2021年09月05日更新
個人事業主が廃業するときの注意点は?廃業以外の道も考察
個人事業主が廃業するときは、所轄税務署や管轄の都道府県事務所への届出が必要です。適切な手続きを行わないと事業継続中と税務署に判断され、余分に税金を払うことにもなりかねません。本記事では、個人事業主が廃業するときの注意点、廃業以外の道を解説します。
1. 個人事業主が廃業するときの注意点
個人事業主が廃業する理由は、事業の業績悪化や健康状態など、さまざまなものが考えられます。いずれの理由にせよ、事業存続が難しくなった場合は「廃業届」を提出して事業を廃することを報告しなくてはなりません。
この章では、個人事業主で廃業を検討されている方に向けて、廃業届の記入・提出方法や廃業するときの注意点を詳しく解説します。
個人事業主の廃業とは
個人事業主の廃業とは、文字通り、個人事業主が事業を廃止することを意味します。自営業・フリーランス・副業などの継続的な収入がある場合は開業届を出す義務があり、それらを廃止するときは廃業届を提出して廃業します。
個人事業主の廃業理由は業績悪化などが一般的ですが、法人化させるパターンもあります。法人化の場合も個人事業税や個人住民税の支払いがなくなるので、廃業届をださなくてはなりません。
廃業届の書き方・出し方
個人事業主は、廃業する際に廃業届を提出する義務があります。廃業届の記入・提出方法を3つの工程に分けて解説します。
【廃業届の記入・提出方法】
- 廃業届を書く前の準備
- 廃業届の記入方法
- 廃業届の提出方法
1.廃業届を書く前の準備
廃業届の正確な名称は「個人事業の開業・廃業等届出書」です。国税庁のウェブサイトからダウンロードして印刷、もしくは管轄の税務署に直接赴いて入手できます。
また、廃業届の用紙以外にも以下を手元に準備しておくとスムーズに書けるようになります。
【手元に準備しておきたいもの】
- 開業届の控え
- 確定申告書の控え
- 個人番号カードあるいは通知カード
- 印鑑
2.廃業届の書き方
雛形を用意したら各項目に必須情報を記入します。全部で16項目に分かれているので、書き方を順番に解説していきます。
【廃業届の記入欄】
- 税務署名
- 提出年月日
- 納税地
- 上記以外の住所地および事業所等
- 氏名および生年月日
- 個人番号(マイナンバー)
- 職業・屋号
- 届出の区分
- 所得の種類
- 開業・廃業等日
- 事業所等を新増設・移転・廃止した場合
- 廃業理由が法人化である場合
- 開業・廃業に伴う届出書の提出の有無
- 事業の概要
- 給与等の支払の状況
- 源泉所得税に関する申請書の提出の有無
①~⑦は、そのまま情報を記入するだけで大丈夫です。⑧の届出の区分は、廃業に〇をつけて事由欄に廃業することになった理由を記入します。
⑨は該当する所得の種類を〇で囲み、全ての事業を廃業する場合は「全部」、一部の事業を廃業する場合は「一部」に〇をつけます。
⑩には任意で決定した廃業日を記入します。⑪は事務所を増設等した場合に記入する欄なので、廃業する時は飛ばしても大丈夫です。
⑫は個人事業主から法人化する場合に記入する欄です。法人名・代表者・法人の納税地・設立登記日を記入します。単純に廃業する場合は空欄のままで構いません。
⑬は青色申告制度を活用しているのであれば「青色申告の取りやめ届出書」の有りに〇を、消費税の支払いを行っているのであれば「事業廃止届出書」の有りに〇をつけます。該当しない方はこれらの届出書は不要なので無しに〇をつけます。
⑭は行っていた事業内容を記入します。開業時は具体的な内容を要求されますが、廃業時は簡潔に「〇〇業」と書くだけで大丈夫です。
⑮⑯は主に開業者を対象とした記入欄です。廃業の際は必須ではないので空欄のままでも構いません。
3.廃業届の出し方
廃業届は廃業日から1ヵ月以内に所轄の税務署に提出します。提出期限日が土日祝日にあたる場合は、その翌日が期限となります。
廃業届の出し方には、持参する方法と郵送する方法の2つがあります。郵送する場合は、廃業届の控えを受け取るために返信用封筒を同封しておく必要があります。
【廃業届を出す際に必要なもの】
- 廃業届
- 廃業届の控え
