印刷会社のM&A・買収・売却!業界動向、相場、手法、成功事例を解説【2022年最新版】

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

当記事では、印刷会社のM&A・買収・売却についてまとめています。印刷会社のM&A動向やM&A事例、買収・売却・譲渡価格の相場などについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。あわせて印刷会社のM&A手法やM&Aを実施するメリットも解説します。

目次

  1. 印刷会社とは?M&A前にチェックしよう!
  2. 印刷会社のM&A動向
  3. 印刷会社のM&A成功事例
  4. 印刷会社のM&Aを行うメリット
  5. 印刷会社のM&A手法
  6. 印刷会社のM&A相場
  7. 印刷会社のM&Aまとめ
  8. 印刷業界のM&A案件一覧
  • 印刷会社のM&A・事業承継

1. 印刷会社とは?M&A前にチェックしよう!

印刷会社とは?M&A前にチェックしよう!

「印刷会社のM&Aを検討しているけれども、あまり知識がなくどうするべきか悩んでいる」という経営者は少なくありません。中小企業を中心に、印刷会社のM&Aは盛んです。M&Aを検討されている場合は、この記事を読んで基礎的な点を理解しましょう。

今回は、印刷会社のM&A・買収・売却を解説します。印刷会社の「M&A動向」や「M&A事例」が気になる方や、印刷会社を買収・売却・譲渡する際の「相場価格」や「メリット」を知りたい方は、参考にしてください。

印刷会社とは、印刷業や製版業、印刷関連サービスなどを提供する会社です。すなわち、印刷行為に関係する商業取引や、それに付随するサービスを提供する会社が「印刷会社」です。

業界動向サーチの「印刷業界 売上高ランキング(2020-2021年)」を見ると、主要な印刷会社の売上高は以下になります。

主要な印刷会社

売上高(億円)
凸版印刷 14,669
大日本印刷 13,354
トッパン・フォームズ 2,182
NISSHA 1,800
共同印刷 910
出典:業界動向サーチ「印刷業界 売上高ランキング(2020-2021年)」

印刷会社は大手の凸版印刷と大日本印刷の2社が大きな売上をあげています。ここからは、さらに印刷会社業界の現状を詳しく見ていきましょう。

印刷業界の特徴

ここでは、印刷会社業界の特徴を見ていきましょう。印刷会社業界のM&A動向を知りたい方は、現在の印刷会社を取り巻く市場環境を理解しておくことが大切です。

印刷会社業界における特徴のポイントは、以下になります。

  • 印刷会社はほぼ小規模事業所である
  • 印刷会社はさまざまな生産品を少量で作る

これらのポイントを中心に、印刷会社業界の特徴を確認しましょう。

印刷会社はほぼ小規模事業所である

上記の表でもわかるように、印刷会社業界でトップレベルの企業は、売上高が1兆円を超えています。しかし、印刷会社業界全体で見てみると、99%以上が「中小企業」です。印刷会社業界におけるほぼすべての会社が小規模事業所です。

印刷会社業界のほとんどを占めている中小企業は、大手印刷会社の「下請け企業」のケースが多いでしょう。下請け企業なので、収益を伸ばすのも難しいケースが多いといえます。その場合は、M&Aをうまく活用しながら今後収益を伸ばすために生き残り戦略を行わなければなりません。

印刷会社はさまざまな生産品を少量で作る

印刷会社業界は、さまざまな生産品を少量生産するのが基本です。一つの製品当たりにおける売上が非常に安価で、「費用対効果が悪い」業界と考えられているのが現状です。

したがって、印刷会社業界においてそうしたビジネスモデルをうまく行えないのであれば、今後の生き残りは難しくなってきます。自社が少数の生産品しか扱っていないなら、M&Aで生産品を増やしましょう

印刷業界の市場規模

矢野経済研究所「国内一般印刷市場規模推移と予測」

出典:https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2531

矢野研究所が公表した国内の一般印刷市場における調査によると、2018年度の国内一般印刷市場規模は、事業者売上高ベースで3兆4,531億9,900万円、前年度比1.2%減です。2019年度は、前年度比0.4%減の3兆4,390億9,100万円と減少推移が続きますが、その減少幅は縮小しており、一般印刷市場は縮小傾向にあるのがわかります。

