事業譲渡・事業売却の相談先15選!無料アドバイスを受ける際のポイントも【弁護士・M&A仲介会社】

会計提携第二部 部長
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

事業譲渡・事業売却を検討している経営者に向けて、事業譲渡・事業売却の相談先をまとめました。事業譲渡と事業売却の特徴や、M&Aを考える理由にも触れています。弁護士やM&A仲介会社など15の相談先から、自社にふさわしい相談先を選んでください。

目次

  1. 事業譲渡・事業売却とは?
  2. 事業譲渡・事業売却を考える理由
  3. 事業譲渡・事業売却の相談先の種類・動向
  4. 事業譲渡・事業売却の相談先15選
  5. 事業譲渡・事業売却の相談先の報酬体系
  6. 事業譲渡・事業売却を専門家に相談するメリット
  7. 事業譲渡の相談はM&A仲介会社がおすすめ
  8. 事業譲渡・事業売却の相談先まとめ
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1. 事業譲渡・事業売却とは?

事業譲渡とは?

事業譲渡とは、特定の事業や資産、人材などを買い手に譲り渡すスキームです。M&Aの1つで、事業の一部や全部を譲り渡し、買い手は譲渡する事業や資産、債務などが選べます。買い手との交渉を通じて、取引の対象が決定できます。

事業譲渡には、気をつけるべきポイントがあるので注意が必要です。事業譲渡を検討している企業は、次に挙げる注意点を把握しましょう。

【事業譲渡の注意点】

  1. 競業避止義務
  2. 株主総会・特別決議が必要
  3. 通知義務

【関連】事業譲渡とは?会社譲渡との違いや手続きの流れを分かりやすく解説!

事業譲渡の注意点①競業避止義務

売り手側は、事業譲渡を選択すると、競業避止義務を守らなければなりません。競業避止義務とは、譲渡した事業を一定期間再開することを禁止する規則です。この期間は、事業譲渡を行った日から20年間と定められています。また、競業を禁止する地域には、買い手企業が拠点を置く市町村やその隣接市町村が含まれます。

ただし、買い手が許諾をすれば、禁止される期間や同一事業を行うエリアを定めることが認められています(競業避止期間は最長で29年)。

もう一度同じ事業に取り組むつもりなら、M&Aの交渉で競業避止期間の短縮を求めましょう。買い手が認めてくれれば、20年を待たずに同一事業を始められます。

事業譲渡の注意点②株主総会・特別決議が必要

事業譲渡を行う場合、株主総会の特別決議を必要とします。譲渡する側と譲り受ける側によって、気をつける点が異なっているので、両社の立場に分けて注意点をまとめてみました。

譲り渡す側の注意点

事業譲渡は、事業のすべてや一部を他社に譲り渡す行為です。企業価値にも変化が生じ、株主たちの権利にも影響が及びます。事業を譲り渡す場合は、株主総会の特別決議が必要になるでしょう。

【株主総会の特別決議を必要とするケース】

  • 事業のすべてを譲渡する場合
  • 事業の重要な一部を譲渡する場合など

事業の重要な一部とは?

会社法が定める事業の重要な一部とは、譲渡する事業や資産の帳簿価額が、総資産の1/5を超える場合をさしています。

譲渡する資産が、総資産の1/5を上回らなければ株主総会の特別決議を経る必要はありません。取締役会の決議などで承認されれば、事業譲渡が行えます。

このほかにも、事業を譲り受ける側が、譲渡側の株式のうち9割を超えて所有している場合は、株主総会による特別決議を必要としません。

譲り受ける側の注意点

買い手側も事業譲渡を実行に移すと、株主総会の特別決議を求められます。特別決議が必要なケースは、次の場合です。

【株主総会の特別決議を必要とするケース】

  • 事業のすべてを譲り受ける場合

買い手側は、事業の重要な一部を譲り受ける場合、特別決議を経る必要がありません。支払う対価が総資産額の1/5を超えない場合も、特別決議を必要としないでしょう。

ただし、一定の株主が事業の譲り受けに異を唱えると、株主総会の特別決議による承認を得る必要があります。

事業譲渡の注意点③通知義務

事業譲渡によって譲り渡し・譲り受けを行う場合、事業譲渡の法的な効力が認められる日の20日前までに、株主たちに事業譲渡の実行を伝えなければいけません。

事業を譲り受ける会社には、さらに細かな規定が定められています。事業譲渡ですべての事業を承継する場合、譲り受ける資産に譲渡側の株式が含まれていると、すべての事業・株式の譲り受けを、通知する必要があります。

公告で済ませられるケースもある

事業譲渡を行う会社が公開会社(定款に株式の譲渡制限を定めていない)の場合と、株主総会の決議で事業譲渡が認められた場合は、通知をせずに公告で済ませられるでしょう。

これなら、多くの株主を抱えていても、個別に知らせず電子公告などで義務を果たせます。

【関連】事業売却とは?会社売却との違いや手続きの流れとメリットを解説!

