2024年08月27日更新
倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継のメリットとは?動向や注意点を解説
倉庫会社の概要・倉庫業法の改正・倉庫会社業界のM&A・事業承継の動向について解説しています。そのほか、倉庫会社の事業譲渡におけるポイント・注意点・メリットや事業譲渡の流れの解説、現在公開されている売り手希望の案件も紹介しています。
目次
1. 倉庫業界とは
倉庫会社の業界とは、どのような市場環境にあるのでしょうか。ここでは、倉庫業法の改正を含む倉庫会社業界の現状や倉庫会社業界のM&A動向について解説します。
倉庫業界の現状
国土交通省の資料によると、主要倉庫事業者における営業収益は年々拡大しています。
2022年における事業別営業収益の構成をみると、全営業収益102億5,239万6千円のうち、普通倉庫業は22億62万9千円(21.5%)、貨物利用運送事業は30億5,569万8千円(29.8%)、港湾運送事業は15億4,595万5千円(15.1%)、不動産賃貸業は8億3,579万2千円(8.2%)、貨物自動車運送事業は5億5,094万1千円(5.4%)となりました。
参考:国土交通省「令和4年度 倉庫事業経営指標(概況)」
倉庫業法の改正
倉庫業界では荷主からの要望が多様化しており、倉庫会社は倉庫を借りて各顧客のニーズに対応しています。
このような状況を受け、国土交通省が2018年の6月29日から倉庫業法の改正を施行し、手間のかかる変更登録手続きについて簡略化が実現されています。
倉庫業法の改正により、「基準適合確認制度」で登録する前から変更していないことが確認されれば、対象の倉庫が施設設備の基準を満たしていると判断されるようになりました。
これによって必要書類(一部)の省略が可能になり、倉庫を登録するまでの手続き期間を短くでき、スムーズで短期間の入庫を加速させる環境が整えられました。
倉庫会社業界のM&A動向
倉庫会社を含む業界のM&A動向では、物流の一請負・3PL事業へのシフトを進めるために、同業者やメーカーの傘下にある物流会社などを買収・合併する動きがみられます。
そのほかにも、海外とのネットワークを強化するために、国外の物流会社を買収する動きもみられます。
倉庫会社はM&Aによる買収・会社売却で、倉庫の共有・拠点の確保・自社に不足するサービスの補完などを行い、市場での生き残りを図っています。
2. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却のポイント
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却では、どのような点を意識して進めればよいのでしょうか。
ここでは、事業譲渡・M&A・売却をする理由、M&A・売却後の取引先や従業員への影響、法務・手続き、それぞれの観点から解説します。
事業譲渡・M&A・会社売却をする妥当な理由
1つ目のポイントは、事業譲渡・M&A・会社売却をする妥当な理由を明確にしておくことです。
会社・事業を譲渡する理由によって、優先する条件・スキーム・手続きの仕方や譲渡する対象にも違いがでてくるため、自社がなぜM&Aを行うのかを明確にしておかなければ条件などが定まらずに失敗する可能性が高くなります。
事業譲渡・M&A・会社売却後の取引先・従業員への影響
2つ目のポイントは、事業譲渡・M&A・会社売却後の取引先・従業員への影響を考慮することです。
株式譲渡では会社そのものが引き継がれるため取引・雇用関係も買い手に承継され、合併においても存続する会社に権利義務のすべてが承継されます。
一方、事業譲渡の場合は個別に同意を得て取引・雇用契約を結び直す必要があります。
つまり、どの手法を選択するかによって取引先・従業員に与える影響が異なるため、対応などの考慮が必要です。
合併では労働の規則を統一する必要がある
倉庫会社の事業譲渡・M&A・会社売却で合併のスキームを選んだ場合、複数の会社がひとつにまとめられます。
各社で労働に関する規則が異なるため従業員の混乱を招く可能性があるので、合併契約と併せて労働に関する規則・契約を統一させる必要があります。
法務・手続き
3つ目のポイントは、法務と手続きです。倉庫会社の事業譲渡ではほかの事業とは異なる法務によって手続きが行われるため、注意が必要です。
法務における注意点
倉庫業の登録は、事業譲渡でも承継が認められています。ただし、以下のようなケースでは、倉庫業の登録は引き継がれません。
【事業譲渡の法務/引き継ぎ不可のケース】
- 建物・事業所だけを譲渡する
- 倉庫業登録の地位だけを譲渡する
- 倉庫の譲渡譲受を伴わない営業の譲渡
つまり、倉庫会社の事業譲渡における法務では倉庫業を行う建物と営業権を一緒に譲渡する必要があります。
