2025年問題とは?事業承継できずに廃業する中小企業の特徴や事例・企業が取るべき対策を解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

2025年問題とは、日本が超高齢化社会に突入することで発生する問題のことです。事業承継問題においても、後継者不在などがさらに深刻になることが予測されています。本記事では、2025年問題や事業承継問題で廃業する企業の特徴・事例などを解説します。

目次

  1. 2025年問題とは?
  2. 2025年問題が及ぼす影響
  3. 事業承継とは
  4. 【2025年問題】事業承継できずに廃業する中小企業の特徴
  5. 【2025年問題】事業承継できずに廃業する中小企業が増えるとどうなる?
  6. 【2025年問題】事業承継できずに廃業する中小企業の事例
  7. 2025年問題を先読みした事業承継の対策
  8. 2025年問題のまとめ
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1. 2025年問題とは?

2025年問題とは、第一次ベビーブームで生まれた団塊世代が75歳以上となり、日本が超高齢化社会に突入することに起因するさまざまな問題です。
 
医療費・介護費・年金のような社会保障の面で、大きな問題となることが予想されていますが、事業承継も2025年問題の影響を受けるとされており、中小企業や小規模事業者の事業承継問題としても認識されています。
 
事業承継問題としての2025年問題では、経営者が70歳以上の企業が約245万社まで増加し、そのうちの約127万社が後継者不在による廃業・倒産の危機に直面するであろうと予測されています。
 
もし、この事業承継問題に何の対策も講じられず127万社が廃業となれば、約650万人の雇用が失われて約22兆円ものGDPが消失するという大変な経済的損失を被ることになります。
 
日本政府は、事業承継問題や2025年問題の対策として、相続税や贈与税で優遇が受けられる事業承継税制や、後継者がいない企業向けに第三者承継を支援する政策などを展開しています。

2040年問題との違い

2025年問題とは、高齢化が進む中で起こりそうなさまざまな問題のことを指しています。一方、2040年問題は、高齢者の人数が最も多くなる時期に伴って発生するさまざまな課題を指す言葉です。

2040年には、社会保障のコストが増えたり、若い労働者が不足するだけでなく、古くなった道路や建物などの問題も考えられます。

これらの問題を解決するためには、社会保障のルールを見直すこと、さまざまな背景を持つ人々を働き手として迎え入れること、そして良い働く環境を作ることが大切です。早めの行動が必要です。

2. 2025年問題が及ぼす影響

ここでは、2025年問題が及ぼす代表的な影響を解説します。

社会全体への影響

75歳以上の高齢者が増えると、医療や介護の費用も増えることが考えられます。2050年までには、日本全体でこの年齢の人が増える予想がありますが、地域によっては高齢者が増えたり減ったりするため、その地域に合わせた医療や介護のサービスが求められます。

企業が受ける影響

高齢化が進むにつれて若い働き手が減るので、企業での人手不足が問題になる可能性があります。特に、中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、2022年のデータでは、多くの経営者が60歳以上です。そして、これらの高齢の経営者たちは、近い将来に事業を引き継ぐか、それとも止めるかを考えています。そのため、事業の後継者を見つけることが、今後の大きな課題となりそうです。

3. 事業承継とは

事業承継とは、会社や事業を後継者となる人物や企業に引継ぎ次の世代へと存続させることです。

経営者が引退しても、廃業ではなく事業承継を行うことにより、従業員・取引先・顧客・地域経済などを守ることができます。

事業承継問題により廃業せずに事業を引き継ぐためには、適切な後継者の選定や教育、M&Aの相手先の選定など、事業承継に向けて積極的に行動する必要があります。また、事業承継は後継者が誰であるかによって、3種類に分類することができます。

【事業承継の種類】

  1. 親族内事業承継
  2. 親族外事業承継
  3. M&Aによる事業承継(第三者承継)

