2023年04月05日更新
人材派遣会社は事業売却(事業譲渡)のチャンス!業界傾向や課題、事例までを徹底解説
人材派遣会社の事業売却(事業譲渡)について解説します。人材派派遣業界は競争が激しく、事業売却(事業譲渡)するのも一つの経営戦略です。今回は、人材派遣業界の抱える課題や対策、事業売却すべき理由など、事例も交えながら徹底解説します。
目次
1. 人材派遣業界の抱える課題
人材派遣事業は、1985年に労働派遣法が成立したことから始まりました。それまで「正社員」の働き方が一般的でしたが、「派遣社員」の働き方が誕生したのです。
一見順調で将来有望の業界のように感じますが、人材派遣業界は4つの課題を抱えているのです。
- 人口減少による業界規模縮小が危惧される
- 景気に左右されやすい
- 働き方の多様化により人材が不足しやすい
- 2020年4月の派遣法改正による業界の動き
人材派遣業界がどのような課題を抱えているのか確認しましょう。
①人口減少による業界規模縮小が危惧される
日本国内では人口減少が深刻化しており、業界規模の縮小を危惧されています。日本は高齢化だけでなく、少子化も進んでいるのです。労働人口は毎年減っていき、業界規模が縮小していくと予想されています。
これまでは働き方の多様化や、景気向上のために求人倍率が高まっていた影響を受け、市場は急速に拡大していました。しかし、これからは人口減少・少子高齢化に合わせたサービス展開をしなければ生き残っていくことは難しいでしょう。
②景気に左右されやすい
人材派遣業界は、景気に左右されやすい業界です。労働派遣法が成立した1985年当時は求人倍率も良く、多くの派遣社員が必要とされていました。
しかし、2008年のリーマン・ショック以降、企業による派遣切りが続出。人材を必要とする会社がなければ、人材派遣の仕事は成り立ちません。
また、昨今では建設系や医療系、IT系の専門派遣会社など、業界に特化した人材派遣会社も増えてきました。こうした業種特化の人材派遣会社の場合、その業界の景気が悪くなれば仕事も求人もなくなってしまうでしょう。
そのため、柔軟にサービス展開をしていかなければなりません。人材派遣会社の業績は、景気に左右されやすいのが特徴です。
③働き方の多様化により人材が不足しやすい
近年、働き方の多様化によって派遣登録する人が減っていくのが予想されています。今までであれば「正社員になれなかったら派遣で働こう」とする考えが多かったです。しかし昨今ではフリーランスなど、自由な働き方を選ぶ人が増えています。
この傾向は、ワークライフバランスの充実や働き方改革といった柔軟な働き方を求めている人が増えていることを表しています。派遣登録を増やしてもらうためには、多様な働き方の波に乗るのが必須といえるでしょう。
④2020年4月の派遣法改正による業界の動き
2020年4月、労働者派遣法が改正されました。改正によって、人材派遣業界は大きく変化が出るといわれているのです。この改正によって派遣社員の情報提供義務や待遇差改善が行われることになります。
目的は、同一労働同一賃金を導入するためです。同じ業務を行っていても正社員と比べて派遣社員(非正規雇用社員)の賃金・待遇に格差があります。しかし、改正後は交通費・残業代の支給、退職金の支給も行われます。
また、賃金についても正社員との格差をなくしていくため、「同じ仕事をする正社員と同じ賃金」もしくは「同じ地域で働く同種の正規雇用者の平均以上の賃金」のどちらかに設定されようになります。
