2024年06月26日更新
個人で会社を買うには?サラリーマンが会社を買収する方法や注意点を解説
この記事では、サラリーマンが会社を買う方法や、そのメリット・デメリット、サラリーマンが会社を買う際の失敗する原因や成功のコツなどを解説します。300〜500万円で会社を個人で購入運営されている事例もあります。
目次
1. 個人で会社を買うことは可能
「会社を買う・買収する・M&Aをする」とは、大企業が億単位を超える金額を用意して行う印象があるかもしれません。しかし実際には、個人事業主やサラリーマンが、300万円や500万円、1,000万円といった金額で、小さな会社を買える時代です。
また、インターネットの普及によって、ネットで会社を買うことも容易になりました。まずは、なぜ個人で会社を買うのが身近になってきたのか、その要因を説明します。
2. 会社の買収が増加している要因
従来、会社買収に対してはネガティブなイメージを持たれる傾向にありましたが、近年では、活発に会社買収が行われるようになってきました。
ここでは、会社買収が増加している背景について説明していきます。
事業承継を行うため
昨今の中小企業では、事業承継問題が深刻化しています。高齢化した中小企業の経営者や個人事業主が引退時期を迎えても、少子化や価値観の多様化により、事業承継してくれる後継者が不足している状態です。やむを得ず廃業している中小企業・個人事業主も少なくありません。
中小企業の経営者や個人事業主にとって、自分の子供や親族が会社を継いでくれないために、業績が悪化したわけではないにもかかわらず、廃業を余儀なくされることは非常に悔しく、もったいないことです。
そこで廃業を免れる打開策として浮上したのがM&Aによる会社・事業の売却であり、M&Aによる事業承継は現在、増加の一途にあります。
マッチングサイトが普及してきているため
個人で会社を買える要因の1つとして、売却を検討している会社自体が「個人によって運営されているもの」であるケースが増えていることも挙げられます。最も典型的な例が「サイト売買・M&A」です。
現在では、インターネットやそれに付随するサービスの普及によって、「アフィリエイトサイト」や「ECサイト」を運営している個人・サラリーマンは少なくありません。そして、個人間でアフィリエイトサイトなどを売買する事例が増加しています。
サイト運営では、月に安定した売上を確保できるようになったり、サイト訪問者が増加したりすると、「サイト売買・M&A」を実施してサイトを売却することが可能です。
売りに出されているサイトを購入できるだけの金額を用意できれば、個人でも「事業化された」アフィリエイトサイトやECサイトを買えます。サイト売買の場合、「サイト運営」の「事業」を買っているので、「会社を買う」との表現が正しいかは微妙なところです。
サイト運営をしている個人は、ある程度売上が出てくると、「節税対策・社会的信用の獲得」などを目的に、「サイト運営」を法人化します。サイト運営を事業とする「法人」が売却されているケースもあり、その観点では、「個人でも会社を買うのが可能」といえるのです。
起業の手段としてM&Aが普及するようになったため
昨今は働き方改革により、柔軟な働き方ができるようになりました。一方で、終身雇用を前提にすることが限界になってきています。このような状況のなか、本業以外に副業に取り組む人も増加しているのが現状です。また、独立して起業する人も増えています。
その際、独立して一から起業するにはさまざまなリスクがあるため、起業手段としてM&Aをするケースが増加してきました。
3. 個人で会社を買うためには
個人が小さな会社を買う事例が増えていることを説明しました。しかし、「個人が会社を買うために、すべきことは何があるのか」などは、見当もつかない方が多いのではないでしょうか。そこで、ここからは個人が会社を買うために「すべきこと」を解説します。
具体的なすべきことは、以下のとおりです。
- 予算を決める
- 業種を決める
- 会社を探す
手順1:予算を決める
まずは、個人が会社を買う際に「自分がどのくらいの予算を使えるのか」認識しておく必要があります。会社を買うための金額を決めずに、会社選びをしてしまうのは危険です。自分自身の生活が困窮してしまうようでは、元も子もありません。
予算を決めるためには、ある程度「会社売買・M&A」の相場を知っておく必要があります。「個人が会社を買う際の相場金額」は後述しますが、購入する会社の「業種」や「規模」によってもさまざまです。
