2020年09月03日更新
倉庫業界はM&Aで業界再編?動向や事例、相場をご紹介!

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。
近年、関連業種であるEC事業の活況動向の影響で、倉庫業界は市場規模が拡大傾向にあり、それに比例するようにM&Aも活発です。そこで、住友倉庫、三井倉庫の合併事例などの実績も交え、デメリットや費用相場など倉庫業界の最新M&A動向を探ります。
目次
1. 倉庫業界の現状
倉庫会社とは、顧客から依頼を受けて商品などを預かり、保管するサービスを行う企業をさし、近年の倉庫業界ではM&Aが活況になっています。
この記事では、倉庫業界のM&A動向や事例について紹介していきますが、まずは、倉庫業界の主要企業や現状などについて見てみましょう。
倉庫業界の主要企業
倉庫業界の最大手は近鉄エクスプレスであり、2019(令和元)年3月期の売上高は5,920億円でした。2位以下は、上組(2,748億円)、三井倉庫HD(2,418億円)、三菱倉庫(2,271億円)、日新(2,180億円)と続いています。
倉庫業界の市場規模は約4兆円なので、上位5社で総売上高の3分の1を占めているのです。しかし、その占有率は他業界に比べて低く、寡占状態とはいえないでしょう。
倉庫業界の市場規模と業界の現状
倉庫業界の市場規模は約4兆円であり、非常に大きなマーケットになっています。倉庫業は初期投資に莫大な費用はかかりますが、サービスにかかる原価や費用が比較的少ないため、利益を上げやすいビジネスモデルです。
したがって、新規参入する企業が増加しており、現在、約2,500社が競合しています。そして、それら倉庫業界の90%以上が中小規模の倉庫会社であり、利益を獲得するために日々さまざまな差別化戦略が取られているのです。
倉庫業界の将来性
現在、国内においては、Amazonや楽天に代表されるEC事業が市場規模を拡大しており、それと密接に関連する倉庫業界もまた、必然的に需要が伸びています。この状況は当面、継続すると見られていることから、上述したように新規参入者も後を絶たない状況となっているわけです。
また、拡大する市場規模動向の中、自社の事業規模や領域を拡大しようと考える倉庫業界各社も多く存在します。そのような倉庫業界内の動向と新規参入者双方が実施する戦略として用いられているのが、合併なども含めたM&Aです。
今後については、単に規模を拡大するだけでなく、物流業界の潮流である3PL(サード・パーティー・ロジスティクス=物流業務の包括的受託)体制の確立や、ITシステムの導入、EC事業者とのせめぎ合いなどが予測されることから、大規模な業界再編の可能性も指摘されています。
2. 倉庫業界のM&A動向
ここでは、倉庫業界のM&A動向から見られる以下の3つの特徴について確認します。
- 大手物流会社・大手倉庫会社への事業譲渡が行われていること
- 中小企業対象のM&Aが増加していること
- 海外に進出していること
大手物流会社・大手倉庫会社への事業譲渡
1つ目の特徴は、大手物流会社・大手倉庫会社への事業譲渡が行われていることです。倉庫会社に保管を依頼する物流会社では、物流量の減少から業界再編が進んでおり、コスト削減を目的として倉庫会社を買収するケースが見受けられます。
また、倉庫業界でも業界再編は進んでおり、大手倉庫会社が中小規模の倉庫会社を買収や合併を実施し、事業規模を拡大させるケースもあるのが現状です。
中小企業M&A実績数の増加
2つ目の特徴は、中小企業が対象となるM&A実績数の増加です。倉庫業界の競争が激しいことから、中小規模の倉庫会社の売り案件は増加しています。
その一方で、買い手側としても事業規模拡大・コスト削減などを目的としたニーズがあるため、小規模倉庫会社の買収や合併が進んでいるのです。
海外への進出
3つ目の特徴は、海外進出が増えていることです。国内では最終的には市場の奪い合いということになっていくのを見越して、海外に進出して売上を増加させようとする倉庫会社が出てきています。
特に、東南アジアやインドは物価が安いため、倉庫の管理費や人件費を安価に抑えられるというメリットがあり、M&Aにより海外に進出するケースの格好のターゲットです。
3. 倉庫業界のM&Aのメリット
倉庫業界で合併なども含めたM&Aを行うメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。この項では、M&Aによって得られるメリットを、売り手側・買い手側に分けて見てみましょう。
売り手のメリット
倉庫会社を売却することにより売却側が得られるメリットには、主に以下の3つが挙げられます。
- 資金回収が可能であること
- 後継者問題が解消されること
- 従業員の雇用維持・負債が解消できること
資金回収が可能
1つ目のメリットは、資金回収が可能であることです。倉庫業を行うには倉庫が必要であり、倉庫を所有するためには多額の費用がかかります。