2020年度、2021年度も、一般印刷市場は大幅な縮小が避けられない見込みです。新型コロナウイルスの世界的な流行を受けて、印刷企業各社の収益性が悪化している現状です。

印刷業界の課題と展望

印刷会社業界は、現在多くの問題を抱えている業種といえます。この問題点を解消するために、M&Aを実施して、会社を買収・売却したり、事業譲渡をしたりする企業も増えてきているのが印刷会社業界の現状です。印刷会社業界が抱える主な問題点は以下の5点が挙げられます。

  • 売上は減少傾向にある
  • エンドユーザーにより左右される
  • 周辺環境への配慮の必要性がある
  • 相場変動に頭を悩まされる
  • 昔の慣習が今も残る

印刷会社業界に携わっていれば、心当たりのある問題かもしれません。それぞれの問題点について、順番に見ていきましょう。

売上は減少傾向にある

印刷会社業界の売上は「減少傾向」にあります。テレビやパソコン・スマートフォンの発展などによって、印刷会社がかかわる新聞・雑誌・書籍などにおける発行部数の減少が影響を及ぼしています

カタログやパンフレット、折込チラシなどにおける需要縮小の影響も大きく受けています。顧客となる企業の売上が減少してしまうと、それに合わせて印刷会社の売上も低下しがちです。

最近はカタログやパンフレット、チラシなどはインターネットで済ませる会社も増えてきています。それによって、今後も印刷会社業界の売上は減少していく見込みです。

印刷会社業界で生き残っていくためには、他社の需要に合わせてビジネスモデルの再設計も必要となるでしょう。

エンドユーザーにより左右される

印刷会社業界は、エンドユーザーによって大きく左右される業界です。

「エンドユーザー」とは、自分たちの製品・生産品を利用してくれるユーザーをいいます。印刷会社業界のエンドユーザーは多岐にわたりますが、出版社や新聞社などが印刷会社のエンドユーザーとなるでしょう。

インターネットの普及が要因となり、紙媒体の需要がメディア媒体に移り変わっている近年では、出版社や新聞社の売上高が減少しています。

エンドユーザーの売上減少は、印刷会社業界にも波及してしまいます。この点からも、印刷会社業界はエンドユーザーの市況に大きく影響を受けるといえるでしょう。

したがって、印刷会社業界の中で生き残りたいなら、エンドユーザーの売上減少があっても安定した収益が出せるビジネスモデルの検討が必要です。

周辺環境への配慮の必要性がある

印刷会社業界は、周辺環境へ配慮しなければいけない状況にあります。受注先となる出版会社や官公庁などは都市部に集中しており、その影響から、印刷会社業界は「主要都市(東京都・埼玉県・大阪府)」に集中しているのです。

印刷会社にとって、受注先への「納期を守る約束」が非常に重要であるため、夜間操業をする印刷会社が多く、「夜間の騒音問題」を抱えています。

インクを大量に使用する事業であるため、「土壌汚染」が問題になるケースも多く、環境に対する適切な配慮が求められています。こういった問題に対応していることをうまくアピールできれば、近隣住民や従業員、取引先からの評判は良くなるでしょう。

相場変動に頭を悩まされる

印刷会社が事業を運営していくうえで必要な「インク・溶剤・紙」などの価格は、「原油価格相場」に大きな影響を受けてしまいます。原油価格相場に大きな変動が発生すると、印刷会社のコストも原油価格相場に合わせて急激に増加してしまう危険性があるのです。

したがって、ビジネスを多角化し、インクなどの価格が高騰しても会社経営自体が不安定にならないように工夫するのも大切でしょう。

昔の慣習が今も残る

印刷会社業界では、昔ながらの慣習が今も残っている業界です。「昔ながらの慣習」とは、例えば以下になります。

印刷会社は、契約書に「校正回数は3回まで」という契約内容が明記されていて、校正回数が3回以上になる場合、「それに伴う費用が発生する」契約を結ぶケースが多いです。

しかし、印刷会社業界の現場では、4回目の校正を依頼されても、これまでの付き合いや関係がなくなってしまうのを恐れて、費用を請求しないケースが多くあります。印刷会社は交渉力が低く、安価で仕事を請け負ってしまうケースも少なくありません。

