日本企業はM&Aが下手?海外M&Aは日本企業が世界一?

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

海外展開等に向けて、大型案件を含め積極的にM&Aを実行している日本企業ですが、巨額ののれんの減損を計上するケースもあり、海外勢に比べて、M&Aが下手なのではないか、という見方もあります。なぜ日本企業はM&Aが苦手なのでしょうか?背景も含めて解説します。


目次

  1. 日本企業はM&A・買収が下手
  2. 日本企業の2018年上半期海外M&Aは世界一
  3. 2018年上半期日本企業による海外M&A金額ランキング
  4. 日本企業のM&Aまとめ
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1. 日本企業はM&A・買収が下手

日本企業はM&A・買収が下手

出典: https://www.tadapic.com/

日本企業は、1990年以降からM&Aを積極化してきましたが、当初は国内企業同士(IN-IN)のM&Aが中心でした。近年では、海外事業への足掛かりとしてM&Aを積極的に実行している経営者も多く、件数、金額ともに国内企業から海外に対してM&Aを仕掛ける例(IN-OUT型)が増加傾向にあります。
 
一方、東芝がM&Aを行ったウエスチングハウス(WH)の減損や、日本郵政によるオーストラリアの物流子会社のM&Aとそののれんの減損など、当初想定したシナジーどころか多額の費用を結果として計上してしまう失敗事例も多くあり、「日本企業はM&A・買収が下手」ともいわれています。
 
なぜ日本企業はM&A・買収が下手といわれてしまうのでしょうか。要因としては、社内人材の不足やポストM&Aにおける統合の失敗、独特な日本型人事システムや文化的な問題等があります。

M&Aが下手な要因①:社内人材の不足

日本企業はM&A・買収が下手といわれる要因の一つに社内人材の不足があります。将来有望な新興企業を様々な企業の中から発見して、その会社を適切な方法で買収する知識・能力を持つ人材が日本企業には少なく、買収を成功させるためには外部の専門家を雇う必要がある、というのが現状です。
 
一方、そのような能力を持つ専門家を雇うためには、CEOの報酬を超えるコストを支払う必要がある場合もあるため、多くの日本企業はこのコストを十分にかけず、社内の人材で賄ってしまうため、買収対象企業の目利きが不十分なままM&Aを実行し、失敗するケースがあります。

M&Aが下手な要因②:統合失敗

2つ目の要因は、ポストM&Aでの事業統合に失敗する例が多いことです。
特に大手企業が実行するM&Aにありがちな例ですが、例えば新しい技術を求めてスタートアップ企業のM&Aを行った後、創業者に対して大手企業の人事システムやルールを押し付け、結果としてスタートアップ企業の経営陣が早期に会社を去ってしまい、当初想定していたシナジーが出せなくなってしまう、という事例があります。
 
給与などの待遇が一例です。例えば、30代のスタートアップ企業の経営者に対し、社内の同年代と同等にとどまる賃金を支払っていれば、経営者は納得いかずにすぐに会社を去ってしまうでしょう。また、新たな親会社の経営陣がスタートアップ企業に入り込み、社内の秩序を崩してしまうと、既存の人材が離れてしまうこともあります。

M&Aが下手な要因③:日本型人事システム

また、日本型の人事システムが障害となる場合もあります。
日本企業は、年功序列で昇進する企業が多く、このためにオープンイノベーションには消極的です。これは株主からのプレッシャーが少ないことや、オープンイノベーションを促す税制等がないことも要因ではありますが、そのためM&Aにもあまり積極的ではありません。
 
このように、日本型人事システムが障壁となり、積極的なM&Aや、イノベーションの浸透がなかなか達成されず、結果としてM&Aの失敗につながっているものと推察されます。

M&Aが下手な要因④:文化的問題

日本の文化的背景により、M&Aを積極的に行ってこなかった点も、日本企業がM&Aが下手な要因の一つです。
日本人は元来農耕民族であり、コツコツと事業を作り上げていく経営者が多くいる一方、ある程度育て上げたら大企業に売る、という手段を選択肢に入れている経営者は欧米と比較して少ない状況です。
 
従って、欧米と比較してM&Aの歴史が浅く、M&Aに慣れていないため、日本企業は相対的にM&Aの失敗が多くなっています。

M&Aが下手な要因⑤:ハゲタカファンドのイメージ

日本国内でのM&Aのイメージがよくなく、業績拡大の手段として受け入れにくい点が残っていることも要因の一つです。
 
2000年代には、外資系ファンド等により日本企業がM&Aの対象となる事例が相次ぎ、「敵対的買収」として報道され、嫌気されましたが、この「ハゲタカファンド」のイメージが強く、そもそも業績拡大の手段としてのM&Aをネガティブにとらえる経営者もいることがM&Aの浸透を妨げています。

