2022年07月16日更新
同族会社における非上場株式譲渡の税金まとめ!個人から法人、個人から個人に売却するとどうなる?
同族会社間での非上場株式譲渡を行った場合、税金はどのように課税されるのでしょうか。個人から個人、法人から個人など、場合によって課税される方法はさまざまです。複雑な同族会社間の非上場株式譲渡の税金について、事例を用いて解説します。
1. 同族会社とは
同族会社とは、会社の株主の3人以下、およびこれらの人々と特殊な関係にある個人・法人が議決権の50%超を保有している会社のことです。
具体的には、親族や、事実上の婚姻関係にある者、使用人など、株主と関係のある人々により、その会社が発行した株式総数の半分超が保有されていたり、出資金の合計が会社の出資金総額の半分超に相当していたりする場合、同族会社と判断されます。
同族株主とは
同族株主の定義を見ていきましょう。同族株主とは、1人および同族の関係者が、3割以上の議決権を保有している株主、その関係者のことをいいます。
対象発行会社の株主のうち、株主の1人およびその同族の関係者が保有している議決権の合計が30%以上である場合、株主や同族関係者のことです(同族関係者の定義は法令に規定される特殊な関係にある個人、法人のことをさします)。したがって、同族株主がいるかは会社の株主構成から判断できるでしょう。
主に、議同族株主のパターンは以下です。
- 株主等
- 株主の親族(6親等内の血族、配偶者、3親等内の姻族)
- 株主と特殊な関係のある者
例を挙げると、それぞれのグループの保有割合が、A55%、B35%、C10%の割合だった場合、Aのグループのみが同族株主です。Bは30%以上持っていますが、同族株主には該当しないでしょう。
同族会社株式とは
同族会社株式とは、同族会社から発行され、同族株主がそのほとんどを保有している株式をいいます。
同族会社にケースでは、個人あるいは一族で経営していることが多く、株式の価値が将来どうなるか、想定ができないといったデメリットがあるでしょう。同族会社株式で課題となっているのが、事業承継問題です。相続する一族の対象者によって、経営手法が大きく変化してしまうため先が読みにくいのが現状でしょう。
例えば、上場していない同族会社で業績も良かったとしても、資産価値の高い財産を保有しているケースでは、事業承継が大変となるでしょう。なぜなら相続税評価額が高くなってしまうおそれがあるからです。したがって、同族会社株式はハイリスクであるケースも考えられます。
2. 同族会社間の非上場株式譲渡にかかる税金一覧
特殊な状態にある同族会社ですが、同族会社間で非上場株式を譲渡する場合、所得税や法人税、贈与税など、どのような税金が課せられるのでしょうか。概要を説明します。
株式譲渡所得課税(所得税+住民税)
個人が非上場会社の株式を譲渡した場合、株式譲渡に対して所得税と住民税が課せられます。株式譲渡の対価が総収入金額であり、そこから譲渡所得額を計算し、その金額に対して所得税・住民税が計算されるでしょう。
法人税
法人が非上場株式を譲渡する場合には、法人税が課されます。基本は個人が譲渡する場合と算定方法はほぼ同じですが、一部が違う計算内容です。
法人の場合、非上場株式を発行する会社が譲渡する法人にとって同族会社と判断される場合には、「子会社」に相当するものとして扱うとされており、株式の譲渡が行われた後の関係で同族会社か否かを判断します。
所得税
譲渡人が個人の場合、株式譲渡により得られる利益のうち、時価と取得価額の差を譲渡所得と認識し、所得税が課税されます。
贈与税
株式譲渡にあたって、著しく低い価額で譲渡するなどのような特定の場合には、時価と譲渡価額の差異は、売り主が買い主から贈与を受けたものとして、贈与税が課税されます。
寄付金
株式譲渡の売り主が個人で、買い主が法人である場合、時価よりも高い価額で非上場株式を譲渡した場合、買い主である法人にとって、譲渡価額と時価の差額は寄付金とみなされ、寄付金課税の適用を受けることとなります。
損金不算入
株式譲渡の売り主が個人であり、かつ買い主である法人の役員である場合には、譲渡価額と時価の差額は役員賞与とみなされ、損金不算入の取り扱いを受けます。
みなし贈与課税
個人同士で非上場株式を譲渡するケースにおいて、時価より著しく低額で取引される場合には、実際の取引価額と時価の差額が贈与とみなされ、みなし贈与課税の適用となる場合があります。
この場合の「時価」は、買い主である個人が株式取得後に同族株主かどうかにより大きく異なる点に注意が必要です。一般的に、同族株主の場合の時価は、同族会社でない場合より大きく計算されることが多いため、取引価額は取引前によく確認しなければなりません。
同族会社の非上場株式譲渡は、ざっと見ただけでも課税対策に専門家の判断は必要だとおわかりでしょう。そこで、おすすめの専門家としてM&A総合研究所を紹介します。
