2023年03月01日公開
SPAC(特別買収目的会社)とは?意味やM&Aに与える影響について解説!
SPAC(特別買収目的会社)は、一般の会社とは異なり、買収目的として設立する法人会社のことをいい、米国で注目されている上場手法です。
そこで、SPACにおけるメリットやデメリット、SPACの仕組み、日本で導入された場合にM&Aに与える影響などを解説します。
1. SPAC(特別買収目的会社)とは
SPAC(特別買収目的会社)とは、未公開の会社の買収目的としてつくられた法人のことです。
ここでは、SPACについてどういう意味でどういう仕組みなのか、日本では一般的なSPCやIPOとはなにが違うのかについて解説します。
SPACの意味・仕組み
「SPAC(特別買収目的会社)」とは、一般的な会社とは違って、買収目的としてつくられた法人のことをいいます。
まずは、SPACの意味や仕組みについて解説します。
SPACの意味は次のようなことです。
SPACは、Special Purpose Acquisition Companyの略で「スパック」と読みます。
SPACは自社で事業を経営しないペーパー・カンパニーとしてつくられ、株式を公開していない会社を買収していくことで上場します。
新規上場の方法の1つであり、買収目的の企業ということで「白地小切手会社」「ブランク・チェック・カンパニー」「空箱上場」などといわれています。
米国ではSPACはすでに数百社ほどあり広く普及し、米国市場では日本の企業を買収するためのSPACも出始めています。
日本では現時点では認められておりませんが、日本企業をターゲットとしているところがあるため、日本企業にも影響が及ぶ可能性があり、M&Aにも影響が出てきます。
さらに、SPACは上場させるための仕組みが形成されています。
仕組みは次のとおりです。
- 自己資金を資本として会社を設立する
- SPACが上場して、資金を集める
- 未公開会社を買収もしくは、合併をする
- 被買収会社が存続し、上場企業となる
米国では、実績や信頼のある投資家などがSPACの代表となり会社を設立し上場します。
上場すると投資家などから資金を集めます。
そして、買収や合併する相手の企業を選定を行い交渉していき、話がまとまると買収もしくは合併します。
その後、SPACは吸収されて吸収した会社が上場企業となるという仕組みとなります。
SPACのよくあるケース
SPAC(特別買収目的会社)のよくあるケースとしては、有名である経営者や投資家などが代表となって設立するケースが多いです。
この有名な代表者の知名度や買収の展望などを示すことで、SPACは多額な資金を得ることができ、計画通りに未公開会社などを買収できます。
このようなのがSPACによくあるケースです。
SPC・IPOとの違い
ここではSPACと従来のSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)とIPO(Intial Public Offering:新規公開株、新規上場株式)との違いについて意味や仕組みについて解説します。
SPCとの違い
SPCとの違いについて解説します。
SPCは、Special Purpose Companyの略で「特別目的会社」という意味があります。
SPCもペーパー・カンパニーを設立するのでその意味としてはSPACと変わりませんが、SPCはIPOのスキームで利用しているわけではなく、証券化や流動化などのスキームで利用されていることが多い会社となっています。
また、上場が目的ではなく、企業が特定資産などの受け皿を作り、プロジェクトのために作られるという点があります。
SPACは日本では認められていませんが、SPCは1998年にSPC法によって日本でも設立できます。
IPOとの違い
IPOとの違いについて解説します。
IPOは、Intial Public Offeringの略で「新規公開株式」あるいは「新規上場株式」などの意味があります。
まだ上場していない企業が上場し、投資家などに売り出して株式の公開を行い、誰もが取引できるようにする手続きのことです。
IPOは買収企業の判断資料などを提供するための事業状況や財務などの内部状況の公開が義務づけられているので、上場するためのコストや株式公開しつづけるためのコストがかかります。
それに比べて、SPACでは事業をもたないことから情報がすくないので、判断するための資料などを作成する必要がありません。
そして、SPACは決められた株主などの同意数がないと買収することができないルールがあるため、資金の不正な流用などを防げることができるメリットがあります。
上場までの期間が従来のIPOよりも短く、上場するための審査も簡単に通ることが可能です。
