2021年08月25日更新
ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡!手法の違いを解説!どのスキームが得?
本記事では、ホテル・旅館のM&A手続きの際に必要となる、ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡における手法・スキームの違いや、ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡における手法・スキームごとのメリット・デメリットなどについて解説しています。
目次
1. ホテル業界の株式譲渡・会社譲渡解説動画
ホテル業界における新型コロナの影響と株式譲渡・会社譲渡(M&A)による課題解決について、M&Aコンサルタントが分かりやすく解説しています!
2. ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡
はじめに、ホテル・旅館の定義や、ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡の現状について解説します。
ホテル・旅館とは
ホテル・旅館とは、旅館業法に基づいてホテル営業許可や旅館営業許可を受け、宿泊業を営んでいる施設のことをさします。
旅館業法における旅館業とは「人を宿泊させることで宿泊代金をもらう営業行為」のことです。主に、洋式の宿泊施設はホテル営業許可を取得し、和式の宿泊施設は旅館営業許可を取得します。
しかし、明確に区分があるわけではなく、和式の宿泊施設がホテル営業許可を取得してホテルを名乗ることもあります。
ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡は可能か
中小規模のホテル・旅館の場合、経営が継続できなくなったら廃業という選択肢を選ぶケースが少なくありません。しかし、ホテル・旅館も株式譲渡・会社譲渡によって、第三者に事業を引き継ぐことが可能です。
近年は、中小企業経営者の高齢化や後継者問題により、国や地方自治体が手動で事業承継を推進しています。
ホテル・旅館でも、経営者の高齢化や後継者問題が課題となっていますが、株式譲渡・会社譲渡によってホテル・旅館の営業を継続できます。
また、近年では個人が小さなホテルや旅館を事業承継し、経営者になるというケースも出てきています。小規模のホテル・旅館はまだ廃業を選択する割合が高いですが、今後は株式譲渡・会社譲渡による営業継続が増えていくと予想されます。
3. ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡の手法の違い
ホテル・旅館における株式譲渡・会社譲渡の手法の違いや、それぞれのメリット・デメリット、手続き上の違いについて解説します。
【ホテル・旅館における株式譲渡・会社譲渡の手法の違い】
ホテル・旅館の株式譲渡 | ・保有株式を第三者に譲渡し経営権を移行 |
ホテル・旅館の会社譲渡 | ・新設分割=一部事業を新会社として分割し会社を譲渡 ・事業譲渡(全部譲渡)=ホテル・旅館を資産ごとに売却する売買取引 |
ホテル・旅館の株式譲渡とは
ホテル・旅館の株式譲渡とは、ホテル・旅館を運営する会社の株式を第三者に譲渡することで経営権を移行し、営業を継続する手法です。
中小ホテル・旅館運営法人の株式は、経営者と親族の役員ですべて保有しているケースも多いことから、株主の承認手続きなどがスムーズに進みやすいというメリットがあります。
ただし、多くの場合は株式に譲渡制限が適用されているので、専門家のアドバイスをもらいながら適正な手続きを踏む必要があります。
ホテル・旅館の会社譲渡とは
ホテル・旅館における会社譲渡は、一般的には株式譲渡と同じ意味で用いられていますが、厳密には、会社分割や事業譲渡の手法も一部含まれます。
会社分割の場合は、事業を分割して新しい会社を作り、新設された会社を譲渡する方法があります。複数の事業を行っている場合や、複数のホテル・旅館を経営している場合に用いることが可能です。
また、事業譲渡とは、事業の一部または全部を、現金を対価に売却する売買行為です。会社譲渡の場合は、事業をまるごと売却する全部譲渡が該当します。
株式譲渡のメリット・デメリット