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3. パターン別同族会社が非上場株式を譲渡する際の税金
それでは、具体的にどのようなパターンで課税が行われるのでしょうか。個人間の譲渡や法人間の譲渡など、それぞれのパターンごとに解説します。
なお、通常の株式譲渡にかかる税金は、下記リンクも参考にしてみましょう。
同族会社間の個人から個人への株式譲渡の場合
同族会社間の個人から個人へ株式譲渡を行う場合、以下の3つのケースに分けて解説します。
- 譲渡金額が適正価格の場合
- 譲渡金額が時価を下回る場合
- 譲渡金額が時価を上回る場合
適正価格で株式譲渡した場合の税金
個人から個人への株式譲渡で、譲渡金額が適正価格であった場合は、基本どおり、譲渡益(譲渡価格と取得原価との差額)に対して所得税が課税されます。
時価よりも低額で譲渡した場合の税金
個人から個人への株式譲渡で、時価よりも低額で譲渡を行った場合は、取引価額と時価の差額は売り主から買い主への贈与とみなされ、「みなし贈与」として贈与税が課されます。
時価よりも高額で譲渡した場合の税金
上記とは逆に、個人から個人への譲渡で、時価よりも高額で譲渡を行った場合には、時価と取得価額の差が譲渡所得とみなされる一方、時価を超えて譲渡した金額は譲渡としての性格を持たないため、買い主側から売り主側への「贈与」とみなされ、贈与税の対象となります。
同族会社間の個人から法人への譲渡の場合
同族会社間の株式譲渡で、個人から法人へ譲渡が行われる場合は、どのような課税が行われるのでしょうか。以下、3つのケースに分けて解説します。
- 譲渡金額が適正価格の場合
- 譲渡金額が時価を下回る場合
- 譲渡金額が時価を上回る場合
適正価格で譲渡した場合の税金
個人から法人への株式譲渡を適正価格で譲渡した場合、所得税の計算上、譲渡対価を総収入金額として譲渡所得を計算し、所得税が課されます。
時価よりも低額で譲渡した場合の税金
個人から法人への株式譲渡を時価よりも低額で譲渡した場合、特に時価の2分の1以下の価格で譲渡し、その譲渡が同族会社に対するもので、なおかつ、その取引により、関係者の所得税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、時価に相当する金額を総収入金額として譲渡所得を計算される場合があります。
時価よりも高額で譲渡した場合の税金
個人から法人への株式譲渡を時価よりも高額で譲渡した場合には、原則どおり、譲渡対価を総収入金額として譲渡所得の金額を計算し、所得税が課されます。
同族会社間の法人から個人への譲渡の場合
法人から個人へ株式譲渡する場合には、どのような課税が行われるのでしょうか。こちらも以下の3ケースに分けて解説します。
- 譲渡金額が適正価格の場合
- 譲渡金額が時価を下回る場合
- 譲渡金額が時価を上回る場合
適正価格で譲渡した場合の税金
法人から個人への株式譲渡を適正価格で譲渡した場合は、譲渡価格と取得価額の差が譲渡益として法人税の課税対象となります。
時価よりも低額で譲渡した場合の税金
法人から個人への株式譲渡を時価よりも低額で譲渡が行われた場合には、法人と個人の関係により、課税方法が異なります。
まず、個人が法人の従業員や役員である場合には、時価と譲渡価額との差、つまり割安で買えた分は、役員や従業員への無償の経済的利益の供与とみなされ、給与と同等の取り扱いです。つまり、買い手である個人は、差額を給与所得として所得税が課税される一方、法人は損金算入できます。
次に、個人が法人の役員・従業員でない場合は、この経済的利益の供与は寄付金とみなされ、個人は一時所得として所得税を課される一方、法人は損金算入が可能です。ただし、その損金算入には一定の制限があります。
時価よりも高額で譲渡した場合の税金
法人から個人への株式譲渡を時価よりも高額で譲渡が行われた場合には、売り手側の法人に対しては、取得価額と時価との差額は法人税が課税されます。これに加え、譲渡価格と時価の差額(受贈益)は、法人税が課税されるでしょう。
同族会社間の法人から法人への譲渡の場合
法人間での株式譲渡の場合は、どのような課税が行われるのでしょうか。これまで同様に以下の3ケースに分け解説します。
- 譲渡金額が適正価格の場合
- 譲渡金額が時価を下回る場合
- 譲渡金額が時価を上回る場合
適正価格で譲渡した場合の税金
法人から法人への株式譲渡を適正価格で譲渡した場合は、譲渡価格と取得価額の差が譲渡益として法人税の課税対象となります。
時価よりも低額で譲渡した場合の税金
法人から法人への株式譲渡を時価よりも低額で譲渡した場合は、売り手側の法人は、時価で譲渡を行ったものとして課税されます。
一方、買い手側の法人は、時価と譲渡価額との差額は売り手側の法人から寄付を受けたものと取り扱われ、受贈益が法人税の課税対象です。
時価よりも高額で譲渡した場合の税金