小さな会社を買う場合は、300万円や500万円ほどの金額ですむ可能性がありますが、1,000万円以上必要なケースもあります。「ネットで会社を買う」のか、「FAなどに相談して会社を買う」のかによっても、必要な購入金額は変わるでしょう。
自分が「どのような会社を求めているのか」「ネットで会社を買うのか、それともFAや仲介会社を利用するのか」といったポイントを明確にして、予算を決定するのが大切です。
手順2:業種を決める
購入したい会社の業種を決めましょう。会社の売却希望情報を探してみると、多種多様な業種の会社が売りに出されているのがわかります。ただやみくもに、自分の予算の範囲内で買えるという理由だけで会社を決めてしまっては、その後、失敗するリスクは高まるものです。
少しでも事業の失敗リスクを下げるためには、自分がこれからどのようなビジネスを行っていきたいのかを明確にしておく必要があります。
現在、サラリーマンで、個人で小さな会社を買うことで独立したいと考えているなら、現在の自分の職場・仕事と関連のある業種を選ぶことで、会社運営のスタートは切りやすいはずです。
手順3:会社を探す
自分が会社を買う際に使える金額と、これから成長させていきたい会社の業種を決定したら、いよいよ自分の希望に合う会社を探します。会社を探す方法は、主に以下の3種です。
- ネットで探す
- 公的機関を利用する
- FAなどに相談する
インターネットで探す
購入できる会社を探す方法として、最も手軽なのがネットで探す方法です。現在は、M&Aマッチングサイトと呼ばれるサイトを利用して、簡単に会社の売却情報を確認できます。このマッチングサイトを利用することで、ネットで会社を買うことも容易になりました。
M&Aマッチングサイトを利用するメリットは、自分があらかじめ決めておいた予算や業種に当てはまる売却希望の会社を、スムーズに探し出せる点です。
会社売買交渉の仲介や、契約書の作成、売買成立後のアフターサービスまで、徹底的に会社購入をサポートしてくれる仲介サービスを用意しているマッチングサイトもあるので、初めて会社を購入する場合でも安心して利用できます。
M&Aマッチングサイトに掲載されている会社の規模は多種多様です。300万円程度で購入できる会社もあれば、1,000万円を超える会社も掲載されています。また、マッチングサイトで取り扱われているのは、会社だけではありません。
アフィリエイトサイトやECサイトなどの売却情報も掲載されているので、「個人でサイトを購入したい」と考えている方でも利用できるでしょう。ネットで会社を探す方法は、「手軽にネットで会社を買う」「小さな会社を買う」こtを目的としている方に向いています。
公的機関を利用する
中小企業庁からの委託事業で各都道府県に設置されている公的機関「事業承継・引継ぎ支援センター」は、中小企業の事業承継全般のサポートを専門に行っています。その中の1つが「後継者人材バンク」です(「後継者バンク」という呼称の府県もあります)。
後継者人材バンクでは、後継者不在の中小企業・個人事業主と、既存企業の事業承継による起業を目指す個人とのマッチングを行っています。マッチングが成立すれば、事業承継・引継ぎ支援センターの支援を受けながら会社を買うことが可能です。
マッチングのためには、事業承継・引継ぎ支援センターの連携機関である商工会議所などを通して、後継者人材バンクの名簿の登録を申請し、面談を経て認められる必要があります。
FAなどに相談する
自分のニーズに合った会社の探し方として、FAやM&A仲介会社に相談する方法があります。FAとは「ファイナンシャル・アドバイザー」のことで、会社売買・M&Aの助言をしてくれる業者のことです(FAは「M&Aアドバイザー」と呼ばれることもあります)。
個人がFAやM&A仲介会社を利用しようと考える場合には、認識しておくべき点があります。FAやM&A仲介会社は、売買金額の相場が数億円を超えるような大型案件専門のところや、特定の業種に特化してサービスを提供するなどさまざまです。
FAなどの業者に依頼する際には、小規模M&Aを取り扱っている業者なのか、あらかじめ調べておき適するところに相談に行くようにしましょう。
4. 個人で会社を買う流れ
ここでは「個人が会社を買う流れ」を解説します。会社購入を検討している方は、以下で説明する購入の流れを参考にしてください。
- 事前準備を済ます
- 売っている会社を探す
- 売買交渉の申し入れ
- 秘密保持契約などの締結
- 買収対象の代表と交渉
