検査会社のM&A動向と成功戦略|建築設計業界の事業承継・売却相場を解説

取締役営業本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

検査会社のM&Aは、後継者問題や技術革新を背景に活発化しています。本記事では、建築設計・検査業界のM&A動向や売却相場、成功のポイントを専門家が解説します。

目次

  1. M&A対象となる建築設計・検査会社とは
  2. 建築設計・検査会社でM&A・事業承継が増加する4つの背景
  3. 【売却側】建築設計・検査会社のM&Aで得られる5つのメリット
  4. 検査業界におけるM&Aの最新トレンドと市場予測
  5. 建築設計・検査会社のM&Aを成功させるための重要ポイント
  6. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継の案件例
  7. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継の事例
  8. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継の売却相場
  9. 建築設計/検査会社を積極的にM&A・買収する企業
  10. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継を成功させるポイント
  11. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継を検討する際の相談先
  12. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継まとめ
  13. 建設・土木業界の成約事例一覧
  14. 建設・土木業界のM&A案件一覧
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1. M&A対象となる建築設計・検査会社とは

建築設計/検査会社とは、建築物の設計・管理や監督、建築物の評価や検査などを行う事業者のことです。建築設計会社には建築物における設計のほか、建築物に付随する構造・設備設計、空間を対象とした音響・採光設計などの事業者も含まれます。

企業には設計の請負だけでなく、設計・施工を手掛ける企業も少なくありません。したがって、設計のみに注力する会社は、比較的事業規模の小さい会社が多いです。

一方、建築検査会社は、建築基準法に基づき国土交通大臣・地方整備局長・都道府県知事の指定を受けて事業を営む企業をさします。

建築検査会社が展開する主な事業は、建築物の改築・増築・新築・修繕などに対する建築確認検査や建築計画における省エネの適合判定、構造計算の適合判定、耐震診断調査、住宅ローン「フラット35」に対する技術基準の審査、住宅性能評価などです。

建築設計/検査会社を取り巻く環境

建築設計・検査サービスを取り巻く市場は、技術革新と社会情勢の変化により大きく変動しています。

特に、ドローンやAIを活用した高精度な診断技術、BIM/CIMによる設計・施工・維持管理の一元化が急速に普及しています。また、2025年に予定されている建築物省エネ法の改正による省エネ基準への適合義務化や、頻発する自然災害を受けたインフラ老朽化対策の重要性の高まりも、専門的な検査・診断技術を持つ企業への需要を押し上げています。

2. 建築設計・検査会社でM&A・事業承継が増加する4つの背景

建築設計/検査会社は、どのような事情・要因によってM&による売却・買収を行っているのでしょうか。建築設計/検査会社が実施するM&Aには、以下の背景が見られます。

  • 建築業界全体でM&Aによる業界再編の流れ
  • 後継者問題を抱える企業も多く存在
  • 最新の技術力獲得を目的として大手企業・中堅企業によるM&Aが増加
  • 海外市場を目指すには単独では難しい

建築業界全体でM&Aによる業界再編の流れ

まず、建設業界全体が直面する課題が、M&Aを加速させる一因となっています。いわゆる「2024年問題」に起因する労働時間規制の強化や、それに伴う人手不足・人件費の高騰は深刻です。

また、業界全体でデジタル化(DX)が遅れているという課題もあります。

これらの課題を解決し、事業エリアの拡大や人材・技術者の確保を迅速に進めるため、M&Aによって他社の経営資源を獲得する業界再編の動きが活発化しています。この流れは、建築設計・検査業界にも同様に及んでいます。

【関連】建設業界・ゼネコン業界のM&A動向!買収・売却事例33選、譲渡案件、メリットも紹介【2025年最新】

後継者問題を抱える企業も多く存在

2つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&Aが行われる背景は、後継者問題を抱える企業の増加です。建築設計/検査会社は中小規模の企業が多く、経営者の高齢化などにより事業承継を検討している企業も少なくありません。

そのため、会社・事業の継続、取引・雇用契約の継続、譲渡・売却益の確保などを目的として、第三者へのM&Aを選択するケースが増えています。

最新技術の獲得による競争力強化

近年の建築業界では、BIM/CIMやドローン、AIといった先進技術の活用が競争力を左右する重要な要素となっています。これらの技術は、設計の精度向上や業務効率化に大きく貢献しますが、導入には高額な設備投資や専門知識を持つ人材の確保が不可欠です。

