2022年06月06日更新
クロスボーダーM&Aの成功要因・メリットを解説!件数も紹介!
クロースボーダーM&Aとは、国内企業と海外企業によるM&Aをさします。クロスボーダーM&Aは難しいといわれていますが、しっかりと検討し、リスクへの対処を怠らなければ成功へと導けます。この記事では、クロスボーダーM&Aの件数と成功要因、メリットを解説します。
目次
1. クロスボーダーM&Aの現状
クロースボーダーM&Aとは、海外企業の買収や合併によるM&Aをさします。
海外企業とのM&Aは大手ばかりが目に付きますが、クロスボーダーM&Aが行われているのは、大手企業に限りません。最近では、中小企業によるクロスボーダーM&Aも増加しています。
国内企業(IN)が海外企業(0UT)を買収するM&AのことをIN-OUTといい、海外企業(OUT)が国内企業(IN)を買収するM&AをOUT-INといいます。まずは、クロスボーダーM&Aの現状について解説します。
クロスボーダーM&A 3つの波
日本のクロスボーダーM&Aのトレンドは、これまで3つの波がありました。まず1つ目の波は1990年前後のバブル時期です。当時はオフィスビルやゴルフ場へなど、不動産投資が主な目的とするM&Aが多く見られ増加しました。
しかし、その後バブル崩壊により日本企業の海外投資への余力を奪い、減少しました。2つ目の波は、1990年代後半から2000年のITバブル時期です。IT関連企業による海外投資が拡大し、クロスボーダーM&A件数が増加しました。
3つ目の波は、2006年以降続く大きな波です。バブルの後遺症を克服して体力を持った日本企業が海外事業への強化に向けて、戦略的なクロスボーダーM&Aを展開しはじめました。買収金額も大型化し、2006年は8兆6,092億円と過去最高金額を達成しました。
その後リーマン・ショックの影響で一時的に停滞したものの、経済成長の続くアジアなどの新興市場獲得の動きが活発化しました。海外強化によるクロスボーダーM&Aの1兆円規模の案件が登場し、1,000億円を超える案件が増え、2015年には最多の23件を記録しています。
参照:経済産業省「我が国企業による海外M&A研究会」(平成30年)
IN-OUTは増加傾向
国内企業が海外企業を買収するM&AであるIN-OUTは、近年増加傾向にあります。特に、スタートアップや、ベンチャー企業によるIN-OUTが活発化しています。
日本国内の人口減少や少子高齢化による影響で、国内の市場は縮小傾向にあります。IN-OUTにより海外市場に手を伸ばすことで、規模の拡大や、売上の増加を目的としたM&Aを行う企業が増えています。
IN-OUTのクロスボーダーM&Aの規模は、大企業に限らず中小企業でも活発に行われています。
大型M&A
大規模なIN-OUTのクロスボーダーM&Aとして記憶に新しいのが、日本たばこ産業株式会社(JT)が1999年RJRナビスコ社の米国外たばこ事業(RJRI)を約9,400億円で買収した事例です。当時の日本企業のM&Aでは最高額でした。
そして2007年は英国Gallaher社を約2兆2,000億円で買収しました。この買収により、日本たばこ産業株式会社(JT)は、販売本数が世界で3位に入る、タバコ業界における大企業へと成長しました。
国内の広告業界で大企業である電通は、2013年に、イギリスの広告企業であるイージス社を約4,090億円で買収しました。
その後、多くの海外企業を買収し、国内だけでなく世界的に見ても広告業界における大企業へと成長しました。
新興国M&A
中国・インド・ベトナム・ブラジルなどをはじめ、新興国におけるM&Aも近年増加傾向にあります。
新興国におけるM&Aを行うための情報収集はとても難しいため、最初は小規模のM&Aを行い、徐々に情報を集め、大規模なクロスボーダーM&Aを行う日本企業が増加しています。
新興国では市場が成長段階にあるため、現段階で参入し、大きな利益を得るのを目的としています。
OUT-INは減少傾向
海外企業が国内企業を買収するM&AであるOUT-INは減少傾向にあります。前述したように、日本国内の経済市場は、縮小傾向にあるためです。
