婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡の手法の違いを解説!成功ポイント、注意点も

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

本記事では、婚礼・ウェディング事業の事業譲渡・事業売却と株式譲渡を解説します。事業譲渡・事業売却と株式譲渡の手法の違いといった基本的な事項から、婚礼・ウェディング事業の譲渡・売却のメリットや注意点など、わかりやすく解説します。

目次

  1. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡
  2. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡の手法の違い
  3. 婚礼・ウェディング事業の特性
  4. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡のメリット
  5. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡の成功ポイント
  6. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡する際の注意点
  7. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡に関する相談先
  8. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡まとめ
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1. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡

本記事では、婚礼・ウェディング業界の事業譲渡/売却と株式譲渡を解説します。この章では、婚礼・ウェディング業界の概要や、事業譲渡/事業売却および株式譲渡といったM&A用語の基本的な意味を説明します。

婚礼・ウェディングとは

婚礼・ウェディングとは、どちらも結婚式を表すのに用いられますが、2つの言葉はニュアンスの若干異なる点があります。ウェディングはほぼ結婚式と同じ意味であり「ウェディングドレス」「ウェディングケーキ」は、結婚式で使うドレスやケーキのことです。

婚礼もウェディングと同じような意味で使われることもありますが、厳密にいえば婚礼は婚姻に関わる儀式全般をさします。つまり、結婚式以外の婚約や結納なども含めて婚礼と呼ばれます。

婚礼・ウェディングを提供するサービス業は、婚礼・ウェディング業界といわれることもありますが、一般的には「ブライダル業界」といわれることが多いです。

婚礼・ウェディングの市場動向

矢野経済研究所の「ブライダル市場に関する調査結果」によると、2021年のブライダル関連市場の規模は、前年比117.6%の1兆4,945億円でした。

2021年より挙式披露宴が施行されるようになり、関連市場の回復につながり上昇に転じる見込みがあります。しかし、婚姻件数の減少に加え、結婚式を行わない人の減少傾向、披露宴の少人数化に伴う組単価の低下など、マイナス要因も大きいです。

今後も、婚礼・ウェディングの価値観の多様化によるブライダル関連分野への支出低下の懸念が見込まれると予想されています。

参照:矢野経済研究所「ブライダル市場に関する調査を実施(2022年)」

事業譲渡/事業売却とは

事業譲渡または事業売却とは、会社の事業を他の会社に売却して、対価として現金を受け取るM&A手法のことです。事業に関わる資産そのものを売却するので株主は変わらないのが、株式譲渡とは異なる点です。事業の一部分だけを売却できることが特徴であり、不採算事業やノンコア事業を売却してコア事業は残せます。

買い手側から見れば、不必要な事業は引き継がなくてよいことが利点ですが、事業そのものの売却は手続きが煩雑になり、上場企業の場合は株主の承認が必要になるなど、株式譲渡に比べて手続きが複雑なのが欠点です。

事業譲渡と事業売却はほぼ同じ意味ですが、一般的には事業譲渡を用いることのほうが多いです。事業売却は売却側から見た呼び方であり、買い手側の立場から見た場合は「事業買収」と呼ばれることもあります。

株式譲渡とは

株式譲渡とは、株式を買い手企業の売却で、会社の経営権を譲渡するM&A手法です。株主が変わるだけなので、会社は譲渡後もそのまま存続できることが特徴です。

株式譲渡は株主を変更するだけなので、事業譲渡や事業売却に比べて手続きが簡単なのが長所でといえます。株主の数が少ない中小企業の売却でよく使われます。

一方で、上場企業の場合は不特定多数の株主から株式を買い集めないといけないので、非上場企業に比べて手続きが複雑です。

株式譲渡はシンプルな手法なので多く使われますが、会社をまるごと売却するので、買い手側からすると予期せぬ簿外債務などのリスクに注意しなければなりません。デューデリジェンスを実施するなどして、会社の詳細をよく調べておくのが重要です。

