2023年11月01日更新
有限会社は売却できる?株式譲渡の手続きのやり方や価格算出の方法・注意点を解説
有限会社の売却では、株式会社の売却とは相違点があり注意も必要です。本記事では、有限会社の概要、法律上の扱い、株式会社との違い、特例有限会社の意味、有限会社の株式譲渡、休眠会社の売却方法、売却案件の一例、清算の方法などを解説します。
目次
1. 有限会社は売却できる?
M&Aによる会社売却と聞けば、株式会社を想定する人が多いのではないでしょうか。中には、そもそも有限会社の売却は可能なのかと疑問に思う人もいるかもしれません。結論から言えば、有限会社であってもM&A・会社売却はできます。
ただし、有限会社の売却では株式会社と相違点があり、注意が必要です。有限会社と株式会社の違い、売却の方法や注意点などを順次、説明します。
2. 有限会社と株式会社の違いって何?
ここでは、有限会社と株式会社の違いを確認しましょう。有限会社・株式会社それぞれの概要を説明し、相違点を比較します。
有限会社とは?
有限会社は、2006(平成18)年5月1日に新たに施行された会社法以降、設立ができなくなった会社形態です。それ以前までは、有限会社法(会社法施行時に廃止)の規定にのっとれば設立可能でした。有限会社の主たる特徴は以下のとおりです。
- 資本金300万円以上
- 社員数(出資者数)50名以下
- 取締役の任期に制限がない
- 決算公告の義務がない
有限会社のかつての存在意義は、株式会社よりも小さな規模で設立できる点です。当時、株式会社の設立には資本金1,000万円以上が必要であったため、家族経営や個人事業のような小中規模の事業を行う場合は、有限会社での起業が適していました。
有限会社の動向
かつて有限会社の数は、株式会社のそれを上回っていました。確認できる資料として1999(平成11)年に発表された国税庁の統計では、以下のようになっています。
- 全法人数:252万7,224社
- 有限会社:136万6,236社
- 株式会社:108万9,082社
- 合資会社:3万610社
- 合名会社:5,642社
- その他:3万5,654社
その後、2006年以降、有限会社は新たに設立できなくなり、数は年々減少しています。東京商工リサーチが発表した「2018年『休廃業・解散企業』動向調査」によると、2013(平成25)年~2018(平成30)年における有限会社の休廃業・解散数は以下のとおりです。
- 2013年:1万897社
- 2014(平成26)年:1万145社
- 2015(平成27)年:1万10社
- 2016(平成28)年:1万2,584社
- 2017(平成29)年:1万2,162社
- 2018年:1万5,898社
特例有限会社の定義
会社法の施行後、それ以前に設立された有限会社には、2つの選択肢がありました。1つは、手続きを経て株式会社に移行することです。もう1つは、従来の有限会社のままでいることですが、その場合、法律上では株式会社の一形態として扱われることになっています。
この後者の場合が、特例有限会社です。特例有限会社を言い換えると、法的には株式会社と認識されながらも、さまざまな有限会社の特徴はそのまま継続して保てる状態となります。その詳細は、後述する株式会社との比較をご覧ください。
株式会社とは?
株式会社とは、株式を発行して出資金を集める形態の会社です。上場すれば株式は市場で取引されるため、資金を幅広く調達するのに適しています。会社法施行以前は、設立条件として資本金は1,000万円以上でしたが、現在は資本金1円での設立が可能です。
株式を多く保有している株主(出資者)は、経営に参画できます。取締役の任期に制限があり、決算公告の義務があることから経営の透明性が高く、信用度も高いです。
有限会社と株式会社の違い
特例有限会社と株式会社の違いを下表にまとめました。
特例有限会社 | 株式会社 | |
---|---|---|
商号 | 有限会社を名乗る | 株式会社を名乗る |
最低資本金額 | 300万円 | 1円 |
会社の上場 | できない | できる |
代表者 | 取締役(別に定めれば代表取締役) | 代表取締役 |
取締役の任期 | なし | 原則2年(例外的に最大で10年) |
監査機関 | 監査役のみ設置可能 会計参与・会計監査人を設置できない |
監査役・会計参与・会計監査人を設置できる |
決算公告義務 | なし | あり |
組織再編 M&A |
吸収合併の存続会社、吸収分割の承継会社にはなれない 株式交換、株式移転はできない |
制限なし |
3. 有限会社の売却・株式譲渡はどうする?承認機関は?
