温泉施設業界のM&A動向!売却・買収事例5選と成功のポイントを解説!【2024年最新】

会計提携第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

温泉施設業界は、M&Aが盛んな業界とは言えないものの、今後は業界再編が進む可能性があります。本記事では、温泉施設業界のM&A動向にあわせて、売却・買収事例と成功のポイントも解説しますのでM&Aをご検討の際はぜひ参考にしてください。

目次

  1. 温泉施設業界の概要と動向
  2. 温泉施設業界のM&A動向
  3. 温泉施設会社をM&Aで売却するメリット
  4. 温泉施設会社のM&A・買収・売却事例5選
  5. 温泉施設業界のM&Aの成功のポイント
  6. 温泉施設業界のM&A・事業譲渡まとめ
  7. ホテル・旅館業界の成約事例一覧
  8. ホテル・旅館業界のM&A案件一覧
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1. 温泉施設業界の概要と動向

まずは、温泉施設業界の概要と動向について確認していきましょう。

温泉施設業界の概要と動向を確認することによって、どのような課題が業界に存在するのかを明らかとしていきます。

温泉施設業界とは

温泉施設業界は、銭湯、スーパー銭湯、健康ランド、スパなど、お湯に体を浸けることが可能な施設を運営する産業です。日本の風呂文化は古くから庶民の生活習慣として根付いており、石風呂や釜風呂、寺社の施湯、湯屋、銭湯といった形で発展してきました。

しかし、飲食や休憩機能、リラクゼーションといったサービスを組み合わせた大型の温浴施設は比較的新しいもので、1955年に創業した船橋ヘルスセンターがその先駆けとされています。

ここから半世紀程度で、自家風呂の普及により公衆浴場が減少する一方で、リラクゼーションニーズに合わせた温浴施設の数が増えてきました。

近年の温泉施設業界は、コロナ禍による影響を受けています。都心部の店舗売上が大幅に減少した結果、立地戦略を大きく変更する必要に迫られ、各企業に求められるのはコロナ禍に対応した店舗のスクラップアンドビルドです。

また、メニュー改善による客単価の向上や、雇用環境の変化から人材の確保・育成の強化がトレンドとなっています。

温泉施設業界の市場規模と動向    

温泉施設業界は、その市場規模や動向が、社会経済的な要因や消費者のニーズの変化により大きく影響を受けるものです。市場規模については、温浴施設業界の市場規模は約1兆1,000億円程度と推計されています。しかし、業界内部の動向を見ると、銭湯やその他の温浴施設の数は徐々に減少しているのが現状です。

ピーク時である1968年には全国に17,642軒の銭湯が存在したのに対し、2015年には4,293軒まで減少しました。温浴施設全体の数も、2007年の28,792軒から減少傾向にあります。この背景には、施設の老朽化、売上の減少、後継者不足、燃料費の高騰による経費の増加などが挙げられます。

業界全体の主な課題は、客数の減少、燃料費の上昇、施設設備の老朽化、水道光熱費の上昇です。これに対応するためには、経営方針の明確化と独自性の発揮、サービスの見直しと向上、施設と設備の改善、業務のIT化、人材育成などが必要とされています。

さらに、リラクゼーション・温浴ビジネス市場全体では、スマホアプリのリリースやWEB予約システムの導入など、DX(Digital Transformation)化の推進が求められています。また、客単価が下落傾向にあることから、サービスの多様化による単価向上や、海外事業の強化も重要な課題と言えるでしょう。

しかし、21%の経営者が「廃業」を考えており、10%が「浴場業以外への転業」を考えていることから、この業界の厳しい状況がうかがえます。それでも、マーケティング理論を駆使することで改善を図るケースもあり、滞留時間の長期化、温度帯集客、清潔度数、人材育成を重視した新たなビジネスモデルも増加傾向です。

これらの経営者は、時代のニーズに合わせた業態を開発し、異業種からの参入も含めて業界の活性化を図っています。

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2. 温泉施設業界のM&A動向

温浴施設業界におけるM&Aの動向として、全体的にはまだ多いとは言えないものの、いくつかの注目すべき例が存在しています。例えば、純粋な温浴施設単独のM&A案件はほとんど見られませんが、旅館業界のM&Aの一部として温浴施設が譲渡されるケースです。

また、一般的な公衆浴場(銭湯)においては、20代から30代の若者が既存の高齢経営者から経営権を取得し、シェアオフィス付き銭湯、マッサージ中心の24時間営業銭湯、イベント銭湯、脱衣所で焼きたてピザを提供する銭湯など、若者目線のサービスを展開する例が見られます。

これら若者経営者は、SNSなどを用いて情報を発信し、既存の銭湯経営者には比較にならないほどの集客力を持っています。

具体的なM&Aの事例としては、2015年に米国の投資ファンドであるベインキャピタルが、お台場大江戸温泉物語を含む全国29カ所で温泉旅館や温浴施設を運営する大江戸温泉ホールディングスを買収しました。このM&Aは、訪日観光客の増加による需要増を見込んだものです。