事業譲渡と会社分割の違い

会社分割とは、株式会社・合同会社が会社の事業や資産を分割し、既存の会社や新しく作った会社に承継させる取引です。会社分割の手法は、2つに分かれます。

1つは、既存の会社に権利義務を引き継いでもらう吸収分割で、もう1つは新しく設立した会社に承継させる新設分割です。

対価を新株の発行で賄える

事業譲渡との違いの1つ目は、対価の支払いを新株の発行で賄える点です。事業譲渡の対価は、現金によるものとされています。一方、会社分割では現金による対価の支払いのほか、承継する会社の株式を譲渡・発行するのも認められています。

買い手側はM&Aを通じた売買を、株式による支払いで済ませることが可能です。会社分割なら買い手側に対価を支払う余裕がない場合でも、事業譲渡を行えるでしょう。

取引・雇用・許認可が承継される

2つ目の違いは、取引先との契約や従業員の雇用、事業に必要な許認可が承継される点です。事業譲渡では、これらの手続きを改めて行う必要があります。

対して会社分割では、M&Aによる取引を経ても、個別に契約を結び直したり、従業員の同意を得たりする必要はありません。

ただし、引き継ぐ内容によっては、新たな手続きを経たり、許認可を取ったりする必要があります。例えば労働者の雇用契約では、労働契約承継法に基づき、労働者と労働組合への通知・労働者の同意を得るなどの手続きを行わなければいけません。

許認可は、建設業や宅建業、運送業などの業種において、許認可の取り直しが必要になります。

債権・債務の移転には同意の必要がない

3つ目の違いは、所有者の同意を得ずに債権・債務の移転を行える点です。事業譲渡では、所有者ごとに承継の同意を得る必要があります。しかし、会社分割は譲渡する会社の権利・義務のすべてを承継するため、個別に同意を得ず、債権・債務の移転が行えるでしょう。

ただし、会社分割は債権者の権利が侵害される恐れがあるため、会社分割の内容や異議申し立ての権利などを、公告・通知で知らせることが求められます。

会社分割は、会社の価値に影響を与えかねません。会社を分割する側の債権者(会社分割後に債権を行使できない者)や、承継側の債権者に対して、債権者保護の制度が用意されています。

2. 事業譲渡・事業売却を考える理由

事業譲渡・事業売却は、どのような理由から実行に移されているのでしょうか。他社の経営者は、これからあげる理由によって、事業譲渡・事業売却を選んでいます。

売り手側

事業譲渡・事業売却を検討する売り手は、どのような理由から事業を譲り渡しているのでしょうか。よく見られる譲渡の理由には、以下の内容が挙げられます。

  • 中核事業への資本集中
  • 後継者不足と廃業予定
  • 売却益を利用した個人保証の清算

中核事業への資本集中

事業譲渡・事業売却を考える理由の1つ目は、中核事業への資本集中です。採算の取れない事業を抱えていたり、会社の戦略を変更したりする場合に、事業譲渡・事業売却を選択できます。M&Aにより不採算事業・戦略にそぐわない事業を他社へ譲り渡します。

中核事業に据えた事業に資本を集中できるでしょう。事業譲渡・事業売却の譲渡益が現金で支払われると、対価は会社へ渡ります。売却によって得られる利益は、力を入れたい事業に回せるでしょう

ただし、買い手が非公開会社で、対価を株式で賄った場合には注意をしなければいけません。非公開会社が発行する株式は現金に換えにくいため、中核事業への資本集中が行えない事態が考えられます。

後継者不足と廃業予定

2つ目の事業譲渡・事業売却を考える理由は、後継者不足と廃業予定です。日本政策金融公庫総合研究所が行った2019年の「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」によれば、中小企業のおよそ5割が廃業を予定している結果が出ています。

中小企業における事業承継の見通しを聞いたところ、およそ2割の経営者は「後継者が決まっていない」と回答しています。

つまり、事業を任せられる後継者が見つからない場合は、事業譲渡・事業売却を選択して、廃業を避けられるかもしれません。後継者不足による廃業の悩みを抱えている経営者に、事業譲渡・事業売却が選ばれています。

事業を譲り渡す契約に従業員の雇用を盛り込んだり、会社分割で雇用の引き継ぎを行ったりすれば、会社に尽くしてくれた社員たちを解雇せずに済むでしょう。事業譲渡・会社売却を行えば、新しい経営者にとって代わるため、さらなる事業の発展も見込めます。