近年でのOUT-INのクロースボーダーM&Aの事例としては、ソフトバンクグループの子会社であるスーパーセルを、中国でゲーム事業を展開しているテンセントが買収した事例が挙げられます。このときの買収額は、約7,700億円です。
ソフトバンクグループの子会社であるスーパーセルは、元はフィンランドの会社であり、2013年にソフトバンクグループが1,515億円で買収した企業です。
元はフィンランドの会社ですが、ソフトバンクグループの子会社になった後、中国の企業が買収を行ったことから、OUT-INの事例として取り扱われます。
2. クロスボーダーM&Aの失敗確率
クロスボーダーM&Aが増加傾向にあるのなら成功した事例が多いようにみえますが、失敗確率は50%を上回り、成功率は10〜30%程度といわれています。
日本企業が今後の成長機会の獲得をするための海外展開は、重要性は増しています。しかし、クロスボーダーM&Aを経験した企業のうち、買収した企業の業績が「計画を上回って推移」していると回答した企業は12%に留まっています。
クロスボーダーM&Aの実行の難しさや実行後の想定どおりの結果が実行できずに、企業が軒並み失敗している可能性があります。
このことからも日本企業がクロスボーダーM&Aを成功させるためには、最大限のシナジーの効果の実現に向けて実行していき、M&Aにおいてはデューデリジェンスを含む、対象企業の綿密な調査が重要です。
参照:PwC アドバイザリー合同会社「M&A実態調査2019 クロスボーダーM&Aにおけるシナジーの発言に向けて」
3. クロスボーダーM&Aの成功要因
クロスボーダーM&Aの失敗確率が高いといわれていますが、なかには成功をおさめている企業も少なくありません。クロスボーダーM&Aを成功させるための鍵はどこにあるのか、成功要因を詳細に解説します。
バリュエーションの算定を間違えない
クロスボーダーM&Aにおいて、難しいのではないかと感じるのが、買収金額の算定です。今現在、売り手となる企業が市場において、ある程度のポジションを築けているのであれば、その数字から、バリュエーションの算定を行えます。
しかし、新興国とのクロスボーダーM&Aとなると、これからどれくらい経済市場において価値をもたらしてくれるのか、予想でバリュエーションの算定を行わなければいけません。
クロスボーダーM&Aにおいて、平均買収額は存在しますが、相場というものは、なかなか分かりづらく、買収しようとしている海外企業を、その相場に当てはめるのも難しいでしょう。
相場だからとバリュエーションを決めてしまうのではなく、買収候補先をしっかり調査し、バリュエーションの算定を間違えないようにしましょう。
シナジー効果の最大化
シナジー効果を最大に引き出すことは、クロスボーダーM&Aに限らず、すべてのM&Aにおいて重要です。
M&Aにおけるシナジー効果とは、M&Aを行うお互いの企業が、それぞれの価値や、良い点を引き出し合い、より多くの経済的価値を生み出すもので、相乗効果ともいいます。
シナジー効果を最大化するためには、候補先企業に関する情報を徹底的に集め、M&A最終契約書締結後のPMI実施を想定、スキーム策定などが大切です。
PMI実施を想定し、目的を明確にするのが、シナジー効果を最大化するためのポイントです。
ブレークアップフィー条項を事前に決定
M&Aにおけるブレークアップフィーとは、M&Aをしようと思っていたが、何らかの事情により、M&Aを行わないと決定したときの違約金に関する決まりです。
ブレークアップフィー条項を事前に決定しておくことで、企業の買収案件がなくなってしまった際に、買い手側の企業は、ブレークアップフィー条項で決めておいた違約金を受け取れます。
買収によるM&Aの場合、違約金の金額は、買収金額の1〜5%以内に設定されるのがほとんどです。
ブレークアップフィー条項を、しっかり事前に締結しておくと、さまざまな要因から契約ができなくなった場合でも、違約金を受け取れば損害を最小限に抑えられます。
デューデリジェンスに力を入れる
M&Aにおけるデューデリジェンスとは、買収審査のことで、一般的には買い手側が売り手側を対象として行われます。
