空調工事会社は事業譲渡をするべき?手続きやメリットを詳しく解説

執⾏役員 兼 企業情報部 本部⻑ 兼 企業情報第一本部 本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

空調工事会社のM&Aのうち、事業譲渡(事業売却)について着目しました。空調工事会社の事業譲渡(事業売却)について、その動向、メリット、譲渡価額を上げるポイント、手続きの流れ、譲渡後の注意点の解説などとともに事例も紹介します。

目次

  1. 空調工事会社が事業譲渡(事業売却)をするべき状況とは?
  2. 空調工事事業を事業譲渡(事業売却)するメリットとは?
  3. 空調工事会社における事業譲渡(事業売却)の事例を紹介
  4. 空調工事会社の譲渡価格を上げる2つのポイント
  5. 要注意!譲渡後も管工事の建設業許可の要件を満たす必要あり
  6. 空調工事会社の事業譲渡における候補者選定から取引の流れ
  7. 空調会社の事業譲渡はM&A総合研究所にお声がけください
  8. まとめ
  9. 空調設備工事業界の成約事例一覧
  10. 空調設備工事業界のM&A案件一覧
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1. 空調工事会社が事業譲渡(事業売却)をするべき状況とは?

まずは、空調工事会社が事業譲渡(事業売却)をするべき状況にあるかどうか確認しましょう。主に、以下3つの状況のどれかになっていれば、事業譲渡を検討するタイミングかもしれません
 

  1. 人材不足が続いている
  2. 後継者不足である
  3. 赤字が続いている

1つずつ、解説していきます。

①人材不足が続いている

人材不足が続いている場合、事業譲渡を検討した方がよいといえるでしょう。空調工事会社における人材不足は業界全体で深刻化しており、企業間で人材の取り合いが続いています。

特に、空調工事会社に必要な施工管理の有効求人倍率は5.47倍と高倍率です。また、空調工事の仕事に資格は必須とされていませんが、現状ではある程度の経験が求められます。

求人の募集段階でハードルは上がってしまっているともいえ、さらに現場の仕事はきつそうというイメージが根強いので、結果として人材不足につながってしまっています。

自社において人材不足状態が続いているようであれば、事業譲渡を検討するタイミングとも考えられます。

②後継者不足である

後継者不足である場合も、事業譲渡を検討するべきです。後継者がいなければ、経営者がリタイアした後に事業の継続ができなくなってしまいます

特に中小企業においては、なかなか後継者が見つけられません。中小企業の空調工事会社は、ほとんどが下請けや孫請け企業であるため取引先が安定せず、経営が難しいからです。

後継者が見つかるめどが立っていなければ、事業譲渡を検討する1つのタイミングといえるでしょう。

③赤字が続いている

赤字が続いて経営状況が悪い場合も、事業譲渡を検討しましょう。事業譲渡をすれば、キャッシュを得ながら他の黒字事業に注力できるからです。

中小企業の空調工事会社は価格競争が激しくなっているので、1件あたりの受注単価が低下しています。需要があるものの、黒字転換が見込める経営状態になるとはいい切れません。赤字が続いている状態であれば、事業譲渡を検討すべき段階ともいえるでしょう。

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2. 空調工事事業を事業譲渡(事業売却)するメリットとは?

前項では、空調工事会社がどのようなときに事業譲渡(事業売却)するべきかを掲示しました。次に、空調工事会社が事業譲渡をするメリットについて解説します。

具体的には、以下の2つです。
 

  1. 工事道具の購入で発生した負債が返済できる
  2. 別の事業に力を入れられる

1つずつ、見ていきましょう。

①工事道具の購入で発生した負債が返済できる

空調工事会社が事業譲渡すると、工事道具の購入時に発生した負債の返済ができるでしょう。なぜなら、事業譲渡をすれば、対価としてキャッシュを得られるからです。

対価は、平均して数千万円程度と予測されます。事業譲渡は会社を全て譲渡するわけではないので、会社の全てを譲渡する株式譲渡と比べて、入手できる金額は少なくなる点はやむを得ません。