特例有限会社も実質的には株式会社とみなされます。それでは、特例有限会社の売却も株式会社の売却と同じように手続きできるのでしょうか。この章では、特例有限会社の売却・株式譲渡について解説します。
特例有限会社は譲渡制限株式会社なの?
特例有限会社は、会社の定款に株式の決まりがなくても、会社法上は譲渡制限株式という定款があるとされます。特例有限会社による譲渡制限株式の廃止はできず、出資者である株主全員が廃止に同意しても無効決議です。
つまり、特例有限会社の株式譲渡に際し、会社の承認は不要であるという変更は不可能になるので、特例有限会社は全てが譲渡制限株式会社の扱いになります。
株式譲渡の承認機関は?
会社法の原則として、株式譲渡の承認は取締役会のある株式会社であれば取締役会で決議をし、取締役会のない株式会社は株主総会での決議です。特例有限会社は会社法上、取締役会を設置できないので、株式譲渡の承認は株主総会で決議することになります。
この決議要件は、普通決議(出席した株主の議決権の過半数の賛成)です。ただし、「誰が」株式譲渡の承認をするかは法律上、制限がないので、定款の定めによって株主総会以外にもできます。
定款を変更して取締役全員の同意で承認する、過半数の同意で承認する、代表者1人が承認する、といった具合に定めることも可能です。
有限会社における定款の変更
株式譲渡の承認を株主総会で行うとなると、株主(出資者)の規模によっては、過半数の同意を得られない恐れがあることや株主総会を開催するのに時間も費用もかかってしまい、会社の売却が円滑に行えないこともあり得ます。
そこで、株式譲渡を承認する機関をあらかじめ変更しておくと、会社を売却する際にスムーズに手続きを進められるでしょう。ただし、株式譲渡を承認する機関の変更には定款変更の手続きが必要であり、これには会社法上、株主総会の特別決議が必要です。
この特別決議は普通決議よりも要件が厳しく、以下のように定められていることが多いでしょう。
- 株式会社:議決権の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で可決
- 特例有限会社:総株主(出資者全員)の半数以上の賛成、かつ議決権の4分の3以上の賛成が必要
株式会社では3分の2の株式を保有していれば1人でも特別決議を可決し得るのに対して、特例有限会社は株式保有割合にかかわらず、少なくとも出資者の半数以上の賛成が必要なため、可決要件がかなり厳しくなっています。
有限会社が定款を変更して株式譲渡の承認機関を変更する場合は、株式会社よりも要件が厳しいので注意が必要です。
定款に譲渡制限株式の規定がない場合
ここまで、特例有限会社の株式は全て譲渡制限株式であると説明してきましたが、実際に定款を見てみると「譲渡制限の定めがない」ということもあるでしょう。
そもそも、有限会社は2006年の会社法施行まで譲渡制限株式会社ではなかったわけですから、それ以前に作られている定款に譲渡制限株式の記載はありません。つまり、会社法施行後に定款を変更していない場合は、定款に譲渡制限の定めがないことになります。
この場合は、法務局で会社の登記簿を取得すると、譲渡制限株式の記載があるはずです。法律の改正に伴い、全ての特例有限会社に、会社法の原則どおりの登記がなされています。
定款に譲渡制限株式の規定がない場合は、会社法施行後に定款を変更していない有限会社であるため、株式譲渡の承認は原則どおり、株主総会の普通決議となるでしょう。
譲渡制限株式の価格の決定方法に注意
非上場会社の株式譲渡の際、譲渡対象となる株式に対して譲渡制限がかけられていれば、価格決定方法に注意しなければなりません。譲渡制限株式の価格決定方法には、以下の3つがあります。
- 純資産価額方式
- 類似業種比準方式
- 配当還元方式
なお、有限会社の売却相場は株式会社売却よりも低くなる傾向が強く、後述する休眠会社にいたっては100万円程度が相場といわれています。
もちろん、有限会社でも数千万円で売却できる会社もあり、そのような会社は業績が良い、特定の技術やノウハウがあるなど、買収する会社にとってプラス要素が多い会社ほど高く売却できる傾向です。
純資産価額方式
貸借対照表上の純資産額を評価額にする方法が純資産価額方式です。帳簿価格を基準において企業評価額を算定するため、金額に客観性を持たせられる点が特徴です。しかし、含み益や含み損などは価格決定の要素に含まれないため、割安もしくは割高な評価額となる可能性があります。
類似業種比準方式
類似業種比準方式とは、株式譲渡の対象企業と同一の業種・規模の上場企業と比べて評価額を算定する方法です。国税庁が定めた基準に沿った評価をするので、客観性のある評価が可能といえます。
しかし、本来は相続税評価に対する評価額算定方式のため、株式譲渡の際に用いると株式価値が低く算定される可能性があることは覚えておきましょう。