特に中小企業にとっては、自社単独での技術開発や人材育成は大きな負担となります。

そこで、すでに高度な技術力やノウハウを持つ企業をM&Aによって買収し、短期間で技術基盤を強化しようとする大手・中堅企業が増加しています。これは、DX化の波に乗り遅れないための有効な戦略として注目されています。

海外進出の足がかりとしてのM&A活用

4つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&Aが行われる背景は、海外市場への進出です。建築設計/検査会社の業界では国内の需要が減ると予想されるため、海外市場への進出を図る企業も見られます。

しかし、自社のみで海外への進出を図ると立ち上げの資金・許認可の取得・人材確保など、多くの時間やコストが必要となるため、現地の企業をM&Aで買収し単独では難しい海外進出に臨むのです。

3. 【売却側】建築設計・検査会社のM&Aで得られる5つのメリット

建築設計/検査会社でM&A・売却・買収を可能とするためには一定の条件を満たす必要がありますが、それでもM&A・売却・買収を行うことで以下のメリットを享受できるのです。

  • 後継者問題を解決できる
  • 雇用を守れる
  • 個人保証・担保を解消できる
  • 経営を安定させられる
  • 売却益を獲得できる

各メリットを見ていきましょう。

後継者問題を解決できる

団塊世代における中小企業の経営者が、近年は引退の時期を迎えています。しかし、後継者が不在のため廃業に追い込まれる企業も少なくありません。建築設計/検査会社は中小企業が多く、どのように後継者を見つけるかが重要な課題といえます。

親族に後継者がいなくても、M&A・売却・買収を実施すると、幅広い選択肢から後継者を見つけられるのは、大きなメリットです。

雇用を守れる

雇用を守れることも、建築設計/検査会社がM&A・売却・買収を行うと得られるメリットです。建築設計/検査会社が廃業したり倒産したりすると、培ったノウハウ・顧客・従業員の雇用を失います。

しかし、建築設計/検査会社をM&Aで売却すれば、会社が存続でき従業員の雇用も守れるのです。「倒産寸前の会社を買ってくれる会社があるのか」と考えるかもしれませんが、買い手が魅力を感じる会社であれば、債務超過でも買い手が見つかるケースがあります。

個人保証・担保を解消できる

中小企業の建築設計/検査会社は、融資のときに経営者が個人保証を行ったり不動産などを担保に入れたりすることが多いです。個人保証や担保は会社の倒産が経営者の破産につながるため、経営者には大きな負担となるでしょう。

個人保証や担保を解消して精神的に楽になるためにも、建築設計/検査会社のM&A・売却は有効なので、これもメリットといえます。

経営を安定させられる

中小規模の建築設計・検査会社は、景気の変動や受注状況によって経営が不安定になりがちです。

M&Aによって資金力のある大手企業の傘下に入ることで、安定した経営基盤を確保できます。これにより、大型案件への参加機会が増えたり、人材採用・育成に積極的に投資できるようになったりするなど、事業の持続的な成長が期待できます。大手グループの信用力や営業ネットワークを活用できる点も大きなメリットです。

売却益を獲得できる

建築設計/検査会社の経営者が持つ株式を売却し、経営権を譲渡すると、その売却益は経営者が獲得できます。つまり、売却利益を得るために、建築設計/検査会社をM&Aで売却することも可能です。

得た売却益を、新事業の資金に充てたり経営者が引退してからの生活資金にしたりして活用できます。

  • 建設・土木会社のM&A・事業承継

4. 検査業界におけるM&Aの最新トレンドと市場予測

検査業界におけるM&Aは、市場の成長と技術革新を背景に、今後ますます活発化すると考えられます。ここでは、検査 M&Aの最新トレンドと市場予測について解説します。

継続的な市場成長とM&A機会の拡大

世界の建築検査サービス市場は、今後も堅調な成長が見込まれています。市場調査レポートによると、同市場は2024年から2029年にかけて年平均成長率(CAGR)7%以上で拡大すると予測されています。この成長は、世界的なインフラ老朽化対策の本格化や、防災・減災意識の高まり、そして2025年に施行される改正建築物省エネ法のような環境規制の強化が追い風となっています。

