています。
この記事では農業・林業の業界動向やM&Aのポイントについて解説しますが、まずは農業・林業の定義とM&A・売却・譲渡の意味を説明します。
農業・林業とは
農業とは、土地を活用して有用な植物の栽培、もしくは有用な動物を飼育する生産活動を指します。農業と聞くと農家をイメージすることも多いかもしれませんが、農業資材会社や農産物の流通・販売・加工を手掛ける会社も農業に含まれます。
一方、林業とは、森の木を伐採して木材の生産や森に木を植える植林を行う活動を指します。植林用の苗床を生産する会社や、森林の野生動物の狩猟を行う会社も林業に含まれます。
M&A・売却・譲渡とは
M&A・売却・譲渡とは、会社や事業を第三者に売却して引き継ぐことを指します。事業の引き継ぎ先が親族内や自社内の従業員に限定されないため、後継者が不在の場合でも培ってきた農業・林業のノウハウや経営資源を存続させることができます。
M&Aを活用した売却・譲渡の場合、会社や事業の価値に応じた創業者利益が獲得できることもメリットのひとつです。
売却・譲渡の際は、農地や農産施設・設備のほか、将来的な収益価値も加味されるので、高額な売却益を獲得することが可能です。
2. 農業・林業の業界動向
農業・林業の業界動向は、どのように推移しているのでしょうか。この章では、特に大きな影響を及ぼしている動向3つを紹介します。
【農業・林業の業界動向】
- 農業・林業への参入者は増加傾向にある
- 飲食業やサービス業からの参入も見られる
- 事業承継の件数が増加している
1.農業・林業への参入者は増加傾向にある
農業は、平成21年の農地法改正によりリース方式による参入が全面自由化されたことで、新規参入のハードルが大幅に引き下げられています。
農林水産省の調査によると、改正前と比較すると約5倍のペースで新規参入者が増加しているとしています。
一方、林業は平成15年に緑の雇用事業が実施され、若者を対象にした林業の技術習得支援を行っています。
新規就業者数は、緑の雇用事業の実施前と比較すると増加しており、令和になった現在も新規就業者数は毎年3,000人前後で推移しています。
2.飲食業やサービス業からの参入も見られる
農業・林業では、異業種からの新規参入も増加しており、農業・林業を本業としない会社が、農業・林業の会社・事業を買収することで、新規参入を図るケースがみられます。
代表例としては、ファーストフードのモスバーガーやコンビニエンスストアのローソンが農業法人を設立した参入事例が挙げられます。
これらの事例は、自社グループのコア商品の生産網を整えることで、バリューチェーンを強化することを目的として行われました。
3.事業承継の件数が増加している
農業・林業は新規参入が見られる一方で、古参事業者の高齢化が進んでいます。そのため、会社や事業を存続させる手段として事業承継を行うケースが多く見受けられます。
特に、国内の農業は家族経営で成り立っているところが多く、親から子への事業承継が盛んに行われています。
親からの事業承継であれば、土地・施設などの財産だけでなく、ノウハウや顧客の引き継ぎもしやすい点がメリットです。
3. 農業・林業のM&A・売却・譲渡理由
農業・林業は、業界全体でさまざまな経営課題を抱えています。この章では、M&A・売却・譲渡が活性化している5つの理由について解説します。
【農業・林業のM&A・売却・譲渡理由】
- 経営者・従業員の高齢化
- 圧倒的な後継者不足
- 事業の将来性に不安を感じている
- 設備投資や各種コストが経営を圧迫する
- 経営者として利益を得ることができる
1.経営者・従業員の高齢化
農業では、経営者・従業員の高齢化が深刻になっています。農林水産省によると、平成31年の農業従事者の平均年齢は66.8歳とされており、他業種と比較しても高く推移しています。
林業は、緑の雇用事業の実施により毎年安定した若い世代の参入がみられるため、農業と比較すると高齢率は低いですが、それでも全産業でみると高めに推移しています。
経営者・従業員が高齢化すれば経営や業務の効率が著しく低下するため、M&A・売却・譲渡を検討する事業者が増加しています。
2.圧倒的な後継者不足
農業・林業は事業承継の件数が増加している一方で、後継者不在により事業承継が行えていない農業・林業事業者が増加している問題もあります。