以上が、印刷会社業界の抱えている問題点でした。問題点を解決するために、M&Aを検討する印刷会社も多いです。ここからは、印刷会社業界のM&A動向を見ていきましょう。

2. 印刷会社のM&A動向

印刷会社のM&A動向

上記で説明した「印刷会社業界の現状」を踏まえたうえで、ここからは、印刷会社業界のM&A動向を解説します。

  1. 地方業者が都心の小規模業者を買収
  2. 銀行や投資ファンドによるM&Aも増加

印刷会社業界のM&A動向について、順番に見ていきましょう。

①地方業者が都心の小規模業者を買収

印刷会社業界におけるM&A動向の一つに、地方にある印刷会社業界の中堅・中小企業が、都心の小規模業者をM&Aによって買収するケースが増えてきていることが挙げられます。地方業者による都心の小規模業者買収で、受注先の企業が多い都心部への拠点作りが実現します。

独自事業の展開も可能です。新しい技術・ノウハウの獲得が期待できます。

②銀行や投資ファンドによるM&Aも増加

銀行や投資ファンドによるM&Aが増加しています。この要因としては、印刷会社業界の中堅・中小企業が、「事業承継問題」に悩まされているケースが考えられるでしょう。

実際、後継者不足で事業承継が難しいと考えている印刷会社の経営者は多いです。

事業承継問題を抱える中堅・中小企業は、銀行や投資ファンドへ会社を売却・事業譲渡することにより、問題を解消できます。その際は、印刷会社業界について詳しいM&A仲介会社に相談するのがおすすめです。

印刷会社のM&AならM&A総合研究所へ

印刷会社のM&Aは、M&A総合研究所にお任せください。M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、印刷会社のM&Aをご検討の際は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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3. 印刷会社のM&A成功事例

印刷会社のM&A成功事例

ここからは、印刷会社のM&A成功事例を見ていきましょう。実際に成功事例を知れば、自社のM&Aに活用できるかもしれません。

凸版印刷によるMajend Makcs社の買収

2020年5月、凸版印刷はタイのMajend Makcs Co.,Ltd.(以下 Majend Makcs社)における株式譲渡契約を締結しました。連結子会社化は、2022年5月までに完了する見込みです。

Majend Makcs社は、タイで軟包装を製造し、販売している会社です。

これにより、凸版印刷は、保有するサステナブル包材を有力な市場で生産し提供することが可能になり、包装材料の製造から最終製品までをワンストップで提供できるグローバルパッケージメーカーになることを狙っています。

キヤノン蘭子会社による英イーデール社の買収

2020年4月、キヤノンの子会社であるキヤノンプロダクションプリンティングは、イーデール社を完全子会社としました。

これにより、キヤノングループは、ラベル・パッケージ印刷業界の要望に応える商品とサービス展開をスピーディーに進め、「Canon LabelStream 4000」シリーズの拡販やラインアップの拡充を図り、市場競争力がある新製品の開発を行います。

イーデール社は、イーデールブランドでの事業活動を続ける見込みです。キヤノングループは、イーデール社との協力関係を強め、ラベル・パッケージ印刷機分野の事業を広げ、印刷業の高付加価値化と生産性向上を狙います

四国化工機によるセントラル機械商事の買収

2020年3月、四国化工機はセントラル機械商事を完全子会社としました。セントラル機械商事は、産業用インクジェットプリンタなど捺印装置や画像検査装置などを主に扱い、40年以上の歴史を持つ機械装置メーカーです。

セントラル機械商事は後継者がおらず、長年取引のある四国化工機を事業承継先としました。四国化工機も、多くの点でシナジー効果が高いと判断したのです。

今後は事業をより強化して、両社のさらなる成長を狙います。セントラル機械商事は、四国化工機グループの一員として事業活動を行います。

凸版印刷によるFace Technologiesの買収

2021年9月、凸版印刷の香港子会社で、金融決済システムを提供しているToppan Gravity(トッパングラビティ)は、南アフリカのIT(情報通信)企業であるFace Technologies(フェーステクノロジーズ)を買収しました。凸版印刷の傘下に、Face Technologiesが加入します。

