家族間の株式譲渡にかかる税金まとめ!メリット・注意点も徹底解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

保有する株式を売却や贈与といった形で相手に譲渡する株式譲渡ですが、家族間や親子間で株式譲渡を行った場合、税金はどのように課税されるのでしょうか。この記事では、課税の仕組みやメリット、注意点など、家族間・親子間の株式譲渡について解説します。

目次

  1. 株式譲渡とは
  2. 家族間の株式譲渡は生前贈与がおすすめ
  3. 民事信託で自社株を贈与する手段
  4. 家族間の株式譲渡(贈与)にかかる税金
  5. 家族間の生前株式贈与の手続き
  6. 家族間での相続株式譲渡の手続き
  7. 家族間での株式譲渡の手続き
  8. 家族間での株式譲渡に事業承継税制を活用
  9. 家族間の株式譲渡まとめ
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1. 株式譲渡とは

株式譲渡とは

株式譲渡とは、売却や贈与などの契約により、他人に株式の所有権を譲渡することです。M&Aの手法としても幅広く使用されており、経営権を誰かに譲り渡す手段としては非常にポピュラーな方法となっています。

家族間・親子間では、家族で経営していた会社における事業承継のため、自社株を誰かに譲り渡すための手段として、株式譲渡が活用される場合があります。家族間・親子間での株式譲渡では、一般のM&Aにおける株式譲渡と異なる点があるのでしょうか。

家族間の株式譲渡とは

家族間の株式譲渡では、「相続」「贈与」「売買」の方法があります。各方法により形式や手続き、税金の種類などが異なるので、これらの方法における特徴などを見ていきましょう。

相続

相続は株式譲渡とは違い、経営者の遺言で親族の誰かへ株式を相続します。遺言書を作るとき、経営者は後継者との協議や相続の取り決めを前もって行わなければなりません。

相続の準備ができていなければ、後継者以外の法定相続人へ株式が相続されるなどして経営権が渡せないこともあります。少なくとも株式の過半数を引き渡せなければ、経営への影響力が弱まるでしょう。相続する資産に株式があるときは、早めに準備を行いましょう。

贈与

一般的に、家族間で株式をやり取りする場合、後継者の親族へ無償で株式を譲渡する贈与を実施します。株式を買う資金がいらないので、譲受側の負担が少なくなります。

相続では、経営者が亡くなった後に株式を相続しますが、贈与は経営者が生存していても可能です。つまり、経営者のタイミングで株式の引き渡しや事業承継ができます。贈与には贈与税がかかるので、株価対策を行い、プランを立てて贈与を行いましょう。

株式売買

家族間の株式譲渡でも株式売買の方法をとることがあります。株式売買を実施する際は、譲受側は株式価格に応じた資金を用意する必要があるので多くの資金力が要るため、資金がある後継者にのみ株式の譲渡が可能、ともいえます。

役員報酬を与えるなどして資金を用意させると、他の候補者に対する差別化になり、相続における遺留分の問題から株式を除することも可能なので、スムーズな相続となるでしょう。

株式売買による譲渡では、信頼できて資金力のある後継者へ株式を譲渡できるため、経営者が望む事業承継を実施しやすいです。

家族(親子/孫)間では株式贈与が一般的

M&Aや事業売却など第三者との株式譲渡では、売却の形式をとり、対価と引き換えに株式譲渡を行うのが一般的です。しかし、親子間や孫への譲渡など、家族間での株式譲渡を行う場合は、株式贈与の形で行われるのが一般的でしょう。

売買と贈与の違い

株式を引き渡す場合、売買と贈与の形式がありますが、売買と贈与では何が異なるのでしょうか。

いずれも保有する株式の所有権を他者に渡す手段ですが、売買は対価と交換で株式譲渡を行うのに対し、贈与は対価を必要としません。この違いが、課される税金などが異なる点に直結します。

【関連】事業承継を株式譲渡で行う方法!メリット・デメリットを解説!税金が安い?

2. 家族間の株式譲渡は生前贈与がおすすめ

家族間の株式譲渡は生前贈与がおすすめ

親子間などの家族間で自社株の株式譲渡を行う場合、売買や贈与など、どのような形で引き渡すのが良いのでしょうか。基本的には、家族間の株式譲渡は生前贈与を利用して行うことをおすすめします。その理由を、見ていきましょう。

事業承継でも、生前贈与が得になるケースが多いです。事業承継に関するまとめは、下記リンクも参考にしてください。

【関連】事業承継による消費税の納税義務はある?生前贈与/相続どちらが得?