このような派遣法改正によって、派遣会社に大きな影響を与えるでしょう。派遣社員としての働き手の需要は増えるかもしれません。しかし、企業側は「同一賃金なら派遣よりも新卒社員を採用したい」と考える恐れもあります。
ここまで、人材派遣業界で危惧されている課題を確認してきました。競争が激化している人材派遣業界の中でどのように生き残っていくべきか、次の章で対策を確認しましょう。
参照:厚生労働省「労働者派遣法 改正の概要<同一労働同一賃金>」(2020年)
2. 人材派遣業界で生き抜くための対策
人材派遣業界で生き抜くためには、以下の4つの対策が必要です。
- グローバル人材を活用する
- 海外へ進出する
- 高齢者の就労ビジネスに力を入れる
- 多様な働き方に対応する
順番に確認していきましょう。
①グローバル人材を活用する
グローバル人材をうまく活用して市場を伸ばしていきましょう。国内は、少子高齢化で人口減少の傾向にあります。そこで、働き手として外国人を受け入れるのです。
日本の労働人口が減ってしまう分を外国人で補うことで、企業の働き手を獲得できます。特に外国人労働者の法律が緩和されようとしているため、より外国人を受け入れたいと考える企業は増えると予想できるでしょう。
近年、海外からの人材活用に力を入れる人材派遣会社は増えています。海外で人材の募集をかけ、現地または日本で仕事内容の研修を行うケースも多いです。このように、グローバル人材を活用して企業の求人に対応しましょう。
②海外へ進出する
国内にとどまらず、海外へ進出していきましょう。日本で行っている人材派遣事業を海外に向けて事業展開できます。
海外へ進出するメリットは、日本の景気に左右されないことです。日本だけで勝負していても、今後市場の縮小が目に見えています。市場縮小に対抗するためには海外に飛び出す勇気も必要です。
特に経済成長の著しいインドやベトナムなどのアジア諸国での労働者はさらに増えていくのが予想されます。海外進出によって、他社との差別化を図りましょう。
③高齢者の就労ビジネスに力を入れる
今後は高齢者の就労ビジネスに力を入れていくことも重要になります。総人口が減少する中で、65歳以上の高齢者人口は3,617万人(総人口の28.7%)と過去最多を記録しました。
そして、いわゆる「団塊の世代」(1947年~1949年生まれ)を含む70歳以上人口は、2,791万人(総人口の22.2%)となっています。
そこで一度リタイアした高齢者に就労してもらえるようなビジネスのニーズは高まると予想されます。「生活費を稼ぎたい」「リタイア後の自由な時間を好きなことに費やしたい」と考える高齢者も多いはずです。
そのため地域と連携するなど、高齢者の就労支援サービスは必須となるでしょう。
参照:総務省統計局「統計からみた我が国の高齢者-「敬老の日」にちなんで」(2020年9月)
④多様な働き方に対応する
より多くの人材を獲得するためには、多様な働きに対応した派遣サービスを行いましょう。例えば、「1日だけ」「3日だけ」などの超短期派遣や、週休2日・2年契約の長期派遣までさまざまな働き方が求められています。
「1日だけ働きたい」フリーランスや、「子供が帰ってくるまでの15時まで働きたい」主婦など、求められる働き方はさまざまです。このような多様化するキャリア形成に対応したサービス展開を行いましょう。
以上が、競争率の激しい人材派遣業界で生き残るための対策でした。一方で、人材派遣事業を売却したいと考える経営者もいるでしょう。それについて、次の章で詳しく確認していきます。
3. 人材派遣事業を事業売却(事業譲渡)するのもアリ!