Face Technologiesは、システム開発や運用などを請け負う事業、またはサービスを展開する企業で、クライアントの要望に応じ、ソフトウェアの設計や運用、コンサルティングに至るまでさまざまな仕事を請け負うSler企業です。

買収に伴って、Face Technologiesは社名をToppan FaceTech(トッパンフェーステック)へと変更しました。今回の買収を通じて、両社のノウハウを生かし、アフリカで政府・金融機関向けサービスの拡大を目指しています。

凸版印刷によるInterFlex Groupの買収

2021年7月、凸版印刷は、Interflex Investment Partners, LLCの100%子会社で、食品などの軟包装事業を展開している企業であるInterFlex Groupを子会社化するのに成功しました。

世界最大規模の総合印刷会社である凸版印刷は、これまでも買収を繰り返してシェアを拡大してきました。今回の買収で、すでにコンバーティング事業を展開しているアジア(インドネシア・上海・タイ)に続き、欧米におけるシェア拡大を目指します。

共同印刷による共同日本写真印刷の完全子会社化

共同印刷は、共同日本写真印刷の全株式を2021年1月に取得して100%子会社化するのに成功しました。日本写真印刷コミュニケーションズが共同日本写真印刷の株式を一部保有していましたが、今回、共同印刷へ全株式を譲渡して、100%子会社です。

共同印刷は、出版印刷・商業印刷を主軸の事業として、紙器やチューブなどのパッケージ、ビジネスフォーム、ICカードなどを手掛けている企業です。

このM&Aを受けて、日本写真印刷コミュニケーションは、2021年1月5日付で商号を「共同印刷マーケティングソリューションズ」に変更しました。

共同印刷は、もともと、共同日本写真印刷の円滑な事業承継と事業運営を軌道に乗せるための支援を行っていたものの、今回の買収で、共同印刷グループとして一段と質の高い製品・サービスを提供する体制の構築を目指しています。

DICによるSITの買収

2020年6月、印刷インキ、有機顔料、合成樹脂などの製造・販売事業を展開するDICは、自社の100%子会社であるSun Chemical Corporationを通じて、Sensient Technologies Corporation(米国)からジェットインキ事業を営む子会社Sensient Imaging Technologies(SIT)の全株式と事業関連資産を取得しました。

SITは、動物繊維、植物繊維、化学繊維からなる布地を染める用途でデジタル印刷に使われるジェットインキを主力製品として取り扱っており、関連市場において存在感を発揮している企業です。

今回の買収で、DICは、これまで持っていなかったテキスタイル用ジェットインキをポートフォリオに加えられ、さらなる事業の拡大を目指しています。

朝日印刷によるスリーエスの吸収合併

2020年4月、朝日印刷は、自社の子会社として事業を展開していたスリーエスを吸収合併しています。自らの子会社を吸収合併したケースです。

朝日印刷は、医薬品向け印刷包材で国内トップシェアを誇る企業で、化粧品向け印刷包材でも高いシェアを持っています。一方、スリーエスは、主に、包装機械や包装ラインの企画提案・仕入・販売、ラベル・フィルムの仕入・販売を行っている企業です。

今回の吸収合併を通じて、朝日印刷は包装システム販売事業の強化、経営資源の集約を目指しています。

サカタインクスによるA. M. Ramp & Co. GmbHの買収

2020年1月、日本の企業であるサカタインクスがドイツの企業であるA. M. Ramp & Co. GmbHを買収しました。日本企業による海外企業の買収事例です。

A. M. Ramp & Co. GmbHは、ドイツのフランクフルト郊外に本社兼工場を持つ、160年以上の歴史を持った印刷用インキの製造販売会社です。これまで、ドイツを中心としながら、欧州市場においてUV・水性・溶剤性インキの販売で大きなシェアを獲得しています。

サカタインクスは、1896年に日本で初めてとなる新聞インキ専業メーカーとして創業しましたが、現在は、各種インキを製造販売しており、近年は海外展開を積極的に行っています。今回の買収で、サカタインクスは初めてドイツに進出しました。