株式譲渡には、以下のメリット・デメリットがあります。
【ホテル・旅館における株式譲渡のメリット】
- 従業員や取引先との再契約が不要
- 課税額が比較的安価
- 営業への支障が少ない
【ホテル・旅館における株式譲渡のデメリット】
- 簿外債務などを引き継ぐ可能性
- 反対株主や所在不明株主の存在
- 譲渡資産の選別が不可能
メリット
株式譲渡は、株主が変わることにより経営権が移るだけなので、従業員や取引先と契約をし直す必要がありません。そのため、手続きが比較的簡便で、営業も大きな支障なく続けられます。
また、中小のホテル・旅館運営会社では、オーナー経営者がすべての株式を保有しているケースもありますが、そのような場合は株式譲渡手続きが短期間で簡易的に進むこともあります。
ただし、株主が自分だけまたは親族だけだといって、適切な手続きを怠るケースもあります。後々トラブルになりかねないので、専門家にサポートしてもらいながら適切な手続きを行うことが大切です。
デメリット
株式譲渡は経営権を包括的に譲渡する契約なので、買い手側は債務も引き受けることになります。
売り手ホテル・旅館の財務などを丁寧に調べておかないと、株式譲渡完了後におもわぬ債務が発覚することもあります。
小規模のホテル・旅館の中には、管理が徹底されていないことが原因で、偶発債務が生じていることに気づかないまま手続きを進めているケースもあります。
そのため、株式譲渡手続きの際には、デューデリジェンス(内部調査)をしっかりと行う必要があります。
また、売り手側は、株式譲渡に反対する株主が現れたり、消息のわからない株主がいたりすることがあります。トラブルを防ぐためにも、事前に専門家の助けを借りるなどして整理しておくことが重要です。
会社譲渡のメリット・デメリット
会社譲渡には、以下のメリット・デメリットがあります。
【ホテル・旅館における会社譲渡のメリット】
- 譲渡する資産を選別できる
- 債務の引き継ぎが不要(事業譲渡の場合)
- 株式を対価に買収可能(新設分割の場合)
【ホテル・旅館における会社譲渡のデメリット】
- 手続きが煩雑
- 従業員や取引先から個別同意が必要(事業譲渡の場合)
- 許認可の再取得が必要(事業譲渡の場合)
- 課税額が高くなりやすい
メリット
事業譲渡・会社分割を用いた会社譲渡の場合、株式譲渡と違い、譲渡する資産を選ぶことが可能です。特に事業譲渡の場合は、個別に資産を選択します。
そのため、株式譲渡のように債務を引き継ぐ必要がありません。また、新設分割の場合、買い手側は現金で対価を支払う方法以外にも、新株を発行して対価とする方法があります。
資本はあっても、現金を内部留保していないといった場合には、有効な方法です。
デメリット
事業譲渡や会社分割を用いた会社譲渡では、株式譲渡よりも手続きが煩雑になります。
特に事業譲渡の場合、売り手側は従業員や取引先から個別に同意を得る必要があり、買い手側は従業員や取引先と改めて契約をする、許認可を取り直すなどの手続きが必要です。
また、譲渡資産が多いほど株式譲渡よりも課税額が高くなりやすいというデメリットもあります。
事業譲渡は、資産や従業員・取引先が多いほど手間とお金がかかる方法ですが、小規模のホテル・旅館になるほど負担は少なくデメリットも小さくなります。
株式譲渡と会社譲渡の手続き上の違い
株式譲渡と、事業譲渡を用いた会社譲渡手続きの簡単な流れは以下のようになっています。
【株式譲渡(株式譲渡制限のある会社の場合)】
- 株主が会社へ譲渡承認請求書を提出
- 取締役会による承認
- 株主総会の招集通知
- 株主総会の決議
- 売り手と買い手による株式譲渡契約の締結
- 株主名簿の書き換え
【会社譲渡(事業譲渡を用いた場合)】
- 取締役会による承認
- 株主総会の招集通知
- 株主総会の決議
- 事業譲渡契約の締結
- 各譲渡資産の名義変更
- 各許認可の再取得
- 譲渡事業に関わる取引先・従業員との再契約
メリット・デメリットでも触れたように、譲渡資産の名義変更や許認可の再取得、取引先や従業員との再契約など、事業譲渡による会社譲渡の方が、必要な手続きが多く発生します。
いずれの手続きも的確に行う必要があるので、M&Aの専門家に随時相談しながら進める必要があります。
4. ホテル・旅館の引継ぎは株式譲渡・会社譲渡が得?