デューデリジェンスは、基本合意書締結後、最終契約書の締結前に行われるもので、人事・財務・法務など、さまざまな視点から、M&Aを行う際にリスクが生じないか、これまでの調査との相違点はないか、買収価格は適正なものかなどの検討が行われます。
クロスボーダーM&Aでは、対象企業についての情報が入手しづらいため、よりデューデリジェンスに力を入れるようにしましょう。
知的財産権についての事前把握
相手企業が持っている財産について、しっかりと把握するのが大切です。M&Aにおいては、対象企業の知的財産が目的で行われることも多くあります。
対象企業が保有しているといっても、その財産が第三者の知的財産を借りている場合では、M&Aを行い、その財産を活用しようとしたときに、第三者の知的財産権を侵害してしまうリスクがあります。
そのため、対象企業がどのような知的財産を、どのような契約で保持しているのか、しっかりと事前把握するのが重要です。
対価の支払い時期を把握
クロスボーダーM&Aにおいて、買収の対価の支払い時期の把握は、支払う額にも関わってくるため、非常に重要です。
日本国内におけるM&Aでは、現金によるやりとりの場合、最終契約書締結後の金額の変更はほとんどありませんが、海外企業とやりとりを行うクロスボーダーM&Aでは、為替レートの変動により、金額が変わります。
大規模なクロスボーダーM&Aであるほど、為替レートの変動により、大きな損害を被るリスクもあるのです。そのため、事前に対価の支払い時期を把握しておくのが重要です。
従業員の反対に注意
日本国内でのM&Aでも起こりうるのが、従業員の反対です。しかし、日本国内での従業員の反対と比べて、海外企業の反対では、従業員のストライキが容易に起こりえます。これは、その国特有の国民性や、親日性にも関連してきます。
大企業のクロスボーダーM&Aの場合、労働組合などがしっかりと設けられているため、対処法が検討できますが、中小企業のクロスボーダーM&Aは、最悪の場合、売り手側の企業そのものがなくなってしまうリスクさえ考えられます。
M&A最終契約書締結後の、PMI実施を想定してM&Aのプロセスを進めていくようにします。
インサイダー取引に注意
インサイダー取引とは、会社の内部情報に精通する者が、その情報から株式の上下を事前に予測し、株式の売買を行う行為で、証券取引法により禁止事項とされています。
クロスボーダーM&Aを行う場合、買い手側は、今後成長が見込まれる企業を売り手企業の候補とします。今後の成長が見込まれると予想する場合は、今後の株式価格も上がると予想されます。
この情報を元に、海外企業や国内企業の株式の売買を行なった場合、インサイダー取引とされ、証券取引法により、厳しく罰せられます。
PMI
M&A取引は、M&A最終契約書締結後のPMI実施を想定し、目標を明確にし、M&Aのプロセスを進めていく必要があります。M&Aにおいて、最終契約書の締結は、企業が成長するためのスタートラインといっても過言ではありません。
PMIの実施により、どのような企業にしていくのか、整合性を取りながら経営戦略を進める必要があります。クロスボーダーM&Aでは、海外企業と綿密な連携を取りながら、PMIを実施するのが重要です。
クロスボーダーM&Aをご検討の際はぜひM&A総合研究所へご相談ください。経験豊富なM&Aアドバイザーが専任担当につき、クロスボーダーM&Aをフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
4. クロスボーダーM&Aの失敗要因
クロスボーダーM&Aの失敗する原因はどこにあるのか、詳細に解説します。成功要因を元にM&Aのプロセスを進めるとともに、失敗要因の知識を入れておくことで、クロスボーダーM&Aの成功率を上げましょう。
検討不足
クロスボーダーM&Aの大きな失敗要因の1つとして挙げられるのが、検討不足によるものです。M&A取引は、必要以上に情報が漏れてしまわないために迅速に行いたいと思う企業も多くあります。