しかし、ある程度のまとまったキャッシュが得られるので、負債の返済だけでなく別事業の投資にも使用できるでしょう。

②別の事業に力を入れられる

社内で複数の事業を行っている会社の場合、事業譲渡を行えば、別の事業に力を入れられるでしょう。その理由は、事業譲渡では、譲渡する事業・資産と残しておく事業・資産を選択できるからです。

譲渡する事業・資産を選択した結果、残した事業の経営に集中できます。

事業のうち、どの部分まで手放すのかは、買い手側の経営者との話し合いで決定しなければなりません。話し合いがスムーズに行えるよう、自社の考え方を明確にしておくようにしましょう。

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3. 空調工事会社における事業譲渡(事業売却)の事例を紹介

ここまで、空調工事会社が事業譲渡(事業売却)を行うメリットなどについて掲示してきました。そこで、本項では、実際にどのような事例があったのか2つの事例を見てみましょう。
 

  1. ジュピター電算機システムから日本電技への事業譲渡
  2. ヤシマ・エコ・システムから日立空調関東への事業譲渡

①ジュピター電算機システムから日本電技への事業譲渡

日本電技

日本電技

出典:https://www.nihondengi.co.jp/

  企業名 事業内容
譲渡側 ジュピター電算機システム 汎用ソフトウェア製品の企画製造販売、汎用ソフトウェア製品の導入に関するコンサルタント業務、コンピューター周辺機器の企画開発販売、前各号に附帯する一切の業務
譲受側 日本電技 ビルディング・オートメーションおよびファクトリー・オートメーションなど自動制御システムの設計・施工・調整・保守、監視盤および制御盤等の設計・製作、各種自動制御機器類の販売

2020(令和2)年4月、ジュピター電算機システムは、その全ての事業を日本電技に事業譲渡しました。日本電技側は、事業譲受にあたり、ジュピターアドバンスシステムズという子会社を新設し、その新設会社が事業譲渡の当事会社となっています。

日本電技は、事業内容の名目からはわかりづらいですが、空調工事事業も行っている会社です。今回、ジュピター電算機システムから譲渡された事業は空調工事とは異なるものですが、日本電技グループとしての事業領域には適うものであり、業容拡大し企業価値向上につながるともくろんでいます。

②ヤシマ・エコ・システムから日立空調関東への事業譲渡

日立空調関東

日立空調関東

出典:https://www.hitachi-gls.co.jp/group-kanto/

  企業名 事業内容
譲渡側 ヤシマ・エコ・システム 空調機器および冷凍機、
温湿度調整機器の販売・修理・設計・施工
譲受側 日立空調関東 冷暖房空調設備、給排水衛生設備、給湯設備、厨房浴室
設備、照明設備、冷凍冷蔵設備、電気機械器具設備、
防災設備、店舗設備の販売ならびにこれらの付属機器の
製造・ 販売・設計・施工および工事の請負

2013(平成23)年10月、八洲電機の連結子会社であるヤシマ・エコ・システムは、日立アプライアンスの100%子会社である日立空調関東に、茨城支店における空調事業を譲渡しました。なお、日立アプライアンスは、ヤシマ・エコ・システムの19.5%の株式を持つ株主でもあります。

親会社の八洲電機の発表によると、ヤシマ・エコ・システムの事業再編における選択と集中の戦略内容が、日立アプライアンスの方針や戦略と一致したことにより事業譲渡が決したそうです。

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4. 空調工事会社の譲渡価格を上げる2つのポイント

空調工事会社の事業譲渡価格は、以下2つのポイントを押さえると上がりやすくなります。
 

  1. 自社にしかない独自の強みをアピールする
  2. ワンストップ化などのサービスの広さをアピールする

それぞれ説明します。

①自社にしかない独自の強みをアピールする

企業価値を高めるために、自社にしかない独自の強みをアピールしましょう。独自の強みが買い手企業に伝われば、他社よりもよい条件で事業譲渡を行える可能性が出てきます。

たとえば、「明日中に現場をなんとか工事してほしい」という要望に対応したり、社員の資格取得プログラムを組んで技術力向上に努めたりするなど、独自の強みを明確化しましょう。強みが買い手側に伝われば、譲渡価格を交渉する際の材料になります。

