M&Aのブリッジローンとは?意味やメリット・デメリット・活用方法まで解説!

会計提携部 部⻑
向井 崇

銀行系M&A仲介・アドバイザリー会社にて、上場企業から中小企業まで業種問わず20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、不動産業、建設・設備工事業、運送業を始め、幅広い業種のM&A・事業承継に対応。

会社を経営していく上で、資金繰りの悩みは切っても切り離せないものです。事業を広げていくほど大きな資金が必要となり、その調達方法に苦労するでしょう。そんな資金調達の方法の1つとして、ブリッジローンがあります。緊急で資金が必要になった時に活用される方法です。

目次

  1. ブリッジローンとは?
  2. ブリッジローンを活用する際のポイント
  3. ブリッジローンのメリット
  4. ブリッジローンのデメリット
  5. ブリッジローンを活用する際の手順
  6. ブリッジローンの活用方法
  7. ブリッジローンは短期間で資金調達できるが明確な目的をもって利用しよう
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1. ブリッジローンとは?

ブリッジローン(Bridging loan)とは、資金調達に時間を要する場合に短期(主に3か月程度)に限定した期間で融資されるローンのことです。
融資と融資の間の橋渡しのような役割をする意味から「Brige(橋)」が用いられ、ブリッジファイナンスや「資金をつなぐ」という意味で、つなぎ融資とも呼ばれます。

2%〜4%程度といった、通常よりも高金利で融資される点が特徴で、原則として保証人をつけません。
個人が住宅ローンを組む際や経営者が新しい融資を受ける際に、それが開始されるまでのつなぎで活用されることが多いです。

M&Aにおけるブリッジローンの意味

M&Aにおけるブリッジローンはどういった意味をもつのでしょうか。
M&Aでは、企業が他社の買収を行うときに必要となる資金の借り入れを商業銀行や投資銀行からする際にブリッジローンが用いられる場合があります。

ブリッジローンが意味をもつ例としては以下の2つのような状況があります。

  • M&Aを進めていく過程で、譲渡企業の価値が当初の想定より高く、追加の資金を調達する必要が発生した場合
  • 緊急にキャッシュが必要な状況になったけれど、手元にある資金では足りない場合
また、M&Aで買収を行う際に多額の資金を必要とする場合にも、SPC(Special Purpose Company)「特別目的会社」と共に活用するといった意味もあります。

SPCとは、ある特定の事業内容のために設立された会社のことをいいます。
SPCがブリッジローンを活用して高金利で買収の資金を借り入れ、買収が完了したのちに買収した会社とSPCを合併することで借入金を返済する方法です。
これは、資金調達にかかるリスクを自社で負う必要がないメリットがあります。

M&Aでブリッジローンが利用される理由

なぜ、通常行われる融資よりも手数料や金利が高くなるブリッジローンが利用されるのでしょうか。
あえて、通常の融資ではなく手数料や金利が高くなるブリッジローンを利用する意味は、緊急で資金が必要になった際に、その調達が可能となる方法がほとんどブリッジローンしかないからです。

銀行で行われる借り入れなどの通常の融資は、融資されるまでの審査に時間を必要とするため、資金が必要になった際にすぐに融資が行われるわけではありません。

しかし、ブリッジローンの場合は、もちろん通常の融資同様審査は必要ではありますが、短期間での返済や手数料や金利が高い分、通常の融資よりも早く資金を調達することができます。
そのため、急ぎで資金を調達したいときに活用がされるといった意味があります。

2. ブリッジローンを活用する際のポイント

ブリッジローンは、高い金利や一括返済が必要などの理由から、あくまで緊急避難のような資金調達方法の1つです。
そのため、ブリッジローンを活用する際は以下の3つのポイントに気をつけましょう。

  1. 明確な目的と根拠が必要
  2. ハイリスク・ハイリターン
  3. 別の資金調達方法も検討しておこう

明確な目的と根拠が必要

ブリッジローンは、通常の融資よりも早く融資を受けることができますが、決して審査が必要ないわけでも、甘いわけでもありません。

融資を受ける際は、どういった目的で融資された資金を活用するのか明確になっている必要があり、返済にも明確な根拠が必要です。

ハイリスク・ハイリターン

ブリッジローンは、通常の融資と比較して短期間で多くの額の融資を受けることができる点で意味をもちます。
しかし、高い金利や返済が遅れた場合の遅延損害金(遅延利息)が高額に設定されている場合が多いです。

