事業再生スキームと選定方法は?過去事例解説&紹介!事件も?

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

事業再生とは、事業単位で改革を行うことによって、収益を上げられるような健全な事業に再構築することをいいます。選択肢となるスキームが多いため、選定方法を押さえておくことが大切です。本記事では、事業再生スキームの選定方法や過去事例を解説・紹介します。

目次

  1. 事業再生スキームとは
  2. 事業再生スキームの選定方法
  3. 事業再生スキームの目的
  4. 事業再生の過去事例解説&紹介!
  5. 事業再生にまつわる事件
  6. まとめ
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1. 事業再生スキームとは

事業再生とは、企業全体の業績を向上させるために事業単位の改革を行うことです。広く知られている手法としては、不採算事業の見直しあるいは切り捨てなどがあります。

事業再生スキームは、事業再生するために企業が取る手法を指します。異なる効果を持つ事業再生スキームがたくさんあるので、自社の状況に合ったものを選択することが求められます。

事業再生スキームを解説

最適な事業再生スキームを選定するためには、各スキームの特徴を把握しておく必要があります。主な事業再生スキームには以下の6つがあります。

【事業再生スキームの種類】

  1. M&Aによるスキーム
  2. 第二会社方式
  3. リスケジュール
  4. DDS
  5. DES
  6. 債権放棄

1.M&Aによるスキーム

M&Aによるスキームは、第三者に株式を売却して子会社となり、事業再生を目指すものです。買収者が経営に参画することになりますが、グループ全体の経営資源を共有することなどで事業再生を図ることができます。

中小企業の場合は株式譲渡を用いるのが一般的であり、包括承継によって経営権を移転させるだけで済むため、会社に与える変化を最小限に抑えることができます。

そのほか、会社分割事業譲渡を用いて、経営権を維持したまま特定事業のみを切り離すというスキームもあります。

譲渡する事業は自由に選択できるので、不採算事業のみを切り離して企業全体を立て直すという使い方が可能です。

【関連】会社分割と事業譲渡の違いやメリット・デメリットを比較解説!

2.第二会社方式

第二会社方式は、会社分割や事業譲渡と破産手続きを組み合わせた事業再生スキームです。収益性の高い事業のみを切り離して、残された不採算事業は会社とともに破産手続きなどで清算します。

収益性のある事業の引継ぎ先には、新設会社と別会社(第三者)の2通りがあります。どちらのケースでも、破産手続きによって債権者は債権を放棄することになりますが、会社分割や事業譲渡で元の会社が獲得した資金の分配は受けることができます。

また、債権者の同意を得たうえで実施される場合、経済産業省から中小企業承継事業再生計画の認定を受けることができます。

許認可引継ぎや税制上の優遇措置を受けられるため、第二会社方式を活用する大きなメリットといえます。

3.リスケジュール

リスケジュールとは、債権者との間で借入金の返済計画を見直して、返済条件を変更してもらうことをいいます。

資金繰りが悪化していて返済が難しいという場合において、債権者に事情を話して納得してもらうことで成立します。

収益の大半を返済に充ててしまうと企業全体の成長が期待できなくなるため、月々の返済負担を抑えることで事業再生を図ります。

債権者側にとっても債務者が破産することは避けたいので、双方にメリットのある事業再生スキームです。

中小企業の主な債権者である銀行と話し合いを行う場合、事業計画書や資金繰り表を作成したうえで進めます。

4.DDS

事業再生におけるDDS(Debt Debt Swap)は、既存の借入金を他の債務より弁済順位が低い「劣後ローン」として借り換えるスキームです。

事業再生の場面では、DDSによる劣後ローンは自己資本として認められるため、自己資本比率が上がって財務状態の改善が見込めます。

財務状態が改善すると借入条件もよくなることが期待できる、メリットの大きいスキームといえます。

しかし、債務額自体に変化はないことや、特定の財務指標を維持し続けなければ優遇措置を受けられなくなるなど、いくつかの制約があることに注意が必要です。

5.DES

DES(Debt Equity Swap)とは、Debt(債務)とEquity(株式)をSwap(交換)するスキームです。

「債務の株式化」とも呼ばれており、金融機関が融資先の事業再生を支援する際に利用されることが多いです。

債務者は、債務の返済の代わりに自社株式を差し出すこと、で財務状況を改善することができます。自己資本比率の向上や有利子負債の削減など、資金面でのあらゆるメリットを受けられます。