市場の拡大は、検査会社のM&Aにおける機会の増加を意味します。買い手は新たな成長分野へ参入でき、売り手は自社の価値を高く評価してもらえる可能性が高まります。

テクノロジー導入企業への注目

検査業界は、ドローン、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)といった先進技術の導入により、大きな変革期を迎えています。これらの技術を活用することで、検査業務の効率化、精度向上、そして作業員の安全性確保が可能になります。そのため、M&A市場においては、これらの先進技術を積極的に導入し、競争優位性を確立している企業が高い評価を受ける傾向が強まっています。

買い手企業にとって、M&Aはこれらの技術を迅速に獲得し、自社のサービスを高度化するための有効な手段となるのです。この動きは、検査業界が従来の労働集約型から技術集約型へと移行しつつあることを示しており、M&A戦略においても「技術投資」という側面がより重視されるようになっています。

サステナビリティとESG経営への対応

環境規制の強化や、企業に対する社会的な要請の高まりを受け、建物のエネルギー効率評価、環境負荷検査、アスベスト調査といったサステナビリティ関連の検査ニーズが世界的に増加しています。この新しい市場の潮流に対応できる専門知識や技術を持つ検査会社は、M&Aにおいても注目される存在となるでしょう。ESG(環境・社会・ガバナンス)経営を重視する企業が増える中で、この分野への対応力は企業価値を高める上で不可欠な要素です。

2025年以降のM&A市場環境

PwCが2024年1月に発表した「世界CEO意識調査」によると、世界のCEOの約6割が今後3年間でM&Aを計画していると回答しており、事業ポートフォリオの再編や新たな技術獲得への意欲は依然として高い水準にあります。

2024年を通じて見られた金利の高止まりや地政学リスクへの懸念は一服し、2025年にかけては市場環境の安定化とともにM&A活動が再び活発化すると予測されています。特に、DXやサステナビリティといったメガトレンドに関連する分野でのディールが市場を牽引する見込みです。

5. 建築設計・検査会社のM&Aを成功させるための重要ポイント

建築設計・検査会社のM&Aを成功に導くためには、戦略的な準備と専門的な知見が不可欠です。ここでは、特に重要な3つのポイントを解説します。

企業価値を最大化する売却準備

M&Aを検討し始めたら、まずは自社の企業価値を客観的に評価し、それを最大化するための準備に取り掛かることが重要です。具体的には、過去数年分の財務諸表を整理し、収益の安定性や成長性を明確に示せるようにします。

また、保有する許認可、特許、独自の技術力、優良な顧客基盤、そして経験豊富な有資格者の在籍状況など、数字に表れにくい「無形の強み」を可視化し、買い手企業にアピールできるように整理しておくことが、より良い条件での売却につながります。

適切なM&Aアドバイザーの選定

M&Aのプロセスは法務、税務、財務など多岐にわたる専門知識を要するため、信頼できるM&Aアドバイザーの選定が成功の鍵を握ります。

特に、建築設計・検査業界の動向やビジネスモデルに精通したアドバイザーを選ぶことが望ましいです。業界特化型のアドバイザーは、適切な買い手候補のリストアップや、業界の慣行に基づいたリアルな企業価値評価、将来のシナジー効果を見据えた交渉など、専門的な視点から強力なサポートを提供してくれます。

買い手企業が重視する評価項目

買い手企業は、M&Aによってどのようなメリット(シナジー効果)を得られるかを重視します。建築設計・検査業界のM&Aにおいて、特に評価されるポイントは以下の通りです。

  • 技術力と専門性:特定の分野(耐震診断、環境アセスメントなど)における高い専門性や、BIM/CIMといった最新技術への対応力
  • 有資格者の在籍:一級建築士や構造設計一級建築士など、質の高い人材がどれだけ在籍し、定着しているか
  • 顧客基盤と事業エリア:官公庁や大手デベロッパーとの安定した取引実績や、自社が展開していないエリアでの強固な事業基盤
  • DXへの対応状況:検査報告書のデジタル化やプロジェクト管理システムの導入など、業務効率化への取り組み