株式譲渡と会社譲渡のメリット・デメリットについてご紹介してきましたが、ホテル・旅館の引継ぎに適した手法・スキームについて解説します。
採用件数の多い手法・スキームとおすすめの手法・スキームを簡単にまとめると、以下のようになります。
採用件数が多い手法・スキーム | 株式譲渡 |
おすすめの手法・スキーム | 株式会社の場合=株式譲渡 株式会社以外の場合=事業譲渡 |
件数が多いのはどの手法・スキームか
中小ホテル・旅館運営会社のM&Aで最も多く用いられているのが、株式譲渡です。株式譲渡は、手続きが簡便で短期間で完了させることも可能なことから、中小企業のM&Aで多く採用されています。
対して、株式会社以外のホテル・旅館の場合、事業譲渡による会社譲渡が用いられます。事業譲渡は、譲渡規模が大きいほど手続きが煩雑で時間と費用もかかりますが、小規模のホテル・旅館にとってはデメリットが小さくなります。
一方、会社分割による会社譲渡は中堅企業・大企業では用いられますが、中小企業で用いられることはほとんどなく、中小ホテル・旅館で用いられることもまれです。
おすすめはどの手法・スキームか
前述したメリット・デメリットや上記の採用件数などから、株式譲渡が最適な手法・スキームとして多く採用されていることがわかります。
また、株式会社以外で小規模なホテル・旅館であれば、事業譲渡によるM&Aが採用されます。
株式譲渡や事業譲渡は手法として使いやすい点が利点ですが、それ以外に事業承継を取り扱う仲介会社・地方銀行・公的機関なども、株式譲渡や事業譲渡の実務経験を持っている点がメリットです。
M&Aを円滑に行うには十分な知識と経験が必要となるため、よく用いられる株式譲渡と事業譲渡の方が仲介機関もスムーズに実行できます。
5. ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡に関する注意点
ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡で注意する必要がある以下の点について解説します。
- 許認可の引継ぎ
- 従業員の引継ぎ
- 資産・株式・負債などの引継ぎ
①許認可の引継ぎ
先述したように、手法によって許認可を引き継げるケースと引き継げないケースがあります。
ホテル・旅館業にはさまざまな許認可が必要となりますが、許認可の再取得が遅れた場合、営業を一時休業しなければならないことにもなりかねません。
事業を引き継ぐ際は、事前に許認可の再取得が必要かどうか、許認可の申請にどれくらいの期間が必要かをあらかじめ確認し、余裕を持って申請しておかなければなりません。
②従業員の引継ぎ
ホテル・旅館業の従業員引継ぎには細心の注意が必要です。ホテル・旅館業において、従業員の存在は非常に重要です。
株式譲渡・会社譲渡の過程で従業員への説明タイミングや説明の仕方を誤ると、不安や不満を持たせることとなり、最悪の場合は大量離職にもつながります。
また、引継ぎ後の経営方針にも気をつけなければなりません。営業スタイルや接客ルールなどは、ホテル・旅館ごとに異なります。
ホテル・旅館の事業承継後における失敗例としてよく挙げられるのが、急激に新しいルールに変えようとした結果、従業員、特にベテラン従業員の反感を買ってしまうケースです。風土や価値観を尊重し、時間をかけてルールを変えていくことも必要です。
③資産・株式・負債などの引継ぎ
資産・株式・負債などの引継ぎでは、引き継ぐ範囲に注意が必要です。株式譲渡のようにホテル・旅館の債務も引き継ぐ場合は、偶発債務のリスクに備えなければなりません。
デューデリジェンスの段階で偶発債務などのリスクを洗い出すには、会計や財務調査などの専門知識が必要です。
また、事業譲渡のように、個別にホテル・旅館の資産を売買する場合は、土地・建物の契約手続きなど、不動産知識や法務知識も求められます。
6. ホテル・旅館の売却を考えるタイミング・理由
以下の理由が生じた場合は、ホテル・旅館の売却も検討するタイミングでもあります。
- 業績が芳しくなく悪化している
- 経営者が引退を考えている
- 新しい事業・注力したい事業がある
- 施設投資を考えているのに資金がない
- 従業員が集まらない
①業績が芳しくなく悪化している
ホテル・旅館が事業の売却を考えるタイミングとして、自力では業績の回復が見込めないケースがあります。
業績の悪いホテル・旅館に買い手が付くわけがないとの考えから、中小ホテル・旅館の中には、M&Aによる売却を検討しないケースも多くあります。
しかし実際には、想定していなかったような他業界の企業から打診があるなど、他企業がどのような魅力を見いだすかはわかりません。
業績が悪化し続けて廃業しかないと考える前に、いくつかのM&A専門家に相談してみることも1つの方法です。
②経営者が引退を考えている
