マンション管理会社の事業譲渡・事業売却の流れやチェック項目を解説

会計提携第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

本記事では、マンション管理会社の事業譲渡・事業売却の流れや、事業譲渡・事業売却を成功させるためのチェック項目について解説します。また、マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例や、事業譲渡・事業売却におすすめの仲介会社も併せてご紹介しています。

目次

  1. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却
  2. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却の主な流れ
  3. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却が行われる理由
  4. マンション管理会社を事業譲渡・事業売却するメリット
  5. マンション管理会社を事業譲渡・事業売却する際のチェック項目
  6. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例
  7. マンション管理会社を事業譲渡・事業売却する際におすすめのM&A仲介会社
  8. まとめ
  9. マンション管理業界の成約事例一覧
  10. マンション管理業界のM&A案件一覧
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1. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却の流れや、事業譲渡・事業売却を成功させるためのチェック項目について述べる前に、まずはマンション管理会社の業務内容・ビル管理会社との違い・事業譲渡と事業売却の意味について解説します。

マンション管理会社とは

マンション管理会社とは、マンションオーナーや管理組合に代わって、賃貸管理や物件管理を行う会社をさします。

マンション管理会社が行う業務は、主に以下の4つです。
 

  • 管理費や修繕費の回収・予算案の作成・未納者への催促などを行う事務管理業務
  • 受付・巡回・点検などを行う管理人業務
  • 共用部分の清掃などを行う清掃業務
  • 照明・エレベーター・空調機器・給排水機器などの保守・点検を行う設備管理業務

ビル管理会社との違い

マンション管理会社は主に住居用施設の管理を行いますが、ビル管理会社は主に商用施設の管理を行います。

ビル管理会社の業務内容は、電力機器管理・空調機器管理・ボイラー管理・給排水機器管理など、多岐に渡ります。

マンション管理とビル管理は業務内容が似ていることから、マンション管理業とビル管理業を両方行っている企業もあります。

事業譲渡とは

事業譲渡と事業売却は、事業を第三者へ引き継ぐという意味で、同じように使われることも多い用語です。

しかし、M&A手法における分類での事業譲渡とは、事業の一部または全部を個別に売買する取引手法をいいます。

事業譲渡は、譲渡規模が大きくなるほど手続きが煩雑で税金が高くなるので、小規模の事業を譲渡する際や、株式を持たない個人事業主などがよく用いる手法です。

事業売却とは

事業売却とは、株式譲渡・事業譲渡・会社分割による売却などのM&A手法で事業を譲渡することをいいます。

同じ事業売却でも、用いる手法によって特徴やメリット・デメリットは大きく異なります。また、前述したように、事業売却と事業譲渡は事業を第三者へ譲渡するという意味で、同じように用いられることもあります。

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2. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却の主な流れ

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却は、主に以下のような流れで進みます。
 

  1. M&A仲介会社などに相談
  2. 事業譲渡・事業売却先の選定
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンスの締結
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング

①M&A仲介会社などに相談

マンション管理会社やビル管理会社のように、多くの契約や許認可などがかかわる場合、M&Aの専門家をとおさずに事業譲渡・事業売却を行うことは、非常に困難です。

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却を検討し始めたら、まずM&A仲介会社などの専門家に相談し、M&Aの計画・戦略を立て、事業譲渡・事業売却先の選定を行う必要があります。

秘密保持契約の締結

専門家と事業譲渡・事業売却の仲介契約をする場合、マンション管理に関する情報が流出したり仲介以外の用途でマンション管理会社の情報を利用したりしないよう、秘密保持契約を締結します。

ただし、秘密保持契約を交わしたら情報が漏れないという確証はないので、信頼性の高い仲介会社などに依頼することも重要です。

②事業譲渡・事業売却先の選定

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却先があらかじめ決まっていない場合は、仲介会社などに探してもらいながら選定します。

依頼する専門家によって保有する案件やネットワークが異なるため、案件数が多いからといって自社に最適な事業譲渡・事業売却相手が見つかるとは限りません。

マンション管理業界を含む不動産業界に強い・行動が早いなど、自社に合った強みを持つ専門家を選ぶことが重要です。

③基本合意書の締結

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却先候補が決まり、トップ面談などを終えて基本的な条件交渉を終えたら、基本合意書を締結します。

基本合意書は、最終契約書とは異なり、法的拘束力を持つ項目と現時点の合意内容を記載するのが一般的です。したがって、事業譲渡・事業売却金額は、その後の手続き過程で変わる可能性もあります。