【関連】婚礼・ウエディング業界のM&A・売却・買収動向!事例、価格相場も解説| M&A・事業承継ならM&A総合研究所

2. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡の手法の違い

事業譲渡・事業売却と株式譲渡は、婚礼・ウェディング業界のM&Aでも使われることが多い手法です。婚礼・ウェディング業界のM&Aを検討する際は、2つの手法の違いを十分に理解しておくのが大切です。

この章では、事業譲渡・事業売却と株式譲渡の違いを詳しく解説します。

事業譲渡/売却の特徴

事業譲渡・事業売却の特徴は、株式の売買はせず、事業に関わる資産そのものの売却です。売却の対価は売却側の企業が受け取ることになり、株主は事業譲渡・事業売却の前後で変化はありません。

事業譲渡・事業売却は、会社の事業の一部分だけを売却できることが利点であり、不採算事業やノンコア事業を売却し、得た資金をコア事業に使うといった選択と集中をしたいときに有効な手法です。

買い手側にとっては、自分が欲しい事業を選択して手に入れられることが利点ですが、どの事業を譲渡するかは売り手側との交渉で決めなければならないので、自身の都合のみで欲しい事業を手に入れられるわけではありません。

株式譲渡の特徴

株式譲渡は、株主を変更するだけで会社の売却ができることが特徴です。特に中小企業の場合は経営者や役員が全株式を保有しているケースが多いので、譲渡手続きは非常にシンプルです。

株式譲渡の対価は株主が受け取るので、経営者が引退して老後の生活資金を得たいときなどに有効な手段だといえます。株式譲渡では、譲渡の前後で会社の状況に大きな変化がなく事業に必要な許認可を引き継げることも特徴です。

婚礼・ウェディングを提供するブライダル業界では許認可の必要はありませんが、運送業や不動産業などでは大きなメリットです。

事業譲渡/売却・株式譲渡の違い

事業譲渡・事業売却と株式譲渡の違いは多くあるので、それを理解したうえで適切な手法を選択するのが重要です。事業譲渡・事業売却では事業そのものを売却するのに対して、株式譲渡では会社の株式を売却する点が異なります。事業譲渡・事業売却では売却した企業が対価を得ますが、株式譲渡では株主が対価を得ます。

事業譲渡・事業売却では、事業の許認可を新たに取り直したり、従業員との雇用契約を結びなおしたりしなければなりません。しかし、株式譲渡では、許認可や雇用契約は基本的にそのまま継続する点が特徴的です。

3. 婚礼・ウェディング事業の特性

婚礼・ウェディング事業には他の業種にない特殊性があるので、事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行う際は、あらかじめ理解しておくのが重要です。ここでは、婚礼・ウェディング事業の主な特性をそれぞれ解説します。

  1. 地域性が大きく繁忙期が限定される
  2. 結婚式場など設備投資費が大きい
  3. リピートする客がいないのが前提の業界
  4. ウェディングプランナーは事業の成功に重要

①地域性が大きく繁忙期が限定される

婚礼・ウェディング事業は、季節や曜日などにより繁忙期と閑散期がはっきり分かれるのが大きな特徴です。

季節では夏や冬よりも春と秋が好まれ、曜日は圧倒的に土日祝日の週末や休日に集中しています。大安や友引といった「六曜」も重視され、大安が忙しくなり仏滅や赤口は閑散となる傾向が見られるでしょう。

地域によって習慣や結婚式の平均予算にも違いがあります。「ゼクシィ結婚トレンド調査2019 首都圏」によると、挙式、披露宴・披露パーティの全国平均は、354.9万円です。

都道府県別では平均費用が高い地域は、福島(387.3万円)、九州(382.7万円)、首都圏(377.9万円)です。一方、平均費用が低い地域は、北海道(200.2万円)、青森・秋田・岩手(318.4万円)など、地域によっても差があります。

参照:リクルート「ゼクシィ結婚トレンド調査2019 首都圏」

②結婚式場など設備投資費が大きい

結婚式場は、一生に一度の結婚式を華やかに演出するために、非常に凝った設備や装飾品などが必要です。飲食業など他のサービス業に比べて設備投資費が大きい点は、婚礼・ウェディング事業の特性といえます。