法人から法人への株式譲渡を時価よりも高額で譲渡を行った場合は、売り手側の法人では時価により譲渡を行ったとみなされ、譲渡益が法人税の課税対象となることに加え、時価と譲渡価額との差は、買い手側の法人から寄付を受けたものとして、受贈益が法人税の課税対象となります。
一方、買い手側の法人は、時価と譲渡価額との差額は売り主への寄付金の扱いです。
相続として譲渡された場合
ここで、相続として株式譲渡が行われた場合には、被相続人および相続人に対してどのような課税が行われるのか、その概要を解説します。
被相続人への税金
被相続人が亡くなった年に株式配当などによる所得がある場合には、準確定申告を行い、その結果、所得税などの課税が行われる可能性があります。
相続人への税金
非上場株式を相続した場合、会社の純資産相当額を時価とし、対応する株式数に相当する金額を相続したとみなして相続税が課税されます。
ただし、例外措置があることを覚えておいてください。それは、後継者がその後、該当会社の経営を行っていく場合には、課税価額の80%に対応する相続税の納税を猶予する制度が経営承継円滑化法(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律)にて規定されています。
この制度を利用するためには、都道府県知事の認定などの要件を満たさねばなりません。2027(令和9)年12月31日までの限定特例制度として、相続税の価額100%が猶予されます。詳しくは、下記リンクを参考にしましょう。
みなし贈与課税とされる条件
ここまで何度か登場している「みなし贈与」について、そのようにみなされる条件を考えてみましょう。具体例として該当するのは、以下の3つのケースです。
- 他人が保険料を支払った保険の保険金受領
- 時価の80%未満での株式譲渡
- 借金などの大幅な棒引き
他人が保険料を支払った保険の保険金を受け取った場合
みなし贈与とされるケースの1つは、他人が自分を受取人として保険に加入し保険料を支払っていて、その他人が生きているうちに自分が保険金を受け取った場合です。
なお、その他人の死亡により保険金を受け取った場合には、みなし相続財産として、相続税の問題となります。
時価の80%未満の価格で株式譲渡が行われた場合
時価の80%未満の価格で株式譲渡が行われた場合も、みなし贈与とされる場合があります。これは、無料で相手に譲渡すると贈与税が課されることを避けようとして、極端に安い価格をつけたと考えられるためです。
この「極端に安い価格」の目安として、裁判所は明確な基準を設けていませんが、土地の判例では80%を下回った場合と言及しており、他の資産も適用されるといえます。
つまり、時価の80%未満で株式譲渡が行われる場合には、みなし贈与とされる可能性があり、留意が必要です。
時価の80%未満以外で譲渡された場合
時価の80%未満で譲渡がされていなくても、そうみなされる場合もあります。特に同族会社間の株式譲渡では、注意が必要です。
例えば、会社が財産を低額で譲り受けることにより、会社の資産が増加し、受贈者である会社の株式価値が上がった場合には、その株式価値が上がった分だけ、贈与を受けたとみなされる場合があります。
個人から安い価格で法人が買い取った場合も、差額がみなし贈与とされ、時価で株式を譲渡したとして譲渡益に対し所得税が課税されてしまう可能性は否定できません。
借金などを大幅に棒引きした場合
借金などを大幅に減額する場合も、みなし贈与とされる可能性があります。これは借金の減額により、実質的な財産が増えることが要因です。
みなし贈与課税に適用される場合の時価
みなし贈与課税に適用される場合の時価は、通常の株式市場で取引されている時価や、非上場株式であれば、純資産相当額が使用されます。
しかし、同族会社間の株式譲渡では、受け渡し後の株式価値をベースに算出されるため、通常の時価より高く計算されるケースが少なくありません。時価の判定は注意深く行うことが重要です。
4. 同族会社間の非上場株式譲渡に迷ったら
同族会社間の非上場株式譲渡は、同族会社の判定や、時価の算定、および複雑な課税関係など、さまざまな要素が関係するため、どのような価格で譲渡すべきか、誰に譲渡すべきか迷うことが多いと考えられます。判断には専門的な知識が必要とされるため、外部の専門家に相談することが重要です。
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5. 同族会社における非上場株式譲渡のまとめ
同族会社間の株式譲渡では、譲渡価額と時価との差によって、課税金額が大きく変化する可能性があるなど、専門知識をベースとしたうえでの判断が必要です。これにより税金が大きく変化する可能性もあるため、専門家への相談のうえ、適正な価格で譲渡できるよう、対策をするようにしましょう。
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