生前贈与のメリット

生前贈与のメリットとして、節税効果を期待できる点があります。生前贈与により相続財産を減らすことで、課税対象の金額が少なくなることに加え、累進課税の税率も低く抑制することが可能です。
 
この仕組みを利用して、株式の価値が上昇する前に贈与し、後に相続によって譲渡するよりも課税対象となる金額を抑制でき、税負担を軽減することも可能であるため、将来的な相続税における節税のために非常に有効な方法といえます。

生前贈与で活用したいのが贈与税免除措置です。年間110万円までであれば贈与税が免除されるので、早くから計画的に生前贈与を実施することで、被贈与者の税負担を限りなくゼロにできます。

生前贈与の注意点(デメリット)

生前贈与のデメリットは、生前贈与の3年以内に亡くなってしまうと相続として扱われ、相続税の課税対象となることです。年を取ってきたから、あるいは病気にり患したから生前贈与を開始する、などの状況では、早くに亡くなってしまい、節税効果を得られない可能性があります。

自社株の場合、株式の所有比率が経営権の源です。生前贈与で段階的に家族に株式を譲渡していく場合、その途中における株式所有比率は、現経営者と後継者の間で分散してしまいます。この場合、自社の重大な決定をくだす際などに不都合が起きないよう配慮が必要です。

生前贈与のデメリットを防ぐ方法

生前贈与のデメリットを防ぐためには、どのような方法があるのでしょうか。一つは、事前に計画を立てて長期間での贈与を行うことで、被相続人が亡くなる3年以上前に贈与を終了させる方法が挙げられます。
 
もう一つは、法定相続関係にない孫などに贈与を行っておくことです。生前贈与が相続としてみなされるのは、共同相続人の間で贈与がある場合なので、相続関係にない個人に対して生前贈与を行うことで、デメリットを防げます。

遺贈のメリット

遺言書によって贈与を行うことを遺贈といいます。遺贈で株式譲渡をすることも可能で、そのメリットは、複数の相続人がいる場合、与える割合を指定したり、他の財産と株式を振り分けたりするなど、被相続人の考えを反映した分割を法的に行える点です。

遺贈の注意点(デメリット)

遺贈のデメリットは、遺言書による指定が必要であり、法令で定められた所定の形式が求められる点です。ミスがあれば無効となる可能性もあり、その場合は法律に沿った分割となってしまいます。
 
相続人がその権利を放棄することが可能で、その場合、他の相続人間で相続争いなどが発生する可能性があることもデメリットといえるでしょう。

自社株の株式譲渡に関するお悩みは、M&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所は多くの中小企業におけるM&Aに携わっており、事業承継の相談も数多く承っています経験や知識の豊富なM&Aアドバイザーが親身になって案件をフルサポートします。

料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を行っていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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【関連】株式譲渡の贈与税の計算方法を解説!贈与と譲渡の税金どちらが得?

3. 民事信託で自社株を贈与する手段

民事信託で自社株を贈与する手段

生前贈与や遺贈とは別に、民事信託により自社株を贈与する手段もあります。この章では、民事信託の概要について見ていきましょう。

民事信託とは

民事信託とは、受託者が特定の人に対して、営利目的ではなく、また継続しない前提で引き受ける信託のことです。一般的に市場に出回っている「投資信託」などとは違い、自社株など財産の移転や処分を含めた管理について、家族間で行うことが前提となっています。

家族(親子/孫)間でも自社株信託は可能

民事信託の中で、家族による家族のための信託における設定ができるのを「家族信託」と呼びます。これを利用し、自社株の管理を民事信託で行う「自社株信託」の設定も可能です。
 
これにより、被相続人が保有する自社株を誰に管理させるのか、またどのように利用されるべきなのか、をあらかじめ決定できます。その後における財産承継に関して、受託者が中心となって生前から話し合えるので、遺産相続も詳細に決定できる点がメリットです。