参考URL:日本政策金融公庫総合研究所「中小企業の事業承継に関するインターネット調査」(2019年)

売却益を得て個人保証の清算

3つ目の事業譲渡・事業売却を考える理由には、得られた売却益を「個人保証の清算に充てる」が挙げられます。事業譲渡・事業売却は株式譲渡とは違い、ほとんどの場合で個人保証が引き継がれません。

そこで、事業の売却益を使い、個人保証として借りたお金を返済します。こうすれば、経営者の負担を軽くでき、安心して譲渡をした後に第二の人生に入れます。

買い手側

買い手側は、事業譲渡・事業売却を選ぶ際に、どのような理由を挙げているのでしょうか。買い手側は、次のような理由から事業譲渡・事業売却を選んでいます。

  • 求める事業や人材などの取得
  • のれん償却による節税効果を得る
  • 引き継ぐ資産が選べる

求める事業や人材などの取得

1つ目の事業譲渡・事業売却を選ぶ理由には、求める事業・人材などの取得が挙げられます。会社そのものを譲り受ける株式譲渡と異なり、事業譲渡・事業売却では引き継ぐ資産を選択することが可能です。

買い手にとって必要な事業・優秀な人材・設備のみを引き継ぐことができるので、不要な事業・人材・設備などを承継せずに済みます

既存の会社とのシナジー効果や、活動の範囲を狭めた事業展開を想定している場合には有効なスキームといえるため、事業譲渡・事業売却が選ばれるでしょう。

のれん償却による節税

2つ目に取り上げる事業譲渡・事業売却を選ぶ理由は、のれん(営業権)の償却による節税です。のれんは、取引額から譲渡する事業の純資産を引いた値であり、買い手が売り手の事業に価値を見いだすと、純資産よりも高い価格をつけて買収が行われます。

この差額がのれんと呼ばれ、損金(法人税の費用)として扱われます。事業を譲り受けてから5年の償却期間が定められているので、節税の効果が得られるでしょう。買い手側は支払う税金を抑える目的でも、事業譲渡・事業売却を選んでいます。

引き継ぐ資産を限定

3つ目に紹介する事業譲渡・事業売却を選ぶ理由は、引き継ぐ資産を限定できる点です。譲渡側から承継する資産は、買い手によって選べるため、簿外債務などのリスクを引き継がないで済みます。

しかし、会社分割では株式譲渡のように、事業をそのまま引き継ぐため、簿外債務や必要のない資産も譲り受けてしまいます。事業売却で会社分割を選ぶ場合には、引き継ぐ資産が選べないのを知っておきましょう。

【関連】会社売却、M&Aの相場を解説!企業評価とは?

3. 事業譲渡・事業売却の相談先の種類・動向

事業譲渡・事業売却には財務、法務、労務など幅広い分野が関わってくるため、相談先の選択肢も多くあります。近年は、民間機関や公的機関でもM&A支援サービスが拡大しています。主な相談先としては以下が挙げられるでしょう。

  • 取引関係者:金融機関、取引先、同じ業界の企業
  • 専門家:税理士、公認会計士、中小企業診断士、弁護士、M&A仲介会社、FA(ファイナンシャル・アドバイザー)
  • 公的機関・公益団体:事業承継・引継ぎ支援センター、商工会議所
 2021年版中小企業白書によると、事業譲渡・事業売却を行う場合、どのような相談先を活用するのかのアンケート結果が公表されています。順位や割合は以下のとおりです。
 
順位 相談先 売り手として意向のある企業が答えた相談先 買い手として意向のある企業が答えた相談先
1 金融機関 59.9% 76.5%
2 専門仲介機関 42.9% 45.0%
3 ⾃社で独⾃に探索 32.7% 38.0%
4 公認会計士・税理士 19.7% 17.0%
5 事業承継・引継ぎ支援センター  14.3% 8.9%
出典: 中小企業庁「中小企業白書( 2021年版)」

金融機関やM&A仲介会社などの専門機関、公認会計士・税理士など、はじめの段階からの相談先として検討しているのがわかります。

取引金融機関や顧問税理士などは日頃経営相談をしているため、その延長で事業譲渡・事業売却に関する相談をしているケースが多くあるでしょう。M&A仲介会社などの専門機関は、とりあえず問い合わせをして相談をしてみるといったケースが考えられます。