③リピートする客がいないのが前提の業界

結婚式は多くの場合、一生に一度のイベントなのでリピート客がいないことも、婚礼・ウェディング事業の大きな特性です。常に新しい顧客を開拓しなければならないので、広告に力を入れることが重要です。

④ウェディングプランナーは事業の成功に重要

婚礼・ウェディング事業では、式場など設備の良し悪しに加えて優秀なウェディングプランナーの有無が事業を成功させるカギです。ウェディングプランナーは、その名前から結婚式の演出内容を企画する仕事と思われがちですが、実際の業務は多岐に渡ります。

例えば、新規顧客獲得のための営業や、費用の見積もりや各種書類の作成などもウェディングプランナーの仕事です。婚礼・ウェディング事業の事業譲渡・事業売却や株式譲渡では、優秀なウェディングプランナーがいるかどうかが、成約率や売却価格に影響を及ぼします

4. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡のメリット

婚礼・ウェディングの事業譲渡・事業売却と株式譲渡の主なメリットは、以下のとおりです。

  1. 事業を手放すことによりストレスから解放される
  2. 従業員の雇用先を確保できる
  3. 個人保証・担保から解消される
  4. 将来性の不安がなくなる
  5. 後継者問題の解決
  6. 譲渡・売却益を獲得できる

①事業を手放すことによりストレスから解放される

会社経営は常に多大なストレスがかかり、経営者が心の底から休まることはなかなかありません。ストレスから解放されたい目的で、婚礼・ウェディングの事業譲渡・事業売却や株式譲渡を行うケースもあります。会社を支えてきた経営者は責任感の強い人が多いため、事業を手放すことに罪の意識を感じる人もいるかもしれません。

しかし、実際のM&A事例を見ると、特に中小企業や個人事業においては気力の限界などを理由に事業譲渡や株式譲渡を行うケースは非常に多いです。精神的なメリットも、M&Aでは重要なファクターとなり得ます。

②従業員の雇用先を確保できる

中小企業の経営者が引退する場合、事業譲渡や株式譲渡をせず廃業してしまうことも多いです。廃業して会社が完全に消滅すると、今まで築いてきたノウハウや取引先とのネットワークは失われてしまい、従業員は退職を余儀なくされます

しかし、事業譲渡・事業売却や株式譲渡で婚礼・ウェディング事業を売却すれば、会社を存続させ従業員の雇用を守れます

③個人保証・担保から解消される

中小企業では、融資の際に経営者が個人保証を行い、不動産などを担保に入れているケースがほとんどです。個人保証をしていると、もし会社が破産したときに、経営者が債務を返済しなければなりません。

会社の破産イコール自分自身の破産ともなり得るので、その精神的負担は相当なものです。事業譲渡・事業売却や株式譲渡で婚礼・ウェディング事業を売却して経営権を譲り渡すと、個人保証や担保を解消できます

④将来性の不安がなくなる

結婚自体がなくなることがない限り、ブライダル業界は将来性の不安がなく安定した業種といえます。しかし、近年は人口減少や生涯未婚率の上昇などにより、婚姻数は減少し続けています

その結果、ブライダル業界の市場規模も縮小傾向にあり、将来性に不安を持っている経営者も多いです。事業の将来性に不安を感じて、その事業を事業譲渡や株式譲渡で手放すのは、M&Aでは多くある事例です。

⑤後継者問題の解決

経営者が事業を承継する場合、自分の息子などの親族を後継者に据えるのが一般的です。しかし、近年は親族が他の業種で働いていて会社を継がせられなかったり、経営者の資質がある親族がいなかったりして、親族内で事業承継できないケースが増えています

中小企業では経営者の高齢化が進んでおり、引退したいのに後継者が見つからないケースも増加しています。親族内に後継者がいない場合、M&Aで他の企業に婚礼・ウェディング事業を売却することは有効な方法です。