経営者が高齢になったことから、ホテル・旅館の今後を考え始めるケースもあります。一般的に、後継者の育成に必要な年数は5年から10年以上とされています。
しかし、ホテル・旅館の経営は忙しく、後継者候補を決めて育成する余裕はなかなかありません。そのため、経営者が高齢により引退を考え始めるタイミングでは、事業を引き継ぐ十分な準備ができていないケースが多く見られます。
そのため、ホテル・旅館を親族や従業員に事業承継する場合や、M&Aによって第三者へ売却する場合は、期間に余裕を持って準備に取りかかる必要があります。
③新しい事業・注力したい事業がある
ホテル・旅館業を続けてきたものの、新事業や既存の他事業に注力したいというケースもあります。
しかし、ホテル・旅館を廃業して他事業を始めるとなると、資金で苦労することになります。また、廃業の場合は従業員や取引先などに迷惑をかけることにもなるでしょう。
株式譲渡・会社譲渡によってホテル・旅館業を売却できれば、売却益を他事業に充てられ、従業員の雇用や取引先の収益も守れます。
④施設投資を考えているのに資金がない
中小ホテル・旅館は、客室の増設や内装リフォーム、お風呂への投資などに資金を投入し、来客数を増やす戦略をとることがあります。
しかし、ほとんどのホテル・旅館は資金に余裕がなく、投資リスクを負えませんが、資金力のある大手企業などの傘下に入ることが可能であれば、苦しい資金繰りを解消できる可能性があります。
⑤従業員が集まらない
ホテル・旅館業界は、継続して働ける従業員の確保に苦労しています。従業員を集めるために人件費も高くなる傾向にあり、後継者問題とともに従業員不足は大きな問題です。
そのため、大手のホテル・旅館運営会社は人材確保目的でM&Aを行うこともあります。売り手側にとっても、売却によって従業員の雇用を確保できるメリットがあります。
7. ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡の相談先
ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡を行うには、会計知識や法務知識、不動産に関する知識が必要な他、ホテル・旅館業界の知識やM&Aの豊富な実務経験が必要です。トラブルを回避し、最良の結果を手に入れるには、M&Aのアドバイザーによるサポートが必要です。
M&A総合研究所では、実務経験豊富なM&Aアドバイザーが専任体制でサポートいたしますので、安心・スムーズにM&Aを進められます。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっており、着手金は完全無料です。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
8. まとめ
本記事では、ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡について、手法の違いや手法ごとのメリット・デメリットなどについて解説してきました。
【ホテル・旅館業における株式譲渡・会社譲渡の方法】
ホテル・旅館の株式譲渡 | ・保有株式を第三者に譲渡し経営権を移行 |
ホテル・旅館の会社譲渡 | ・新設分割=一部事業を新会社として分割し、会社を譲渡 ・事業譲渡(全部譲渡)=ホテル・旅館を資産ごとに売却する売買取引 |
【株式譲渡のメリット】
- 従業員や取引先との再契約が不要
- 課税額が比較的安価
- 営業への支障が少ない
【株式譲渡のデメリット】
- 簿外債務などを引き継ぐ可能性
- 反対株主や所在不明株主の存在
- 譲渡資産の選別が不可能
【会社譲渡のメリット】
- 譲渡する資産を選別できる
- 債務の引き継ぎが不要(事業譲渡の場合)
- 株式を対価に買収可能(新設分割の場合)
【会社譲渡のデメリット】
- 手続きが煩雑
- 従業員や取引先から個別同意が必要(事業譲渡の場合)
- 許認可の再取得が必要(事業譲渡の場合)
- 課税額が高くなりやすい
【ホテル・旅館のM&Aで採用件数が多い手法・スキームとおすすめの手法・スキーム】
採用件数が多い手法・スキーム | 株式譲渡 |
おすすめの手法・スキーム | 株式会社の場合=株式譲渡 株式会社以外の場合=事業譲渡 |
【ホテル・旅館の株式譲渡・会社譲渡の注意点】
- 許認可の引継ぎ
- 従業員の引継ぎ
- 資産・株式・負債などの引継ぎ
ホテル・旅館業では、以下の場合に、M&Aによる売却も選択肢の1つとなります。
- 業績が芳しくなく悪化している
- 経営者が引退を考えている
- 新しい事業・注力したい事業がある
- 施設投資を考えているのに資金がない
- 従業員が集まらない
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