2022年07月21日更新
事業譲渡の登記は必要?不要?必要書類、免責登記のやり方・注意点も解説!
事業譲渡での登記は内容により必要・不要に分かれます。必要・不要のケース以外に免責登記もあり注意が必要です。この記事では、免責登記や事業譲渡における登記での添付書類、2005年の法改正で施行された登記原因証明情報制度などについて解説します。
1. 事業譲渡とは?
事業譲渡とは、会社が保持している事業を他の会社に譲渡することを意味しています。事業譲渡は、事業を譲渡する側の会社と、される側の会社間で合意に至った事業のみが譲渡されるものです。
包括的に業務の権利を引き継ぐ会社分割や合併とは、事業を引き継ぐ点では似ているものの、手続きや法的拘束が異なります。
事業譲渡における譲渡業務契約は、事業の全てを譲渡することも可能であり、譲渡される側、する側における合意の基に不要・必要な事業を選択して譲渡することも可能です。会社分割や合併などと同じく、組織再編手法として活用される場合もあります。
事業譲渡は、会社分割や合併などの事業再編手続きに比べると、債権者保護手続きが不要などメリットも少なくありません。以下に、事業譲渡を行う際の手続きを紹介します。
事業譲渡の手続き
一般的に事業譲渡の手続きは、以下の流れで行われます。
- 事業譲渡の契約
- 取締役会や株主総会における承認
- 事業譲渡通知や公告
- 事業譲渡実行
事業譲渡の内容などにより、秘密保持契約の締結や公正取引委員会への書類届出などが必要です。簡易事業譲渡や略式事業譲渡などは、条件により株主総会の承認が不要です。
事業譲渡における売り手側のメリット
事業譲渡における売り手側のメリットを、以下の項目に注目して見ていきましょう。
- 利益を得られる
- 譲渡したい事業を選択できる
- 従業員や資産を残せる
利益を得られる
事業譲渡により考えられるメリットの1つが、利益を得られる点です。事業譲渡における売り手側は、事業を譲渡した対価として現金を得られます。事業の譲渡によってもたらされた現金は、会社の運営資金や新規事業にあてることが可能です。
会社売却に比べた場合、事業譲渡での現金収入は低くなってしまいますが、それでもまとまった現金が入ってくるメリットは大きいといえます。
譲渡したい事業を選択できる
先の事項でも触れましたが、事業譲渡では、会社における一部の事業のみを譲渡できます。譲渡する事業を選択できる点が大きなメリットです。
事業譲渡は、採算が合わない事業を譲渡したり、メインとなる事業に人員や費用を集中させたりするなど、経営方針に合わせた事業展開のために行います。会社が存続しながら、現金を手にできる事業譲渡は魅力的な手法です。
従業員や資産を残せる
従業員や資産を残せるメリットもあります。合併などでは会社がなくなり、従業員も資産も全て買い手側に移ります。しかし、事業譲渡であれば、事業同様に他のものも譲渡するかしないか選別可能です。
売り手側の経営判断に合わせた内容で事業譲渡を行えることが事業譲渡を行う際の売り手側におけるメリットといえるでしょう。
事業譲渡における買い手側のメリット
事業譲渡における売り手は、必要としている事業を残し、不要としている事業を譲渡できることがわかりました。それでは、買い手側における事業譲渡のメリットは、どういった点があるのでしょうか。
ここでは、以下の項目について、事業譲渡する際の買い手側におけるメリットを解説します。
- リスク回避
- 税金対策
リスク回避
事業譲渡における買い手側の一番大きなメリットは、リスクがある事業や資産は承継する必要がないことです。売り手側が必要な事業を残し、不要な事業を譲渡するように、買い手側も不要な事業や資産を選ぶ必要はありません。売り手側が不要な事業を譲渡したいといっても、買い手側がその事業に必要性を感じない場合は、事業譲渡を契約する必要がありません。事前にリスクを回避できます。
事業譲渡以外に事業を承継する方法として用いられる合併や株式譲渡の場合、買い手側には不要な事業や資産も承継する必要があります。しかし、事業譲渡であれば契約する必要はないでしょう。
M&Aによる事業の承継では、買い取りをした後に債務が見つかるなどの見えないリスクが後を絶ちません。こうしたリスクから守られるのも、事業譲渡の強みでしょう。
税金対策
買い手側にとって、事業譲渡は税金対策の一環という側面も持っています。事業譲渡の対価として支払った金額の中には、事業の将来における価値に対して評価した価額も含まれています。
いわゆる「のれん」のことです。のれんは税法上、5年間の償却扱いで損金として算入することが認められているので、その間、節税効果をもたらすでしょう。
2. 事業譲渡には登記が必要?不要?