- 身分証明書(郵送の場合は写し)
- 返信用封筒(郵送の場合のみ)
個人事業主が廃業するときの注意点とは
個人事業主の廃業はいくつかの注意点があります。特に注意を払わなければならない点は次の4つです。
【個人事業主が廃業するときの注意点】
- 廃業届以外にも提出する必要書類がある
- 個人事業主がなくなった際の廃業について
- 廃業した年の確定申告
- 廃業した際に借入金が残っている場合
1.廃業届以外にも提出する必要書類がある
廃業届以外にも提出が求められる書類がいくつかあります。各書類は期限が定められているので余裕を持たせるためにも事前確認が大切です。
全ての個人事業主は都道府県税事務所に「事業開始(廃止)等申告書」を提出します。期限は都道府県次第で異なるので、各ウェブサイトから確認しておきましょう。
青色申告制度を活用していた場合は、税務署に「青色申告の取りやめ届出書」を提出します。翌年3月15日までに提出しなくてはなりません。
法人化した場合も基本的に必要ですが、新設法人から家賃収入などで継続的に個人所得が発生する場合は、青色申告制度を引き続き利用するほうが税制上は有利になります。
2.個人事業主が亡くなった際の廃業について
消費税の納税義務者の個人事業主が亡くなった際は、所轄税務署へ「個人事業主の死亡届出書」を提出します。提出期限日は「死亡後、すみやかに」と定められています。
準確定申告にも気を付けなくてはなりません。個人事業主は所得税の申告義務がありますが、個人事業主が亡くなった際は相続人がその年の確定申告を行います。
この場合の準確定申告は、被相続人の1月1日から亡くなった日までの所得に関して行います。期限は亡くなった(相続することを知った日)の翌日から4ヵ月以内です。
3.廃業した年の確定申告
個人事業主の場合、毎年1月1日~12月31日までの1年間の所得に対して所得税が課税されるので、確定申告を行わなくてはなりません。
廃業した場合は、廃業した年の1月1日から廃業日までの所得に関する確定申告を行います。確定申告の期限は、所得が生じた年の翌年2月16日~3月15日までです。
所得が0円なら確定申告は不要ですが、青色申告の場合は注意が必要です。確定申告を行わないと青色申告の65万円の控除が有効にならないので課税されてしまいます。
4.廃業した際に借入金が残っている場合
借入金が残っている場合は、全ての借入金が個人の借金として残ります。事業資産の売却などで返済できる場合はいいですが、返済しきれない場合は注意が必要です。
事業資金の借入の際に個人資産を担保に設定していた場合、債権者から担保権を行使されて強制的に競売にかけられる恐れもあります。
自宅や自動車などの生活基盤を失いかねないので、借入金の返済計画については金融機関等の債権者と事前に相談しておくことが大切です。
債権者としては多くの債権を回収したいと考えるので、今後の継続した収入が期待される場合は交渉に応じてくれる可能性があります。
しかし、必ずしもリスケジュールに応じてくれるとは限りません。廃業は収入源を失うことを意味するので、返済の見込みが立たない場合は担保を売却するほうが手っ取り早いと判断されることも多いです。
2. 個人事業主が廃業する際のポイントまとめ
個人事業主が廃業する際はいくつか押さえておきたいポイントがあります。把握していないと思わぬ損失を被ることもあるので、順番に確認していきましょう。
【個人事業主が廃業する際のポイントまとめ】
- タイミングを選ぶ
- 廃業の費用・手間を知る
- 廃業手続きは行う
- 個人事業と法人の廃業は違う
- 廃業ではなく別の道を模索する
タイミングを選ぶ
個人事業主は廃業日に関して明確な規定がないので、個人事業主の都合で廃業時期を決めることができます。
廃業を急ぐ必要がなく自分でコントロールできる場合は、年末に合わせて廃業するのがおすすめです。廃業費用を経費として計上して、その年の売上と相殺できるので節税に繋げることができます。
また、年を跨いだ場合は翌年分の確定申告もしなくてはなりません。単純に手続きの手間が2倍になるので、年内に済ませてしまったほうが楽に済みます。
廃業の費用・手間を知る