人材派遣事業を事業売却(事業譲渡)するのも、経営戦略としてアリです。労働派遣法が成立してから、多くの人材派遣会社が設立されました。縮小する市場の中で事業継続するのが難しいと感じる経営者もいるでしょう。
そのような経営者には、人材派遣事業の事業売却を提案します。
その理由は以下の3つです。
- 事業の選択と集中ができる
- 採算の合わない部分だけ売却できる
- さらに事業を強化できる
3つの理由について確認していきましょう。
①事業の選択と集中ができる
人材派遣事業の事業売却によって、事業の選択と集中ができます。例えば、人材派遣事業以外の事業を展開していたとしましょう。人材派遣事業を売却すると、別の事業に注力できます。
事業売却をすると多額の資金が手に入れるのが可能です。経営者の時間や従業員の確保などの経営資源も集中させられます。
このように、人材派遣事業を売却すると他の事業に専念できるのです。
②採算の合わない部分だけ売却できる
事業売却なら、人材派遣事業の中でも採算の合わない部分だけを売却できます。例えば、全国で人材派遣を展開しているにもかかわらず九州でだけうまくいっていなかったとしましょう。このとき、九州の人材派遣事業だけを売却できます。
他にも、IT専門人材派遣と医療専門人材派遣を行っている場合、医療専門人材派遣だけを売却も可能です。このように、事業売却であれば自社にとって非効率的な部分だけを切り離せます。
③さらに事業を強化できる
シナジー効果の期待できる企業へ事業売却すると、さらに人材派遣事業を強化できる可能性が高まります。シナジー効果とは、買い手企業と売り手企業の強みを掛け合わせることで、さらに売り上げを伸ばす相乗効果のことです。
例えば、介護系人材派遣事業を介護施設運営・コンサルなどを行う会社に売却すれば、あっせん先が容易に獲得できるでしょう。また、全く別業種の人材派遣事業を運営している会社に売却すれば、登録者の獲得ノウハウを得たり、ブランド力が高まったりします。
このように、シナジー効果の期待できる企業へ事業売却すると、売却した人材派遣事業をさらに成長させられるのです。
以上のように、人材派遣事業での経営がうまくいかないのであれば事業売却をするのも一つの手です。実際に多くの人材派遣事業が事業売却されています。次の章で事例を確認していきましょう。
4. 人材派遣事業の事業売却(事業譲渡)3つの事例
人材派遣事業の事業売却(事業譲渡)は頻繁に行われています。
以下の事例を確認していきましょう。
- パートナーがウイルテックに事業譲渡した事例
- グロップがアミーゴに事業譲渡した事例
- クリエアナブキがライクスタッフィングに事業譲渡した事例
詳しく事例を確認し、人材派遣会社の事業売却がどのようなものなのかイメージを膨らませましょう。
①パートナーがウイルテックに事業譲渡した事例
ウイルテックは2020年10月に、パートナーのIT技術者派遣事業を事業譲渡によって得ました。
今回の事業譲渡は、パートナーがIT技術者派遣事業について、新会社を設立させ譲渡しました。パートナーはこれまでシステム構築分野の技術者の派遣を行ってきました。
またウイルテックは製造請負やメーカー・建設業向けの技術者派遣事業をメインに行っています。
今回のM&Aにより、新規顧客の獲得、そしてシステム開発提案など既存の顧客への営業拡大を目指します。
②グロップがアミーゴに事業譲渡した事例
グロップは2020年10月に、アミーゴへ事業譲渡を実施しました。
アミーゴはアレンザホールディングスの子会社で、アレンザホールディングスは、ホームセンター事業、ペットショップ事業などを運営しています。
対象会社となったグロップは、岡山県岡山市を拠点にし、メイン事業として人材派遣事業や人材紹介事業、テレマーケティング事業などを運営しており、他にペットショップなども展開しています。
今回のM&Aでは、アミーゴがグロップのペットショップ1店舗「chouchou」を取得した形です。
動物の里親探しのノウハウを持った「chouchou」を得ることで、アレンザホールディングスは国内におけるペットショップの拡大を目指します。
③クリエアナブキがライクスタッフィングに事業譲渡した事例