配当還元方式
配当還元方式とは、株式の配当金額から1株当たりの評価額を算出する方法です。この算出方式は、配当金と資本金のみで評価額を算出するため、客観性が高い評価方法とは言い難いでしょう。
類似業種比準方式と同様に、もともと相続税評価に対応する算出方式であるため、株式譲渡側にとっては株式価値が低くなってしまうデメリットがあります。
4. 有限会社の売却・売買経験者の声
特例有限会社の特徴を株式会社と比べると、以下のように簡素で小規模な会社に適した形態になることが多いでしょう。
- 役員の任期に制限がない
- 株式の譲渡制限がかけられている
- 設置できる機関の種類が少ない
では、株式会社ではなく特例有限会社を売買する理由にはどのようなものがあるのでしょうか。この章では、特例有限会社を売買する理由について、実際に売買を行った経験者の声を交えつつ解説します。
会社を売却する理由
特例有限会社を売却する理由は会社によってさまざまですが、代表的な理由としては以下の2つが挙げられます。
- 事業活動中の有限会社の後継者がいなくて困っている
- 休業している有限会社の処理に困っている
事業活動中の有限会社の後継者がいなく困っている
M&Aで売却先が見つかれば特例有限会社を存続させ、従業員や事業を守りつつ後継者問題を解決できます。株式会社でも後継者難の企業が事業承継を目的にM&Aを行うケースがありますが、特例有限会社でもそれは同様です。
後継者不在のまま経営者の引退に伴い廃業してしまっては、従業員、取引先に迷惑がかかり、地域経済に対してもダメージを与えます。経営者としても、保有している株式の売却で利益を得られますから、大きなメリットもあるといえるでしょう。
後継者不在でお困りの場合は、M&A総合研究所にご相談ください。M&A・事業承継について、豊富な知識と経験を持つ専門のM&Aアドバイザーが事業承継をフルサポートします。
ご相談は無料ですので、M&A・事業承継をお考えの場合は、M&A総合研究所へお気軽にお問い合わせください。
休業している有限会社の処理に困っている
休業している有限会社の処理に困り、売買に動き出すケースも多いです。売却により廃業の手続きに時間と費用をかけず、逆に株式の売却による利益を手に入れることを目的とします。
一般的に休業届を税務署などに提出した会社のことを休眠会社と呼ぶため、特例有限会社に限らず休業している会社は全て休眠会社です。会社法では、休眠会社とは「株式会社であって当該株式会社に関する登記が最後にあった日から12年を経過したもの」とされています。
つまり、休眠会社は長期間営業活動をしていない会社であり、事業をするために会社を作ったものの現在は事業を行っていない状態です。特例有限会社の場合は、事業を行わず休眠会社となることも少なくありません。
特例有限会社は売却しかできない
特例有限会社は、会社法では新たな設立が認められておらず、特例有限会社が存続しているのは特例として認められているに過ぎません。特例有限会社のM&Aには制限があり、事業の拡大はできないとされています。
つまり、特例有限会社の売却はできても、特例有限会社が他の会社の買収はできないということです。ただし、特例有限会社のままでは買収できないということなので、株式会社へ移行すればM&Aの際に制限はありません。
特例有限会社を買収するリスクはあるか
特例有限会社を買収するリスクはゼロではありませんが、そこまで気にならないものです。特例有限会社の全ての株式は譲渡制限株式であり、その譲渡制限の規定は廃止できません。したがって、特例有限会社は上場(株式公開)できないことになります。
ただし、株式会社への移行手続きを行えば解決する問題なので、M&Aの対象会社が有限会社であってもさほど気にする必要はありません。有限会社から株式会社への移行する登記は、新しく株式会社の設立登記をするより安くなる場合がほとんどです。
会社法施行前の有限会社は株式会社に比べて資本金が少額であったため、株式会社より社会的な信用が低いものでした。
しかし、会社法の施行後、株式会社は資本金1円で設立できるわけですから、資本金に限っていえば必ずしも信用が低いわけではなく、最低資本金300万円の特例有限会社は資本金1円の株式会社よりも信用があるともいえるでしょう。
特例有限会社を買収する理由
現在、新たな特例有限会社の設立はできません。株式会社を設立するとなれば、決算公告や定期的な役員変更登記が必要になります。
決算公告や役員変更登記だけであれば、合同会社を設立したりM&Aをしたりすればいいとも考えられますが、経営者の中には「財務諸表を公表したくない」「個人事業みたいなもので役員を変更する予定はない」という人もいるでしょう。
そのように特例有限会社の特徴に着目し、そのメリットを得るために株式会社ではなく特例有限会社の買収を検討する買い手は少なくありません。