【関連】事業承継信託とは?メリット・デメリット・注意点を知って賢く活用しよう

4. 家族間の株式譲渡(贈与)にかかる税金

家族間の株式譲渡(贈与)にかかる税金

株式譲渡を親子間などの家族間で贈与を行う場合、基本的に贈与税が課されますが、非課税となる場合もあります。贈与税がどのように課税されるのか、その概要を見ていきましょう。

生前株式譲渡(贈与)にかかる税金

生前贈与に対してかかる税金としては、贈与税、譲渡益課税(所得税+住民税)が挙げられますが、非課税となる枠もあります。概要を解説します。

非課税

生前贈与は贈与税の対象となりますが、年に110万円までは非課税です。毎年110万円に満たない範囲で財産を贈与していく場合、税金は発生しません。

贈与税

生前贈与における贈与金額が年間110万円を超えた場合は、贈与税の課税対象となり、累進課税により税率が決定されます。仮に贈与が「みなし贈与」と認定された場合、税金が大きく増加することがあるため留意が必要です。
 
みなし贈与では、譲渡人や譲受人のどちらかに譲渡した認識がなくても、贈与があったものとみなして課税されます。例えば、相場より非常に低い価格で株式などを子供に売却した場合、その時価と譲渡価額との差額を贈与分とみなされるでしょう。
 
上記の場合、通常であれば税金がかからない部分に対し、高税率の贈与税が課されるため、税金が非常に大きくなってしまいます。低価格での株式譲渡を行う際は十分に注意しましょう。

譲渡益課税(所得税+住民税)

株式を売買により譲渡し譲渡益がある場合は、譲渡人に対して所得税15%、住民税5%、合計20%の税金が課税されます。なお、2037(令和19)年までの時限措置として、復興特別所得税0.315%が加わるので、その間における合計税率は20.315%です。

株式譲渡(相続)にかかる税金

相続による株式譲渡にかかる税金は、相続税、譲渡益課税があります。

相続税

相続によって株式譲渡が発生した場合は、相続の金額に対して相続税が課税されます。

譲渡益課税(所得税+住民税)

株式を相続によって取得し、その後売却した場合は、譲渡益に対して課税され、譲渡益は譲渡によって得た対価から取得価額を差し引くことで計算されますが、この取得費に相続税額を加算することが可能です。
 
これは、相続税に加え譲渡益に対して課税されることで税負担が過剰になることを防ぐための制度で、特に相続税を支払うために売却を行う場合に、利用する意味があります。

5. 家族間の生前株式贈与の手続き

家族間の生前株式贈与の手続き

具体的に、親子間などの家族間で生前贈与により株式譲渡を行う場合は、どのような手続きが必要なのでしょうか。

株式の評価額は最も安価な評価

生前贈与では、年間110万円までの範囲が非課税となるため、株式の評価額が重要です。株式の評価額は、上場株式の場合、贈与される日の最終価格、贈与される月内の①✕日数の平均価格、贈与される前月内の①✕日数の平均価格、贈与される前々月内の①✕日数の平均価格のいずれか最も安価な評価で決定されます。
 
それぞれどのように計算されるのか見ていきましょう。

贈与される日の最終価格

まずは贈与される日の最終価格を調べます。ここで使用される最終価格は、その株式を取り扱っている金融商品取引所が公表する価額を採用されます。

贈与される月内の①✕日数の平均価格

第2に、贈与される月の最終価格における平均をとります。これも、株式を取り扱っている金融商品取引所が公表する価格を使用します。

贈与される前月内の①✕日数の平均価格

第3に、贈与される月の前月におけるマーケットの最終価格における平均をとります。これも、株式を取り扱っている金融商品取引所が公表する価額を使用します。

贈与される前々月内の①✕日数の平均価格

最後に、贈与される月の2カ月前におけるマーケットの最終価格における平均をとります。これも、株式を取り扱っている金融商品取引所が公表する価額を使用すします。
 
これら4つの価格を比較し、最も低い価格が株式の価格です。この価格における評価は、銘柄ごとに1株単位で行います。

贈与契約書の作成

価格が決まった後に、贈与契約書を作成します。贈与契約は、贈与者と受贈者の合意があれば口頭でも成立します。しかし、相続などが発生する可能性がある場合は、相続税の計算にも使用する可能性があるため、契約書を作成しておくことが必要です。
 