これらの点を事前に整理し、買い手に対して自社の魅力を的確に伝えることが、M&Aを成功させる上で不可欠です。

6. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継の案件例

弊社M&A総合研究所が取り扱っている建築設計/検査会社のM&A・事業承継の案件例として、東北エリアの建築設計・不動産売買・仲介業をご紹介します。

一級建築士(1名)、宅地建物取引士(2名)の計3名が在籍いるため、小規模な建築物に関わらず公共建築物も設計可能になっており、不動産の売買・賃貸契約などの業務への対応が可能です。
 

エリア 東北
売上高 5億円〜10億円
譲渡希望額 2.5億円〜5億円
譲渡理由 後継者不在(事業承継)

【関連】【東北エリア】建築設計・不動産売買・仲介業(住宅・不動産・建設) | M&A総合研究所

7. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継の事例

建築設計/検査会社のM&Aでは、どのような企業が売却・買収を行っているのでしょうか。ここでは、建築設計/検査会社のM&A・事業承継の事例を紹介します。

ビジネス・ワンHDによるナカケンの子会社化

2024年10月、ビジネス・ワンホールディングス(ビジネス・ワンHD)は、ナカケン(福岡県福岡市)の株式を取得し、連結子会社化することを決定しました。

ビジネス・ワンHDは不動産事業やマンション管理事業など6つの事業を展開しており、ナカケンは建築設計や住宅リフォームを手掛けています。

本提携により、ビジネス・ワンHDはグループ内での建設関連ニーズに対応可能となり、ナカケンは新規需要を開拓できます。双方の強みを生かし、事業拡大と企業価値向上を目指します。

参考:株式会社ナカケンの株式の取得(連結子会社化)に関するお知らせ

オープンハウスによる三栄建築設計の完全子会社化

2023年8月、オープンハウスグループは、三栄建築設計の普通株式を公開買付け(TOB)を通じて取得し、完全子会社化を目指すと発表しました。買付価格は1株2,025円で、買付予定数は21,217,079株、買付代金は約429億円です。

三栄建築設計もこのTOBに賛同しています。同社は分譲戸建住宅やマンションの販売を行う不動産分譲事業を展開していますが、反社会的勢力への関与を理由に信頼性が低下しており、オープンハウスは新体制での信頼回復を目指します。

本M&Aにより、両社は戸建事業の強化や商品ラインナップの拡充、コスト競争力の向上、子会社協働の拡大を図ります。

参考:株式会社三栄建築設計株式(証券コード:3228)に対する公開買付けの結果 及び子会社の異動に関するお知らせ

ERIホールディングスによるサッコウケンの子会社化

2020年8月、ERIホールディングスは、サッコウケン(札幌市)の株式を取得し子会社化するための譲渡契約を締結しました。ERIホールディングスは、子会社の経営管理を主業務としています。一方、サッコウケンは建築基準法に基づく確認検査や住宅性能評価、建築物関連事業を行う企業です。

本件M&Aにより、ERIホールディングスは中期経営計画の一環として、既存の中核業務の収益基盤を強化し、市場シェア拡大を目指します。

参考:株式会社サッコウケンの株式取得(子会社化)に関するお知らせ

8. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継の売却相場

建築設計/検査会社のM&A・売却では、相場を断言できません。事業模やエリア・営業権・ノウハウ・技術などによって、M&A・売却相場は異なるからです。しかし、企業価値を計算すればおおよそのM&A・売却目安を知ることができます。

自社の価値を算出する方法

建築設計/検査会社の価値は、以下のいずれかを用いて算出できます。
 

  • 時価純資産法
  • DCF法
  • 類似会社比較法

時価純資産法

時価純資産法はコストアプローチと呼ばれる手法で、純資産価額を基に企業価値を算出する方法です。建築設計/検査会社が保有する資産と負債を時価に置き換え、資産から負債を引いて企業価値を算出します。