2018年3月、クリエアナブキは、大阪の人材派遣事業をライクの子会社ライクスタッフィングに事業譲渡を行いました。1,500万円で譲渡されています。
譲渡対象となったのは、クリエアナブキの大阪支店にかかわる人材派遣事業です。クリエアナブキは、中四国を中心に人材派遣事業を展開しています。近畿県内での収益化のため大阪支店を展開していましたが、経営方針を転換。中四国重視の収益向上を目指すことになったのです。
一方、ライクスタッフィングは東京・大阪に本社を置く人材紹介・人材派遣会社です。大阪の人材派遣サービスを強化するために大阪支店にかかわる人材派遣事業だけが譲渡されることとなりました。
5. 人材派遣業界で事業売却(事業譲渡)をすべき会社
ここまでは人材派遣業界の業界動向や事業売却(事業譲渡)の事例を見てきました。しかし、「うちの会社は事業売却すべきなの?」と悩む経営者もいるでしょう。
結論からいうと、以下のように考えている経営者は事業売却に向いているといえます。
- 会社内の別事業に資金や資源を投入したい
- 不採算エリアを解消したい
これら2つの悩みを解決してくれるのが事業売却です。しかし、安易に事業売却を決めることはやめておきましょう。しっかりと社内で協議するのが必要です。次の章で、事前に協議すべき内容について確認しましょう。
6. 人材派遣事業の売却に向けて会社内で協議すべき5つの内容
事業売却を検討する場合、まずは会社の取締役員やキーパーソンを集めて事業売却を行うべきか協議しましょう。
明確に決めるべきなのは以下の内容です。
- 事業売却の目的
- 売却する範囲
- 事業売却のスケジュール
- 理想の買い手企業
- 譲渡価格の予算
順番に詳しく確認しましょう。
①事業売却の目的
事業売却の目的を明確にしましょう。事業売却によって、会社は存続し続けます。存続した会社がどのように良くなることをイメージしているのかを言葉にして伝えましょう。明確に目的が決まっていなければ、役員や社員、株主を納得させられません。
また、買い手企業との譲渡条件の交渉の際も、つい目先の利益を優先してしまうことになります。事業売却の目的を明確に持っていることで、譲渡条件も優先順位をつけられるでしょう。
さらに目的を明確にすると、事業売却以外の方法を考えつくかもしれません。あくまでも事業売却は目的を達成させるための手段です。目的を明確にしたうえで、本当に事業売却をすべきかを確認しましょう。
②売却する範囲
事業売却するのであれば、売却する範囲を決めましょう。事業売却といっても、一つの事業をそのまま売却するわけではありません。事例でもお伝えしたように、「大阪支店にかかわる事業」だけを売却するのも可能です。
最終的に、売却する範囲は買い手企業との交渉で決定します。しかし、事前に何を売却して何を会社に残すのかを決めておきましょう。そうすると、スムーズに交渉を進められます。
③事業売却のスケジュール
事業売却のスケジュールを決めましょう。一般的に、事業売却には3カ月〜1年程度かかるといわれています。
たしかに、事業売却にかかわる業務に細かく期限を設定するのは難しいです。しかし、事業売却を円滑に進めるためにも、設定売却完了日(譲渡日)や名義変更などの手続きをいつまでに終えたいのかを決めておきましょう。
スケジュールを把握しておくと、すべき事柄が明確になります。
④理想の買い手企業
準備段階の時点で、どのような買い手企業に売却したいのかを決めておきましょう。例えば、以下のようなことを洗い出すと良いでしょう。
- 業種・業界
- 企業規模
- サービスのエリア
- 社風や企業理念
さらに、この中で優先順位をつけておくと買い手企業探しがスムーズに進みます。
⑤譲渡価格の予算
どれくらいの価格で事業売却したいのか予算を立てておきましょう。
参考までに、譲渡価格の相場は以下の計算式のとおりです。
- 譲渡価格の目安=事業の時価+営業利益×3年分〜5年分
売却の範囲によって大きく譲渡価格の相場は変わります。より妥当な譲渡価格を算出するためには、M&A仲介会社などの専門家に依頼しましょう。