サカタインクスは、欧州市場における自社ブランドの向上を図り、販売拡大および生産の最適化を図ります

朝日印刷によるHarleigh(Malaysia) Sdn.Bhd.とShin-Nippon Industries Sdn.Bhd.の子会社化

朝日印刷はマレーシアのHarleigh(Malaysia)Sdn.Bhd.(HL社)、Shin-Nippon Industries Sdn.Bhd.(SN社)における各株式を65%取得し、2019年8月に子会社化しました。

朝日印刷は、医薬品や化粧品包材などの製造、販売を行う印刷包材事業および包装システムの販売事業を主に行っています。HL社やSN社は、マレーシアに拠点を持ち医薬品市場において、先駆け的な存在として強固な地位を築いている会社です。

朝日印刷は今回の株式取得により、ASEAN(東南アジア諸国連合)を対象にした販売や製造拠点の確立、人財育成などを行います。

小森コーポレーションによるインドのInsight Communication and Print Solution Indiaの子会社化

2018年2月に小森コーポレーションは、Insight Communication and Print Solution Indiaの株式を取得し、子会社化しました。小森コーポレーションの主要製品は、オフセット印刷機やデジタル印刷機を含む印刷機を製造、販売するメーカーです。

積極的な海外展開も行っており、海外市場のウェイトが大きく占めています。Insight Communication and Print Solution Indiaは、インドのデリーを拠点として2007年に設立され、小森コーポレーションの販売代理を行っている会社です。

今回の株式取得により、グループにおけるインド市場への参入をコミットします。そして、オフセット印刷機械の海外における販売拡大だけでなく、人財育成とともにサービス体制の構築を行います。

凸版印刷によるDECOTEC PRINTING, S.A.U.の子会社化

凸版印刷のドイツ現地法人であるTOPPAN EUROPE GmbHは、スペインの建装材メーカーであるDECOTEC PRINTING, S.A.U.の株式を2017年11月に過半数取得し、子会化しました。

DECOTEC PRINTINGは家具や床への装飾用印刷紙における製造を行っており、欧州における建築資材市場のほか、南米向けの輸出市場も開拓している会社です。凸版印刷は欧州への販路拡大だけでなく、南米向けの販路も獲得できます。

今回の買収により、凸版印刷は海外でのさらなる事業拡大を見込みます。

共同印刷によるPT Arisu Graphic Primaの子会社化

共同印刷はインドネシアのPT Arisu Graphic Primaにおける株式を2017年4月に追加取得し、子会社化しました。共同印刷は、雑誌、書籍の出版印刷のほかに、化粧品向けラミネートチューブ事業を拡大しています。

PT Arisu Graphic Primaは、インドネシアでラミネートチューブの製造を中心とした事業を行っており、今回の子会社化により、インドネシアなど東南アジア市場の開拓、積極的な事業拡大を目指していきます。

凸版印刷によるMax Speciality Films Limited社の関連会社化

凸版印刷は、2017年2月にインドやその他海外市場向けに「BOPPフィルム」の製造・販売を手掛けるMax Speciality Films Limited社の株式を取得して、関連子会社化しました。

このM&Aによって、凸版印刷は、今後の動向に注目が集まっている「インドのパッケージ市場」へアプローチが可能になったほか、海外市場への事業拡大を図っています。

小松印刷によるマツオカと三幸の子会社化

新聞の折り込み広告における印刷事業を行う小松印刷は、2016年9月にマツオカと三幸を子会社化しました。売却側企業は、神社参拝で使用する「納経帳」や「つえ」などの巡礼用品を製造・販売している企業です。

小松印刷はこのM&Aにより、販促活動の強化・インキなど資材の共同調達などによるシナジー効果を期待しています。

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  • 印刷会社のM&A・事業承継

4. 印刷会社のM&Aを行うメリット

印刷会社のM&Aを行うメリット

ここからは、M&Aを実施して印刷会社を買収・売却・事業譲渡するメリットを解説します。まずは、印刷会社業界をM&Aで売却する側のメリットを見ていきましょう。

売却側のメリット

M&Aによって会社売却・事業譲渡する側のメリットから説明します。売却・事業譲渡側のメリットは、以下の5つです。

  • 資本力のある組織による安定が狙える
  • 後継者問題が解決できる
  • 従業員の雇用を維持できる
  • 個人保証や借入金の解消が狙える
  • M&Aによる売却益を得る