事業承継を行えずに経営者が高齢化していくと、最終的に廃業になり培ったノウハウや経営資源はすべて失われてしまいます。
後継者不足問題を解決する手段として、近年ではM&A・売却・譲渡を活用するケースが増えています。
3.事業の将来性に不安を感じている
ITの発達により社会的にデジタル化が進むなか、アナログな作業が多い農業・林業の将来性に不安を感じる事業者が増加しています。
また、農産物や木材の販売方法は、仲卸業者を経由するという出荷形態が維持されていることも多いため、農業・林業の事業者の手取りが少ないという問題も抱えています。
4.設備投資や各種コストが経営を圧迫する
農業・林業は、設備投資や各種コストが肥大化する傾向にあります。土地・施設・設備にかかる初期投資や肥料・農薬・苗床など、継続的に発生する経費は経営を圧迫する要因ともなっています。
投資から収益に繋がるまでの期間が長いこともあり、資金運用がうまく行かずにM&A・売却・譲渡を視野に入れるケースも珍しくありません。
5.経営者として利益を得ることができる
農業・林業のM&A・売却・譲渡は、経営者が利益を獲得することができます。廃業の場合は土地や施設を処分することで現金化できますが、事業価値は失われてしまうのでM&A・売却・譲渡の方がメリットが大きくなります。
また、買い手が付くほどの事業であれば含み益が発生することが多く、事業価値に応じた価格となるため、多額の利益が生じる可能性が高いといえるでしょう。
4. 農業・林業のM&A・売却・譲渡相場
農業・林業のM&A・売却・譲渡相場は、M&A対象の会社・事業の価値を適正に評価したうえで決定され、その際の評価方法は「企業価値評価」と呼ばれます。
農業・林業で利用されることが多い企業価値評価の方法は「時価純資産法+営業権」です。時価評価した資産から負債を差し引いて純資産額を算出した後、技術・ノウハウ・顧客等の営業権を加えて企業価値を算出します。
M&A対象の収益力を加味できるので適正な評価を行いやすく、売り手・買い手の双方から納得感も得られやすい評価方法です。M&Aではこの価値を土台として交渉を進め、最終的な取引価格を決定する流れになります。
5. 農業・林業のM&A・売却・譲渡のポイントは?
農業・林業のM&A・売却・譲渡を実施する際は、いくつかのポイントを押さえておくことが大切です。この章では、特に重要な3点について解説します。
【農業・林業のM&A・売却・譲渡のポイント】
- 農業振興地域の整備に関する法律に注意する
- 補助金を有効活用する
- M&A・事業承継の専門家に相談する
1.農業振興地域の整備に関する法律に注意する
農業振興地域の整備に関する法律は、土地の農業上の有効活用や農業の近代化のための施策を推進することを目的として制定されたものです。
特に注意しなければならないのは、農用地区域の扱いについてです。農業振興地域に指定された市町村が定めた農用地区域は、原則として農業以外の転用が禁止されています。
M&Aにより農家の土地を取得して、ほかの目的に利用することを検討している場合は、事前に農用地利用計画の変更手続きを行わなくてはなりません。
2.補助金を有効活用する
2つ目のポイントは、補助金を有効活用することです。農林・林業は国や都道府県からの補助金が手厚く、補助金を前提として事業に取り組むことも珍しくありませんが、M&A・売却・譲渡の際に補助金の交付条件に違反する可能性があります。
交付条件を満たせなくなった場合、補助金の返還を要求されて経営状態が圧迫することにもなりかねません。
事前に交付条件の確認を行っておけば、補助金を受けたまま適切な方法によってM&A・売却・譲渡する選択肢を取ることも可能です。
3.M&A・事業承継の専門家に相談する
農業・林業のM&A・売却・譲渡は、土地に関する法律や補助金など、注意すべきポイントが多数あります。
全てのポイントを押さえて不備なく実施するためには、M&A・事業承継の専門家のサポートが欠かせません。
特におすすめの相談先はM&A仲介会社です。M&A・事業承継の仲介を日常的に請け負っている専門家なので、豊富なノウハウ・実績を積み重ねています。
農業・林業に対応しているM&A仲介会社であれば、業界事情にも精通していてM&A・売却・譲渡が成功する可能性も高くなります。
6. 農業・林業のM&A・売却・譲渡の成功事例
農業・林業の業界では、多くのM&A・売却・譲渡事例が成立しています。この章では、話題性のある事例の一部を紹介します。