債権者は債務者の株式を取得することで、株主として経営に対する影響力を持ちます。経営に参画することで融資先が破産しないよう、コントロールすることができるようになります。

6.債権放棄

債権放棄は、債権者による債権の放棄を受けることで返済負担を軽減するという事業再生スキームです。

返済の一部あるいは全額を免除してもらうことで、より多くの資金を事業に回せるようになります。

債権放棄を受ける場合、経営者の退任や株式の全部あるいは一部の消滅など、責任を果たすことが求められます。効果的な事業再生を図れる反面、代償も大きいため検討が必要です。

なお、債権者視点では、債権放棄の時点で債権の消滅が確定します。以降、債務者に急激な業績回復がみられたとしても、放棄の意思表示を撤回したり権利を復活させることはできません。

事業再生スキームの手続き

適切な事業再生スキームで経営の立て直しを図るためには、適切な手順で進める必要があります。事業再生は主に以下の流れに沿って進めます。

【事業再生スキームの手続き】

  1. 事業の実態把握
  2. 事業再生スキームの選定
  3. 事業再生後の事業計画策定
  4. 事業再生のための資金調達
  5. 事業再生の実行

1.事業の実態把握

まずは、財務状況が悪化している原因を究明するため、企業や事業の実態の把握に努めます。

特に会社が置かれている状況や各事業・部門の問題点の把握は、以降の手続きを進めるうえでも必要となる重要な工程です。

主な焦点は、金融機関等の債権者からの借入状況の確認です。債務額や返済スケジュールを正しく把握しておくことで、適切な事業再生スキームを選定しやすくなります。

2.事業再生スキームの選定

事業の実態を把握できたら、事業再生スキームの選定に移ります。状況次第で適切なスキームは異なるので、会社の置かれている状況に合わせて選択することが求められます。

事業再生スキームを比較検討する際は、M&A仲介会社に相談することをおすすめします。M&Aの専門家は経営面にも明るいので、M&Aによる事業再生スキームを検討できるほか、資金面に関するアドバイスにも期待できます。

3.事業再生後の事業計画策定

多くの事業再生スキームは、債権者からの同意を得る段階で、事業再生計画書の提出が求められます。

具体性のある計画でなければ債権者から同意を得られないので、企業全体の今後を考えて慎重に策定しなくてはなりません。

具体的な内容としては、財政面における今後数年間の改善計画が挙げられます。無理のない計画であると判断されれば、事業再生が受け入れられて次の手続きに進むことができます。

4.事業再生のための資金調達

事業再生スキームの実行や再生後の事業計画にために必要な資金の調達を行います。先ほど作成した事業再生計画書を提出して、スポンサーとの交渉を行う形になります。

事業再生計画書の完成度が高いほど、多くのスポンサーを獲得することができ、より多くの資金を調達しやすくなります。

5.事業再生の実行

選定した事業再生スキームや事業再生計画書に沿って事業再生を実行します。スキームによって実行方法は異なるので、各スキームの特徴把握や計画策定などの事前準備が大切です。

【関連】企業再生と事業再生の違いとは?条件、手続き、メリットを解説【成功事例あり】

2. 事業再生スキームの選定方法

事業再生を進めるうえで重要となるのはスキームの選定です。会社が置かれている状況確認を行い、状況に合わせたスキームを選択する流れが一般的です。

事業再生スキームのなかには、債権者の一部の権利放棄を要求するものもあるため、融資先の実態を把握するためにデューデリジェンスでの調査が行われます。

再生の望みがあると判断された場合は事業再生へ、そうでない場合は破産手続きへと進むことになります。

事業再生で債権者からの同意を得るためには、具体性のある再生計画が必要です。自社の状況や債権者の利害などを考慮して、M&Aによる事業再生や第二会社方式などから最善と思われるスキームを選定して事業再生計画を策定します。

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3. 事業再生スキームの目的

事業再生スキームの目的は、事業単位で改革を行って、企業全体の財務状況の健全化を図ることにあります。

あくまでも健全化のための手段の1つに過ぎないので、必ずしも債務の解消に拘る必要はありません。

例えば、M&Aによる事業再生であれば、買収側への傘下入りで経営資源を共有することができるので財務状況を立て直すことも可能です。

M&A時点では債務を解消していませんが、最終的に立て直しに成功できれば事業再生を遂げたことになります。

特に、M&Aでの買収側の目的はシナジー効果創出であるため、多少の債務よりも人材や技術の獲得を優先するケースが多いです。

赤字経営でもM&A先がみつかる可能性は十分にあるので、検討の余地があるといえるでしょう。

【関連】M&Aで事業再生するには?方法、手順、ポイントを解説

4. 事業再生の過去事例解説&紹介!