事業譲渡では、登記が必要となるのでしょうか。事業譲渡と同様に組織再編に用いられることの多い会社分割や合併とは違い、事業譲渡は当該会社の間で交わされる契約に沿った権利のみが事業譲渡として移転します。
事業譲渡における登記は、会社分割や合併などとは異なった扱いが必要となるでしょう。
登記とは
登記簿に必要とする内容を記載することが登記です。登記すると、権利関係などを公的に示せます。各地の法務局が登記簿を管理しています。登記変更手続きは、登記簿に記載した内容に変更が生じたときに行うものです。
下記で紹介しますが、主な登記として商業登記と不動産登記があります。
事業譲渡で活用される登記の種類
事業譲渡で登記が必要となる可能性があるものは、以下2点です。
- 商業登記
- 不動産登記
それぞれの内容を見てみましょう。
商業登記
事業譲渡における商業登記は、事業譲渡では必要なのでしょうか。結論からいうと、事業譲渡における商業登記は、会社合併などの場合と違い、必要ではありません。事業譲渡を行うと、資産には変更がありますが、法人組織に変更はないからです。
事業譲渡における資産の変更および対価として受け取った利益は、貸借対照表での処理のみ必要です。ただし、事業譲渡に合わせて、会社の登記内容を変更したり、会社の商号を変えたりするなどした場合は、登記が必要となります。
不動産登記
それでは、事業譲渡によって不動産登記は必要となるのでしょうか。これは、事業譲渡の資産に不動産が含まれている場合のみ、対象の不動産に対する所有権移転登記の申請が必要となります。
いいかえれば、事業譲渡における契約の中に、不動産にかかわる契約が存在しなければ、不動産登記は不要です。こうした点が、事業譲渡の処理は簡単といわれる部分になります。
事業譲渡で登記をしない問題点
事業譲渡で登記をする必要がないため、商号や屋号は基本的には引き継ぐことがありません。外部からは事業譲渡により事業が移転したことがわかりにくく、不透明さを生んでしまう問題点があります。
会社合併では登記が必要
会社合併を行うことが決まり、その法的効力が発生した場合、合併によって被合併会社(消滅会社)は解散するので、解散登記をしなければなりません。合併会社(存続会社)も登記が必要となり、会社の事業内容などにおける変更の登記をします。
事業譲渡での登記に関するご相談はM&A総合研究所まで
上述したとおり、事業譲渡では、内容により登記が必要な場合と不要な場合に分かれます。事業譲渡などM&Aに接する機会が多くない中小企業の場合、登記も含めてさまざまな手続きがあるので、抜けが出てしまうかもしれません。
事業譲渡をご検討の際は、ぜひM&A総合研究所にご相談ください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが親身になって事業譲渡をフルサポートします。
料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を行っていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。
3. 事業譲渡で登記が必要となる場合
事業譲渡では、基本的に登記は不要と解説しました。一方で、登記が必要になる場合も存在します。ここでは、事業譲渡により登記が必要となった場合を具体的に見ていきましょう。
事業譲渡で商号を引き継ぐ場合
事業を譲渡された会社が、商号などを譲渡されていないものの、屋号などを使う場合があります。こうした場合、商号は使用していないので、登記する必要はありません。しかし、将来的にはトラブルの原因となります。
こうしたケースでは、譲渡された側の会社にとって不都合が生じる可能性があるため、免責登記が必要です。なお、免責登記の詳細は後述します。
事業譲渡で不動産を移転する場合
事業譲渡により、不動産など有形資産を譲渡する場合について解説します。まず、不動産の登記を移転する場合の注意点として、添付書類である「登記原因証明情報」を確認することです。
「登記原因証明情報」とは、登記権利の移転を、権利移転の原因などに基づき証明する情報を意味します。登記が移転する要因などを登記官に理解してもらえるように、正確かつわかりやすく登記原因証明情報を作ることが必要です。
この添付書類である「登記原因証明情報」は、2004(平成16)年以前に一戸建てなどの不動産を売買した場合、登記を申請するときに「登記原因証書」の形で、売買契約書などが添付書類として扱われています。
不動産登記の終了と合わせて、その添付書類も登記済とハンコが押され、登記後の権利者に「登記済証」として手渡されることで、登記済が証明される権利証となります。添付書類である「登記原因証書」は法務局に保管されていませんでした。
しかし、2005(平成17)年から施行された改正不動産登記法により、それ以前に行われていた添付書類である登記原因証書が廃止されると、「登記原因証明情報」を添付書類として、申請書に添付することとなります。
その結果、法務局で添付書類である「登記原因証明情報」が保管されるようになりました。「登記原因証明情報」は、対象の不動産により不利益を被るなど、不動産に関係する人であれば誰でも閲覧が可能となり、取引における安全性も確保されました。
したがって、2004年以前の場合、「登記原因証明情報」と同様の「登記原因証書」が添付書類として、権利書と一緒に権利者に保管されています。
「登記原因証明情報」の代わりとなる「登記原因証書」を添付書類から見つけ出し、しっかりと「登記原因証明情報」を作成しましょう。
不動産登記の際に必要な書類
不動産登記には、「登記原因証明情報」や「登記原因証書」の添付書類が必要と解説しました。それでは、実際に不動産登記を行うときは、どのような書類が必要となるのでしょうか。以下に必要な書類を示します。
- 登記申請書
- 登記識別情報
- 印鑑証明書
- 住民票
- 固定資産税評価証明書
登記申請書
まず、必要な書類は登記申請書です。登記申請書は、司法書士などに依頼もできますが、法務局のWebサイトに書式があるので、オンライン申請をおすすめします。
登記識別情報
必要な書類には、登記識別情報もあります。登記識別情報とは、登記されている名義人を識別するものです。12桁の英数字で表されています。この登記識別情報も、オンラインで取得可能です。
印鑑証明書
印鑑証明書は、印鑑登録が行われている印鑑であれば、市区町村役所などから誰でも取得できます。コンビニエンスストアなどでもマイナンバーカードか住民基本台帳カードがあれば、取得可能です。
住民票
住民票は、住民登録をしている市区町村役所で申請します。郵送や電子申請も可能です。
固定資産税評価証明書
固定資産税評価証明書は、登記対象の不動産を所管している市区町村の市民税課などに申請することで取得できます。
免責登記制度の活用
事業譲渡により、事業譲渡をされた側に不利益が生じる場合があり、こうしたリスクから守るためにあるのが、免責登記制度です。免責登記制度の内容は、次項以降で解説します。
4. 事業譲渡の免責登記とは?