以上が、事業売却をするために社内で協議すべき内容でした。これらの内容について、取締役員やキーパーソンの中で共通意識が持てたら早速事業売却の検討に入っていきます。事業売却の流れについて次の章で確認していきましょう。
7. 人材派遣会社の事業売却(事業譲渡)10の流れ
人材派遣会社の事業売却(事業譲渡)は、10の流れに分けられます。
- M&A仲介会社とアドバイザリー契約を結ぶ
- 買い手企業を選定・アプローチする
- 面談・交渉を繰り返す
- 基本合意契約を締結する
- デューデリジェンスを受ける
- 事業譲渡契約を結ぶ
- 株主に公告・通知をする
- 株主総会で決議を取る
- 名義変更の手続きを行う
- 統合作業を行う
順番に内容を確認し、事業売却をスムーズに行いましょう。
①M&A仲介会社とアドバイザリー契約を結ぶ
まずは、M&A仲介会社に相談に行き、アドバイザリー契約を結びましょう。アドバイザリー契約とは、M&A仲介会社に事業売却のサポートを正式にお願いするときに交わす契約です。M&A仲介会社には、以下のような業務を任せられます。
- 買い手企業の選定・アプローチ
- 面談や交渉の立ち会い・サポート
- 契約書などの書面の作成サポート
- 弁護士や税理士などの専門家の紹介
このように、事業売却にかかわる業務をプロがサポートしてくれるのです。アドバイザリー契約を結ぶときには、情報を外部に漏らすリスクを軽減するため秘密保持契約も結びましょう。
②買い手企業を選定・アプローチする
続いて買い手企業を選定し、アプローチしていきましょう。M&A仲介会社に、社内で協議した理想の買い手企業像を伝えることで、スムーズに選定してくれます。
気になる企業があればM&A仲介会社を通して、アプローチしてもらいましょう。アプローチするためには、売却したい人材派遣事業の概要や強みなどをまとめた資料が必要です。M&A仲介会社と一緒に作成しましょう。
③面談・交渉を繰り返す
買い手企業が興味を示したら面談を行っていきます。まずは、両社の経営者同士が違いを理解するために面談を行うのです。譲渡を決意した理由や事業の強み・弱み、今まで経営してきた思いなどを伝えましょう。
買い手企業に対しても、譲受を検討している理由や経営理念、今後の会社の展望などを質問し、相手の理解を深めていきます。互いに事業売却・買収の意思があれば、条件について話し合いをしましょう。
このとき、買い手企業側から意向表明書を提出される場合があります。価格や買収範囲など、おおむねの譲受条件が書かれている書類です。意向表明書を元に、条件のすり合わせを行っていきましょう。
④基本合意契約を締結する
両者納得のいく条件が出揃ったら、基本合意契約を締結しましょう。基本合意契約とは、問題がなければ書面に書かれた条件どおりに事業売却を実行するといった約束のことです。
この後行われるデューデリジェンスで問題がなければ、そのまま事業譲渡契約を結ぶことになります。
⑤デューデリジェンスを受ける
基本合意契約の締結後、買い手企業によるデューデリジェンスを受けましょう。デューデリジェンスとは、売り手企業の内部調査のことです。具体的には、以下のようなことを調べます。
- 財務
- 人事
- 法務
- 税務
- IT
- 契約内容
これらを徹底的に調べることで、買い手企業が買収した際のリスクがないか洗い出しを行うのです。売り手企業は、これらに関する資料の提出や現地視察の立ち会いを求められるので、対応しなければなりません。必要であれば、弁護士や会計士などの専門家による受け答えも準備しましょう。
⑥事業譲渡契約を結ぶ
デューデリジェンスの結果を受け、事業譲渡契約を結びましょう。
大きなリスクや問題がない限り、基本合意契約の内容どおり事業譲渡契約を結ぶことになります。ただし、簿外債務やリーガルリスクなどが見つかった場合、譲渡対価を値下げされるかもしれません。
必ず、条件を再度確認し、納得した条件で事業譲渡契約を締結しましょう。
⑦株主に公告・通知をする
事業譲渡契約を結んだら、株主に事業譲渡をする内容を公告・告知しましょう。譲渡日の20日前には、株主に事業譲渡の内容や、株主総会を開くことを伝える必要があります。
⑧株主総会で決議を取る