また、業務用の倉庫は容量が大きいため、事業用以外の需要が多いとは考えづらいのも事実です。つまり、倉庫自体を売却したとしても十分な資金が回収できない可能性があります。
しかし、M&Aにより倉庫会社を売却すれば、倉庫の価格だけでなく、将来得られる収入を加味した金額を獲得できるので、投資した分の資金回収ができる確率も高くなるのです。
後継者問題の解消
2つ目のメリットは、後継者問題を解消できることです。近年、中小企業では後継者がいないために事業を引き継ぐことができない、いわゆる後継者問題を抱えています。
倉庫業界も例外ではなく、将来が不安定などの理由で後継者がなかなか見つからないケースが増加中です。
後継者が見つからなければ廃業をせざるを得なくなりますが、M&Aによる事業承継を行えば自社の存続が可能であるため、後継者問題の解消を目的としたM&Aを行う倉庫会社も増加しています。
従業員の雇用維持・負債の解消
3つ目のメリットは従業員の雇用維持と負債の解消です。まず、M&Aによって会社を売却することで、従業員の雇用は維持されます。さらに、売却先のほとんどは現企業よりも事業規模が大きいため、従業員の待遇がよくなる可能性も大です。
また、会社の現在の負債については、全てを承継するスキームのM&A手法を採用した場合、負債も全て売却先に引き継がれます。つまり、経営者の個人保証や担保などは全て解消されるのです。
買い手のメリット
次は、倉庫会社のM&Aを行うことにより、買い手側が得られるメリットを2つ紹介します。
- 事業規模の拡大
- 人材が確保できること
事業規模の拡大
1つ目のメリットは、事業規模の拡大が図れることです。事業規模の拡大ができれば、コスト削減・新規販路の獲得・新規顧客の獲得など、さまざまなシナジー効果が得られます。
また、倉庫の数も増えることになるので、大口の取引先を獲得できる可能性も高まるのです。
人材の確保
2つ目のメリットは、人材を確保できることです。近年、倉庫業界では慢性的に働き手が不足しています。
しかし、M&Aによる包括承継であれば従業員も引き継ぐため、必要かつ優秀な人材を確保できるのです。
4. 倉庫業界のM&Aのデメリット
倉庫業界での合併なども含めたM&Aにおいて、メリットだけでなくデメリットも存在するため、事前に理解しておくことが大切です。ここでは、売り手側・買い手側それぞれのデメリットを見ていきます。
売り手のデメリット
倉庫会社のM&Aの際に、売り手のデメリットとして考えられるのは以下の2点です。
- 売却先を探す期間が長くなる可能性があること
- 売却益が思ったほど得られない可能性があること
売却先を探す期間が長くなる可能性
1つ目のデメリットは、売却先を探す期間が長くなる可能性があることです。倉庫会社の規模や倉庫を保有している数が多いほど買収する会社の数が減少するため、M&Aにかかる期間は長くなる可能性があります。
M&A仲介会社によっては月額報酬が発生するところもありますが、その場合は期間が長くなると月額報酬もその分、かさんでしまうため注意しましょう。
思ったほど売却益が得られない可能性
2つ目のデメリットは、売却益が思ったほど得られない可能性があることです。売却先に自社を評価してもらえなければ取引金額が小さくなるため、売却益があまり獲得できない可能性があります。
少しでも高値で売却するためには、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進め、自社の強みをしっかりアピールすることが大切です。
買い手のデメリット
倉庫会社を買収することによるデメリットには、主に以下の2つが挙げられます。
- 従業員の離職、売上減少の可能性があること
- 包括承継によるリスクを得てしまうこと
従業員の離職、売上の減少
1つ目のデメリットは、従業員の離職、売上減少の可能性があることです。M&Aは会社の将来だけでなく、従業員や取引先などの利害関係者にも大きな影響を及ぼします。
M&A後の社風などに不満を持った従業員が離職する可能性や、M&A後に取引が停止されるケースもあるので、リスクを最小限に抑えるためには、M&A後の対策を講じておくことが大切です。
包括承継によるリスク
2つ目のデメリットは、包括承継によるリスクがあることです。M&Aスキームによっては、負債など会社の全てを引き継ぐ包括承継を原則とするものもあります。
包括承継は従業員や資産などが引き継げるというメリットがあるものの、簿外債務や対象企業で起こっているトラブルの責任も引き継がなくてはなりません。
デメリットが大き過ぎると買収後に経営難に陥る可能性もあるので、M&Aの際はデューデリジェンス(企業監査)を徹底的に行うことが必須です。
5. 倉庫業界のM&Aの譲渡価格
経営者にとっては、倉庫事業がどの程度の価格で譲渡できるのかが気になるところでしょう。ここでは、倉庫業界のM&Aの譲渡価格相場や、仲介会社に支払う手数料について解説します。