贈与契約書の形式は特に決まりはありませんが、最低限、贈与者と受贈者の氏名、贈与に対する意思、贈与日、贈与対象、贈与の方法などを記載する必要があります。それぞれについて見ていきましょう。

贈与者と受贈者の氏名

贈与契約では、贈与者と受贈者がいますが、それぞれが誰なのか明記します。これは後に相続などが発生した場合の計算でも重要であるため、記載が必要です。

贈与に対する意思を明記

次に、贈与に対する意思を明記する必要があります。贈与契約は、贈与者と受贈者の意思と合意によって成立するため、契約の要件を満たしたかどうかを確認するためにも、贈与に対する意思の明記が必要です。

贈与日の記載

次に、「いつ贈与をするのか」といった贈与日の記載が必要です。贈与日の設定は、先述のとおり、贈与されたものの価格を設定するために非常に重要な役割を果たしています。相続における税務調査などの際に、贈与がいくらだったのかを証明するため、必ず贈与日を記載しましょう。

贈与する株式

贈与するものは何か、も明記する必要があります。贈与価格を決定する場合に、モノが明確でなければそれを判断できません。贈与日の記載と同様に、贈与する対象の株式はどれで、数量は何株なのかを明記しましょう。

贈与する方法

最後に、贈与する方法を記載する必要があります。これら5つの記載がないと、贈与契約書を作成しても公正なものと認められない場合があるため必ず含めましょう。
 
なお、贈与する方法として、贈与をした証拠が残るように、金銭であれば銀行振り込み、株式であれば取引所できちんと贈与の証跡を残してもらうなどの対策をとることが重要です。そうすれば、贈与があったことを証明できます。

6. 家族間での相続株式譲渡の手続き

家族間での相続株式譲渡の手続き

親子間などの家族間で相続により株式譲渡が行われる場合の手続きとして、遺産分割、名義書換が必要です。

遺産分割

株式を相続するためには、まず遺産分割協議を行い、「遺産分割協議書」の作成をします。遺産分割協議書は、形式として決まったものはないものの、被相続人の名前、相続日、協議した相続人、および相続財産の処分内容を具体的に記載してください。

名義書き換えを行う

遺産分割協議書をベースに、株券発行会社に相続があった旨を届け出て、名義書換の手続きを行います。
 
この手続きは基本的には会社が委託している株主名簿管理人が行います。株主名簿管理人は、信託銀行や証券代行会社であることがほとんどです。ただし、株券が保護預かり口座に入っている場合は、株券を出庫して名義書換を行うか、証券会社をつうじて出庫せずに名義を書き換える場合もあります。

7. 家族間での株式譲渡の手続き

家族間での株式譲渡の手続き

対価を支払い、売買の形で親子間などの家族間で株式譲渡を行う場合、特別な手続きは必要なのでしょうか。売買による株式譲渡は、親子間などの家族間だからといって特別な手続きは必要なく、一般的な株式譲渡と同様の手続きを取ります。

8. 家族間での株式譲渡に事業承継税制を活用

家族間での株式譲渡に事業承継税制を活用

従来から事業承継税制は敷かれていましたが、2018(平成30)年に改正が行われ、事業承継を目的に自社株式を贈与または相続した際の税金について、時限措置の特例が設けられました。

制度を端的にいうと、一定の手続きを実施した場合、贈与税や相続税の納税猶予が与えられ、最終的には免除を得られることも可能な制度です。手続きにおける要件の中には、各都道府県庁へ「特例承継計画」を提出し、確認を受けていることが求められます。

特例有効期限は、特例承継計画の提出が2023(令和5)年3月31日まで、制度適用期限が2027(令和9)年12月31日までです。この期間内に事業承継の可能性がある場合は、ぜひ利用したい制度なので、詳細を顧問税理士などに確認してみましょう。

【関連】【中小企業庁】事業承継税制とは?相続税・贈与税の納税猶予(特例)を徹底解説!

9. 家族間の株式譲渡まとめ

家族間の株式譲渡まとめ

家族間で株式譲渡を行う場合は、生前贈与や相続による譲渡などさまざまな方法があり、方法によって各種の税金が課されます。どの方法による株式譲渡が最も効率的なのかは、専門家による判断が重要といえます。

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