また、流行に乗り取引を早く行なった方が、利益が得られると考える企業も多くあります。しかし、十分にスキーム策定や買収価格の検討を行わずに、勢いだけでM&Aを締結してしまうことは、M&Aが失敗する大きな要因になります。
デューデリジェンスを含め、対象企業についてしっかりと調査を重ね、M&Aを行ったらどんなメリットがあるのかだけでなく、リスクについても検討が必要です。
高額での買収
クロスボーダーM&Aの場合、売り手企業の今後の成長を見込んで、買収価格を決定する場合が多くあります。しかし、今後の経済的価値に期待しすぎて、高額での買収は、M&Aを失敗に導く大きな原因となります。
デューデリジェンスにより、相手企業についての情報をしっかりと集めたうえで、売買価格の検討を行い、必要以上に高額での買収は避けるようにしましょう。
また前述したように、M&A取引が流れてしまったときに受け取る違約金についても、しっかりと取り決めておくのが大切です。
買収後放置
M&Aを成功させるためには、最終契約書締結後のPMIの実施が大きく影響します。
せっかくM&Aを締結させても買収後に放置してれば、経済的価値を得られないばかりか、従業員の反対によって事業が成り立たず、損害を被ってしまうリスクも考えられます。
買収後、どのように経営戦略を実現させていくのか、しっかりと検討したうえでM&Aを締結し、PMIを実施していくのが大切です。
5. クロスボーダーM&Aのメリット
クロスボーダーM&Aの成功率はそこまで高いものではなく、成功させるためには、何が大切であるのか、そして失敗要因となるものは何かについてご説明しましたが、クロスボーダーM&Aにはメリットも多くあります。
ここでは、クロスボーダーM&Aを行うことによって得られるメリットを詳細に解説します。
日本企業のグローバル化
クロスボーダーM&Aのメリットとして一番はじめに挙げられるのが、日本企業のグローバル化です。日本企業のグローバル化で得られるメリットは、大きく「新市場開拓」と「新製品開発」に分けられます。それぞれについて詳細に解説します。
新市場開拓
日本企業のグローバル化で、新市場の開拓ができます。日本国内では、経済市場は縮小傾向にありますが、新興国では、これから市場がさらに拡大するでしょう。
クロスボーダーM&Aを行うことで、海外の市場にしか存在しないものを日本国内へ持ち込めるだけでなく、海外にはまだ存在しない、日本の市場を持ち込める可能性もあります。
新市場の開拓は、他に競合となる企業がまだ存在しないため、大きな利益が得られる予測が立てられます。
新製品開発
新市場の開拓とともにクロスボーダーM&Aによって得られるメリットとしては、新製品の開発が挙げられます。
海外企業の技術やノウハウを積極的に取り入れることで、日本にない新製品を開発できる可能性があります。また、新製品開発も新市場開拓と同じように、海外にない新製品を日本から輸出できる可能性もあります。
クロスボーダーM&Aによって、複雑な工程から得られた新製品は希少性も高く、より多くの利益が期待できます。
海外投資ファンドの収益
海外投資ファンドとは、海外を拠点に企業経営を行っている投資信託のことです。海外ファンドは、投資家から資金を集め企業経営を行います。クロスボーダーM&Aを行い、海外投資ファンドからの収益も期待できます。
6. クロスボーダーM&Aの手法
クロスボーダーM&Aでは、対象企業への十分な調査の元、どのような形でM&Aを進めていくのかを決めるのが大切です。ここでは、国内の企業同士のM&Aでは使われない、クロスボーダーM&Aで使われる特殊なスキームを詳細にご紹介します。
三角合併
三角合併は、2007年の5月に解禁となった新しい手法です。三角合併とは、海外企業が、日本に子会社を設立し、親会社である海外企業の株式を取得します。
その後、その株式を対象企業である日本国内の企業の株主に交付し、合併を行います。
これまで、日本国内の企業と海外の企業が直接取引をして、株式を交換したり、合併をしたりするのはとても難しい状況でした。
LBO
LBOとはレバレッジバイアウトの略で、海外企業のM&Aにおいては、よく用いられる手法です。買い手側が、売り手側の財産を担保として、銀行などの金融機関から借入を行い、資金を調達する買収方法です。