事業再生で財務状況の健全化に成功した企業はたくさんあります。この章では、事業再生の過去事例から3件ピックアップして解説・紹介します。

【事業再生の過去事例】

  1. 第二会社方式による事業再生事例
  2. DESによる事業再生事例
  3. 債権放棄による事業再生事例

1.第二会社方式による事業再生事例

こちらは、地域密着型の老舗の地場家具メーカーの第二会社方式による事業再生事例です。

この会社は地域に根差した堅実な事業で業績を伸ばしていましたが、家具市場の環境悪化や取引先の倒産により財務状況が著しく悪化しました。

取引先の銀行との協議の結果、スポンサー支援を前提とした第二会社方式による事業再生が必要であるという結論に至ります。

銀行・日本政策金融公庫・公的再生支援機関の連携により、関係者の利害調整やスポンサー選定を進め、事業再生計画の実現に成功しています。

本件のポイントは、各機関が協力して事業再生に臨めたことです。強固な連携でスキームの選定からスポンサーの選定までを円滑に進められたことで、財務状況のさらなる深刻化を回避することができました。

2.DESによる事業再生事例

こちらは、地域温泉街で中堅上位に位置する旅館業のDESによる事業再生事例です。地域の観光産業を支えていましたが、近年の景気低迷の影響で団体客から個人客が増えて客単価が減少したことで業績が悪化します。

事業再生の協議は数年間にわたり、長期間にわたって辛い経営状態を強いられましたが、最終的に日本政策金融公庫からのDESによる支援を受けられることが決まりました。

粘り強く経営改善に努めた経営姿勢が評価されたことがポイントとなり、DESによる債務の株式化が実現しました。

3.債権放棄による事業再生事例

こちらは、医療用器具の製造業者の債権放棄を受けた事業再生事例です。品質管理を徹底した姿勢で多くの取引先からの信頼を獲得していましたが、海外製品の台頭によって収支が低迷したため事業再生を決意します。

当初は公的再生支援機関の支援のもと、生産拠点の集約化を進める再生計画を進めていましたが、東日本大震災により生産の中核となる工場が被災したことで計画が白紙になります。

事業継続には新たな設備投資や経営陣の刷新が必要なことから、事業再生スキームには債権放棄を選定します。債権放棄に対して消極的な債権者も少なくありませんでしたが、公的再生支援機関の丁寧な説明により合意を得られて実現に至ります。

本件のポイントは、被災した企業への協力的な支援体制が整っていたことです。中核となる工場新設や既存設備の改修・メンテナンスを行い、事業再生を成功させています。

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5. 事業再生にまつわる事件

前章では事業再生の成功事例を紹介しましたが、いくつかの注意点を見落とすと事業再生が失敗することも十分にありえます。

例えば、債務と株式を交換するDESの場合、簿価と時価の差額が債務消滅差益として認識されて課税対象となることがあります。負担を軽減したはずが税金負担が増加して、資金不足に陥るというケースがあります。

過去には、DESの税務上のリスク説明義務を怠った税理士法人に対して、総額3億2900万円の損害賠償命令が下された事件があります。

こちらは依頼主の訴えが通った事例ですが、ケース次第では依頼主の泣き寝入りで終わる可能性もあります。DES以外の事業再生スキームも税務上のリスクは存在するため、慎重に検討する必要があります。

6. まとめ

事業再生の効果を最大化するためには、自社の状況を正しく認識したうえで適切なスキームを選択することが求められます。

事業再生スキームの比較検討が難しいという場合は、M&Aの専門家に相談することをおすすめします。最適なスキームの選定や再生後の事業計画についてアドバイスを受けることができます。

【事業再生スキームの種類】

  1. M&Aによるスキーム
  2. 第二会社方式
  3. リスケジュール
  4. DDS
  5. DES
  6. 債権放棄

【事業再生スキームの選定方法】
  1. 事業の実態把握
  2. 事業再生スキームの選定
  3. 事業再生後の事業計画策定
  4. 事業再生のための資金調達
  5. 事業再生の実行

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