4. 事業譲渡・事業売却の相談先15選

事業譲渡・事業売却の相談先をまとめました。紹介する15の候補から、自社に見合った相談先を選んでみてください。

①同業者

1つ目に紹介する事業譲渡・事業売却の相談先は、同業者です。経営者だけで判断を下せない場合に、同業者に相談を持ち掛けます。気軽にアドバイスを求められるため、弁護士や公的機関、銀行などへ相談をする前に、同業者の元を訪れて現状を打ち明けられます。

相談を持ちかけるなら、事業譲渡の経験がある同業者を選びましょう。同程度の事業規模であれば、自社のケースに当てはめて、M&Aのシミュレーションが行えます。

とはいえ、同業者への相談では自社の情報が外へ漏れる事態を想定しなければいけません。関係者に知られたくない場合は、信頼のおける相手を選ぶ点が重要です。

②役員・従業員

2つ目の事業譲渡・事業売却の相談先は、役員と従業員です。同業者よりも会社の実情を知っているため、ふさわしい相談相手といえます。しかし、事業譲渡を実行に移した場合、役員と従業員の反発を受けるかもしれません。

役職を失ったり、労働環境が変わってしまったりと、M&Aによる変化を避けようとする事態が想定され、事業譲渡がうまく進まないケースもあります

スムーズな事業譲渡を望むのなら、秘密を守れる第三者に相談を持ち掛けてください。

③中小企業診断士

3つ目に取り上げる事業譲渡・事業売却の相談先は、中小企業診断士です。経営コンサルタントとして企業の経営を診断し、より良い経営戦略を提案してくれます。自社を高い値段で売りたいなら、中小企業診断士への相談がおすすめです。

買い手を探す前に相談すると、中業企業診断士が行う事業デューデリジェンスによって、事業の問題点の洗い出しが実施されます。戦略を変え、身ぎれいな状態に戻せれば、事業の価値を高めるのも可能です。

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④ファイナンシャルプランナー

4つ目に案内する事業譲渡・事業売却の相談先は、ファイナンシャルプランナーです。主な業務はライフプランの作成や保険によるリスク管理、金融資産の運用などで、税制度・不動産・相続・事業承継にも通じています。

ファイナンシャルプランナーに相談をすれば、幅広い知識を生かして、各分野の専門家とのつなぎ役を買って出てくれます。士業などへの相談に二の足を踏んでしまう場合には、広い知識を有するファイナンシャルプランナーに相談をしてみましょう。

気軽に相談ができる利点に加えて、第三者への相談であるため、情報漏えいのリスクも減らせます。

⑤商工会議所

5つ目に挙げる事業譲渡・事業売却の相談先は、商工会議所です。中小企業庁は、全国の都道府県に事業の引き継ぎに応じる窓口を設置しています。この窓口のほとんどは、商工会議所です。最寄りの商工会議所を訪ねると、事業譲渡のアドバイスを受けられたり、引き継ぎ先と引き合わせてくれたりします。

相談は無料です。譲渡先が決まっている場合にも、契約書の作成や譲渡の進め方など、専門家のサポートが受けられます。

⑥金融コンサルタント

6つ目に取り上げる事業譲渡・事業売却の相談先は、金融コンサルタントです。金融機関などで資金調達や投資の業務に就いていた経験を生かし、企業の資金面をサポートしてくれます。

資金を得るための手段として事業譲渡が適切であるかを相談できるでしょう。金融コンサルタントによっては、税理士などの士業ともつながっているため、税制や法務などのサポートも受けられます。

⑦取引先銀行

中小企業にとって、取引先銀行が相談先として最も身近な存在ではないでしょうか。取引先銀行なら、実際に資金を提供しているわけなので、会社の悩みも親身になって相談に乗ってくれます。

銀行は、その地域で事業を行う会社とのつながりも深いので、事業譲渡・事業売却先となる会社を選ぶ際にも有利です。

⑧都銀・信託銀行

8つ目に紹介する事業譲渡・事業売却の相談先は、都銀・信託銀行です。都銀の特徴は、大きな都市に本店があり、地方に支店を置いている点です。主に大型のM&Aを取り扱い、事業の買い手を紹介してくれます。

信託銀行は、銀行業務(預金・貸出・為替)のほかに、資産を管理・運用する信託業務を行う銀行です。取り扱うM&Aの案件には、信託銀行の顧客や、不動産事業などがあります。

不動産に関わる事業を譲渡する場合には、信託銀行の利用がベストです。都銀・地銀などでも資産運用のサービスを提供していますが、信託銀行の方が資産運用の業務に重きをおいているといえます。

⑨地銀・第二地銀

9つ目に挙げる事業譲渡・事業売却の相談先は、地銀・第二地銀です。地銀は、都道府県に本店を構える銀行で、第二地銀は信用金庫・相互銀行から業務の方針を変えた銀行をさしています。