1.親族内事業承継

親族内事業承継とは、経営者の配偶者・兄弟・子どもなどの親族が後継者となり会社を引継ぐことです。

中小企業の事業承継では親族によるものが大半を占めていましたが、近年ではその傾向に変化がみられます。
 
帝国データバンクの調査によると、1980年代は60~70%の中小企業が親族内事業承継を選んでいましたが、2012年には約40%まで減少していることが分かります。
 
また、「子どもがいない」「子どもに事業を承継する意思がない」などの理由から、廃業を選択せざるを得ないケースもみられます。

2.親族外事業承継

親族外事業承継とは、会社の役員や従業員、外部の関係者などに事業を承継することをいいます。
 
親族内に適切な後継者をみつけることが難しくなっていることから、親族外事業承継を行う中小企業は緩やかながら増加傾向にあります。
 
帝国データバンクの調査では、1980年代の親族外事業承継は30%前後であったものが、2012年には約50%まで増加しています。

3.M&Aによる事業承継

M&Aによる事業承継とは、会社の株式や事業を他社に売却して会社や事業を存続させる方法であり、親族や従業員、関係者などに後継者がいない場合に活用されるケースが多くあります。
 
中小企業の多くは非上場企業なので、実際に行われている正確なM&A件数は分かりませんが、2010年と比較して2019年の事業承継M&A件数は4.4倍に増加しているというデータもあります。
 
後継者不在による事業承継問題や、経営者の高齢化による2025年問題の解決に効果的な方法であるため、日本政府は後継者のいない中小企業のM&Aによる事業承継を支援しています。

4. 【2025年問題】事業承継できずに廃業する中小企業の特徴

2025年問題では、経営者の高齢化による廃業をいかに防ぐかが大きな課題となっています。

高齢となった経営者が廃業せずに会社や事業を存続させるためには、子・従業員・第三者への事業承継が必要ですが、後継者がいないなどの事業承継問題もあり、簡単には事業承継ができないという企業もあります。

このまま事業承継問題に対して何の対策も取らなければ、廃業する中小企業が急増して大きな経済的損失が生じるといわれています。

本章では、2025年問題や事業承継問題を乗り越えられず、廃業する中小企業の特徴について解説します。

後継者がいない

後継者がいなければ、当然会社や事業を引継ぐことはできず、廃業の道を歩むことになります。後継者不在による廃業は、事業承継問題のなかで最も深刻とされています。
 
もし、親族や従業員など身近に後継者がいない場合には、M&Aを活用して第三者を後継者として事業承継することもできます。
 
しかし、事業承継を行いたい中小企業に魅力や価値がなければ、買収したいという企業も現れにくく、適切なM&A先をみつけることができずに廃業に至るケースもあります。

経営者・従業員の高齢化

昔は、経営者や従業員が高齢になって病気で働けなくなったり、体力的に仕事を続けることができなくなると、若い後継者や従業員が経営や技術などを引継いで事業を存続してきました。
 
しかし、少子高齢化で人口が減少に転じた日本では、若い人材をみつけることは簡単ではないため、経営者や従業員が高齢になっても事業や仕事を引き継ぐ人材の確保ができず、廃業を選択せざるを得ない中小企業もあります。

人材不足もまた、事業承継問題や2025年問題として、事業承継に大きな影を落とす要因となっています。

5. 【2025年問題】事業承継できずに廃業する中小企業が増えるとどうなる?

超高齢化社会を意味する2025年問題によって、事業承継を行えずに廃業する中小企業の増加が予想されており、その一因となるのは、後継者不在や経営者・従業員の高齢化などの事業承継問題です。

では、このまま何の対策も講じられずに、事業承継問題や2025年問題の影響を受けて廃業する中小企業が増加すると、経済や社会にどのような影響を与えるのでしょうか。

ここでは、経済産業省と中小企業庁が2017年に行った試算に基づいて、事業承継問題による中小企業廃業の影響について解説します。

GDPの損失額22兆円と予測

事業承継問題や2025年問題などが原因となり、会社や事業を後継者に引継げず、中小企業の廃業が急増すれば、日本のGDPに大きな影響を与えるといわれています。

中小企業庁の試算では、経営者が70歳以上である企業の31%、および個人事業主の65%が廃業すると仮定した場合、2025年までの累計で約22兆円のGDPが失われると予測されています。