- 買い手によるデューデリジェンス
- 最終契約書の締結
- 代金支払い
①事前準備を済ます
企業を買収する前に、以下の2つの重要な点を確認しておきましょう。
- 予算:いくらで企業を買収したいのか、その上限金額を決めておきましょう。この金額には、仲介会社への手数料も含めることが必要です。
- 業種:どのような業種でビジネスをしたいのか、どの業種で自分が経営できると感じるのかを考えてみましょう。さらに、将来的な成長が期待できる業種も検討の対象にしてください。
これらのことが整ったら、M&Aの専門家である仲介会社に相談しましょう。多くの仲介会社は無料での相談を受け付けています。複数の会社と相談し、自分に最も適した会社を見つけて契約を結びましょう。
②売っている会社を探す
まずは、何といっても「売りに出されている会社を探す」ところから始めなければいけません。上述した「購入できる会社を探す方法」を使って、売っている会社を探しましょう。
ネットを利用して、「会社M&A」などと検索してみると、M&Aマッチングサイトや、マッチングサイト上で売りに出されている会社の一覧を簡単に閲覧できます。
できるだけ手軽にスムーズに売っている会社を探したければ「ネットで探す方法」を、「優良な会社を見つけたい」「安全に取引できる環境が良い」場合は「事業承継・引継ぎ支援センター」や「M&A仲介会社・FAの利用」を検討してみましょう。
1,000万円以下の予算で、小さな会社を買うことを目的としている場合には、「ネットで会社を探す」方法がおすすめです。M&Aマッチングサイトでは、1,000万円を下回る金額で売りに出されている会社を多く見つけられます。
マッチングサイトでは、売買交渉から取引の手続き、お金の受け渡しなども、ネット上で完結できるでしょう。マッチングサイトを使えば、手軽にネットで会社を買うのが可能になります。
③売買交渉の申し入れ
自分が希望する予算や業種にマッチしていて、相場価格にも特に問題がない会社が見つかったら、売買交渉の申し入れをしましょう。売買交渉の申し入れとは、「会社を買いたい」意向を相手に伝えることです。
マッチングサイトで買いたい会社を見つけた場合は、そのマッチングサイト上で相手の企業にメッセージを送りましょう。FAやM&A仲介会社を利用している場合は、仲介会社に「買いたい会社が見つかった」旨を報告しましょう。
④秘密保持契約などの締結
売買交渉を申し入れたら、秘密保持契約の締結を行いましょう。秘密保持契約とは、売り手がM&Aの判断材料として提示した会社の情報を外部に漏らさないことを約束する契約のことです。
これはM&Aが成立するまでの情報漏えいのリスクに対応するためであり、違反行為が発覚したケースを想定して、損害賠償請求を定める場合もあります。秘密保持契約を締結したら、売却対象の会社や事業に関する情報が詳細に記載された資料を閲覧できるでしょう。
⑤買収対象の代表と交渉
「ネットで会社を買う」ことを目的に、マッチングサイトを利用している場合は、売り手の代表と直接交渉するケースも多くなります。売買希望価格が300万円以下のような、小さな会社を買う場合には、直接交渉でも問題ないかもしれません。
売り手側、買い手側のお互いが人物、ビジネスの理解を深め、疑問点などがあればそれを解消するため、話し合い(トップ面談)を行います。M&Aを行った後の経営戦略、信頼できる相手かどうかの見極めなど、数字では見えない部分を確認するのが大切です。
ただ、初めて会社を買う場合や、普段はサラリーマンをしているため調べたり考えたりする時間がない場合は、マッチングサイトの仲介サービスの利用を検討してみましょう。
仲介サービスでは成功報酬を支払う必要がありますが、M&Aのプロが売買交渉の仲介をしてくれるため、M&Aについてあまり詳しい知識を持っていない人でも、安心して売買交渉ができます。FAや仲介会社を利用する場合も、交渉をM&Aのプロが代行してくれるので安心です。
会社売買の交渉内容は、会社の売買金額や従業員の雇用など、さまざまな重要事項を話し合います。交渉が大筋でまとまった段階で基本合意書の締結です。基本合意書は合意内容の確認書で、法的拘束力はなく会社を買うことが成約されたわけではありません。
ただし、例外的に以下の事項には法的拘束力を持たせます。
- 買い手の独占交渉権
- デューデリジェンスへの売り手の協力義務
- 秘密保持
⑥買い手によるデューデリジェンス