対象会社の事業などの財産が担保となり、LBOを行った後、業績が落ちてしまった場合は、巨額の借金が残ってしまうリスクもありますが、少ない自己資金で大型のM&Aを行える手法です。
7. クロスボーダーM&Aの流れ
クロスボーダーM&Aでよく使われる手法として、三角合併とLBOをご説明しましたが、ここでは、クロスボーダーM&A全体の流れについて解説します。クロスボーダーM&Aの流れは、国内の企業同士のM&Aと同じように、プロセスに沿って進めるのが大切です。
検討
はじめに、クロスボーダーM&Aに詳しい専門家の元、対象となる企業を検討します。自社の描く経営戦略から、どのような企業とM&Aを行うのが良いのか、専門家と相談しながら、対象となる企業を決めます。
対象となる企業が決まったら、その企業について、詳しく調べます。日本国内の企業同士のM&Aを行う場合と同じように、デューデリジェンスを実施し、対象企業についてしっかり把握します。
把握したうえで、どのようにM&Aを進めていくのか、どのような手法でM&Aを行うのかなどを検討します。
M&Aの内容が決定したら、対象企業と直接面談を行い、M&Aの内容について、相違がないか確認を行います。
契約
対象企業との面談を終え、M&Aの内容について合意が得られたら、契約書を作成します。基本的には、対象企業の法律に合わせて、契約書を作成するのが一般的です。
また、英訳書を英文で作成されるのがほとんどです。アメリカでは、国で制定している法律の他にも、州ごとに制定されている法律もあるので注意しましょう。
TOBの扱い
株式譲渡や事業譲渡などの契約によるM&Aは、海外でも日本でも、考え方は類似しており、契約書も似ています。しかし、上場している会社の公開買付けによりM&Aを行う、TOBに対する考え方は、海外と日本では大きく異なるので注意しましょう。
EUの場合法律を事前に確認
EUに加盟している国とのM&Aを行う場合は、国の法律の加えて、EUの規制があることに注意しましょう。EUには、競争法という法律があるため、特に大企業での大きなM&Aを締結する場合は、法律をしっかり確認するようにしましょう。
実行
クロスボーダーM&Aの契約が締結したら、いよいよ実行にうつります。M&Aにおける実行とは、PMIの実施です。クロスボーダーM&Aで、一番難しいといわれているのが、企業の文化の統合です。
国と国の間には、文化の違いがあるように、日本国内の企業と海外企業の間には、事業の進め方をはじめ、さまざまな場面で文化の違いが現れます。お互いの文化を尊重しつつ、統合を進めていくのが重要です。
8. クロスボーダーM&Aのリスクと対応策
クロスボーダーM&Aを行うときに、注意したいリスクとして「カントリーリスク」「訴訟リスク」「環境リスク」「人的問題」が挙げられます。ここでは、これらのリスクと、その対応策を詳細に解説します。
カントリーリスク
クロスボーダーM&Aにおけるカントリーリスクとは、日本国内の企業が、海外の企業と取引をする場合、相手国の政治面や社会面、経済面などで大きな変化が起き、それに伴い、日本国内の企業が損害を被り、取引ができなくなってしまうリスクです。
政治リスク
クロスボーダーM&Aの取引で起こりうるカントリーリスクにおける、政治リスクとは、日本と取引を行う予定の相手企業の国との間で、政治的なんらかの問題が起き、日本国内の企業が資金の回収ができなくなったり、M&Aの取引そのものがなくなったりするリスクの可能性があります。
外資規制
外資規制とは、外国為替及び外国貿易法などにより、外国人または外国企業による、国内の企業への投資に対する規制のことです。
外国企業や外国人による日本国内の株式の取引は、原則として、日本銀行を経由して行わなければならず、取引後は報告を行う必要があります。その他の法律でも、外国企業による日本国内の企業への出資には、規制が設けられています。
訴訟リスク
アメリカが訴訟大国といわれているように、日本と比較して海外では訴訟問題が多く起こります。大きな訴訟問題になりそうなことであれば、その内容も含めた契約を結ぶ必要があります。