将来のキャッシュ・フローや時間経過による価値の増減が反映されませんが、貸借対照表から簡便に企業価値を算出できる点がメリットです。

【時価純資産法の計算】

  • 時価に置き換えた資産-時価に置き換えた負債

DCF法

DCF法とはインカムアプローチと呼ばれる手法で、将来に得られるキャッシュ・フローを基に企業価値を算出する手法です。

将来のキャッシュ・フローに一定の割引率を掛けて現在の企業価値を算出し、建築設計/検査会社が保有する営業権や将来の利益を企業価値に含められますが、事業計画の作成を必要とします。

作成した事業計画によって企業価値が大きく変わるため、信頼性・客観性の高さが求められるといえるでしょう。

【DCF法の計算】

  • フリーキャッシュ・フロー/(1+割引率)+フリーキャッシュ・フロー/(1+割引率)²+フリーキャッシュ・フロー/(1+割引率)³……

類似会社比較法

類似会社比較法はマーケットアプローチと呼ばれ、自社と類似する企業との比較によって企業価値を算出する手法です。非上場会社の企業価値を算出する場合に多く用いられます。

上場会社から業種・事業規模が似た企業を選び、比較する企業の株価を基に売上高・営業利益・EBITDAなどを用いて企業価値を算出します。

非上場企業でも算出する企業価値に市場の価値を反映できますが、類似会社を見つけられない場合は利用できない点がデメリットです。

【類似会社比較法の計算】

  • 類似会社の株式時価総額÷類似会社の指標(売上高・営業利益など)=係数
  • 評価対象企業の指標(類似会社で用いた指標)×係数=企業価値

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企業評価価値の算出は個人でも可能?

建築設計/検査会社の企業評価価値を個人でも算出できますが、より正確な価値を求めるためには専門知識が必要です。

算出方法によっても企業価値評価が異なるため、自社に最適な方法を選ぶことも欠かせません。自社の価値を算出する場合は、M&A仲介会社などの専門家に協力を依頼しましょう。

9. 建築設計/検査会社を積極的にM&A・買収する企業

検査業界においても、M&Aを成長戦略の重要な柱と位置づけ、積極的に買収を行う企業が見られます。これらの企業は、事業エリアの拡大、対応可能な検査分野の拡充、最新技術の獲得などを目的としてM&Aを推進しています。ここでは、建築設計/検査会社を積極的にM&A・買収する企業2社を紹介します。
 

  1. カーリットホールディングス
  2. ヒビノ

①カーリットホールディングス

1つ目に挙げる建築設計/検査会社を積極的にM&A・買収する企業は、カーリットホールディングスです。

カーリットホールディングスは化学品の製造・販売をはじめ、ボトル・缶飲料の受託製造、産業用部材の製造・販売、上下水・排水処理施設などの設計・施工を手掛けています。

2019年度からは中期経営計画「ワクワク21」を掲げ、継続に適う事業基盤の確立と絶え間ない技術の進展を目指し、関係者の信頼確保や新製品の開発・新事業の開拓を進める見込みです。

研究開発体制の整備や新製品の開発・新事業の開拓では、M&Aと海外進出を積極的に進めて計画実現を図るため、建築設計/検査会社へのM&A・買収も盛んに行われると予想されます。

②ヒビノ

2つ目に挙げる建築設計/検査会社を積極的にM&A・買収する企業は、ヒビノです。ヒビノは建築音響の設計・施工をはじめ、音響機器の販売、映像製品の開発・製造・販売、コンサートなどのイベントにおける音響・映像サービスを提供しています。

中期経営計画「ビジョン2020」を掲げ、建築設計/検査会社の業界で起きている市場の変化に合わせて、2021年3月期までの売上高を500億円、そのうち海外での割合を15%に設定している状況です。

ヒビノは、ハニカム経営を推し進めます。ハニカム経営とは、グループ企業に権限を持たせて、素早い意思決定を実現しさまざまな需要に応える経営方針です。

技術力を持ちながらも事業承継の問題を抱える企業を買収し、対象企業を尊重してシナジーの獲得を目指すことから、今後もM&Aの実行が予想されます。ヒビノはM&Aを活用した経営基盤の強化を図るために、現在までに以下の企業を買収しました。

【M&A・買収事例】

  • テクノハウス(音響機器販売・施工事業)
  • 韓国・Sama Soundグループの3社(音響機器販売事業)
  • 米国・TLS PRODUCTIONS, INC.(照明・音響サービス)

10. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継を成功させるポイント

建築設計/検査会社のM&A・事業承継では、どのような点を押さえればよいのでしょうか。ここでは、建築設計/検査会社のM&Aを行う際に意識するべき5つのポイントを解説します。

  1. M&A・事業承継は計画的に準備をして行う
  2. M&A・事業承継を行う目的は明確にしておく
  3. 売却先には譲れない条件をはっきりと伝える
  4. M&A・事業承継が成功するまでは情報の漏えいを防ぐ
  5. M&A・事業承継の専門家に相談する

①M&A・事業承継は計画的に準備をして行う

1つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&A・事業承継を成功させるポイントは、計画的な準備を済ませてからM&Aを実行に移すことです。

M&Aでは自社のブラッシュアップ・事業計画書の作成・株主や不透明な取引の整理・税務上の問題解消などが必要になります。

M&Aに取り掛かるとスキーム・譲渡価格・交渉先の選定や交渉・成約の手続き、デューデリジェンスへの対応など多くの行程を経なければなりません。

無計画でM&Aを進めた場合、交渉が長引いたり希望に合った成約に至れなかったりする可能性が高くなります。そのため、建築設計/検査会社のM&Aでは必要な準備を整え計画に沿って進めることが重要といえるでしょう。

②M&A・事業承継を行う目的は明確にしておく

2つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&Aを成功させるポイントは、M&A・事業承継の目的を明確にする点ですM&Aの目的によって、選定する買い手・優先する条件・譲渡する対象などが異なります

M&Aの目的が曖昧な場合は、ふさわしい買い手を見つけられなかったり望まない条件をのんでしまったりするなど、自社が望むM&Aに至らないことも考えられるのです。

建築設計/検査会社を売却する際は、まずM&Aの目的を明確にさせるのが成功のポイントといえます。

③売却先には譲れない条件をはっきりと伝える

3つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&Aを成功させるポイントは、売却先に譲れない条件を伝えることです。

自社のみで行う建築設計/検査会社のM&Aでは、売却先との交渉時に自社の希望を伝える必要がありますが、売却先に気を使ってしまい望む条件を伝えられないケースも見られます。

しかし、自社が譲れない条件をしっかりと相手先に伝えれば交渉もスムーズに進みやすくなり、希望のM&Aを成功させる確率も高くなるのです。

譲れない条件は最低売却価格・従業員の雇用など会社によって異なりますが、それらを事前にまとめ、交渉時に伝えられるよう準備しましょう。M&A仲介会社などの専門家を介して条件を伝えるのも有効です。

④M&A・事業承継が成功するまでは情報の漏えいを防ぐ

4つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&Aを成功させるポイントは、情報漏えいを防ぐことです。交渉の段階でM&A・事業承継を進めていることが外に漏れてしまうと、取引契約の解除や従業員の離職など、問題が発生しかねません。

建築設計/検査会社のM&Aを成功させるためには、適切なタイミングで関係者にM&Aの報告をすることが大切です。役員・経理担当者・各部門のキーパーソンには基本合意の締結後に伝え、そのほかの従業員・取引先にはクロージング後に伝えるとよいでしょう。

ただし、取引先との契約にチェンジ・オブ・コントロール条項が盛り込まれている場合は、クロージング前に伝えなければなりません。

取引契約にチェンジ・オブ・コントロール条項が定められると、経営権の移転に伴う取引先による契約の解除が認められるため、クロージング前に取引先へ通知して同意を得てからM&Aを進めてください。

⑤M&A・事業承継の専門家に相談する

5つ目に挙げる建築設計/検査会社のM&Aを成功させるポイントは、M&A・事業承継の専門家への相談です。

自社のみで建築設計/検査会社のM&Aを進めると、交渉先が見つからない・不当な条件をのんでしまった・交渉が決裂した・契約が白紙に戻ったなど、望んだ期間・条件での売却を完了できない事態も考えられます。

建築設計/検査会社のM&Aでは、実績を兼ね備えたM&A仲介会社・地元の士業・金融機関・公的機関などの専門家にできるだけ早い段階で相談しサポートを受けながら進めることが成功のカギといえるでしょう。

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11. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継を検討する際の相談先