M&Aが下手な要因⑥:お金の話題のタブー視

また、そもそもお金の話題をすることそのものが日本でタブー視されている、という点もM&Aを拡大しにくくする背景の一つです。
日本ではコツコツと事業を積み上げて拡大していくことが美徳とされる文化であり、お金で解決する、ゼロからの起業の大変さをお金で楽にする、といった発想に対して、背徳感があります。
 
こうした文化的背景が、お金を出すことで比較的早く事業を拡大する手段であるM&Aの拡大を妨げ、日本企業がM&A下手となった一因である、と見ることができます。

2. 日本企業の2018年上半期海外M&Aは世界一

日本企業の2018年上半期海外M&Aは世界一

出典: https://www.tadapic.com/

M&A下手といわれる日本企業ですが、特に海外展開の加速という観点からM&Aは積極的に活用が進んでいます。少子高齢化の進行に伴い、日本の国内市場が縮小していく中、企業にとって生き残りをかけて行われる戦略であると言い換えることもできるでしょう。
 
こうした背景に伴い、足元のM&Aの実行金額は増加傾向にあり、2018年上半期の海外M&Aの総額は世界一となりましたが、近年の日本企業による海外M&Aの総額はどのように推移し、他国のM&Aはどのような状況にあるのでしょうか。

日本企業による海外M&A総額の推移

M&A調査会社のレコフによると、海外M&Aは2018年度上半期(1~6月)で過去最高の水準を更新しています。
日本企業による海外M&A総額の推移は、リーマンショックや欧州金融危機の時期に減少に転じたものの、2014年からは増加傾向にあり、日本国内の景気回復・好業績を背景に、日本企業が海外展開に向けてM&Aを積極化していることが見て取れます。
 
こうした海外M&Aの増加の背景としては、日本市場が少子高齢化に伴い、縮小傾向にあることがあります。そのため、これまでは内需型の産業であった生命保険会社なども、海外M&Aを積極的に実行・検討しています。
 
特に近年の傾向としては、AI・IoTの普及を背景に、人工知能(AI)や、ビッグデータを扱う情報技術(IT)を扱う企業へのM&Aが増加しているほか、サービスに関連する事業の強化を狙った案件が多いことも特徴です。

他国のM&A事情

他国の状況を見ると、近年では中国企業によるM&Aが活発化していました。欧米の企業を中心に、コア技術を狙った買収を繰り返し実行し、欧米の政府から規制がかけられる場面もありました。
 
一方、足元の中国企業による海外M&Aは減少しています。これは、中国企業が海外M&Aを実行する際には、中国元を売り、外貨に変換したうえで買収を行うため、資本が流出することを中国政府が懸念したためです。このため、中国企業による海外M&Aは2017年に前年比42%の1,214億ドル(約13兆円)と大きく減少し、2018年度も1-3月で165億ドルと減少しています。
 
これに対し、日本企業による海外M&Aは1-3月で269億ドルとなっており、今年度は日本企業による海外M&Aが年間ベースで最も多くなるのではないかと見られています。
中国企業のM&Aについては、直近の事例も含めてまとめた記事もご参考ください。

【関連】中国企業によるM&A・買収事例20選!EUは中国企業のM&Aに規制強化!

3. 2018年上半期日本企業による海外M&A金額ランキング

2018年上半期日本企業による海外M&A金額ランキング

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それでは、過去最高額となった2018年上半期の日本企業による海外M&Aは、どのような案件があったのでしょうか。金額の大きい順にベスト3を紹介します。

2018年上半期日本企業によるM&A金額ランキング第1位.

1位 武田薬品工業によるシャイアーの買収

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2018年上半期のM&A金額ランキング1位は武田薬品工業による欧州医薬品大手企業、シャイアーの買収です。金額で6兆9,694億円と、日本企業による海外企業買収では過去最高額となり、18年上半期のM&A総額の半分以上を占める金額となり、この買収により、売上高ベースで世界トップ10に入る製薬会社が日本で初めて誕生することとなりました。
 
シャイアーは、米国を中心に展開する、患者数の少ない希少疾患薬を強みとする企業で、事業規模は武田薬品工業と同等です。革新的な創薬手法、として注目される、全遺伝情報(ゲノム)を応用した研究開発でも先進しています。
 