2つの銀行に見られる特徴は、地元企業とのつながりが強い点です。普段から融資や取引で顔を合わせることが多いため、事業譲渡の相談をしやすいといえます。

事業の譲渡先も、地元企業との付き合いを通じた買い手を紹介するため、買い手を自社で探す手間が省けるでしょう。相談する地銀・第二地銀が自社の債権者であると、債務の引き継ぎについて、忌憚(きたん)のないアドバイスも受けられます。

銀行への相談には注意が必要

ただ、銀行は自社の利益を優先するため、必ずしも譲渡側の意向をくみ取るとは限りません。債権の回収が見込める買い手をすすめたり、買い手に有利な取引価格を提示したりと、譲渡側にとって不利益な取引を持ち掛ける場合があるため注意が必要です。

⑩その他の金融機関

10番目に取り上げる事業譲渡・事業売却の相談先は、その他の金融機関です。証券会社を例に挙げて説明をしてみましょう。証券会社は、株式の売買を主な業務とします。特徴は、銀行とは違い、証券会社にはしがらみが少ない点です。

証券会社は事業譲渡の売買で、売り手側の利益を優先してくれます。独自の情報網を使い、売り手に合った譲渡先を紹介してくれます。中には、アドバイザリー業務で企業価値の評価をしてくれる会社も存在するので上手に活用しましょう。

しかし、法務・税務などの面ではつながりのある士業を活用するケースが見られました。証券会社だけで事業譲渡・事業売却を完了している企業は少ないといえます。

⑪顧問弁護士

11番目に挙げる事業譲渡・事業売却の相談先は、顧問弁護士です。売り手の内情を知る顧問弁護士はアドバイスを求めやすく、交渉におけるトラブルでも頼りになります。

そのほかにも、基本合意や最終契約などの締結や、契約書の作成、法務デューデリジェンスなどを任せられるでしょう。

とはいえ、相談する相手を弁護士だけに限ると、財務や税務などの配慮はおろそかになってしまいます。顧問弁護士に事業譲渡・事業売却の相談をする場合は、弁護士以外の士業や専門家にもサポートを依頼するのが良いでしょう。

⑫配偶者

12番目に挙げる事業譲渡・事業売却の相談先は、配偶者です。事業を譲り渡せば、生活水準を下げる事態が考えられます。事業譲渡を検討する方は、影響を受ける妻・夫に対して、相談を持ち掛けているでしょう。

配偶者への相談では、譲渡の考えを打ち明けるタイミングが重要です。譲渡の話が進んでから売却の事実を伝えてしまうと、配偶者との関係に亀裂が入るケースも考えられます。

事業譲渡のうわさが漏れるリスクを考慮しつつ、売却の意思を打ち明けるタイミングを見計らいましょう。

⑬公的機関

13番目に紹介する事業譲渡・事業売却の相談先は、公的機関です。各都道府県に設置された事業承継・引継ぎ支援センターでは、後継者不足などに問題を抱える中小企業に対し、事業譲渡の相談を行っています。

事業承継・引継ぎ支援センターの特徴は、無料相談や、有料での譲渡先の紹介、秘密の厳守などです。中小企業診断士や民間でコンサルタント事業を経験したスタッフが応対してくれます。

成約実績があるものの、買い手との交渉は自分で行う必要があるため、専門家やM&Aの仲介会社の選定が必要です。

【関連】事業承継支援機関とは?支援機関の成り立ち・制度・選び方を徹底解説

⑭税理士

14番目に挙げる事業譲渡・事業売却の相談先は、税理士です。普段から付き合いのある税理士なら、気負わずに事業譲渡における税務の相談を持ち掛けられます。

税理士に相談すると、企業価値の評価や簿外債務などの発見、節税のアドバイス、売り手の利益を考えた売買価格など、交渉の前後にわたって幅広いサポートが受けられます。

企業価値評価デューデリジェンスのほかに、税理士に買い手企業を探してもらい、成約までを依頼するのも可能です。ただし、M&Aの仲介を依頼した分、費用がかさんでしまうのを知っておきましょう。

⑮M&A仲介会社

最後に紹介する事業譲渡・事業売却の相談先は、M&Aの仲介会社です。M&Aの仲介会社は、特徴によって2つのタイプに分けられます。

  • 仲介会社
  • アドバイザリー会社

どちらもファイナンシャル・アドバイザリー契約(FA契約)を結びますが、立ち位置によって、次のような違いが見られます。

仲介会社

仲介会社は、売り手と買い手の間に立ち、両社の利益を考えてM&Aの仲介を行います。双方の利益を尊重するため、交渉が長引かず、スムーズに事業譲渡を進められるでしょう。