それぞれのメリットについて、順番に見ていきましょう。

資本力のある組織による安定が狙える

売却側・事業譲渡側のメリットには、「資本力のある組織の傘下になって、安定した経営を実現できる」ことがあります。

印刷会社業界のほとんどは「中小企業」です。業界の市況における影響もあり、大手企業であれば売上高が高くなっていますが、中小企業になるほど収益を伸ばすのは難しいでしょう。実際に、不安定な経営に悩まされている中小の印刷会社は少なくありません。

しかし、M&Aで会社売却・事業譲渡を実現できれば、資本力のある大企業の傘下になって、会社の経営を安定させられます。

後継者問題が解決できる

現在では、人材不足が影響して、印刷会社業界でも中堅・中小企業において「後継者問題」が進んでいます。これは、印刷会社業界に限った話ではなく、多くの業界における中堅・中小企業で見られる現象です。

後継者不足によって事業承継が実行できず、これまで成長させてきた会社を廃業してしまう中堅・中小企業は少なくありません

しかし、M&Aを実施して、会社を売却したり、事業を譲渡したりできれば、この「後継者問題」を解決できます。

従業員の雇用を維持できる

市況の不安定さが影響して「収益が減少している」、後継者不足によって「事業承継がうまくいかない」などの理由によって、廃業せざるを得ない中堅・中小企業が増えています。廃業してしまうと、その会社に勤める従業員の雇用を維持できません。

M&Aを実施して、会社売却・事業譲渡できれば、「従業員の雇用を確保できる」メリットがあります。

個人保証や借入金の解消が狙える

印刷会社に限らず、「個人保証や借入金を解消できる」メリットがあります。M&Aを行えば、現在抱えている「個人保証」や「借入金」を、買収・事業譲受側の企業に引き継げます。個人保証や借入金に悩んでいる場合は、M&Aを検討してみるのも良いでしょう。

M&Aによる売却益を得る

印刷会社の売却や事業譲渡をするメリットとして、「M&Aによる売却益を獲得できる」ことが挙げられます。会社の売却価格は、売却する企業が持つ資産や会社規模によって異なってきますが、うまくM&Aを実行できれば、億単位の取引価格も可能です。

印刷会社の経営に不安があるなら、売却して利益を得るのも良い選択肢といえます。

買収側のメリット

続いて、M&Aを実施して、会社を買収・事業を譲受する側のメリットを説明します。買収側のメリットは、以下です。

  • 新しい技術の獲得が狙える
  • 新規事業の立ち上げができる
  • 内装や機械など設備投資の低減が狙える
  • スムーズな規模拡大ができる

それぞれのメリットについて、順番に見ていきましょう。

新しい技術の獲得が狙える

M&Aによって会社を買収するメリットの一つが、「新しい技術を獲得できる」です。新規市場の参入や事業規模を拡大するために「新しい技術」を獲得する場合、通常は多くの時間と労力を必要とします。

しかし、M&Aを実施すると、自社が欲している技術・ノウハウをすでに持っている会社の買収によって、一から獲得するよりも低コストで「新しい技術を獲得」できます。

印刷会社業界では、インターネットの普及に対応するために、デジタルメディア技術をもつ会社を買収するケースが増えているので、自社がまだデジタル分野に参入できていないなら、M&Aで効率的に参入するのが良いでしょう。

新規事業の立ち上げができる

会社を買収したり、事業を譲受したりするM&Aを行って、「新規事業の立ち上げ」を容易にするメリットがあります。新しい技術を獲得するのと同様に、新規事業を立ち上げる際にも、「多くの時間・労力・費用」が必要です。

特に異なる業界・業種に新規参入するのは非常に大変です。しかし、新規事業のスタートダッシュに必要な「知識・ノウハウ・経験」を持つ会社を買収できれば、新規事業にかかる時間やお金といったコストを削減できます。