基本合意書が結ばれた後は、買い手によるデューデリジェンスが行われます。デューデリジェンス(DD)とは、買い手が士業などの専門家に依頼して、買う対象となる企業・事業に関する情報を収集・分析・検討する手続きのことです。
買い手は、デューデリジェンスによって、企業価値評価に必要な情報や売買取引に必要な成功、M&Aの支障となり得る要素などを把握できます。
⑦最終契約書の締結
デューデリジェンスを行った結果、特に問題はなく、基本合意どおりに会社を買うことになれば、「会社譲渡の内容」「売買価格」などを定めた最終契約書の締結が行われます。
⑧代金支払い
最終契約書の締結が完了したら、会社の買い手は、売買代金を支払います。代金の支払いが完了した段階で、会社は譲渡され、無事にM&Aの完了です。それら一連の契約内容の履行のことをクロージングといいます。
5. 個人で会社を買う際の相場金額
個人が会社を買う際の相場金額はどのくらいなのでしょうか。昨今では、専門家が書籍やWebサイトなどで、個人が会社を買うことをすすめているのをよく目にします。
そのような個人レベルでの会社売買に関する本やサイトでは、「300万円~」や「500万円~」などの金額設定がされているケースが多いでしょう。M&Aマッチングサイトで現在売りに出されている会社の希望売却額は、「200万円~1,000万円」の間で設定されているものが多いです。
このようなことから、個人が会社を買う際の相場金額は、およそ「300万円~500万円」と判断できます。ネットで会社を買う際には、最大でも「1,000万円」用意できれば、問題なく売買交渉ができるでしょう。
会社購入の予算を検討する際には、この相場金額を意識しておくことも重要です。売り手企業が、あまりにも相場とかけ離れた金額を提示してくる場合には、失敗リスクも考えられるので、慎重に会社概要・事業内容などを検討する必要があります。
6. 個人で会社を買うメリット
ここでは「個人が会社を買うメリット」を紹介します。考えられるメリットは、以下の4つです。
- 資産が増える可能性がある
- 不労所得化できる
- ビジネスの勉強になる
- 新規事業立ち上げコストを削減できる
資産が増える可能性がある
個人で会社を買う最大のメリットは、「個人の資産が増える可能性がある」ことです。会社を買うことで資産を増やす手段は、主に役員報酬と会社売却の2種類が考えられます。
役員報酬
もし、すでに十分な利益を生み出している会社を買うとすれば、役員報酬によってサラリーマンや個人事業主として得られる以上の収入を獲得できます。
たとえば、買った会社を10年間経営する場合、役員報酬を毎年1,000万円もらえると仮定すると、「1,000万円×10年=1億円」となるので、10年間で総額1億円の収入獲得です。
もちろん、会社の規模が小さければ、その分役員報酬の額も下がりますし、会社をもっと大きく成長させられれば、さらに多額の報酬受け取りも可能となります。
会社売却
購入した会社を経営して、これまで以上に利益を伸ばしたり、会社を成長させたりできると、今度はその会社を売却し、会社売却益を得るのも可能です。たとえば、営業利益が100万円の会社を「300万円」で購入したとします。
その後、会社経営の結果、営業利益が400万円まで伸びた場合、会社売却する際の相場価格は「純資産(資産と負債の差)+営業利益×3~5」の計算です。純資産がゼロと仮定した場合、会社売却額はおよそ1,000万円になります。
この会社を300万円で購入していたので、売却益は「1,000万円-300万円=700万円」です。
不労所得化できる
会社を買うことで不労所得を手に入れられるかもしれません。不労所得とは、労働する必要のない所得のことです。すでに利益を生み出している会社を買う場合、その会社自体が自分の所得を生み出してくれる状態といえます。
会社だけに限らず、法人化されていて、すでに収益が出ているアフィリエイトサイトやECサイトなどを購入し、自分がサイトを構成したり、記事を作成したりする必要のないまま、つまり、不労所得の獲得が可能です。
ビジネスの勉強になる
これまでサラリーマンとして働いていた個人でも、会社を購入して経営をするとビジネスの勉強になります。本を読み、セミナーに参加するのでもビジネス・経営の勉強はできますが、実際に会社を経営してみることほど効果的なビジネスの勉強はないでしょう。
新規事業立ち上げコストを削減できる
会社を買うことのメリットとして、「新規事業立ち上げコストを削減できる」ことがあります。サラリーマンが「独立して会社経営したい」と考えた場合、自分で一から事業を立ち上げるには、多くの時間や多額の初期費用、優秀な人材を集める労力などが必要です。