②ワンストップ化などのサービスの広さをアピールする

サービス内容の広さもアピールしましょう。自社で行える業務の範囲が広がればコストダウンや柔軟な対応が可能となり、譲渡価格が上げられる可能性が出てきます。

つまり、さまざまな業務が行える企業の方が譲渡価格の交渉が行いやすいといえるでしょう。したがって、自社が提供できるサービスについてリストアップしておくといいです。

また、従業員が所持している資格やこれまで積んだ経験などもアピールして、どのような人材がいるのかも伝えるようにしましょう。サービスの広さをアピールすることで、譲渡価格が上がりやすくなります。

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5. 要注意!譲渡後も管工事の建設業許可の要件を満たす必要あり

事業譲渡(事業売却)が終わった後も、買い手側は管工事における建設業許可の要件を満たさなければなりません。なぜなら、現在、自社が建設業許可を取得していても、買い手の企業が要件を満たさなければ営業ができないからです。

建設業許可は、以下の要件を満たさなければなりません。
 

  • 1級・2級管工事施工管理技士などを保有する専任技術者がいること
  • 役員経験が5年以上ある経営業務の管理責任者がいること

これらの要件は、1人で担っても問題ありません。もし、現経営者がこの役割を担っている場合、買い手側企業内で、この役割を担う者がいなければ要件を満たせなくなってしまいます

譲渡後も建設業許可の要件を満たせるのか、買い手側に確認しておきましょう。

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6. 空調工事会社の事業譲渡における候補者選定から取引の流れ

ここから、空調工事会社の事業譲渡(事業売却)における候補者選定から取引の流れについて見ていきましょう。流れがわかれば、事業譲渡のイメージが湧くようになります。

流れは、以下のとおりです。
 

  1. 候補先の選定
  2. 経営者面談の実施
  3. 意向表明書の提示
  4. 基本合意書の締結
  5. デューデリジェンスの実施
  6. 最終譲渡契約書の締結
  7. 各所への告知・株主総会の実施
  8. クロージング・取引実行

1つずつ、見ていきましょう。

①候補先の選定

まず、どのような企業に譲渡するか候補企業を洗い出して、買い手企業の候補を選定します。

しかし、経営者だけで選定を行うのは、専門知識がなければ難しいです。そのため、買い手企業の選定はM&A仲介会社に相談しながら行うといいでしょう。

M&A仲介会社に相談するべき内容は、以下のとおりです。

  • 売却したい事業
  • 残しておきたい事業
  • 希望売却価格
  • 事業譲渡を行いたい時期

上記の内容を相談しておくことで、ニーズに合った候補先を探してくれます。

②経営者面談の実施

候補先の企業が見つかった後は、経営者同士の面談です。面談では、譲渡する事業の範囲や価格を決定します。

譲渡の範囲は人材やノウハウ、ブランド、債務なども含まれるので、詳細に渡り決定しなければなりません。

また、面談時には、残す事業を交渉するだけでなく、どの資産を手放すかも大切なポイントです。負債などのマイナスの資産を譲受してもらうには、必ず交渉をしなければなりません。事業譲渡は、交渉をしなければ負債を引き継いでもらえないからです。

交渉がうまくいかないと、負債だけが残ってしまう可能性があります。したがって、交渉を成功させるためには、税務や法務などの知識や交渉スキルが必要です。

M&A仲介会社に相談しながら事業譲渡を行うと、希望どおりの事業譲渡がしやすくなるでしょう。

③意向表明書の提示

事業譲渡の範囲が決まったら、買い手側が意向表明書を提示します。意向証明書とは、取引を行う意思や内容、条件を記載した書類です。

意向表明書には、交渉企業におけるおおよその譲渡価格が掲載されています。しかし、記載されている情報については、買い手の調査により変化する可能性があるものです。

意向表明書について、以下の記事でさらに詳しく紹介しているので、合わせてご覧ください。

④基本合意書の締結

意向表明書の提示が終わったあとは、基本合意書を締結します。基本合意書は、譲渡金額やスケジュールなどの取引内容が記載された書類のことです。

基本合意書の内容は、買い手企業が行う企業調査(デューデリジェンス)によって変更される場合があります。取引における大半の内容は決まっている状態ですが、変更される可能性があることを覚えておきましょう。