相場
倉庫会社のM&Aの相場は、各社の事業規模や倉庫数などによって変わるため、一概に述べられません。しかし、企業価値を算出することによって、おおよその取引金額を知ることは可能です。
企業価値の算出方法には、コストアプローチ・インカムアプローチ・マーケットアプローチの3種類があり、これらの計算方法を組み合わせて企業価値を求めます。
いずれの方法を用いるとしても、企業価値の算出には専門的な知識が必要になるため、より正確な価値を知るためにはM&A仲介会社などの専門家に依頼するほうがよいでしょう。
仲介会社にかかる手数料
M&A仲介会社は、サービスに対する利益を確保するため、さまざまな手数料を設定しています。
しかし、オンラインの発達が作用し情報収集に費用がかからなくなったことなどにより、近年は完全成功報酬制を採用する仲介会社が増加中です。
以前に比べてM&Aの手数料負担は減ってきていますが、M&Aが成功した際は成約金額の3~5%程度は成功報酬として支払うことになります。
6. 倉庫業界のM&Aの注意点
倉庫業界の合併なども含めたM&Aで注意すべきことは、実施するタイミングです。現在は、業界再編や後継者問題などにより、倉庫業界の買い案件・売り案件ともに増加しています。
しかし、そのピークが過ぎてしまうとM&A動向が落ち着いて案件も減少するので、理想とするM&Aができない可能性が高くなるかもしれません。
M&A・事業承継を行いたいと考えたら、できるだけ早い段階でM&A仲介会社などの専門家に相談することも大切です。
7. 倉庫業界のM&Aの事例
この項では、具体的な倉庫業界関連でのM&A事例を3件、紹介します。
日本通運によるアメリカの倉庫事業会社の子会社化
1つ目の事例は、日本通運より2020(令和2)年5月に発表された、日本通運のアメリカ子会社が現地で倉庫・流通加工・輸送事業を行うMD Logistics, Inc.とMD Express, Inc.を子会社化するものです。株式の取得予定日は2020年9月となっています。
日本通運の狙いは、特に医療品物流においてアメリカ国内で一定のシェアを持つ両社の事業を獲得することです。
住友倉庫による若州の子会社化
2つ目の事例は、2017(平成29)年7月に行われた住友倉庫による若州の子会社化です。若州も倉庫会社で、本事例により住友倉庫は東京臨海部における物流施設を獲得したことになります。
住友倉庫としては、若州の子会社化により、3PLサービスの強化および効率化・コスト削減などさまざまなシナジー効果を期待したM&Aです。
三井倉庫による丸協グループの子会社化
3つ目の事例は、2015(平成27)年12月に行われた三井倉庫による丸協グループ6社の子会社化です。丸協グループは大阪や愛媛などに本社を置く、運送会社を子会社に持つグループ企業でした。
三井倉庫は、運送機能を持つことでワンストップサービスやドライバー不足への対応など、シナジー効果の創出を目指したのです。
8. 倉庫業界のM&A時におすすめの相談先
倉庫業界でM&Aや事業承継、合併などを成功させるためには、M&Aに関する知識や見解に加え、倉庫業界に精通していることも必要になります。したがって、M&A仲介会社など専門家のサポートは不可欠ともいえるでしょう。
全国の中小企業のM&Aに数多く携わっているM&A総合研究所では、M&Aや事業承継に関する実績豊富なM&Aアドバイザーによるフルサポートを行っています。
M&A総合研究所の料金体系は、国内最安値水準の完全成功報酬制を採用しており、M&Aが成約するまで費用は一切、発生しません。安心してリーズナブルにM&Aの実現が目指せます。
無料相談は24時間年中無休で受けつけていますので、倉庫会社のM&Aや事業承継をご検討の際には、お気軽にお問い合わせください。
9. まとめ
今回は倉庫業界のM&A動向や事例、相場について紹介しました。倉庫業界も再編が活発化しており、M&A成約件数や案件数は増加しています。
【倉庫業界のM&A動向】
- 大手物流会社・大手倉庫会社への事業譲渡が行われている
- 中小企業対象のM&Aが増加している
- 海外に進出している
【倉庫会社M&Aのメリットとデメリット】
〇メリット
- 資金回収が可能である
- 後継者問題が解消される
- 従業員の雇用維持・負債が解消できる
- 事業規模が拡大する
- 人材が確保できる
- 売却先の探索期間が長くなる可能性がある
- 売却益が思ったほどもらえない可能性がある
- 従業員の離職、売上の減少の可能性がある
- 包括承継によるリスクを得てしまう
倉庫会社のM&Aや事業継承を行う際は、M&Aに関する知識や経験だけでなく、その業界に関して精通している必要があるため、専門家に相談しながら進めていくことが必要です。
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