【農業・林業のM&A・売却・譲渡の成功事例】
- マーケットエンタープライズによる中古農機具売買サイト事業の取得
- NECキャピタルソリューションによるオリザ鹿児島ファームの株式取得
- DMMによるファーマリーの株式取得
- ベルグアースによる花苗育苗事業の取得
- エア・ウォーターによる北栄農産の吸収合併
- 日本アジアグループによる森林活性化事業の承継
- ベルグアースとOATアグリオの資本業務提携
- アイ・シグマ・パートナーズによるミスズライフの株式取得
1.マーケットエンタープライズによる中古農機具売買サイト事業の取得
2020年5月、マーケットエンタープライズは新設子会社UMMを介して、アグリステージの中古農機具売買サイト「JUM」事業を取得することを公表しました。
JUMは農機具を中心に扱っている国内最大級のネット市場であり、2007年のサービス開始から急成長を遂げ、累計業者会員698社と農家会員4574人を記録しています。
マーケットエンタープライズは中古品の買取・販売を主力事業としており、2017年からは農機具の取り扱いも開始しています。
マーケットエンタープライズは「JUM」事業を取得することで、中古農機具の販売チャネルの拡充して今後も取り組みを強化していくとしています。
2.NECキャピタルソリューションによるオリザ鹿児島ファームの株式取得
2019年12月、NECキャピタルソリューションは小平と業務提携契約を締結したうえで、小平社が保有するオリザ鹿児島ファームの株式の一部を取得することを公表しました。
オリザ鹿児島ファームは、IT管理されたハウスでミニトマトの栽培を行っている生産法人です。2009年に小平の農業分野への参入の際に設立されており、地域の雇用創出や消費者に安全性の高い食品を安定供給しています。
NECキャピタルソリューションは、今回の業務提携と株式取得によりノウハウ・ネットワークを共有することで、農産物の生産・加工・流通・販売の一連の流れの高度化を図り、農業が抱える課題解決に取り組むとしています。
3.DMMによるファーマリーの株式取得
2019年11月、DMMはファーマリーの株式51%を取得して、2019年9月25日付けで子会社化したことを公表しました。
ファーマリーは、中古農機流通事業を通じて農業生産の効率的を目指している会社です。情報をオープンにして農機の流通を安定させることで、農家が農業に専念できる環境づくりを目的に掲げています。
DMMがファーマリーのオープン化の理念に賛同したことで今回のM&Aが実現しており、今後はDMMが保有するITインフラなどの経営資源を共有することでファーマリーの成長を促進させるとしています。
4.ベルグアースによる花苗育苗事業の取得
2019年5月、ベルグアースはサカタのタネと業務提携契約を締結し、サカタのタネが保有する長野セルトップの花苗育苗事業を取得することを公表しました。取引価格は6000万円です。
長野セルトップは、トルコキキョウを中心とした花苗育苗事業を手掛けています。ベルグアースのコア事業である野菜苗生産販売事業の多角化に活用できると判断され、今回の事業取得に至りました。
ベルグアースは、自社が保有する野菜苗生産技術を活かして国内花苗事業のさらなる発展を目指すとしています。
5.エア・ウォーターによる北栄農産の吸収合併
2019年3月、エア・ウォーターのグループ子会社トミイチは、北栄農産を吸収合併することを公表しました。
北栄農産は、農産物の卸販売やコントラクター事業を手掛けています。2018年11月付けでトミイチの子会社になっていましたが、今回の合併により北栄農産は消滅することになりました。
トミイチは、北栄農産の事業ノウハウを引き継ぐことで経営の効率化を図り、質の高い青果物の安定供給に繋げるとしています。
6.日本アジアグループによる森林活性化事業の承継
2018年12月、日本アジアグループは、自社の森林活性化事業をグループ子会社のJAGフォレストに会社分割により承継することを公表しました。
森林活性化事業は、気候変動対策の緩和策として平成28年に立ち上げられたプロジェクトです。立ち上げから関連事業の買収を通して本格的な事業推進体制が整ったことを機に、JAGフォレストへの一元化を目的として今回の会社分割へと至りました。
今後は、JAGフォレストの体制のもとで森林活性化事業を推進させ、目標達成と課題解決に取り組んでいくとしています。