そして、基本合意書では秘密保持契約や独占交渉権を締結します。独占交渉権は、買い手企業以外との契約を禁ずるものです。基本合意書の締結後に、正式な取引を開始します。

⑤デューデリジェンスの実施

次は、買い手企業が売り手企業に対してデューデリジェンスを実施します。デューデリジェンスは、売手企業について価値の調査と査定をすることです。

デューデリジェンスは、客観的に企業の強みやリスクを判断するために、必要不可欠なプロセスとされています。具体的な調査内容は、以下のとおりです。
 

  • 買い手企業が専門家に依頼し専門家が訪問
  • 売り手企業の帳簿を閲覧
  • 帳簿以外の企業状況の把握

デューデリジェンスを行えば、詳細な取引内容を決められます。その際に、売り手企業は企業訪問の立ち会いや資料の準備が必要です。

⑥最終譲渡契約書の締結

デューデリジェンスで企業の調査が終わった後、条件の最終交渉を行い、最終譲渡契約書を締結します。一般的に、デューデリジェンスの後に交渉内容が変更されることが多いです。

したがって、企業価値や譲渡リスクを考慮したうえで、再度条件交渉を行います。交渉が終われば、最終譲渡契約書を記入して締結は完了です。

最終譲渡契約書には、以下の内容を記載してください。
 

  • 譲渡範囲
  • 従業員の転籍
  • 免責登記

上記の内容が、最終的な譲渡の内容になります。

⑦各所の告知・株主総会の実施

最終譲渡契約書の締結が終われば、各所への告知と株主総会を実施します。最終譲渡契約書を行う場合、株主の承認が必要だからです。

買い手企業は効力発生日の20日前を期限として、株主に対して事業譲渡を受けることと、株主総会の開催を告知する必要があります。

また、反対株主には株式の買取請求権があることを伝えなければなりません。そして、効力発生日までに株式を買い取る必要があります。

⑧クロージング・取引実行

告知や株主総会の実施が終われば、クロージングを行い、取引を実行してください。クロージングは両者間を統合するうえに必要で、以下の手続きを行います。
 

  • 名義変更手続き
  • 許認可の手続き

事業譲渡では、許認可の引き継ぎは自動的に行われないので、買い手側は監督官庁で許認可手続きを行う必要があります。上記2つの手続きを終えて、事業譲渡の効力が発生する日を迎えれば、契約手続きは完了です。

こちらでは、事業譲渡の手続きについて紹介しました。手続きの内容は複雑なため、専門知識がなければ経営者のみで行うことは難しいため、M&A仲介会社などの専門家にサポートを依頼すると安心して進められます。

【関連】事業譲渡の手続き・流れやスケジュールを徹底解説!期間はどれぐらい?

7. 空調会社の事業譲渡はM&A総合研究所にお声がけください

空調会社の事業譲渡はM&A総合研究所にお声がけください

M&A総合研究所

出典:https://masouken.com/

空調工事会社のM&A・事業譲渡をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にお声がけください。

中小企業のM&Aを主に手掛けるM&A総合研究所では、豊富な経験と知識を持つM&Aアドバイザーが専任となり、空調工事会社の事業譲渡をフルサポートします。

通常は10カ月~1年以上かかるとされるM&Aを、最短3カ月で成約した実績を有するなど機動力もM&A総合研究所の大きな特徴です。

M&A総合研究所は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)となっており、着手金は完全無料です。無料相談を受けつけておりますので、空調工事会社の事業譲渡をお考えの際には、お気軽にお問い合わせください。

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8. まとめ

空調工事会社の事業譲渡(事業売却)についてお届けしました。事業の一部や全てを別企業に譲ることを事業譲渡といいます。空調工事会社の事業譲渡を成功させるためには、以下の2点を意識することが大切です。
 

  1. 自社にしかない独自の強みをアピールする
  2. ワンストップ化などのサービスの広さをアピールする

また、M&A仲介会社に相談すれば、契約に関する準備から実際に譲渡するまで十分なサポートが受けることが可能です。

9. 空調設備工事業界の成約事例一覧

10. 空調設備工事業界のM&A案件一覧

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