雇用損失650万人と予測

事業承継問題や2025年問題による中小企業の廃業は、GDPだけではなく雇用にも大きな影響を与えます。働いている会社が廃業することになれば、従業員は職を失うことになるためです。

中小企業庁の試算では、このまま2025年問題を放置していた場合、2025年までの累計で、約650万人の雇用損失になることが予測されています。

これはあくまでも廃業した会社で働いていた従業員数ですが、実際には、中小企業の廃業は取引先や顧客の経営にも影響します。

事業承継問題を乗り越えられず廃業することで、取引先の経営が悪化し人員削減を行ったり、顧客が倒産ということになれば、さらなる雇用の喪失を生み出す可能性もあります。

6. 【2025年問題】事業承継できずに廃業する中小企業の事例

事業承継問題や2025年問題で廃業を選択した企業のなかには、黒字経営にもかかわらず廃業した企業や譲渡先をみつけることができず廃業した企業もあります。

本章では、実際に後継者不在などの事業承継問題に直面し、事業承継できずに廃業した中小企業の事例を紹介します。

【2025年問題で廃業した中小企業事例】

  1. 岡野工業-東京都墨田区にある町工場
  2. 木挽町辨松-歌舞伎座前の老舗弁当店
  3. 八景亭-世界遺産彦根城内にある料理旅館

1.岡野工業-東京都墨田区にある町工場

東京都墨田区の下町にある岡野工業は、金属加工会社として安定した経営を行っていましたが、2020年に後継者不在により黒字経営ながら廃業を選択しました。

前身となる岡野金型製作所が1935年に創業されて以来、高い技術力でリチウムイオン電池ケースや痛くない注射器「ナノパス33」など、時代の流れを読んだ金型加工を行っており、NASAや世界的な大企業を顧客に持つ優良企業でした。

経営者には2人の娘がいますが、どちらも事業を継ぐ意思はなく、後継者不在の事業承継問題を解決できずに廃業しています。

2.木挽町辨松-歌舞伎座前の老舗弁当店

1868年に創業された木挽町辨松(こびきちょうべんまつ)は、東銀座の歌舞伎座前に本店を構える老舗の弁当屋です。

全盛期には、本店以外に渋谷・たまプラーザ・吉祥寺・中目黒・目黒・六本木などにも店舗を展開していました。

歌舞伎座の役者や観劇客に長年親しまれてきましたが、2020年、後継者不在という事業承継問題に加えて、新店舗移転の投資負担や設備の老朽化などを理由に廃業を選択しました。

廃業前には譲渡先を模索し、話もまとまりそうになっていましたが、新型コロナウィルスの影響で譲渡計画も白紙となり、最終的に廃業を選択せざるを得ない状況となりました。

3.八景亭-彦根城に隣接する老舗料理旅館

八景亭は、滋賀県彦根市の彦根城に隣接する、玄宮楽々園という庭園内にある料理旅館です。明治時代の1886年頃から料理旅館として営業していましたが、高齢の経営者が病気で倒れたことで経営を続けられなくなり、2017年に約130年の歴史に幕を閉じました。

廃業前に後継者を探しましたが適切な後継者をみつけることはできず、また、江戸時代に建てられたとされる建物自体の老朽化などにより経営の継続は困難であると判断しました。

八景亭のように、これまで元気だった高齢の経営者が病気で倒れると、突然、事業承継問題が顕在化するケースがあります。円滑な事業承継のためには、早めに対策を講じておくことが重要です。