また、2019年には極楽湯ホールディングスが、長野県の観光土産品販売企業タカチホが運営する5つの温浴施設事業をM&Aしました。当該事業の最近の売上高は約14億円で、営業利益は約6,260万円でした。極楽湯ホールディングスはフランチャイズを含め全国で40店舗を展開しており、新規出店だけでなく、今後もM&Aを通じて事業を拡大していくことが予想されます。

以上のように、温泉施設業界におけるM&A動向は少ないとはいえ、事業拡大や新規サービスの開発、さらには新たな顧客層の獲得を目指す企業にとって有効な戦略と言えるでしょう。

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3. 温泉施設会社をM&Aで売却するメリット

温泉施設会社がM&Aを通じて事業を譲渡する際のメリットは、ホテルや旅館業界と類似しており、以下の要素が挙げられます。

売却益の獲得

温泉施設会社の経営者がM&Aを通じて事業を譲渡することで、売却益を得られるというメリットがあります。

M&Aは企業価値を一定の金額として現実化する手段のひとつです。自社の資産を売却してキャッシュを得ることで、新たな事業への投資資金にもなります。また、経営者が引退した後の生活費に充てるといった選択も可能です。

また、事業の売却はリスクの軽減にもつながり、事業の不確実性や経営リスクからの解放を可能にします。

事業継続と従業員の雇用の確保

温泉施設会社の経営者が後継者不在や経営難で事業を止めるしかない状況でも、M&Aを通じて他の企業に事業を譲渡することで、事業の継続が可能です。これは、従業員の雇用を維持することにつながり、社会的な責任を果たす意味でも大切な要素と言えます。

また、地域に密着した温泉施設は地域経済に大きな影響を与える可能性もあるでしょう。事業を継続することは、地域経済への影響を抑えることにもつながります。

経営の改善と強化

M&Aは事業の統合を通じて、効率化や収益力強化を図ることが可能です。

譲受側の企業が持つ新たな経営資源や経験を活用することで、事業の競争力を向上させ経営基盤を強化することが期待できます。これにより得られるメリットは、持続可能な経営の実現や更なる事業拡大につながる可能性です。

また、譲受側企業が持つ新たな視点や技術を活用することで、業務プロセスの見直しやサービス改善が可能となり、その結果、顧客満足度の向上や新たな顧客層の開拓など、事業の発展に寄与します。さらに、一部の企業ではM&Aによって新たな市場に進出し、ビジネスチャンスをつかめることもメリットです。

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4. 温泉施設会社のM&A・買収・売却事例5選

温泉施設業界のM&A・買収・売却事例はそれほど多いわけではありません。

ここでは、近年行われた温泉施設会社のM&A・買収・売却事例について紹介していきます。

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アルファクス・フード・システムがナチュラルグリーンパークホテルの宿泊・天然温泉に関する事業を譲渡した事例

2022年11月、株式会社アルファックス・フード・システムは、ナチュラルグリーンパークホテルに関する不動産とホテル関連事業を譲渡することを決定しました。

事業譲渡を行うタイミングで、アルファックス・フード・システムは、債務超過の状態でした。債務超過解消に向けた取り組みの一環として、宿泊施設運営に専門性を持つリゾリート株式会社に事業を譲渡しています。

この事業譲渡によって、アルファックス・フード・システムの本業であるASPサービス事業に経営資源を集中する狙いがあります。

参考: アルファックス・フード・システムによる事業譲渡

ビジョンがこしかの温泉を子会社化した事例

2021年11月、株式会社ビジョンは、こしかの温泉株式会社を子会社化することに成功しました。

ビジョンは、国内外でのモバイルインターネット接続を提供するグローバルWiFi事業と、主に新興法人やベンチャー企業に向けた多岐に渡る情報通信サービスを展開する情報通信サービス事業を展開している企業です。

既存の情報通信サービス事業とグローバルWiFi事業に次ぐ第3の事業領域として、ビジョンは「グランピング事業」を2022年の前半に開始する計画で、そのための準備を進めていました。

グランピング事業では、プライベートな空間を確保できる独立したドーム型テントを提供し、自然と一体になるキャンプの魅力を体験できるようにしています。

こしかの温泉は、当社グループの想定する施設を備えており、新たな事業の発展を推進する力となると確信しています。これがビジョンが今回の株式取得に至った理由となっています。



参考: ビジョンがこしかの温泉株式会社を子会社化

穴吹興産が祖谷温泉と祖谷渓温泉観光を子会社化した事例

2020年6月、穴吹興産株式会社は祖谷渓温泉観光株式会社と有限会社祖谷温泉を子会社化することに成功しました。

穴吹興産グループは、第一イン高松の運営に加え、香川県及び岡山県でホテル5施設・旅館1施設を運営しています。その他、公共施設などの指定管理者事業を行っている企業です。