事業売却に関する株主総会を開き、株主から決議を取りましょう。株主総会では以下のような条件をクリアしなければ事業売却できないので気をつけましょう。
- 決議権の過半数を持つ株主が出席している
- 特別決議で3分の2以上の賛成を得る
株主総会は譲渡日の前日までに行わなければならないので、速やかに準備・実施しましょう。
⑨名義変更の手続きを行う
株主総会で決議を取った後は、名義変更の手続きを行いましょう。
事業売却をした場合、自動的に資産・負債の所有者が変わるわけではありません。土地や建物などの名義を買い手企業の名前に変えましょう。
⑩統合作業を行う
最後に、統合作業を行いましょう。統合作業とは、売却対象となった従業員が買い手企業になじんで通常どおりに事業運営するための作業です。具体的には以下のようなことを統合していきます。
- 従業員の人事配置
- 企業の社風や理念
- 社内で使うITシステム
- 人事評価システム
これらのことを怠ると、従業員のモチベーションは下がってしまいます。なぜなら、「売却された」ネガティブなイメージと「今までと違う環境で働きにくい」といった労働環境の変化があるからです。
売り手企業の経営者として、しっかりと従業員をサポートしましょう。
8. 人材派遣事業の事業売却(事業譲渡)4つの注意点
人材派遣事業の事業売却(事業譲渡)では、人材派遣事業ならではの注意点があります。
注意点は以下の4つです。
- 紹介事業の許可は引き継げない
- 派遣登録者との契約は引き継げない
- マイナンバーなどの個人データを慎重に扱う
- 買い手企業の近隣エリアで人材派遣事業が禁止される
事業売却を行う前に、しっかりと確認しておきましょう。
①紹介事業の許可は引き継げない
事業売却の場合、紹介事業の許可は引き継げません。原則、人材派遣事業を営むためには、有料職業事業の許可を取得しているはずです。もし、事業売却先の企業が許可を取得していれば改めて取得する必要はありません。
しかし、許可を取得していない場合は新たに許可を取得してもらう必要があります。できるだけ同業会社に売却した方がスムーズな取引が実現するでしょう。
②派遣登録者との契約は引き継げない
事業売却をしても派遣登録者との契約を引き継ぐことはできません。
そのため、新たに登録者には買い手企業と契約を結び直さなければならないので注意しましょう。さらに、派遣先との契約も結び直しが必要です。
人材派遣事業には、膨大な数の契約が結ばれていることになります。それらを全て結び直しするにはとても時間と労力がかかるでしょう。
スムーズに結び直しができるよう、譲渡日より前から契約者に対して契約先が変更する旨を伝えておきましょう。
③マイナンバーなどの個人データを慎重に扱う
人材派遣事業を営むために必要なマイナンバーや住所などの個人データは慎重に扱いましょう。
通常、派遣登録者には「会社売却・事業売却などをする際は譲受会社に個人データの開示を行う」ことを同意してもらっています。この場合は、そのまま買い手企業に渡しても問題ありません。
しかし、このような一文を契約書に書いていないのであれば、個人情報を渡せないので事前に確認しておくことをおすすめします。また、受け渡しの際に情報が外部に流出しないよう、取り扱いには十分注意しましょう。
④買い手企業の近隣エリアで人材派遣事業が禁止される
人材派遣事業を売却すると、買い手企業の近隣エリアで人材派遣事業を営むことを禁止されるので注意しましょう。これは、競業避止義務といいます。
具体的には、会社法第21条において同一の市町村の区域内および隣接する市町村の区域内で、20年間同一の有料職業紹介事業を行うのが禁止されると定められているのです。もちろん、交渉次第でエリアを狭めたり期間を短くしたりできます。
今後、近隣エリアで人材派遣事業を営む予定があるなら、できるだけ条件を緩和してもらいましょう。
9. 人材派遣事業の事業売却(事業譲渡)ならM&A総合研究所に相談しよう
人材派遣事業の事業売却(事業譲渡)をするのであれば、M&A総合研究所へぜひご相談ください。
人材派遣事業の事業売却には、注意点が多くあります。しっかりと買い手企業選び、交渉をしなければトラブルに発展する恐れもあります。