意向表明書の提示

意向表明書とは、事業譲渡・事業売却候補企業が、買収の意思があることを伝えるための書面です。

意向表明書に同意することで、事業譲渡・事業売却候補企業は、優先的に交渉を行うことができます。

しかし、意向表明書は法令で定められた手続きではなく法的拘束力もないため、意向表明書を提出しないケースもあります。

④デューデリジェンスの締結

デューデリジェンスとは、相手企業の企業価値査定や法律に関わる資産について行う調査をいいます。

デューデリジェンスは、M&Aの中でも非常に重要な要素であり、デューデリジェンスの的確さがM&A後の成功を左右します。

したがって、マンション管理会社の事業譲渡・事業売却側は、相手企業が的確なデューデリジェンスを行えるよう、十分な資料を提供しなければなりません。

⑤最終契約書の締結

デューデリジェンスの結果などを踏まえて、最終的な条件に同意が得られたら、最終契約書を締結します。

実際には、最終契約書という書面があるわけではなく、事業譲渡であれば事業譲渡契約書というように、M&A方法の名称が付けられます。

⑥クロージング

必要な手続きをすべて終え、効力発生日を迎えたらクロージングとなります。クロージング後の事業統合プロセス(PMI)は、事業譲渡・事業売却先企業にとって重要な工程です。

PMIは、デューデリジェンスと同じくM&Aの成否を分ける重要な要素なので、事業譲渡・事業売却側はクロージング後もしばらくマンション管理会社の統合プロセスを手伝うケースがあります。

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3. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却が行われる理由

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却は、以下のような場合に行われます。
 

  1. 業者数が多く、競争が激しい
  2. 後継者問題の解決
  3. 小規模なため、品質重視のサービス転換が難しい

①業者数が多く、競争が激しい

マンション管理業やビル管理業は小規模の業者数が多く、非常に競争が激しい業界でもあります。

近年は、スケールメリット獲得目的の大手企業によるマンション管理会社買収や、サービス拡充目的の他業種企業によるマンション管理業への参入などが増加しており、中小規模のマンション管理会社のなかには事業譲渡・事業売却を選択するケースが見られます。

②後継者問題の解決

マンション管理会社でも経営者の高齢化が進んでいますが、子どもが後を継がないケースが増えていることから、後継者不在によってマンション管理会社の継続が難しくなっています。

そのため、事業・取引先・従業員を守る目的で、事業承継によるマンション管理会社の事業譲渡・事業売却を行うケースがあります。

③小規模なため、品質重視のサービス転換が難しい

近年のマンション管理会社やビル管理会社は、より質の高いサービスを求められるようになっています。

しかし、人件費の高騰や値下げ圧力もあって、小規模のマンション管理会社はサービスに付加価値を乗せる余裕がないのが現状です。

そのため、マンション管理サービスを向上させる経営体力を得る目的で、事業譲渡・事業売却を行うケースもあります。

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4. マンション管理会社を事業譲渡・事業売却するメリット

マンション管理会社を事業譲渡・事業売却するメリットには、以下のようなことが挙げられます。

  • 資金の確保
  • 事業の安定化や拡大
  • 後継者不在問題の解消
  • 倒産ダメージの低減
  • 従業員の雇用維持

マンション管理会社を大企業グループに売却することで、その事業が安定し、さらに拡大できる可能性が広がります。自身は資金を確保して、後継者問題の解消などにもつながるため、経営をリタイアしたいという方も安心です。

たとえ赤字であっても、売却することで倒産ダメージを低減したり、今までお世話になった従業員の雇用維持にもつながります。

5. マンション管理会社を事業譲渡・事業売却する際のチェック項目

マンション管理会社を事業譲渡・事業売却する際は、以下6つのチェック項目を確認しながら進めていくようにしましょう。
 

  1. 利用者や顧客へ説明するタイミングはいつにするか?
  2. 過去の業績や管理マンション数などはまとまっているか?
  3. 営業力や営業の教育などは適切に行われているか?
  4. 従業員に有資格者はいるか?
  5. 最良の手法・タイミングでM&Aを行っているか?
  6. M&Aの専門家に相談しているか?

①利用者や顧客へ説明するタイミングはいつにするか?

顧客や従業員などの関係者に、マンション管理会社の事業譲渡・事業売却を検討していることを伝えるタイミングは注意が必要です。

タイミングを見誤ると、マンション管理の契約解除や離職につながることもあります。説明するタイミングと説明する内容をM&Aの専門家とよく検討し、実行することが重要です。

②過去の業績や管理マンション数などはまとまっているか?

小規模のマンション管理会社では、自社に関する書類が整理されていないこともあります。

買収側が行うデューデリジェンスは、事業譲渡・事業売却側の資料を基に分析・判断するため、自社のマンション管理情報をまとめておくことで、買収側に対する信頼性が上がります。

③営業力や営業の教育などは適切に行われているか?

買収側にとって、マンション管理の人材獲得は、M&Aの重要な目的の1つともいえます。

従業員の教育と関係構築には時間と資金が必要となるため、事業譲渡・事業売却側がしっかりと従業員を育成していると、M&Aでは大きな強みとなります。

④従業員に有資格者はいるか?

マンション管理やビル管理などの施設管理業務は複数の資格が必要となるため、事業譲渡・事業売却側に即戦力となる有資格者の有無も、買収時の判断材料になります。

近年は、マンション管理会社にも幅広いニーズへの対応が求められるので、1人でさまざまな業務をこなせる有資格者がいると重宝されます。

⑤最良の手法・タイミングでM&Aを行っているか?