旅行事業にも力を入れており、四国八十八ヶ所巡礼の旅や自社企画バスツアーなど国内の旅行事業の他、2013年からはインバウンド事業を開始するなど、海外からの顧客の受け入れも開始しています。

今回の祖谷温泉の子会社化によって、観光関連事業の拡大、四国・瀬戸内地域全体の観光促進を行う狙いです。

参考: 穴吹興産株式会社による祖谷温泉の子会社化

極楽湯ホールディングスがエオネックスと利水社を子会社化した事例

2020年3月、極楽湯ホールディングスのグループに所属する日本アジアグループ株式会社の子会社で、国際航業株式会社の子会社である株式会社アスナルコーポレーションが、株式会社エオネックスと株式会社利水社の全株式を取得して子会社化することに成功しました。

極楽湯ホールディングスは、日本と中国で「極楽湯」「RAKU SPA」ブランドの温浴施設を展開している企業です。近年は、顧客の多様なニーズに応えるため、宿泊型温浴施設の新規開店や、既存温浴施設の引き継ぎによる直営店の拡大を積極的に推進してきました。

今回買収したエオネックスグループは、北陸地域を始めとする全国で温泉掘削や温泉設備工事、地質調査、測量および温浴施設2店舗の運営などの事業を行っている企業です。

温浴施設が増加する中で、設備の保守・メンテナンスの強化が安定的な運営に不可欠であるとし、既にビジネス関係にあったエオネックスグループとの資本結びつきを深めることによって、既存の温浴施設の運営を効率的かつコスト効率良くサポートする体制を築くことが可能になると考え、今回の子会社化に至りました。

参考: 極楽湯ホールディングスによるエオネックスと利水社の子会社化

アールビバン株式会社がタラサ志摩ホテル&リゾートの事業を譲渡した事例

2018年5月、大江戸温泉物語グループの子会社である大江戸温泉物語株式会社は、アーバンビル株式会社からタラサ志摩ホテル&リゾートを譲り受けることに成功しました。

タラサ志摩ホテル&リゾートは、1992年4月の開業以来、客室122部屋、レストラン、会議・パーティースペース、そしてスパ設備を提供しています。

今回事業を引き受けた大江戸温泉物語グループは、今後、売上規模の拡大を目指しています。

参考: 大江戸温泉物語グループ株式会社によるタラサ志摩ホテル&リゾートの譲受

5. 温泉施設業界のM&Aの成功のポイント

M&A(企業の合併や買収)により、多くのビジネスにおいて事業拡大や新市場への参入の機会を得られます。一方で、さまざまな要素がM&Aの成功を左右するため、ポイントを押さえることが大切です。このセクションでは、温泉施設業界におけるM&Aを成功するための重要なポイントを説明します。

損益・負債状況の透明性と改善

企業の財務状況の透明性は、M&Aの過程で重要な要素です。

企業の損益や負債の状況が明確であるほど、買手はその企業の価値を正確に評価しやすくなります。反対に、損益や負債の状況が不透明な場合、買手は評価を下げたり交渉を躊躇したりする可能性もあるでしょう。

財務状況をきちんと把握し改善を図ることは、企業価値の向上や買手への信頼性向上につながります。

設備の状態の確認と更新

温泉施設の設備状態は、その施設の魅力となる要素のひとつと言えます。そのため、設備の現状を明確にし、必要に応じて更新することは、M&A成功のための重要なステップです。

買手は、設備が適切にメンテナンスされているか、また、必要な設備更新のための費用がどれくらい必要かを評価することで、適切な価値判断を行うことができます。

温泉権など許認可関係をはっきりとさせておく

温泉施設の運営には、温泉権や旅館業営業許可など、多くの許認可が関係しています。これらの許認可関係は、法的な問題を回避するために、M&A過程で明確にすることが大切です。

また、旅館業営業許可や不動産の名義など、個人と法人の間で混乱が生じやすい部分もあります。これらの問題を事前に解決し、明確にしておくことで、スムーズにM&Aを進行できるでしょう。

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M&A仲介会社選びにお悩みの場合は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、各業界のM&Aに精通したM&Aアドバイザーが専任となって案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です。(※譲渡企業様のみ)随時、無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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6. 温泉施設業界のM&A・事業譲渡まとめ

温泉施設業界のM&A・事業譲渡によって得られるメリットは多岐にわたります。経営者は手に入れた売却益を、新たな投資に充てたり退職後の生活費に充てたりと使い道はさまざまです。また、事業の継続を通じて従業員の雇用を守り、地域経済への影響も抑えるといった社会的責任も果たせます。

事業譲渡は経営の効率化や強化を促進し、譲受側企業の新たな視点や技術を利用して競争力を向上させます。温泉施設業界では、純粋な温泉施設のM&Aはまだ珍しいですが、若手経営者による公衆浴場のリノベーションや、観光増加に伴う需要増を受けたM&Aが行われるなど、変化の兆しも見られることから、今後の動向にも注目です。

7. ホテル・旅館業界の成約事例一覧

8. ホテル・旅館業界のM&A案件一覧

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