法務の手続き
倉庫業の登録を承継する側は、以下のような書類を承継した日から30日以内に国土交通大臣または地方運輸局長へ提出する必要があります。
【承継側が法人の場合】
- 事業譲受届出書
- 譲渡譲受契約書の写し
- 承継した営業所と倉庫の名称の新旧対照表
- 登記事項証明書
- 役員が欠格事由に該当しない旨の宣誓書
3. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継のメリット
倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継のようなメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。ここでは、売り手と買い手それぞれのメリットについてみていきましょう。
売り手のメリット
倉庫会社を売る側が享受できるメリットは、主に以下の6つがあります。
【倉庫会社を売る側のメリット】
- 後継者問題の解消
- 個人保証・担保の解消
- 大手の傘下入りによる経営資源の共有
- 取引・雇用契約の維持(株式譲渡・合併)
- 創業者利益の獲得(株式譲渡)
- 事業・会社の存続
買い手のメリット
倉庫会社を買収する側のメリットには、以下の3つがあります。
【倉庫会社を買収する側のメリット】
- 拠点の確保
- 自社にはないサービスの獲得
- スケールメリットの獲得(同業者を買収する場合)
4. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継の注意点
倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継では、どのような点に注意を払えばよいのでしょうか。ここでは、倉庫会社の事業譲渡で特に注意が必要な偶発債務について解説します。
偶発債務
偶発債務とは、将来において発現する可能性を秘めた債務のことです。偶発債務を事業譲渡によって承継してしまうと、将来的には債務がでてきて借金・賠償金の支払いといった負債を抱えてしまうことがあります。
このような偶発債務は、簿外債務の一種とされています。以下では、簿外債務とはどのような債務をさすか、その概要を解説します。
簿外債務
簿外債務とは、貸借対照表に計上されていない債務のことです。簿外債務には、前述の偶発債務のほか、未払いの給与や賞与・退職給付債務などがあります。
買い手が事業譲渡で簿外債務を承継しないようにするためには、徹底したデューデリジェンスを行う必要があります。
5. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継の事例
倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継では、どのような会社が自社・事業の譲渡・買収を行っているのでしょうか。
ここでは、倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継の事例を3つ紹介します。買収先には、倉庫会社や物流事業を営む会社がみられます。
五健堂による六ツ星運送の事業譲受
2023年12月、五健堂は、ナワショウの神奈川県内にある伊勢原営業所と厚木三田倉庫、愛知県内の小牧営業所の事業を、五健堂の子会社である六ツ星運送に譲り受けることを決定しました。
ナワショウは、一般貨物自動車運送業や倉庫業を手がけています。六ツ星運送は、貨物自動車による陸上運送業を展開しています。
この事業譲受により、愛知と神奈川の拠点を確保し、さまざまな運行ルートを構築できるため、2024年問題の解決に向けて大きな一歩を踏み出すことが期待されます。
また、両拠点の業績も好調であることから、五健堂グループの事業拡大と収益向上に寄与すると判断され、今回の契約締結に至りました。
キユーソー流通システムによる久松運輸の事業承継
2023年7月、キユーソー流通システムは、四国エリアでの倉庫事業を子会社である久松運輸に吸収分割で移管することを決定しました。
この吸収分割により、キユーソー流通システムが分割会社となり、久松運輸が承継会社として丸亀営業所の倉庫事業を引き継ぎます。
両社ともに倉庫業や貨物利用運送事業を展開しており、今回の移管により、四国地域における営業、倉庫、運送機能を久松運輸に一元化します。この統合により、四国エリアでの最適な物流体制の構築を目指し、今回の決定に至りました。
岡崎通運による大昭運輸のM&A
2021年10月、岡崎通運は、大昭運輸の全株式を取得し、完全子会社化しました。
岡崎通運は、一般貨物自動車運送、貨物利用運送、軽貨物運送、荷役機械の販売・修理、倉庫業など、幅広い物流関連事業を展開しています。大昭運輸は、一般貨物運送、倉庫業、荷役梱包を専門とする企業です。