個人事業主の廃業は、法人の解散・清算登記のように書類提出に費用・手数料はかかりません。しかし、手続き代行を外部の専門家に依頼する場合は別途手数料が必要になります。
そのほか、設備の処分費用や在庫処分費用などが必要になることもあります。処分価格での売却も難しい場合は、お金を払って廃棄しなくてはなりません。
廃業の準備や設備処分は、計画的に進める必要があるので手間がかかります。廃業を決意してから実際に廃業するまで数ヵ月以上かかることも珍しくありません。
廃業手続きは行う
廃業手続きを行わないと税務署は「事業継続」と判断します。年末には確定申告の書類が送られてきますが、それらを無視していると「無申告加算税」が課せられる場合があります。
廃業届を怠ったという理由で罰則を受けることはほぼありませんが、無用なトラブルを招きかねません。
個人事業を廃業する際は、所轄の税務署に廃業届を提出して廃業する意思を明示しておくことが大切です。
個人事業と法人の廃業は違う
個人事業と法人の廃業とは異なるため、混同してしまうと正しい手続きが行えなくなるので、法人の廃業についてもある程度は把握しておかなくてはなりません。
法人の廃業は主に解散・清算という2つの工程に分かれています。解散とは会社の事業をやめることを指しており、株主総会を開催して決議を取る必要があります。
株主総会で解散が可決されたら清算に移ります。清算とは会社の財産を株主に分配することを指しており、財産・債権を換金して債務の弁済をした後に残った現金を株主で公平分配します。
特に不動産などの換金は難しいので、清算には数ヵ月以上の期間を要することがほとんどです。財産や債権で債務を弁済しきれない場合は、別の方法を検討しなくてはならないのでさらに時間がかかります。
もし個人事業主から法人化されている場合は、廃業の際は上記のような手続きを踏む必要があります。
廃業ではなく別の道を模索する
業績悪化や後継者不在のような状況に陥ると廃業を選びがちですが、最初から廃業を前提に進めると視野が狭くなってしまいます。
色々な可能性を模索するためには、外部の専門家に相談して廃業以外の選択肢を検討することも大切です。
廃業以外の別の道を模索する際は、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。M&Aと廃業のメリット・デメリットを熟知しているので、どちらが適切かアドバイスを受けることができます。
3. 個人事業主が廃業以外に考える道
個人事業主の廃業は廃業費用や手間がかかるなどのデメリットがあります。場合によっては生活が苦しくなることもあるので、廃業の前にM&Aの道も検討することが大切です。
この章では、個人事業主のM&Aで得られる効果や、M&Aをおすすめする個人事業について解説します。
個人事業でもM&Aが可能
M&Aというと企業同士の売買をイメージしますが、実は個人事業のM&Aも活発に行われています。独自の技術や安定した顧客がある場合は、企業にとっても魅力的な事業として評価されるためです。
近年は、サラリーマンが副業として個人事業に注目しています。個人事業主の売却とサラリーマンの買収ニーズが一致することでマッチングが成立するケースも多いです。
個人事業のM&Aには売却益の獲得というメリットがあります。事業の価値に応じた売却益を獲得できるので、新規事業の立ち上げ資金や生活資金に活用することができます。
融資を受けていて不動産等を担保に入れている場合は、保証・担保の引き継ぎというメリットもあります。買い手側との交渉次第ですが、うまくいけば事業と一緒に引継ぎでもらうことができます。
特にM&Aをおすすめする個人事業
個人事業のM&Aを成功させるには、多くの買い手の目を引いて事業の魅力をアピールする必要があります。買い手にとって、特に需要が高い個人事業の特徴は以下のようなものが挙げられます。
【特にM&Aをおすすめする個人事業の特徴】
- 伝統技術や専門知識がある事業
- 設備や施設がある事業
- 免許が必要な事業
1.伝統技術や専門知識がある事業
買い手側のM&Aの目的は技術・知識の獲得です。長年にわたって培われてきた伝統技術や専門知識は、一朝一夕で身につけられるものではないので、買い手からのニーズも高くなります。