M&A総合研究所では、人材派遣事業に精通したM&Aアドバイザーがフルサポートいたしますので、交渉やデューデリジェンスにもしっかり対応いたします。
さらに、M&A総合研究所はスピーディーなサポートを実践しており、成約まで最短3カ月という実績もございます。
また、M&A総合研究所の料金体系は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ)です。人材派遣業のM&Aをご検討の際は、無料相談をお受けしてますのでお気軽にお問い合わせください。
10. まとめ
人材派遣業界は、今後市場が縮小していく傾向にあります。今までと違う視点で、サービスを展開していかなければ生き残れないでしょう。
もし、経営で悩んでいるのであれば、人材派遣事業だけを事業売却するのも一つの経営戦略です。会社をより良くするために、前向きに検討してみましょう。
11. 人材派遣業界の成約事例一覧
12. 人材派遣業界のM&A案件一覧
【外国人労働者派遣/ベトナム・カンボジア等海外コネクション多数】愛知県の人材派遣業
人材派遣・アウトソーシング/中部・北陸案件ID:2315公開日:2024年10月08日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
5000万円〜1億円
・愛知県にて製造業への派遣を主とした外国人労働者(エンジニアビザ「技術・人文知識・国際業務」)派遣事業を手掛けている
【2社譲渡案件】健康診断サービス業・クリニック運営
介護・福祉・医療/関東・甲信越案件ID:2288公開日:2024年09月27日売上高
5億円〜10億円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
1000万円〜5000万円
健康診断に特化した医療サービスを手掛ける企業
【首都圏】高収益の留学支援業
人材派遣・アウトソーシング/人材紹介/教室・教育・ノウハウ/関東・甲信越案件ID:2200公開日:2024年08月29日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
短期留学や海外の大学へ進学したい方の支援を行っている。
【東北】施工管理技士 / 建設系人材派遣業
建設・土木・工事・住宅/人材派遣・アウトソーシング/東北案件ID:2103公開日:2024年07月30日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
〜1000万円
譲渡希望価格
5000万円〜1億円
地元の大手建設会社への取引をメインに行う、建設系人材派遣会社。 施工管理技士や、事務等の派遣業を手掛ける。
【近畿地方/売上20億円超/純資産以下で譲渡可能】保有トラック300台以上の運送事業
倉庫・物流・運送・宅配/近畿案件ID:1516公開日:2024年01月09日売上高
25億円〜50億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
20億円(応相談)
売上:20億円以上 業歴:50年以上 業種:一般貨物自動車運送業、自動車整備業、人材派遣業 トラック台数:300台以上
【西日本・複数法人同時譲渡】就労継続支援業(図面チェック)、製作図業
IT・ソフトウェア/介護・福祉・医療/住宅・不動産・ビルメンテナンス/中国・四国案件ID:1463公開日:2023年12月14日売上高
10億円〜25億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
5億円〜7.5億円
①図面製作図業 ②就労継続支援A型
【海外/売上約20億円/日系顧客多数】人材派遣会社
人材派遣・アウトソーシング/人材紹介/海外案件ID:1430公開日:2023年12月06日売上高
10億円〜25億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
希望なし
人材派遣サービス、人材(正社員)紹介サービス
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