このM&Aにより、岡崎通運は愛知県北部に新たな物流拠点を設けることで、地域内の多様な物流ニーズに対応し、最適なサプライチェーンの構築を目指します。また、グループ全体の事業拡大に向け、グループ会社の強化にも注力していく予定です。
6. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継の案件一覧
本章では、弊社M&A総合研究所が取り扱っている倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継の案件を紹介します。
【西日本の陸海空の利便性に富む好立地】冷蔵倉庫業、製氷業
陸海空の利便性に富む立地に複数の冷凍冷蔵倉庫を有し、倉庫業や製氷業を営む会社です。海産市場に隣接しており、魚などの海産物の冷凍・冷蔵保存などを請け負っています。
エリア | 非公開 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
7. 倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継まとめ
倉庫会社の業界では、市場環境の変化に合わせた倉庫業法の改正があり、物流サービスへの拡張、海外の物流拠点確保などの動きがみられます。
【倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継のポイント】
- 事業譲渡・M&A・会社売却をする妥当な理由
- 事業譲渡・M&A・会社売却後の取引先・従業員への影響
- 法務・手続き
【倉庫会社の事業譲渡・M&A・事業承継の注意点】
- 偶発債務
- 簿外債務
8. 倉庫業界の成約事例一覧
9. 倉庫業界のM&A案件一覧
【平均年齢35歳/ドライバー20名以上】九州管内一円を配送網とする運輸・倉庫業
倉庫・物流・運送・宅配/九州・沖縄案件ID:2254公開日:2024年09月18日売上高
5億円〜10億円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
応相談
九州エリア全体を配送網とする運輸・倉庫業を手掛けております。
【西日本の陸海空の利便性に富む好立地】冷蔵倉庫業、製氷業
食品製造/倉庫・物流・運送・宅配/非公開案件ID:2141公開日:2024年08月09日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
損益なし
譲渡希望価格
1億円〜2.5億円
陸海空の利便性に富む立地に複数の冷凍冷蔵倉庫を有し、倉庫業や製氷業を営む会社
【マレーシア】600店舗以上FC展開のPUDOサービス
倉庫・物流・運送・宅配/海外案件ID:2063公開日:2024年07月19日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
5000万円〜1億円
譲渡希望価格
応相談
・マレーシアにてPUDO(Pick Up & Drop Off)事業をFC(フランチャイザー)にて展開
【大型案件/物流サービス業】シンガポールの譲渡案件
倉庫・物流・運送・宅配/海外案件ID:2017公開日:2024年07月04日売上高
250億円〜500億円
営業利益
2.5億円〜5億円
譲渡希望価格
応相談
・内陸運送・海上運送・航空運送・倉庫サービスを手掛ける
【シンガポール】売上30億円の物流業
倉庫・物流・運送・宅配/海外案件ID:1883公開日:2024年05月21日売上高
25億円〜50億円
営業利益
2.5億円〜5億円
譲渡希望価格
20億円〜
シンガポールにて物流事業を営む企業です。
【EBITDA1.6億/関西】高利益体質の機械器具設置業
建設・土木・工事・住宅/人材派遣・アウトソーシング/倉庫・物流・運送・宅配/近畿案件ID:1841公開日:2024年05月07日売上高
5億円〜10億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
10億円〜15億円
近畿圏内中心に機械器具設置業、とび土木、倉庫業を営む企業
【業歴30年以上/豊富なネットワーク】フォワーダー業(国際複合輸送事業)
倉庫・物流・運送・宅配/近畿案件ID:1772公開日:2024年04月11日売上高
10億円〜25億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
1億円〜2.5億円
対象企業は、関西と首都圏拠点に船舶予約・手配等のフォワーダー業務を手掛けております。
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