2. 米国でSPACが注目される理由
米国でSPACが注目をされているといいます。
その理由には次のことがあげられます。
- IPOを選択しない企業の増加
- 著名人の参加により信頼性が増した
- コロナウイルスの影響
この3つの理由について解説します。
IPOを選択しない企業の増加
従来のIPOは上場するためには多大な時間をお金を費やさないといけません。
IPOではなく、SPAC(特別買収目的会社)を利用すると、IPOの工程を簡略化することができることから従来のIPOを利用しない企業が増えてきたといわれています。
著名人の参加により信頼性が増した
SPAC(特別買収目的会社)は1980年代では不正利用やトラブルが多かったです。
1990年代には米国証券取引委員会がSPACのルールを厳しく定義しました。
その後、著名人などの有名な方々が投資に参加することで信頼性が増しました。
実績をあげた著名人が参加することによりSPACへの信頼度が増しています。
コロナウイルスの影響
コロナウイルスによって、破綻してしまった企業や投資家などがSPAC(特別買収目的会社)の活用に走っているということも米国ではSPAC(特別買収目的会社)が注目される理由の1つとなっています。
3. SPACのメリット
SPAC(特別買収目的会社)には、買収される企業側、投資家側のそれぞれに取引の上でのメリットがあります。
企業側のメリット、投資家側のメリットについてそれぞれ解説します。
企業側のメリット
企業側のメリットとして次の3つがあげられます。
- 早く上場できる
- まとまったお金の調達が可能
- 審査がスムーズ
この3つについて解説します。
早く上場できる
企業側のメリットの1つめとして「早く上場できる」ということです。
従来のIPOを利用して上場するためには、おおよそ2~3年以上の準備の期間が必要となります。
SPAC(特別買収目的会社)は従来のIPO(新規公開株式)よりも、上場までの工程が少ないなかで準備期間も整えることができることから、コストも抑えることができ、早く上場することが可能になります。
短期間で上場できるようになると、準備期間中に不測の事態があったとしても回避することができることからリスクも軽減されます。
まとまったお金の調達が可能
企業側のメリットの2つめとして「まとまったお金の調達が可能」ということです。
本来は未公開会社が資金を調達するには、投資家などを簡単に探すことはできません。
将来が保証されていない会社の株を購入する投資家などは見つけるのは困難だからです。
なぜなら投資家はリスクを追うことになるからです。
それに比べて、SPACで買収されてしまえば、上場後の資金を調達することが可能です。
著名な投資家などが作ったSPACに会社が買収されたとなれば、まとまった資金の調達は容易になるからです。
実績のほとんどない企業や投資家にとっては多大なメリットとなります。
審査がスムーズ
企業側のメリットの3つめとして「審査がスムーズ」ということです。
従来のIPOは審査がとても厳しく厳格に行われていたことで、上場するための準備する時間やコストがかかることが原因となっていました。
SPACを利用すると上場の審査が簡素化することができるため、事前の準備を行うだけで負担が減り、審査のハードルも下げることもできます。
投資家側のメリット
投資側のメリットとして次の2つがあげられます。
- 投資分の回収可能性が高い
- 少額資金で投資ができる
投資分の回収可能性が高い
投資側のメリットの1つめとして「投資分の回収可能性が高い」ということです。
投資したさいに投資家がいちばんおそれることは投資した資金が回収できないことです。
つまり、資産を失うこととなります。
以前はSPACでの不正利用やトラブルが横行していましたが、現在では投資家の保護の規定があるため、投資した資金をほとんど回収できる可能性が高くなっています。
SPACでは企業買収が失敗したとしても投資した資金は投資家に返還されます。
少額資金で投資ができる
投資側のメリットの2つめとして「少額資金で投資ができる」ということです。
従来のIPOでは限られた投資家などしか投資をすることができませんでした。
個人投資家などはほぼ無理でした。
SPACで上場した企業の場合は、未公開株が市場に開示されていることから個人投資家でも買い付けることが可能になりました。
公開して間もない場合であれば少額での資金で投資が可能です。
4. SPACのデメリット
SPAC(特別買収目的会社)には、メリットだけではなくデメリットもあります。
メリット同様、買収される企業側、投資家側それぞれのデメリットについて解説します。
企業側のデメリット
企業側のデメリットとしては「短期間で買収を完了させなくてはならない」ということがあります。