そのため、ブリッジローンを活用する大きなメリットはありますが、活用することによってコストの増加や返済が遅れた場合のリスクが通常の融資よりも高くなってしまう点に注意が必要です。

別の資金調達方法も検討しておこう

ブリッジローンは、緊急の資金調達が必要になった際に有効な方法です。

しかし、ハイリスク・ハイリターンな面もあるため、資金が必要になった際にブリッジローンだけでなく、別の資金調達方法をあわせて検討することも大切です。M&Aなどで資金調達が必要になった際の方法について、以下の5つの方法を紹介します。

  • LBO
  • 金融機関からの借り入れ
  • 第三者割当増資
  • 株主割当増資
  • ファクタリング

LBO

LBO(レバレッジド・バイアウト)とは、譲渡企業の資産や今後期待できるキャッシュフローを融資の担保とすることで、譲受企業が金融機関などから融資を受けて買収を行う方法です。

LBOはいわば譲渡企業の価値を担保に資金調達を行うため、自己資金が少なくてもM&Aを行うことが可能となる方法です。

金融機関からの借り入れ

M&Aで一般的に行われる資金調達方法が、金融機関から資金を借り入れする方法です。

金融機関からの借り入れを受けるためには、審査と連帯保証人や何らかの担保の差し入れが必要となりますが、比較的低金利で資金調達することができる点がメリットです。

第三者割当増資

第三者割当増資とは、会社の既存の株主ではなく、特定の第三者に発行した新株を割り当て、有償で引き受けてもらうことで資金を調達する方法です。

新たに株式を発行することによって資金調達を行うため「新株発行増資」と呼ばれる方法の1つです。M&Aだけでなく、会社再建、業務提携の相手先や取引先との関係強化など幅広い目的で利用されます。

株主割当増資

株主割当増資とは、自社を除いた既存株主に、持ち株数に応じて新株を割り当て、有償で引き受けてもらうことで資金を調達する方法です。

第三者割当増資と同様、新たに株式を発行することによって資金調達を行うため「新株発行増資」と呼ばれる方法の1つです。既存株主の持ち株の比率や構成を変えることなく資金調達することができる点がメリットです。

ファクタリング

ファクタリングとは、売掛債権を売却することで資金を調達する方法です。自社が持つ未回収の売掛債権を、ファクタリング会社に買い取ってもらうことで資金調達を行います。

ただし、ファクタリングには手数料が発生し、ファクタリング会社によってその手数料が変わるため、受取額をできるだけ高額にするためにもファクタリング会社の手数料はしっかりと確認しましょう。

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3. ブリッジローンのメリット

ブリッジローンを活用する際のメリットについて紹介します。

  1. 短期間で多額の資金調達ができる
  2. 保証人が不要なことも多い

短期間で多額の資金調達ができる

ブリッジローンの一番のメリットは、通常の融資と違い短期間で多額の資金調達が可能な点といえます。

一般的に、銀行などから融資を受けるときは手続きや審査が必要になるため、実際に融資を受けるまでに時間を要することが多いです。

しかし、ブリッジローンは審査にかかる時間が比較的短期間で済むため、長期間の審査を待っている間にビジネスチャンスを逃すといったことになりにくいです。

保証人が不要なことも多い

ブリッジローンは、通常の融資と異なり原則として保証人が不要なことも多い点が特徴です。

保証人が必要な場合、その選出に時間を要することも多いです。そのため、ブリッジローンはより短期間で融資を受けることができます。

4. ブリッジローンのデメリット

ブリッジローンを活用する際のデメリットについて紹介します。

  1. 金利・手数料が高く設定されている
  2. 融資期間が短期間
  3. 一括で返済する必要がある

金利・手数料が高く設定されている

ブリッジローンを活用する際のデメリットついてまず挙げられるのが、金利・手数料が高く設定されている点です。

例えば、住宅ローンの金利相場は、固定金利が0.280%〜、変動金利が0.289%〜、全期間固定金利・フラット35が1.880%〜となっています。(2023年2月時点)