しかし、すでにできあがっている会社を買うことで、時間・費用・労力といったコストを大幅に削減し、すぐに会社経営を始めるのが可能になります。いずれにしろ、個人が会社を買う判断をするには、専門家に相談することが得策です。
7. 個人で会社を買う際の注意点
会社を買う際には注意点もあります。この注意点を意識しないまま、M&Aの手続きを進めてしまうと、自分のお金を無駄にしてしまいうかもしれません。会社を買う際には、以下の注意点を確認しましょう。
- 買収する企業は自分でリサーチする
- 顧客や従業員の感情面も考える
- 経営に割けるリソースを明確にする
- 簿外債務が潜む可能性を考慮する
- 会社が連帯保証をしている可能性を考慮する
- 脱税の可能性を考慮する
- 贈収賄の可能性を考慮する
買収する企業は自分でリサーチする
買収する会社・事業は、自分でしっかりリサーチするのが大切になります。特に何も考えずに、何となくという理由で会社を買おうとするのは非常に危険です。
相場金額とかけ離れていないか
売りに出されている会社が提示する売却希望額が、相場価格と離れすぎてはいないか確認できるのはとても大切です。相場がいくらか知らないまま、M&Aに手を出してしまうと、相場価格よりも高い金額で会社を買わされるリスクがあります。
売り手の話をうのみにしない
FAやM&A仲介会社を利用している場合は問題ありませんが、手軽にネットで会社を買うことを目的に、M&Aマッチングサイトを利用する場合、会社の売買交渉などを売り手と直接行うケースがあります。この場合、売り手の話をうのみにし過ぎるのは危険です。
あまり知識がない人と思われてしまうと、会社・事業の内容、業績などに関して虚偽の報告をされてしまう可能性もあるでしょう。自分で相手の会社情報を調べることをせず、相手のいうことを全て信じてしまうと、M&Aに失敗する可能性も高まります。
顧客や従業員の感情面も考える
購入する会社には、そこで働いている従業員や、その会社と取引をしている顧客が存在します。個人が会社を買い、社長・経営者が変わってしまうことを、「良いこと」とは感じない従業員・顧客がいることも頭に入れておくのが大切です。
会社を買うことを考えている場合、その会社に関係する人の感情面にも十分配慮する必要があります。従業員からM&Aの理解が得られない場合、優秀な人材が流出し、シナジー効果が得られないケースもあるものです。
M&Aによって就労環境や労働条件が変化した場合、人材が流出してしまう可能もあるでしょう。優秀な人材流出を防ぐためには、処遇の維持、評価や給与制度の見直し、将来の見通しなどの情報共有や理解を得るのが大切です。
経営に割けるリソースを明確にする
企業を買収する際、経営に割けるリソースを明確にすることが重要です。リソースの把握が不十分だと、適切な会社の選定しづらくなります。
例えば、時間や人材、資金が限られている場合は、自走できる安定企業を選ぶ必要があり、買収する候補が少なくなります。買収後の後悔を避けるためにも、まずは自身のリソースを正確に評価し、それに見合った企業を選定することが不可欠です。
簿外債務が潜む可能性を考慮する
個人で会社を買う際には、簿外債務が潜む可能性をしっかりと考慮しておく必要があります。簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務のことです。中小企業では、税務会計を実施して決算書を作成します。
その税務会計の際、税金を減らすことを目的に、計上される利益を少なくさせるのはよく行われていることです。その結果、中小企業の貸借対照表では、未払い給与や賞与引当金、退職給付引当金などが簿外債務として計上されることになります。
会社を買う場合、株式譲渡であれば包括承継です。包括承継では簿外債務も引継ぐことになります。賞与引当金や退職給付引当金などの簿外債務であれば大きな問題はありませんが、訴訟などが関係しているような簿外債務・不正な簿外債務などだと、非常に危険です。
リスクがありそうな簿外債務が確認されたら、その会社の購入は控えるようにしましょう。
会社が連帯保証をしている可能性を考慮する
買収を検討している会社が連帯保証をしている可能性を考慮しておくのが肝要です。連帯保証をしている場合、会社を売買したくても取引が成立しない可能性があります。