技術や知識は事業規模と関連性が薄い要素でもあり、規模が小さくても魅力的な技術・知識を持つ個人事業主は多いので、買い手側も注目するポイントです。
2.設備や施設がある事業
業種によっては設備・施設が必要になりますが、新しく揃えようとすると膨大な資金が必要です。
使い古された設備・施設でも引き継げれば経費削減に繋がるので、プラス要素として受け取られることが多いです。
買い手が個人の場合は、新規参入であることがほとんどです。設備・施設などの事業基盤が整っているとすぐに事業に取り掛かれるので前向きに検討してもらいやすくなります。
3.免許が必要な事業
個人事業のなかには、許認可が必要な事業もあります。許認可とは、特定の事業を行うために行政機関から取得しなくてはならない許可のことです。
許認可の審査には数ヵ月以上かかる場合がほとんどなので、事業の開始手続きをスムーズに進めたとしても許可を貰うまでは事業を始めることができません。
その点、個人事業主からM&Aで事業を引き継げば、許認可を再取得する必要がなくなります。審査に要する期間を短縮できるので買い手側にとって大きなメリットです。
注意点は、個人事業主のM&Aは事業譲渡なので原則として許認可の引継ぎができないことです。そのため、引継ぎは許認可承継の特例が適用される一部の業種に限定されます。
【許認可承継の特例が利用可能な許認可】
- 旅館業
- 建設業
- 一般旅客自動車運送事業
- 一般貨物自動車運送事業
- 火薬類製造業・火薬類販売業
- 一般ガス導管事業
4.その他
その他、特にM&Aをおすすめする個人事業の特徴は、価格が高すぎない事業です。価値のある事業は高い評価を受けることができますが、それだけのお金を出せる買い手も少なくなっていきます。
起業を検討する若年層や、退職金の一部を使ってセカンドライフを送ろうと考える個人が、小規模M&Aに注目しています。このような層は足掛かりが欲しいので、比較的安い事業のほうが手を出しやすい傾向にあります。
300~500万円前後の事業は、サラリーマンの貯蓄で十分に手の届く範囲です。一世一代の大勝負という金額でもないので、多くの買い手から目を引きやすいです。
また、小規模M&Aの需要が増えたことで、中小規模の案件を扱うM&A仲介会社やM&Aマッチングサイトが充実してきています。M&Aの売却においては小規模ということが逆に武器になることもあるので、検討してみるのもよいでしょう。
4. 個人事業主がM&Aを検討する際は仲介会社が最適
個人事業主の廃業の場合は手続き代行を税理士などの専門家に依頼することができますが、M&Aによる売却を検討する際はM&A分野の知識が必要なので、M&Aの専門家にサポートを依頼するのがおすすめです。
個人事業主のM&Aは小規模になることが多いため、手数料の実入りが少なくなることを嫌って相談を受け付けない専門家も少なくありません。
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5. まとめ
個人事業主の廃業は適切な手続きを行う必要があり、注意すべきポイントも多いです。借入金が返済できない場合は借金が残る恐れもあるので、個人事業の廃業時は十分に検討を重ねる必要があります。
廃業以外の道としてM&Aを検討することも大切です。その際はM&Aの専門家に相談すると個人事業主のM&Aに必要な手続きに関して適切なアドバイスを受けることができます。
【個人事業主が廃業するときの注意点】
- 廃業届以外にも提出する必要書類がある
- 個人事業主がなくなった際の廃業について
- 廃業した年の確定申告
- 廃業した際に借入金が残っている場合
【個人事業主が廃業する際のポイントまとめ】
- タイミングを選ぶ
- 廃業の費用・手間を知る
- 廃業手続きは行う
- 個人事業と法人の廃業は違う
- 廃業ではなく別の道を模索する
【特にM&Aをおすすめする個人事業の特徴】
- 伝統技術や専門知識がある事業
- 設備や施設がある事業
- 免許が必要な事業
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