仲介会社の業務は、対象企業の紹介から契約の締結までの一貫したサポートで自社に見合った買い手を紹介してくれます。多くの仲介会社では無料で相談を受け付けているので、気軽に相談できます。

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M&A仲介会社であるM&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つアドバイザーがこれまで培ったノウハウを生かしてM&Aをフルサポートします。

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。会社売却・事業譲渡に関して、無料相談を受け付けますのでお気軽にお問い合わせください。

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アドバイザリー会社

アドバイザリー会社は、一方の会社だけとファイナンシャル・アドバイザリー契約を結びます。契約を結んだ側の利益を最優先するため、より良い条件で取引を進めてもらえるでしょう。

仲介会社とは違い、買い手候補を紹介してくれるわけではありません。売り手自身が買い手を探したり、仲介会社に頼んだりして、買い手候補を見つける必要があります。

【関連】M&Aアドバイザーとは?仕事内容や手数料・選ぶポイントを徹底解説

5. 事業譲渡・事業売却の相談先の報酬体系

事業譲渡・事業売却の相談先である仲介会社は、一般的に業務委託契約締結時に着手金、買い手との基本合意時に中間金、M&A成立時に成功報酬といったケースが多いです。
 
着手金が無料、月額報酬がなく成功報酬のみといった場合もあり、M&A会社によって報酬体系さまざまです。報酬体系はM&A会社によってかなり違いがあるので、M&A会社を選ぶときは事前に確認しましょう。

6. 事業譲渡・事業売却を専門家に相談するメリット

1つ目の事業譲渡・事業売却を専門家に相談する理由は、適切な企業評価と正しい価値を知るためです。経営者といえども、事業譲渡・事業売却に精通しているとは限りません。

専門的な知識を持っていなければ正しい企業価値を把握できず、低額の譲渡価格で事業を譲り渡してしまう事態も考えられます。

少しでも高い価格をつけて事業を譲渡するなら、事業譲渡・事業売却に通じた士業(弁護士・税理士)や銀行、M&A仲介会社などに相談をしましょう。事業の譲渡価格を高められたり、適正価格を教えてくれたりと、より良い事業譲渡が行えます。

①適切な企業評価・価値が知れる

1つ目の事業譲渡・事業売却を専門家に相談する理由は、適切な企業評価と正しい価値を知るためです。経営者といえども、事業譲渡・事業売却に精通しているとは限りません。

専門的な知識を持っていなければ正しい企業価値を把握できず、低額の譲渡価格で事業を譲り渡してしまう事態も考えられます。

少しでも高い価格をつけて事業を譲渡するなら、事業譲渡・事業売却に通じた士業(弁護士・税理士)や銀行、M&A仲介会社などに相談をしましょう。事業の譲渡価格を高められたり、適正価格を教えてくれたりと、より良い事業譲渡が行えます。

②多角的な視点が得られる

2つ目の事業譲渡・事業売却を専門家に相談する理由は、多角的な視点を得られる点です。経営者だけの視点では、すべての可能性に目を向けられません。そこで、弁護士やM&Aの仲介会社、中小企業診断士などに相談を持ち掛けます。

専門家の目線から自社の状態を視て、自社に合ったスキームを提案してもらえるでしょう。そのほかにも、法務リスク(競業避止義務など)や法人税の負担、取引・雇用契約の結び直しなど、事業譲渡・事業売却で把握しておくべき事項を知らせてもらえます。

専門家への相談では、現在の制度に合った対応を受けられるはずです。過去に事業譲渡・事業売却を経験していても、新しい制度を把握していないケースも考えられるので、弁護士や税理士などの専門家に相談して、譲渡の失敗を避けてください。

③アドバイスを受けられる

3つ目の事業譲渡・事業売却を専門家に相談する理由は、アドバイスを受けられる点です。経済産業省がまとめた「平成28年度中小企業・小規模事業者の事業承継に関する調査」によれば、譲渡側の経営者はそれぞれの専門家から、次のようなアドバイスを求めていました。

【顧問の税理士からのアドバイス】

  • 税務上のアドバイス
  • 金融機関との折衝についてのアドバイス
  • 資金調達のアドバイス

【顧問以外の税理士】
  • 税務上のアドバイス
  • 資金調達のアドバイス
  • 金融機関との折衝についてのアドバイス

【取引金融機関】
  • 資金調達のアドバイス
  • 金融機関との折衝についてのアドバイス
  • 後継者の確保

【経営コンサルタント】
  • 事業計画の策定
  • 組織体制の整備
  • 本業の強化

【商工会・商工会議所】
  • 後継者教育
  • 本業の強化
  • 資金調達の助言

【事業承継・引継ぎ支援センター】
  • M&Aの進め方についてのアドバイス
  • 後継者教育
  • 後継者の確保

【民間のM&A仲介業者】
  • M&Aの進め方についてのアドバイス
  • 後継者の確保
  • 本業の強化

引用:「平成28年度中小企業・小規模事業者の事業承継に関する調査」経済産業省より

相談先によってアドバイスの内容は異なります。事業譲渡・事業売却で不明な点があれば、顧問弁護士や懇意にしている税理士のほか、公的機関や、民間の会社などへもアドバイスを求めてみましょう。