小さな会社を買う場合、会社のオーナー自身が個人的に連帯保証をしたうえで銀行から借入を行っているのはよくあることです。通常は、会社を買うとその会社のオーナーが結んだ連帯保証も引継ぐ必要があります。
その際に、自分の信用力が低く資金力もそこまで多くない場合には、連帯保証の引継ぎが認められない可能性があるのです。連帯保証を引継げないと、会社自体も買収ができません。
相手の会社をよく調べておかないと、連帯保証などがあるのを知らないまま売買交渉を進めてしまう危険性もあります。連帯保証をしている可能性を考慮して、M&A交渉を進めていくようにしましょう。
脱税の可能性を考慮する
業績のよい買収先が見つかったからといって、その決算書をうのみにし過ぎるのはよくありません。会社によっては、法的に禁止されている脱税行為を行っている可能性もゼロではないからです。
気づかぬうちに脱税行為をしていた会社を買ってしまい、いつの間にか自分が脱税に加担した状態になってしまっては本末転倒でしょう。
ただし、これまでサラリーマンをしていた個人が、一目見ただけでその会社が脱税しているかどうか見分けることは非常に難しいものです。デューデリジェンスを通して、専門家に脱税のようなリスクを洗い出してもらう必要があります。
贈収賄の可能性を考慮する
脱税と同じように、買収する会社が贈収賄をしている可能性がないか考慮しましょう。贈収賄とは、いわゆる賄賂(わいろ)を送ったり、受け取ったりすることです。特にその会社が公的機関と頻繁に取引するような事業を展開している場合には、注意が必要かもしれません。
この贈収賄に関しても、これまでサラリーマンをしていた人には縁遠く、個人の力で見抜くことは困難といえます。デューデリジェンスで、考えられるリスクをしっかり洗い出してから、会社売買を進めていくようにしましょう。
8. 個人が500万円で買える会社5選
ここからは、「現在サラリーマンをしているけれど、会社を買って経営者になりたい」「会社を買収して個人事業主から一歩ステップアップしたい」などと考えている方のために、500万円で買える会社を紹介します。
金額を500万円にしたのは、個人が会社を買う際の相場価格がおよそ「300万~500万円」と考えられるためです。「500万円で買える会社」なので、売却希望価格が200万円や300万円の会社も紹介しています。
ここで紹介する会社は、現在M&Aマッチングサイト上に売却情報が掲載されている会社です。ネットで会社を買うことを検討している方にも役立つ情報といえます。
500万円で買える会社①:太陽光発電機などの営業会社
創業10年未満の太陽光発電機やオール電化、それに関連するリフォームなどの営業を行う会社が、M&Aマッチングサイト上で売却を希望しています。
譲渡希望価格は「500万円」とされていますが、サイト上で掲載されている情報によると、売上は1,000万円を大幅に超え「3,000万~5,000万円」です。会社の業種は建設・工事業で、会社の所在地は大分県と記載されています。
500万円で買える会社②:イタリアンレストラン
売上は「5,000万~7,000万円」と掲載されています。この規模の売上がありながら、譲渡希望価格は「250万円」です。
500万円で買える会社③:映像制作会社
この映像制作会社は、テレビ制作会社に長年在籍していた方が社長となり立ち上げました。2018(平成30)年には、ドローンによる映像撮影に精通している人物を役員として迎え入れたそうですが、資金不足のために会社譲渡を検討しているようです。
売上は、「3,000万~5,000万円」、譲渡希望価格は「250万円」とされています。会社売却後も、社長・従業員ともに全員が会社に残る意思があるそうです。
500万円で買える会社④:不動産賃貸・管理業
東京都にある不動産仲介会社が売りに出されています。2011(平成23)年に設立され、従業員数は社長と男性従業員の計2名です。売上は約3,000万円で、銀行借入が1,500万円、役員借入が400万円あります。売却金額は「300万円」を希望しているようです。
500万円で買える会社⑤:ビジネスバックの企画・製造・販売
東京都にあるビジネスバックの企画・製造・販売事業を行う会社が、M&Aマッチングサイトで売りに出されています。売上は「2億~3億円」です。売上高は非常に高いですが、希望売却金額は「300万円」となっています。
9. 個人が100万円で買える会社5選
個人が会社を買う際の相場価格がおよそ「300万~500万円」ですが、なかには100万円で買えるような会社も存在します。100万円であれば初期投資が少なくても買収可能であり、起業に比べて手間を大幅に減らすことができます。