小さな訴訟問題でも、今後大きな問題へと発展してしまうリスクがあるので、デューデリジェンスをしっかり行い、小さなリスクも見落とさないように注意します。
環境リスク
環境に関する法律や認識は、国によって大きく異なります。日本よりも環境汚染に厳しい国は多く、大きな問題が起これば、訴訟になる場合もあります。
クロスボーダーM&Aの場合は、環境デューデリジェンスを行うことで、事前に環境リスクについて把握できます。環境デューデリジェンスは、他の分野のデューデリジェンスに比べて時間がかかるため、早めに行うとよいでしょう。
人的問題
クロスボーダーM&Aの失敗原因として多いのが、M&A契約締結後のPMIの実施がうまくいかず、労働組合の反対が起きるリスクがあります。
また、日本のようにリストラが容易にできる国は少なく、多くの国では厳しい条件を満たさなければ、人員の整理を行えないのも人的問題のひとつです。
9. クロスボーダーM&Aの事例
クロスボーダーM&Aの中でも、大型の取引のもの、そして近年話題になったものの中から、IN-OUTの事例とOUT-INの事例に分けていくつかご紹介します。
IN-OUTの事例
IN-OUTの事例として、最近話題になったのが、セブン&アイホールディングスによる、アメリカのスノコLP社の買収です。
セブン&アイホールディングスは、全国に展開しているコンビニエンスストア、セブンイレブンの他、イトーヨーカドーや、セブン銀行などを展開しています。アメリカのスノコLP社は、セブン&アイホールディングスと同じように、コンビニエンスストアを展開する子会社やガソリンの小売を行う子会社を持つ企業です。
セブン&アイホールディングスは、スノコLP社の多岐にわたる事業のうち、コンビニエンスストアとガソリン小売事業の子会社を2018年、約3,452億円で買収しました。
IN-OUTの事例として、次に紹介するのが、料理をする人にとって便利なクックパッドを運営しているクックパッド株式会社による買収事例です。
クックパッドは、2014年、スペインにあるレシピサービスを展開する会社ITAYIS SIGLO XXI社を約11.5億円で買収しました。同じ年に、アラビア語のレシピサービスを展開している会社も、約13億円で買収しています。
これらの買収などの影響からクックパッドは現在、世界約70カ国で、レシピサービスを展開しています。
OUT-INの事例
OUT-INの事例に関しては、ニュースになるほど大きな企業が行った譲渡はあまりありませんが、近年行われた、OUT-IN取引について紹介します。
東京エレクトロンは、半導体の組み立てなどを行っている世界大手企業であるシンガポールのASMPT社に、メッキ装置製造子会社の株式を2018年4月に譲渡しました。
東京エレクトロンは、上記の子会社をASMPT社に譲渡し、ASMPT社のグローバルな顧客の展開が期待できるとして譲渡を決定しました。
10. M&A総合研究所ならクロスボーダーM&Aにも強い!
クロスボーダーM&Aをご検討中の経営者様はぜひM&A総合研究所へご相談ください。案件ごとにM&Aアドバイザーが担当につき、クロスボーダーM&Aをフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。
11. クロスボーダーM&Aまとめ
クロスボーダーM&Aは総合的に見て、件数だけでなく買収金額に関しても近年増加傾向にあります。
クロスボーダーM&Aは失敗しているとよくいわれていますが、そのほとんどは、対象企業についての調査不足による、M&Aスキームの検討不足や、相場に流されて決めてしまった高額買収による多額の損害などが原因といわれています。
また、クロスボーダーM&Aの失敗要因として多いのが、M&A締結後にしっかりとPMIの実施を行わず放置してしまうことです。クロスボーダーM&Aは難しいといわれていますが、しっかりと検討し、プロセスを一つ一つ進めていくことで、クロスボーダーM&Aを成功に導けます。
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