対して、多くのブリッジローンの金利は2%〜4%程度に設定されていて、かなりの高金利ということがわかります。また、利用には事務手数料が別で必要となることもあり、場合によっては手数料を含めた実質金利が年率20%を超えてしまうようなことも想定されます。

融資期間が短期間

ブリッジローンは、あくまでも資金調達に時間を要する場合に活用される、「融資と融資のつなぎ」として利用する目的のため、融資の期間が主に3か月程度と短期間といった点もデメリットに挙げられます。

融資期間が短期間のため、金融機関にとってはコストとリターンが見合わない商品になり、そういった点も金利や手数料の高さにつながります。

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一括で返済する必要がある

通常の融資の場合、返済は段階的に行われることが多いですが、ブリッジローンの場合の返済は、一括で返済する必要がある場合が多い点もデメリットに挙げられるかもしれません。

滞りなく返済できる場合は問題になりませんが、想定外の事態によって返済資金を調達することができなくなってしまった場合も想定されます。

その場合、返済できるまで高額な利息と遅延損害金を支払う必要があります。ブリッジローンは、将来の得られる見込み資金をあてにした資金調達方法のため、綱渡り的な側面を持っている点がデメリットと言えるでしょう。

5. ブリッジローンを活用する際の手順

ブリッジローンは一時的な資金調達の手段です。例えば、個人が住宅を建築する際、土地の購入費用や建築費などの初期費用が必要ですが、住宅ローンは住宅完成後にしか受けられません。ここでブリッジローンが活用されます。

まず、ブリッジローンで必要な資金を調達し、住宅建築に必要な費用を支払います。その後、住宅が完成して住宅ローンが受けられるようになったら、その資金でブリッジローンを返済します。このように、ブリッジローンは資金が手元にない時に住宅建築を進めるための一時的な資金繰りの手段として使われます。

6. ブリッジローンの活用方法

ブリッジローンの活用方法について2つ紹介します。

  1. M&Aで準備していた資金だけでは足りない場合
  2. 設備投資

M&Aで準備していた資金だけでは足りない場合

M&Aを進める場合、買収に必要となる資金はあらかじめ用意しておくことが通常です。

しかし、交渉の過程で、買収する企業が想定よりも現預金をもっていたり、企業価値が当初の想定より高かった場合、用意していた資金だけでは不足するといったことも起こります。

金融機関で新たに融資の審査を受けるなどをする時間的余裕はないものの、買収する企業の現預金などで返済が可能であるときは、一時的な資金調達の方法としてブリッジローンを活用する選択も可能です。

設備投資

成長段階にある企業の場合は、生産設備の新設や生産能力の拡大のための設備投資に多くの費用を必要とします。
通常は、必要にあわせて金融機関で融資を受け、その資金で設備投資を行います。

しかし、成長過程の企業だと、実績以上の注文などが舞い込むことも珍しくありません。
そういった機会が訪れた時に、運転資金が不足してから通常の融資を受けようとする場合、融資に時間がかかってせっかくのチャンスを逃してしまうことにもなります。

将来の利益の増加や売上の増加が見込め、たとえ高金利であったとしても返済の見込みが立つ場合はブリッジローンを活用するといった選択も可能です。

7. ブリッジローンは短期間で資金調達できるが明確な目的をもって利用しよう

今回は、ブリッジローンとはどういったものなのか、M&Aにおけるブリッジローンの意味やそのメリットとデメリット、活用方法について紹介しました。

ブリッジローンは、資金調達を短期間で行うことができる点から積極的な活用を検討される場合も多いかと思います。
しかし、明確な目的をもっていない場合は借入を行うことはできず、通常の融資よりも高金利といった面もあります。

そのため、自分の現状や将来の収支をしっかり分析して、ブリッジローンで資金調達する必要があるのか、それとも他に有効な方法があるのかを検討しましょう。

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