7. 事業譲渡の相談はM&A仲介会社がおすすめ

ここまで、事業譲渡の相談先を紹介しました。15の候補からふさわしい相手を挙げるとするなら、M&Aの仲介会社をおすすめします。なぜなら、M&Aの仲介会社は事業譲渡を考えている方にとって、利用価値のあるサービスを提供しているからです。

M&A仲介会社をおすすめする理由

M&Aの仲介会社をおすすめするのは、5つの理由が挙げられるからです。紹介する理由を知ると、ほかの相談先よりも頼りになる相手であるのがわかります。

  • M&Aに関する専門知識や経験がある
  • 交渉力が高く希望通りのM&A取引を目指せる
  • 状況に応じて適切なアドバイスが可能
  • 各分野に精通した人間がチームを組んでいる
  • 価格が良心的

M&Aに関する専門知識や経験がある

M&Aの仲介会社をおすすめする理由の1つ目は、M&Aに関する専門知識や経験を有している点です。サポートするスタッフは、税理士や弁護士などをそろえ、交渉先の選定や適正価格の提示、企業価値評価・各分野のデューデリジェンスなどを行います。

M&Aの仲介会社は、売り手・買い手にふさわしい企業を紹介しているため、さまざまな事業の規模やスキーム、取り扱う業種に対応しています。

一方で、ほかの相談先は仲介業を専門とはしていません。M&Aの経験を重視するなら、仲介会社への相談がベストといえるでしょう。

交渉力が高く希望通りのM&A取引を目指せる

M&A取引は、価格交渉や契約条件の調整など複雑で難しい交渉を伴うことが多く、経営者にとって大きな負担となることがあります。

そこで、仲介会社を利用することの利点が際立ちます。仲介会社を介することで、直接交渉では難しい複雑なプロセスをワンストップで相談でき、冷静かつ客観的に妥協点を見つけやすくなります。仲介者が双方とコミュニケーションを取ることで、情報の整理や伝達が迅速になり、結果的にM&Aの成約につながる確率が高まります。

仲介会社を活用することで、経営者は専門的なアドバイスやサポートを受けられるだけでなく、広範なネットワークを通じて候補企業を探すことができ、複雑な交渉や調整もサポートしてもらえます。また、リスク管理の面でも安全性が高まります。
 

状況に応じて適切なアドバイスが可能

M&Aの仲介会社をおすすめする理由の2つ目は、状況に合ったアドバイスを受けられる点です。候補者を探す前には、スキームの決定や、企業価値の評価、適正な取引価格の提示を受けられます。

交渉の間は、各分野のデューデリジェンスを一任。契約書の作成などのアドバイスも受けられるでしょう。そのほかにも、従業員たちへの報告や、対価の受け取りなども適切な時機を知らせてもらえます。

各分野に精通した人間がチームを組んでいる

M&Aの仲介会社をおすすめする理由の3つ目は、各分野の専門家によるサポートを受けられるためです。

事業譲渡・事業売却を実施するには、複数の専門知識が必要となります。税務・法務・財務など、それぞれの分野に通じた専門家に任せて、取引の過程で起こる見落としを減らすのが可能です。

特定の専門家だけに相談をするよりも、各分野の専門家をそろえたM&Aの仲介会社へ依頼する方が、より良い事業譲渡・事業売却を行えるといえます。

価格が良心的

M&Aの仲介会社をおすすめする理由の4つ目は、良心的な料金価格にあります。近年の傾向では、着手金や中間金を取らず、成功報酬のみを徴収するM&Aの仲介会社が増えています。

支払う料金は、譲渡価格に応じて手数料率が定められており、レーマン方式と呼ばれる計算法で決定されます。この方式では、4つや5つの段階に分けて料率が設定さえ、譲渡額に見合った手数料が決定されます。

事業の規模が小さければ譲渡額も少ないため、着手金などが発生すると手元に残るお金を減らしてしまいます。その点、着手金を取らないM&Aの仲介会社なら、成約による譲渡益を支払いに充てられるため、資金に余裕がない状況でも相談が可能です。