金融機関から融資を受けなくても買収できる可能性が高いので、低リスクで起業したい方にもおすすめできるでしょう。
100万円で買える会社①:Webメディア
ブログやアフィリエイトサイトなどのWebメディアは、100万円で買える会社の典型例です。実店舗や在庫を持たないため、初期投資が少なくて済みます。
例えば、既に多くの記事を掲載しているWebメディアを購入すれば、一からサイトを立ち上げる手間を省き、リライトや新規記事追加で短期間で運営を開始できます。既存のコンテンツやSEOの基盤を活用することで、早期に収益化を目指せる点が魅力です。
100万円で買える会社②:理美容室
理美容室も100万円で買える会社があります。店舗や営業権だけでなく、経営ノウハウ、店舗のウェブサイトやSNSアカウントも引き継げる会社であれば、集客にも困りません。
後継者不足などで譲渡を検討する経営者が増えており、M&Aが事業承継の手段として選ばれることが多いです。既存の顧客基盤やマーケティング資産を活用できるため、経営リスクを抑えつつスムーズに事業を開始できます。
100万円で買える会社③:エステサロン
エステサロンも100万円以下での譲渡希望価額で売却されることがあります。瘦身やフェイシャルなどを提供するエステサロンは、設備の一部や顧客リストを含めて引き継げる可能性もあるでしょう。
設備投資の初期コストを抑えながら、すぐにエステサロン事業を始めることができます。
100万円で買える会社④:学習塾
小~高校生を対象とした教育サービスを提供する学習塾は、100万円前後での譲渡希望が出される場合もあります。
10年以上の営業実績を持っていたり、自走可能だったりする案件もあるため、個人で買う際におすすめできる選択肢です。新規経営者が事業を引き継ぐことで、即戦力としての立ち上げが可能です。
学習塾の譲渡では、教材や教室の利用権、またはオンライン教育プラットフォームなどのIT資産も引き継げる場合があります。地域密着型の学習塾が後継者不足により事業承継の機会を待っているような状況もあり、金額以上の価値が得られる案件も見つかりやすいです。
100万円で買える会社⑤:フィットネス施設
フィットネス施設も100万円程度で譲渡が可能な事業の一例です。居抜きでの譲渡案件が見られ、トレーニングマシンを含む設備を引き継ぐことができる可能性もあります。多額の設備投資がかかる業種のため、設備も含めた引継ぎは大きなメリットとなるでしょう。
地域密着型のフィットネスクラブが後継者不足から譲渡を検討しているケースもあります。場所柄や地域需要に基づいた顧客基盤も継承できる場合があり、新規経営者の負担を減らしてくれる可能性が高いです。
10. 個人M&A・会社買収を成功させるためのポイント
個人で会社を買うとなれば、成功させたいと考えるのは当然のことですが、成功のカギはどこにあるのでしょうか。個人M&Aや小規模M&Aを成功させるためには、以下の4点が重要なポイントです。
- リスク回避
- 最適なスキームの選択
- 相手先の決定
- スムーズな交渉
これらの要素の1つでもかけてしまうと、M&Aを成功させるのは難しくなるばかりか、時間や費用も無駄にかかってしまうでしょう。特にリスク回避は、専門知識がなければ十分に洗い出せない要素です。
総合的なリスクに対策を講じるためには、M&A専門家のアドバイスを受けながら行うことをおすすめします。M&Aでは、法律・税務の知識だけでなく業界の動向などの知識も必要です。案件ごとに明確な成功パターンはないので、柔軟な対応をしていく必要もあります。
利害関係者全員が納得する交渉をし、成約後のトラブルを防ぐには、豊富な知識と交渉力も必要です。価格交渉の内容次第ではトラブルが発生したり、破談になったりする可能性も少なくないため、M&Aのプロに依頼するのが成功への近道といえるでしょう。
11. 個人で会社を買う方法まとめ
個人で会社を買い、経営者になろうと考える人は増えています。300万〜500万円程度で会社を買うのが可能だからです。
現在、サラリーマンとして生活していても、優良な会社を見つけてうまく会社を経営すれば、サラリーマンのままでは獲得できないような資産を形成できるかもしれません。
ただし、会社を買うとなれば、失敗は許されません。リスクを減らすためにもM&A仲介会社などの専門家に相談すべきでしょう。
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