事業譲渡・事業売却したいと考えても、市場動向のタイミングと合わなければ、なかなか買い手がつかないことがあります。

また、自社に合ったM&A手法を用いなければ、必要以上に資金や時間がかかってしまうこともあります。

最良の手法・タイミングでM&Aを行うためにも、検討段階で専門家に相談しながら丁寧に準備を行うことが重要です。

⑥M&Aの専門家に相談しているか?

経験豊富なM&Aの専門家は、上記のようなチェック項目を適切に判断しサポートを行うため、M&Aをスムーズに進めることができます。

M&Aの専門家に相談することで、さまざまな不安を解消し、M&Aの成功率を上げることが可能です。

6. マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例をご紹介します。
 

  1. テクノ防災サービスによるあなぶきクリーンサービスへの事業譲渡・事業売却
  2. プレストサービスによるAPAMAN子会社への事業譲渡・事業売却
  3. Okamura Tokyoによる穴吹ハウジングサービスへの事業譲渡・事業売却
  4. タカラビルメンによるシナネンHDへの事業譲渡・事業売却

①テクノ防災サービスによるあなぶきクリーンサービスへの事業譲渡・事業売却

1件目は、マンション管理業界における事業譲渡・事業売却事例です。

後継者問題のために譲渡先を探していたテクノ防災サービスは、2019年に、マンション設備の点検などを行う同業のあなぶきクリーンサービスへの事業譲渡・事業売却を行っています。

西日本で事業を展開しているあなぶきクリーンサービスは、今後はテクノ防災サービスを拠点にした事業の拡大を図ります。

②プレストサービスによるAPAMAN子会社への事業譲渡・事業売却

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例2件目は、プレストサービスによるAPAMAN子会社への事業譲渡・事業売却です。

マンション管理・アパート管理事業を行うプレストサービスは、2018年、APAMAN子会社でマンション管理・アパート管理などを行うApaman Propertyへ、株式譲渡により事業譲渡・事業売却を行いました。

これにより、APAMANは、マンション管理・アパート管理における賃貸管理などの事業拡大を図っています。

③Okamura Tokyoによる穴吹ハウジングサービスへの事業譲渡・事業売却

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例3件目は、Okamura Tokyoによる穴吹ハウジングサービスへの事業譲渡・事業売却です。

ベトナムでマンション管理業を営むOkamura Tokyoは、2017年にマンション管理会社の穴吹ハウジングサービスへ出資持分の譲渡により合弁契約を結び、社名をANABUKI NL HOUSING SERVICE VIETNAM LIMITED COMPANYに変更しました。

このM&Aにより、あなぶきグループは、マンション管理事業でベトナムへの本格進出を果たしています。

④タカラビルメンによるシナネンHDへの事業譲渡・事業売却

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却事例4件目は、タカラビルメンによるシナネンHDへの事業譲渡・事業売却です。

不動産業を営むいちごの子会社で、マンション管理業やビル管理業などを行うタカラビルメンは、2017年にエネルギー関連事業を営むシナネンHDへ、株式譲渡により事業譲渡・事業売却を行いました。

これにより、タカラビルメンはマンション管理・ビル管理事業で売上目標の早期達成を目指し、シナネンHDはマンション管理・ビル管理分野での企業価値向上を図っています。

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7. マンション管理会社を事業譲渡・事業売却する際におすすめのM&A仲介会社

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却では、不動産業界の専門知識と実務経験を持つアドバイザーのサポートが必要です。

M&A総合研究所では、マンション管理会社の事業譲渡・事業売却に精通したM&Aアドバイザーが、案件をフルサポートいたします。

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8. まとめ

本記事では、マンション管理会社の事業譲渡・事業売却について解説してきました。マンション管理会社の事業譲渡・事業売却を成功させるためには、以下のポイントをおさえて進めていくことが大切です。

【マンション管理会社の事業譲渡・事業売却の流れ】

  1. M&A仲介会社などに相談
  2. 事業譲渡・事業売却先の選定
  3. 基本合意書の締結
  4. デューデリジェンスの締結
  5. 最終契約書の締結
  6. クロージング

【マンション管理会社の事業譲渡・事業売却が行われる理由】
  1. 業者数が多く、競争が激しい
  2. 後継者問題の解決
  3. 小規模なため、品質重視のサービス転換が難しい

【マンション管理会社を事業譲渡・事業売却する際のチェック項目】
  1. 利用者や顧客へ説明するタイミングはいつにするか?
  2. 過去の業績や管理マンション数などはまとまっているか?
  3. 営業力や営業の教育などは適切に行われているか?
  4. 従業員に有資格者はいるか?
  5. 最良の手法・タイミングでM&Aを行っているか?
  6. M&Aの専門家に相談しているか?

マンション管理会社の事業譲渡・事業売却を成功させるためには、M&Aとマンション管理業界の専門的な知識が不可欠となるので、M&A仲介会社などの専門家によるサポートを受けて進めることが重要です。

9. マンション管理業界の成約事例一覧

10. マンション管理業界のM&A案件一覧

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