今回の武田薬品工業によるシャイアー買収は、地理的な補完及び武田薬品工業が弱みとしていた新薬開発に対する投資という背景があります。日本の製薬市場は、かつては世界の2割を占めましたが、現在では約5%にとどまる水準であり、今後の成長に向けてはグローバル化が必須であったことに加え、武田薬品工業は近年画期的な新薬が少なかったため、シャイアーの持つ研究開発技術をもとに開発のペースを引き上げたい考えです。
 
シャイアーの買収を提案・主導してきたのは英製薬会社大手から転じてきたクリストフ・ウェバー社長であり、経営幹部は8か国の国籍の人員により形成されています。その点からすると、日本企業がM&A下手といわれる要因であった、「M&Aにたけた人材の不足」「日本企業特有の文化」をうまく補ってなされた買収であると解釈することができます。
 
一方で、今後重要となるのがポストM&Aの統合作業です。
日本企業の大型買収では統合でつまずいた例も多いことに加え、今回のM&Aは武田薬品工業にとって初の大型買収であり、経営陣の真価が問われるともいうことができます。今後の武田薬品工業の動向には注目が集まります。

2018年上半期日本企業によるM&A金額ランキング第2位.

2位 富士フイルムによるゼロックス買収

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2018年上半期日本企業によるM&A金額ランキング第2位は、富士フイルムホールディングスによる米ゼロックスの子会社化です。買収金額は6,710億円といわれています。
富士ゼロックスが事業規模の拡大に限界を迎える中、米ゼロックスとの統合により、欧米にも事業を拡大する足掛かりとなることを狙っての事業統合を目指す方針のもと、2018年1月に買収の合意を行いました。
 
ただし、富士フイルムのゼロックス買収については、その後は条件面などを巡って両社の訴訟合戦に発展する等、双方の経営陣が対立している状況となっており、本来は9月までに子会社化を完了するスケジュールでしたが、いまだ完了はしていません。現在は日米ゼロックスで、事業のエリアを明確に分けるという契約を結んでいますが、米ゼロックスはこの契約を更新せず、アジア太平洋での直販を検討する等、敵対姿勢を強めています。
 
足元では買収交渉もストップしていますが、富士フイルム側は交渉再開を求めている一方、ゼロックスは買収に否定的な考えを示すなど、双方の認識の違いが顕著になっています。今後も買収交渉が再開するかどうかは不透明であり、実質的に今回のM&Aは白紙になったのではないか、と見る向きもあります。
 
2018年10月16日には、米ニューヨーク裁判所が買収手続きの差し止め命令を解除したこともあり、今後の交渉動向について注目が集まります。

2018年上半期日本企業によるM&A金額ランキング第3位.

3位 JTによるドンスコイ買収

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2018年上半期日本企業によるM&A金額ランキング第3位は、日本たばこ産業(JT)によるロシアのたばこ業者、ドンスコイの子会社化です。金額は1,900億円となりました。
 
JTは買収以前からロシアのたばこ事業に参入しており、3割強のシェアを保有する最大手企業でしたが、日本の市場が縮小する中、中国、インドネシアに次いで大きなたばこ消費国であるロシアでの事業基盤を強固なものにするべく、今回のM&A実行に踏み切りました。
 
今回のM&Aにより、JTのロシア市場におけるシェアは約40%に拡大しています。海外たばこじぎょの拡大に向けて同社は積極的なM&Aを実行しており、昨年には2,000億円をM&Aに投じて、たばこ市場の大きいインドネシアやフィリピンでの買収を行っていました。今後も、国内市場の減少を補うため、海外事業のM&Aを積極的に行っていくのではないかと推察されます。
 
JTは今回の買収以外にも多数の買収を実行しているほか、相対的に失敗の少ないM&A巧者です。JTも含め、その他のM&A成功事例については下記リンクも参考ください。

【関連】M&A成功事例25選!【2018年最新版】

4. 日本企業のM&Aまとめ

日本企業のM&Aまとめ

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日本企業はM&Aが下手といわれていますが、その背景には、文化的な背景や、人材の不足等の要因がありました。
一方、日本市場が今後少子高齢化等に伴って縮小していく中、生き残りや事業承継といった観点から、M&Aという経営戦略は今後ますます重要な選択肢となっていくことが推察されます。
 
先にも述べたように、日本企業の中にはM&Aを成功に導く人材が不足しているため、買収対象を適切に目利きすることが非常に難しいため、M&A助言会社を有効活用することが、M&Aの成功に向けては必須です。
 
M&A総合研究所では、公認会計士を中心に専門知識を備えた人材が在籍しているほか、全国の銀行や公認会計士事務所と連携しており、案件の紹介からデューディリジェンス等の専門的な手続きまでを素早く行うことができます。M&Aを検討の際には、ぜひM&A総合研究所に一度ご相談ください。

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