7.ベルグアースとOATアグリオの資本業務提携
2018年12月、ベルグアースとOATアグリオは、資本業務提携を締結することを公表しました。これにより、OATアグリオはベグルアースの普通株式50,000株(発行済株式の3.94%)を取得します。
ベルグアースは、野菜苗生産・販売を中核事業とする会社です。特に接木苗の生産において日本一を誇っており、新商品の開発や安定的な生産のための全国展開、事業の多角化や海外進出によるグローバル化を推進しています。
OATアグリオは「食糧増産技術(アグリテクノロジー)」により食糧増産に貢献している会社で、防除技術・施肥灌水技術・バイオスティミュラントの技術を中心に事業を展開しています。
今回の資本業務提携により、ベルグアースとOATアグリオは互いの事業ノウハウやサービスを共有することで、企画・開発・共同提案を可能とし、農業分野での事業領域の拡大を促進させるとしています。
8.アイ・シグマ・パートナーズによるミスズライフの株式取得
2018年2月、アイ・シグマ・パートナーズはミスズライフの全株式を取得して、完全子会社化することを公表しました。
ミスズライフは、業界初のカットぶなしめじを生産した会社です。カットぶなしめじ市場において高いシェアを誇っており、独自のノウハウ・技術を活用して安全性の高い商品を消費者に提供しています。
また、ミスズライフは新設分割で設立したミスズアグリへ、ぶなしめじ事業以外の事業を引き継ぎしています。
今回の株式取得によって、ミスズライフとミスズアグリの資本関係はなくなりますが、今後はパートナーとして、相互の補完していくとしています。
アイ・シグマ・パートナーズは、自社が保有する経営改善ノウハウやネットワークを活用することで販路拡大・仕入・物流の効率化を図り、ミスズライフの企業成長の促進を目指します。
7. 農業・林業のM&A・売却・譲渡を検討する際におすすめの仲介会社
農業・林業のM&A・売却・譲渡では多くの案件が成立していますが、実際に行動に起こそうと考えた場合、何から手をつけていいか悩むことも多いでしょう。
農業・林業のM&A・売却・譲渡をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所は、幅広い業種のM&A仲介を請け負っているM&A仲介会社です。
M&A総合研究所は、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが、ご相談からクロージングまで丁寧にサポートいたします。料金体系は、着手金・中間金完全無料の完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)です。
M&A・売却・譲渡に関する無料相談は、随時お受けしています。農業・林業のM&A・売却・譲渡をご検討の際やお悩みの場合は、どうぞお気軽にご連絡ください。
8. まとめ
農業・林業は、人々が生活するうえで欠かせない産業を引き継ぐために、M&A・売却・譲渡を活用しています。
特に、農業は農地法の改正で新規参入のハードルが大きく下がっており、M&A・売却・譲渡件数も増加傾向にあります。
今後も異業種からの新規参入が増加することが見込まれるので、早期から準備を進めておくとスムーズにM&A・売却・譲渡することが可能になります。
【農業・林業のM&A・売却・譲渡まとめ】
- 農業とは土地を活用して有用な植物の栽培や有用な動物を飼育する生産活動
- 林業とは森の木を伐採して木材の生産や森に木を植える植林を行う活動
- M&A・売却・譲渡とは会社や事業を他者に売却して引き継ぐこと
【農業・林業の業界動向】
- 農業・林業への参入者は増加傾向にある
- 飲食業やサービス業からの参入も見られる
- 事業承継の件数が増加している
【農業・林業のM&A・売却・譲渡理由】
- 経営者・従業員の高齢化
- 圧倒的な後継者不足
- 事業の将来性に不安を感じている
- 設備投資や各種コストが経営を圧迫する
- 経営者として利益を得ることができる
【農業・林業のM&A・売却・譲渡のポイント】
- 農業振興地域の整備に関する法律に注意する
- 補助金を有効活用する
- M&A・事業承継の専門家に相談する
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