このデメリットについて解説します。
短期間で買収を完了させなくてはならない
企業側のデメリットとして「短期間で買収を完了させなくてはならない」ということです。
1990年代に成立したSPACの不正利用などトラブル多発の防止をするためのルールによって、買収の12か月〜18か月前からアナウンスを行い、24か月以内に買収を完了させなくてはなりません。
相手によっては短期間で買収を完了させたいというところから買収価格を高くするなど、不利になるような交渉で承諾しなければならないケースなどがあります。
投資家側のデメリット
投資側のデメリットとしては「未公開企業への投資リスク」ということがあります。
このデメリットについて解説します。
未公開企業への投資リスク
投資側のデメリットとして「未公開企業への投資リスク」ということです。
SPAC(特別売買目的会社)はたとえ上場していたとしても買収する企業は未公開株式の企業であるため、投資家など自ら経営状況や事業状態などをおさえておく必要があります。
高値の株価を記録していたにもかかわらず、虚偽内容などが発覚すると一気に株価が急落します。
これによって未公開企業へ投資するリスクというのものを目の当たりにしたという過去の事例があります。
5. SPACの歴史とルール
ここではSPAC(特別買収目的会社)の歴史とルールについて解説します。
SPACの歴史
SPAC(特別買収目的会社)の歴史には次のようなことがあります。
SPAC(特別買収目的会社)は、1980年代からありましたが、そのころは不正利用やトラブル続きであったためいいイメージはありませんでした。
次のような不正利用があります。
- 調達した資金を私的に利用する
- 出資している会社で高額な買収を行う
- 買収のうわさを流して株価を高くしてから売る
このような不正利用やトラブルが多く発生したため、1990年代には米国証券取引委員会(SEC)がSPAC(特別売買目的会社)のルールを厳格にしたという歴史があります。
1990年代から2000年代は経済はバブル期であり従来のIPOが盛り上がっていたこともあり、SPAC(特別売買目的会社)の利用はほとんどありませんでした。
ただし、数年前からは米国ではこのSPAC(特別買収目的会社)が注目を集めています。
日本では認められてはいませんが、米国同様に注目を集めています。
SPACのルール
SPAC(特別買収目的会社)は前述にて記載したとおり、従来のIPOより審査が簡素化されていること、また1980年代の不正利用やトラブルの影響から不正防止を行うための一定のルールが決められています。
そのSPACのルールとは次の4つになります。
- 買収の12か月~18か月の間に買収することのアナウンスをし、24か月以内に買収を完了させなければならない
- 上場後には約9割近くの資金を信託しなければならない
- 買収をするためには決められた一定数以上の同意が必要である
- たとえ買収に失敗をした場合でも投資家などには利息分も含めた資金を返還しなければならない
このSPACのルールにより、投資家などへの利益が守られるようになりました。
また、米国証券取引委員会(SEC)ではSPACの会計ルールを変更しています。
早く上場して資金の調達を行いたい未公開会社にとっては、上場する前にこの会計ルールの条件を満たさなければならないため条件が厳しいですが、投資家側にとっては安心して取引ができるといえます。
6. SPACのメリット・デメリットを知ってM&Aの選択肢にしよう
まだ日本ではSPAC(特別買収目的会社)は認められていませんが、導入されるようになれば、M&Aがさらに加速していくと思われます。
M&Aの選択肢とするにはSPACの意味などを理解していなければいけません。
M&Aとは、Mergers and Acquisitionsの略で合併や買収の意味があります。
M&Aのやり方にはいろいろな方法がありますが、買収や合併という意味ではSPACも同じような意味を持っていますが、M&AとSPACでは仕組みなどは異なります。
前述で記載したSPAC(特別買収目的会社)の意味や仕組みなどを理解し、SPAC(特別買収目的会社)のメリット、デメリットについて企業側のメリットやデメリット、投資家側のメリットやデメリットを知った上でM&Aの選択肢にあげられるようになるのではないでしょうか。
M&Aでの戦略方針を決めていたり、SPAC導入を見据えた上でM&Aを含めた事業内容を再度検討している企業もあると思います。
このようにSPACの意味やメリット、デメリットなどを把握し理解した上で先手でM&Aの戦略を立てることが必要となります。
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