相談するM&A仲介会社の選び方

規模や業種に関係なく相談を受けるM&A仲介会社もありますが、特定の規模や業種しか取り扱わないM&A仲介会社もあります。M&A専門として、専門的な知識を持っているのは大事ですが、それ以外にもこれから紹介するポイントを考慮すると選びやすくなるでしょう。

何を得意(専門)としているのか

M&A仲介会社によって、得意(専門)としている規模や業種が異なります。自社の規模や業種に合わせて相談するM&A仲介会社を選ぶのは必須といえるでしょう。特に、建設業などのように許認可が必要な業種であれば、その業種を専門とするM&A仲介会社に相談して的確なアドバイスが受けられます。

もちろん、規模を問わず他業種のM&Aを扱うM&A仲介会社に頼るのも良いのですが、現在扱っている案件や過去に携わった事例などのチェックは行うようにしましょう。

同規模のM&A案件を扱った経験があるか

特定の業種または規模を専門とするM&A仲介会社であればそれほど気にする必要はありませんが、それ以外の場合は自社と同規模のM&A案件を扱った経験があるかを確認しましょう。同規模のM&Aを扱った経験が多いM&A仲介会社ほど、相談した際に的確なアドバイスを受けられます。

現在扱っている案件や、過去に扱ったM&A案件・事例はM&A仲介会社のホームページで確認可能です。

明瞭な料金体系か

M&A仲介会社によっては、着手金や中間金などが発生する会社も存在します。料金体系はホームページで確認でき、より具体的に記載されているケースも多いです。あらかじめ発生する費用を把握するのは資金繰りにも関係してきますので、事前の料金体系の確認は行いましょう。

【関連】M&Aの仲介手数料の相場は?M&A仲介会社に支払う報酬の計算方法や買い手・売り手別にかかる費用の種類も解説

検討段階はどの程度か

まだ会社売却を決断しておらず、身内への承継や廃業などと合わせて選択肢をいくつか検討している段階であれば、顧問税理士や顧問弁護士、商工会議所が開催するセミナーなどに参加するのもいいかもしれません。

一方、M&A・会社売却を考えている場合は、M&A仲介会社に相談し検討するのがベストです。初期検討の段階から契約の成立まで総合的にサポートしてもらえます。サポート内容はさまざまなため、いくつかの仲介会社へ事前に相談をしてみるのがいいでしょう。

相談の秘密が保たれるか

会社売却を検討しているといった事実が取引先や従業員などに漏れてしまうと、M&Aの取引自体が困難になる、あるいは現在の事業に支障をきたす可能性があります。中小企業のM&Aでは、M&A仲介会社が中心となって進めるケースが一般的なため、相談の秘密が保たれる仲介会社かどうかをしっかりと確認するようにしましょう。

どのような相手への売却を希望しているか

M&Aでは、業種や案件規模によって、求められる専門知識が全く異なります。どのような相手への売却を希望しているかを決定し、自社の要望に応えられるか否かを見極める必要があります。

中小企業のM&A実績が豊富であれば、中小企業ならではの不安や悩みを熟知している可能性が高いため、実績は細かく確認をしておきましょう。

交渉をどのように進める予定か

M&A仲介会社のサポート範囲は会社によっても異なります。サポート範囲が広い仲介会社を選べば、M&Aの立案、税金対策やPMIなどの工程も全てサポートしてもらえます。

したがって、仲介会社に任せたい業務や、交渉をどのように進める予定でいるかなど、事前に細かく想定しておくと良いでしょう。ただし、サポートが充実するほど費用は高くなる傾向があるため、自社の予算との兼ね合いが必要です。

事業譲渡・事業売却に関するM&A仲介の動向

最近、M&A支援事業者が急増する中で、サービス内容や品質が一貫していないという問題が浮上してきました。

これを受けて、中小企業庁は2021年8月に、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言するなど、一定の基準を満たす仲介会社や金融機関のデータを登録・公開する「M&A支援機関登録制度」を創設しました。

さらに、2021年10月には、M&A仲介事業者による自主規制団体として、一般社団法人「M&A仲介協会」が設立されました。2023年12月には、M&A仲介業界のあるべき姿を示す倫理規程が策定され、広告・営業、コンプライアンス、契約重要事項説明といった重要な3つの分野における自主規制ルールが公表されました。

このように、国や業界全体で、中小企業の経営者が安心してM&Aに取り組むための基盤整備が進められています。

8. 事業譲渡・事業売却の相談先まとめ

事業譲渡・事業売却の相談先を紹介しました。自社の事業を売却するなら、M&A仲介会社の利用がおすすめです。買い手とのマッチングや専門家によるサポート、抑えた手数料などの利点があります。

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