最近は、パソコンからデータを転送してプリンタで印刷を行う「オンデマンド印刷会社」が、印刷会社や他業界の企業を買収する事例が増えているでしょう。

内装や機械など設備投資の低減が狙える

買収側におけるメリットの一つに、「内装や機械などにかかる設備投資を低減できる」ことがあります。

事業展開・事業拡大のために新たな設備投資をする際には、多くのコストがかかります。M&Aで会社を買収し、設備投資にかかるコストを削減しましょう。

スムーズな規模拡大ができる

自社の既存事業と組み合わせて、シナジー効果(相乗効果)が生まれそうな会社を買収すると、スムーズな事業規模の拡大が実現します。

海外にある会社を買収し、売却側の会社が持つ顧客網を利用すれば、海外市場へスピーディーに事業拡大することも可能です。

5. 印刷会社のM&A手法

印刷会社のM&A手法

印刷会社をM&Aを行いたいが、具体的なイメージがわかない経営者も多いはずです。印刷会社業界のM&A事例で頻繁に登場する言葉に、「事業承継」と「業務提携」の2つがあるので押さえておきましょう。それぞれについて、順番に見ていきます。

印刷会社の事業承継

近年は、地方の印刷会社が都心部の中小印刷会社を「事業承継」によって買収する事例が増えています。後継者不足の解消・従業員の雇用確保を目的に、事業承継が行われる事例も多いです。

事業承継によるメリット

事業承継の手法でM&Aを実施するメリットは、「後継者人選の幅が広がる」というものがあります。

M&A仲介会社などに依頼して事業承継を行い、経営者個人の人脈では見つけられない買収相手と交渉ができ、場合によっては、非常に高い取引価格で会社を売却できる可能性があります。

事業承継は、後継者問題も解消できるため、廃業せずに済むので、従業員の雇用を守ることも可能です。

事業承継によるデメリット

事業承継のデメリットは、「M&A成立まで時間がかかる場合がある」「従業員が離職してしまう可能性がある」といった点が挙げられます。

売却側の企業に魅力的なポイントがないと、事業承継相手がなかなか見つからない、価格交渉などができずスムーズにM&Aが成立しない可能性があるでしょう。事業承継後、社風の違いや就業環境の変化から、従業員が離職してしまう事例もあります。

事業承継の方法

事業承継のためにM&Aを実施する方法としては、主に「株式譲渡」「事業譲渡」「会社分割の方法が使用されます。

「株式譲渡」は株式を売買し、経営権を買収側に譲渡する方法です。「事業譲渡」は、企業の一部事業を引き継ぐ方法です。「会社分割」では、売却側の企業が有する事業の一部、または全部を承継します。

それぞれ目的に合ったものを選びましょう。

【関連】M&Aと事業承継の違いは?メリット・デメリット、適切な方法の選び方も解説!| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

印刷会社の業務提携

印刷会社業界では、業務提携が実施される事例も多いです。業務提携とは、企業同士がお互いの得意分野におけるノウハウ・経験・経営資源などを共有しあい、共同で事業を展開することをいいます。

業務提携は「資本の移動が行われない」という特徴があります。新規事業への参入や、販促力の強化、新技術の開発といった場面で活用される事例が多いです。

6. 印刷会社のM&A相場

印刷会社のM&A相場

ここでは、印刷会社のM&A相場をまとめます。ただし、「M&A相場」とひとくくりに表現しても、M&A対象企業が持つ企業価値・経営資源などの違いによって、M&Aの取引価格が異なるため、「相場はこのくらい」と断言するのは難しいでしょう。

しかし、これまで行われてきた印刷会社関連のM&A事例を見てみると、M&A取引価格が億単位を超える事例が多く存在します。中小企業であれば相場価格は「3,000万円~」、売上規模が大きくなれば「数億円」です。

【関連】M&Aのプロセスまとめ!

7. 印刷会社のM&Aまとめ

印刷会社のM&Aまとめ

今回は、印刷会社のM&A・買収・売却をまとめました。印刷会社業界のM&A動向やM&A事例、M&Aの相場価格など、ぜひ参考にしてください。印刷会社業界でM&Aを成功させるには、専門家選びがポイントです。

8. 印刷業界のM&A案件一覧

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