特例有限会社を売却する際の注意点
ここで、特例有限会社を売却する際の注意点を確認しておきましょう。主な注意点は以下の3点です。
- 経営方針の変更
- 従業員の待遇・処遇の変更
- 顧客や取引先との関係悪化
経営方針の変更
会社を売却することは、買い手に経営権を譲渡することです。売却後の経営方針は、全て買い手が新たな経営者として取り仕切っていきます。場合によっては、従来の経営方針から180度転換ということもあり得るでしょう。
そうなった場合、従業員や取引先が困る事態になるかもしれません。そのような事態を避けるためには、会社売却の交渉時に、買い手の経営ビジョンをよく確認し、大幅な経営方針変更は行わないと確信できる相手かどうかの見極めが肝要です。
従業員の待遇・処遇の変更
会社売却は、従業員の雇用を守る目的でも行われます。しかし、雇用を守ったといっても、会社売却後、従業員の待遇が悪くなってしまっては意味がありません。会社売却の交渉時は、従業員の労働条件の維持を優先的な条件とすることが望ましいでしょう。
ただ、一般にM&Aでは、売り手よりも買い手の方が企業規模が大きいのがほとんどで、会社売却後、従業員の労働条件が引き上げられるケースも少なくありません。
顧客や取引先との関係悪化
特例有限会社のような規模が小さめの企業の場合、顧客や取引先は経営者との人間関係を含めた取引になっていることが多いでしょう。会社売却によって経営者が去ることになると、取引の停止や打ち切りを検討する可能性があります。
そうなってしまっては、買い手の思惑が外れ、トラブルに発展してしまうかもしれません。これを防ぐには、買い手との間で基本合意書を締結した段階で、顧客や取引先に会社売却を丁寧に説明し、理解を得る努力をすることです。
5. 有限会社の売却価格の算出方法
ここでは、有限会社の売却価格を算出する方法について解説します。
インカム・アプローチ
インカム・アプローチは、企業の収益力を元にその価値を見る方法です。この中でよく使われるのがディスカウンテッド・キャッシュフロー法です。この方法では、企業が将来得るであろうお金(キャッシュフロー)を、リスクを考慮して現在の価値に変換して評価します。
マーケット・アプローチ
マーケット・アプローチは、株式市場の価格を参考にして企業の価値を見る方法です。特例有限会社の価値を決める時にはあまり使われませんが、企業の価値を評価する手法としてはよく知られています。
コスト・アプローチ
コスト・アプローチは、特例有限会社の持っている資産を基にして企業の価値を見る方法です。具体的には、次の2つの方法があります。
- 時価純資産法:会社の持っている資産の現在の価格から、負債の現在の価格を引いた金額で、純資産の価値を計算します。
- 簿価純資産法:貸借対照表に書かれている純資産の価値をそのまま使って評価します。
大まかな売却価格の相場
特例有限会社の価値を計算する際、よく使われる方法は「時価純資産法」です。この方法で、会社の売却価格は「現在の純資産の価値に2〜5年分の利益を足した金額」として計算されることが多いです。
6. 有限会社の売却案件一覧
実際にどのような有限会社が売却されているか、ほんの一例ですが以下に紹介します。
設立年 | 資本金 | 事業内容など |
---|---|---|
1960(昭和35)年 | 300万円 | 休眠会社 |
1987(昭和62)年 | 300万円 | 損害保険代理業 |
1991(平成3)年 | 500万円 | セミナー運営・コンサル業 |
1992(平成4)年 | 300万円 | 休眠会社 |
1995(平成7)年 | 300万円 | 休眠会社 |
1998(平成10)年 | 300万円 | 休眠会社 |
2002(平成14)年 | 300万円 | 宅建業、宅建免許あり |
2006年 | 300万円 | 休眠会社、宅建免許あり |
2006年 | 3,000万円 | 休眠会社 |
表を見てもわかるように、売りに出ている有限会社の多くがいわゆる「休眠会社」です。休眠会社を売却しようと考える経営者が多いことがわかります。
休眠会社である特例有限会社の特徴
同じ休眠会社でも、特例有限会社の場合は株式会社とは異なる特徴があります。それは、存続期間です。
株式会社の休眠会社の場合、会社法の規定上、12年以上放置していると強制的に解散登記をされてしまいますが、特例有限会社にはこの会社法の適用がないため、何十年放置しても強制的に解散登記されることはありません。
そこで、有限会社が2006年以前に設立したものしか存在しないことともあいまって、休眠会社であっても登記簿上は長い歴史があることになり、買い手にとっては大きく魅力のあるものといえます。
7. 有限会社以外の個人事業などは会社に売却できる?