7. 2025年問題を先読みした事業承継の対策

2025年問題に端を発する事業承継問題は、日本経済、特に地域経済に大きな損失をもたらすと予測されています。

日本政府は、中小企業が抱える事業承継問題を解説するための支援策を打ち出していますが、後継者探しやM&Aの相手先探しが難しい場合もあります。

廃業せずに会社を存続させるためには、2025年問題を先読みして積極的に事業承継を進めていく必要があります。

1.事業承継は時間がかかる

事業承継を行うためには、まず後継者を探さなければなりませんが、経験や技術に加えてリーダーシップなどの経営者としての資質がある人物をみつけることは簡単ではありません。

もし適切な後継者がいなければ、M&Aによる事業承継を検討することになります。中小企業庁は全国47都道府県の事業引継ぎ支援センターで、M&Aを活用した事業承継を支援しています。

しかし、M&Aで事業承継を行うにしても、事前の準備や事業承継のスケジュールや計画の策定、相手先の選定など、事業承継には時間がかかります。

2.後継者がいても育成に時間がかかる

中小企業や小規模事業者のなかには、すでに後継者が決定している場合もあります。例えば、跡を継ぐ意思がある子どもがいたり、従業員に適切な人物がいたり、外部から適任者を招へいするケースなどが考えられます。

どのようなケースであっても、後継者となる人物に経営を任せることができるようになるまでには時間がかかります。

後継者は時間をかけて経験を積んで技術を学び、従業員を引張っていくリーダーシップや従業員・取引先・顧客との信頼関係を築かなければ、事業承継後の経営に支障をきたす可能性もあります。

後継者不在という事業承継問題には無縁でも、後継者育成には時間がかかることを理解し、円滑な事業承継に向けて時間をかけて対策を取ることが重要です。

3.M&Aを望んでも最適な売却先が見つかるとは限らない

後継者がみつからずM&Aにより事業承継を行う場合は、売却先探しがキーポイントになります。経営者は営んできた事業はそのままに、従業員や取引先への待遇を保証してもらえるような企業に売却したいと考えるものです。

しかしながら、買収側は基本的に買収する価値のない会社を承継することはありません。買収によって、本来の経営が傾いたり、シナジー効果を得られなければお金をかけて買収するメリットがないためです。

事業承継問題に悩む中小企業や小規模事業者に、独自の技術力・設備・ノウハウがなければ、思ったような売却先をみつけることができない場合もあります。

4.専門的な知識が必要

M&Aは、事業承継問題を解決するための有効な手段です。しかし、M&Aにより会社売却する場合、相手先の選定や基本合意契約締結、表明保証条項の決定などを行わなければならず、専門的な知識が求められます。

2025年に向けて経営者の高齢化が進むなか、経営を継続しながら独自の力でM&Aを実施することは簡単なことではありません。円滑に事業承継を行うためには、専門家への相談が効果的です。

M&A総合研究所は、さまざまな業界で豊富な実績をもつM&A仲介会社です。事業承継問題や2025年問題に詳しいM&Aアドバイザーが丁寧にサポートいたします。

料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は譲渡企業様・譲受企業様とも完全無料です。

無料相談をお受けしておりますので、後継者不在などの事業承継問題にお悩みの経営者様は、M&A総合研究所にお気軽にご相談ください。

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8. 2025年問題のまとめ

本記事では、2025年問題について解説しました。超高齢化社会に突入する2025年までに、約127万社の中小企業や小規模事業者が後継者不在などの事業承継問題に直面すると予測されています。

これらの事業承継問題は、地域経済や日本経済全体に大きな影響を与えることが分かっており、経済産業省や中小企業庁は、円滑な事業承継のための対策を講じています。

【事業承継問題により廃業する中小企業の特徴】

  • 後継者がいない
  • 営者・従業員の高齢化

【2025年問題で廃業した中小企業事例】
  • 岡野工業-東京都墨田区にある町工場
  • 木挽町辨松-歌舞伎座前の老舗弁当店
  • 八景亭-世界遺産彦根城内にある料理旅館

【円滑な事業承継のために理解しておくべきポイント】
  1. 事業承継は時間がかかる
  2. 後継者がいても育成に時間がかかる
  3. M&Aを望んでも最適な売却先が見つかるとは限らない
  4. 専門的な知識が必要

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