事業譲渡によって商号の不利益など想定外の債務を、事業譲渡された側に生じるリスクを避けるために、債務の責任を請け負わないといった登記ができます。これが「免責登記制度」です。
事業譲渡による免責登記制度の活用には、譲渡する側の同意が必要ですが、債権者などの同意は不要です。
5. 事業譲渡での免責登記のやり方
事業譲渡における免責登記は、どのような手順で行うのでしょうか。以下の項目で手続きを行います。
- 申請書類を用意する
- 免責登記の登録免許税
- 免責登記の適用範囲
①申請書類を用意する
事業譲渡を実施した際に、合わせて免責登記を行うのであれば、申請書に添付する書類として以下の3種を用意しなければなりません。
- 譲渡会社からの承諾書
- 譲渡会社の登記簿謄本
- 譲渡会社の印鑑証明書
譲渡会社からの承諾書
免責登記を行う場合、譲渡会社からの承諾書が必要です。承諾が取れていない場合は、免責登記を行えません。
譲渡会社の登記簿謄本
事業譲渡を行う会社と、事業譲渡を受け入れる会社における法務局の管轄が違う場合は、譲渡会社の登記簿謄本が必要となります。
譲渡会社の印鑑証明書
譲渡会社の登記簿謄本と同様に、事業譲渡を行う会社と、事業譲渡を受け入れる会社における法務局の管轄が違う場合は、譲渡会社の印鑑証明書が必要です。
②申請書を提出する
管轄外の登記所で申請書を提出しても、受け付けてもらえないので、対象となる管轄の登記所へ行きましょう。管轄の登記所は、法務局のサイトなどからチェックできます。
登記所の登記申請窓口で、申請書を必要書類と一緒に提出してください。所有権の移転登記が済むまで、申請した不動産の登記事項証明書は交付できません。
③登記所での審査、登記識別情報と登記完了証の受取
登記所で、申請した内容の審査を受けます。必要な期間が過ぎたら、登記所で登記識別情報と登記完了証を受け取ってください。申請書に用いた印鑑が必要です。3カ月以内の場合、登記識別情報が受け取れます。
④免責登記の登録免許税
免責登記には、登録免許税が必要です。免責登記における登録免許税は3万円です。
⑤免責登記の適用範囲
事業譲渡における免責登記の適用範囲はどういった事項になるのでしょうか。商業登記では、判例などを踏まえて、事業譲渡における事業譲渡される側の会社が屋号のみを続用する場合において、免責登記が可能としています。
会社分割でも、分割会社の商号または屋号を承継した会社か新たに設立された会社が屋号を続用する場合に、免責登記が可能です。
6. 事業譲渡で免責登記を活用する際の注意点
事業譲渡における商号のみに適用される免責登記ですが、免責登記を活用する場合、以下の点に注意する必要があります。
事業譲渡の際に店舗名を承継した場合は注意
過去の事例で、事業譲渡された企業が、登記を行わずに店舗名を引き継いだことによって、事業譲渡した側の債務も請け負う責任があると認められた判例があります。こうした事態にならないよう同じ商号や類似した商号を引き継ぐときは、免責登記を行うとよいでしょう。
ただし、免責登記は法務局の判断に左右されることが多いのが現状です。免責登記を考えている場合は、事前に法務局と打ち合わせを行うなどして、円滑に進めましょう。
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7. 事業譲渡の登記まとめ
事業譲渡における登記について解説しました。基本的に事業譲渡では、登記を必要としません。しかし、譲渡内容によっては登記が必要となるので、どの事業や資産を移転するか考えて事前に登記の準備をしましょう。
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