有限会社のM&Aを解説しましたが、有限会社よりもさらに小規模事業の個人事業は売却できるのでしょうか。個人事業はもちろん会社ではないため、会社の所有権を売却することは考えられません。
しかし、個人事業の事業そのもの(商品・ブランド・取引先・顧客など)に価値があれば、それらを売却できます。その場合にM&Aとして可能なスキーム(手法)は事業譲渡です。売却ではない、個人事業の事業承継として、贈与や相続もあります。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、事業とそれに関連する資産や権利義務を選別して売買する取引です。売買対象を選別できる点が、他のM&Aスキームとの違いでありメリットとなります。
一方、その特徴のため、事業譲渡は個別承継です。従業員や取引先との契約は全て個別に締結し直す必要があり、事業に必要な許認可は買い手が新たに取得しなければなりません。このように手続き面は非常に煩雑になるデメリットがあります。
贈与
個人事業主が事業承継をするとき、第三者や親族などに贈与して行うことがあります。この贈与による事業譲渡は生前贈与が主流で、「親族内事業承継」と「親族外事業承継」があり、個人事業主が親族や従業員へ事業を贈与するものです。
相続
相続による個人事業の事業承継とは、個人事業主が亡くなった際に、財産の一部として自社株を個人事業用の資産や事業の営業権譲渡を相続することです。
ただし、この相続による事業承継は遺言がない場合は遺産分割協議によって相続人同士の話し合いで決めることになるため、現経営者の希望に添わないこともある点に注意しなければなりません。
8. 有限会社を売却せずに会社清算を行う方法
有限会社を売却せず、精算する場合の手順は以下のようになります。
- 会社解散の理由が生まれる
- 会社解散に必要な手続きを行う
- 株式会社の解散登記を提出
- 会社清算人が清算処理を行う
- 清算の完了
①会社解散の理由が生まれる
会社が解散する理由は会社法に定められているので、それ以外の理由で会社は解散できません。会社解散をする理由は、以下の7つがあります。
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 株主総会の決議
- 合併により会社が消滅する場合
- 破産手続き開始の決定
- 裁判所による解散命令
- 休眠会社のみなし解散の制度
解散理由が発生すると、会社清算・解散の手続きが始められます。
②会社解散に必要な手続きを行う
解散理由が発生した後は、清算の手続きです。具体的には、解散日から14日以内に清算人を選び、官報公告を提出したうえで債権の申出を行います。その後、財産目録・貸借対照表の作成や株主総会での承認を経て、清算手続きに入る段取りです。
会社解散の場合、会社の資産と負債は全て清算して処分しなければなりません。ただし、中小企業の場合は、株主総会の代わりに書面決議を行うことで手続きの簡略化が可能です。
③株式会社の解散登記を提出
会社解散は、解散日から14日以内に会社解散と清算人選出の登記をする必要があります。登記に際し、定款や株主総会議事録・登録免許税が必要です。登録免許税にかかる費用は、解散登記に3万円、清算人登記が9,000円となります。
④会社清算人が清算処理を行う
株式会社の解散登記が完了後、会社清算人が清算処理を行います。清算処理では、会社にある資産を現金化して債権を回収した後、全ての負債を返済します。この際、負債が返済できなければ特別清算や破産を申し立てなければなりません。
⑤清算の完了
清算処理後、残余財産があれば株主に分配します。これで会社資産の清算が完了し、会社清算・解散の手続きは終了です。このように、会社を清算するのにも一定の費用が発生します。
負債も返済しきらなければならないので、経営者にとっての負担は小さくありません。できれば廃業して会社精算をするのではなく、経営権を第三者に渡して会社を存続してもらう方がよいでしょう。
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10. 有限会社の売却まとめ
有限会社は、長く休業している休眠会社であっても売却できる点が強みでしょう。有限会社の売却を成功させるためには、タイミングや相場、動向をしっかり把握することが肝要です。
M&Aによる会社売却を検討する場合、法務・税務に関する専門知識が必要となるため、M&A仲介会社など専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。
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