この章では、建築設計/検査会社のM&A・事業承継を検討するときの相談先を紹介します。

①M&A仲介会社

建築設計/検査会社のM&Aを検討する際のオーソドックスな相談先は、M&A・売却・買収を専門とするM&A仲介会社です。M&A仲介会社には、M&Aの経験や知識が豊富なスタッフが在籍し、事前準備、交渉相手の選定、クロージングなどを全体的にサポートします。

ただし、M&A仲介会社によって報酬は違います。着手金・中間金・成功報酬などが生じるので、その会社の料金体系を確認してください。M&A仲介会社は非常に多くあるため、自社に合うところを選択することが重要です。

建築設計/検査会社のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は、多様な業種を取り扱う中堅・中小企業向けのM&A仲介会社で、知識と経験が豊富なM&Aアドバイザーが、案件をフルサポートいたします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談をお受けしていますので、どうぞお気軽にお問合せください。

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②地元の金融機関

建築設計/検査会社のM&Aを検討する際の相談先として、地方銀行や信用金庫など地元にある金融機関も挙げられます。

一般的に、金融機関は法人経営の相談を受け付けていますが、中にはM&Aの相談窓口があるところも存在するのです。

ただし、金融機関は融資をすることが最終的な目的なので、M&A仲介会社より中立性に欠けることもあるでしょう。しかし、普段取引があるメインバンクであれば相談しやすいといえます。

③地元の公的機関

国は、中小企業の後継者不足を重要な問題として取り扱っています。そのため、事業承継・引継ぎ支援センターなど公的機関を設けてサポートを行っているのです。これらの公的機関も、建築設計/検査会社のM&Aを検討する際の相談先として有力といえます。

地元の公的機関は、中小企業のM&Aを専門とするため、中小企業が多い建築設計/検査会社にとって適した相談先です。しかし、公的機関は基本的に相談のみであるため、具体的な仲介業務は提携しているM&A仲介会社に依頼する点に注意してください。

④地元の士業事務所

会計士や税理士などの士業事務所で、建築設計/検査業界の動向やM&Aの経験が豊富なところもあります。このような士業事務所を知っていれば、相談先として有力な選択肢です。

ただし、弁護士、会計士、税理士は必ずしもM&Aに精通しているわけではありません。そのため、どこの士業事務所に相談するかは慎重に選択することが大切です。士業事務所は仲介業務をフルサポートできないため、M&A仲介会社へ最終的に依頼することも覚えておきましょう。

⑤M&Aマッチングサイト

M&Aマッチングサイトとは、売却希望の人が自社情報や希望条件を載せ、買収希望の人が連絡して交渉を行い、自分でM&Aを実施できるサイトのことをいいます。つまり、M&Aマッチングサイトを利用すると、自分で相手探しができるのです。

売却側の料金は完全無料で、買収側のみ成約手数料がかかるシステムのサイトがほとんどなので、コストを抑えたM&Aが行えます。

M&Aを自分だけで行うことに不安があれば、M&Aマッチングサイトが提携するアドバイザーやM&A仲介会社のサポートを受けながらの利用も可能です。

12. 建築設計/検査会社のM&A・事業承継まとめ

当記事では、建築設計/検査会社のM&A・事業承継について、業種の概要・選択されるスキーム・事例・売却相場などを紹介しました。

建築設計/検査会社の業界では、業界再編・後継者問題の解決・技術力の確保などを目的としてM&A・事業承継が行われています。建築設計/検査会社のM&A・事業承継を成功させるためには、計画的に準備を進めて自社に最適なスキームを選択し、交渉することが重要です。

【建築設計/検査会社のM&A・事業承継が行われる背景】

  • 建築業界全体でM&Aによる業界再編の流れ
  • 後継者問題を抱える企業も多く存在
  • 技術力を目的として大手企業・中堅企業によるM&A
  • 海外市場を目指すには単独では難しいため

【建築設計/検査会社のM&A・事業承継を成功させるポイント】
  • M&Aは計画的に準備をして行う
  • M&Aを行う目的は明確にしておく
  • 売却先には譲れない条件をはっきりと伝える
  • M&Aが成功するまでは情報の漏えいを防ぐ
  • M&Aの専門家に相談する

13. 建設・土木業界の成約事例一覧

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