M&Aならば、幅広い買い手候補から後継者を探せるので、親族内事業承継より適した後継者が見つかるチャンスも多いです。

⑥譲渡・売却益を獲得できる

譲渡益や売却益を得る目的で、婚礼・ウェディング事業を譲渡するのも決して悪い方法ではありません。例えば、株式譲渡で保有している株式を売却すれば、取得価額との差額を個人の利益にできます。現金を得て引退し、老後の生活資金にすることも可能です。

事業譲渡・事業売却では経営者個人には利益が入りませんが、会社が得た利益を他の事業に回したり債務を返済したりといった使い方ができます。

5. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡の成功ポイント

婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡を成功させるためには、以下のポイントを実践することが大切です。

  • 収容人数・立地条件・築年数・修繕歴・財務状況・収益性などのデータを収集する
  • 行える結婚式・ブライダルサービスの内容を洗い出す
  • 優秀なウェディングプランナーを抱えておく
  • スタッフの接客技術を高めておく

上記を実践することで、事業譲渡/売却と株式譲渡の成功確率を高められます。

6. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡する際の注意点

婚礼・ウェディングの事業譲渡・事業売却と株式譲渡する際の注意点は、以下のとおりです。

  1. 譲渡・売却の準備は計画的に行う
  2. 自社の強みをまとめておく
  3. 譲渡・売却の目的を明確にする
  4. 希望する条件をはっきりさせる
  5. 事業譲渡/売却の専門家に相談する

①譲渡・売却の準備は計画的に行う

婚礼・ウェディングの事業譲渡・事業売却と株式譲渡を成功させるには、事前準備を計画的に行っておくのが重要です。後継者にめぼしがついている場合は、後継者教育を十分に行いましょう。譲渡・売却の数年前から取り組んでおくことがベストです。

そのほかには、余分な負債を整理して企業価値を上げ、どのような流れで事業譲渡や株式譲渡を実施するかを記した事業承継計画書を作成しておくのも有効です。

②自社の強みをまとめておく

婚礼・ウェディングの事業譲渡・事業売却と株式譲渡で買い手に興味を持ってもらうには、自社の強み・アピールポイントをしっかりと把握しておくのが大切です。

網羅的に強みを洗い出すことも悪くありませんが、買い手が欲しいと思っている資産やシナジー効果を想定し、買い手が魅力を感じるような強みをできるだけ発見しまとめておくとさらに効果的です。

それを買い手にきちんと伝えられるように、客観的なデータも用いた書面を作成しておくとよいでしょう。書面であれば、口頭で伝えるよりも正確に伝えられるうえに、買い手は持ち帰って後で読み返せます。

③譲渡・売却の目的を明確にする

婚礼・ウェディング事業を事業譲渡・事業売却または株式譲渡する際は、譲渡・売却によって何を得たいのか目的を明確にしておくことが重要です。

新規事業のための資金を得たり、大手の傘下に入ってシナジー効果を得たりといった積極的な理由はもちろん、もう気力がないので引退したい売却益を得たいといった理由でも構いません。

婚礼・ウェディング事業を事業譲渡・事業売却または株式譲渡する際は、どのような目的で行うかを明確にしておき、買い手にもしっかり説明できるよう準備しておきましょう。

④希望する条件をはっきりさせる

婚礼・ウェディング事業の事業譲渡・事業売却や株式譲渡では、希望する条件をはっきりさせておくのが大切です。事業譲渡や株式譲渡では、買い手・売り手双方が納得できる条件を模索しなければならないので、こちらの希望を押しとおせるわけではありません。

譲歩してもよい条件と、どうしても希望したい条件とをはっきり区別して買い手と交渉すれば、買い手にとってもわかりやすくなり、交渉をスムーズに進められます。

⑤事業譲渡/売却の専門家に相談する

婚礼・ウェディング事業の事業譲渡・事業売却や株式譲渡は、ブライダル業界の動向に加えて、会計や税務などの幅広い知識が必要です。M&A仲介会社などの専門家に相談してサポートを受けながら手続きを進めていかなければなりません

昨今では自身で買い手を探せるマッチングサイトもありますが、交渉からクロージングまでの手続きもすべて自身で行うのはM&Aに精通していなければ難しいといわざるを得ません。

相談先はM&A仲介会社やM&Aアドバイザリーが一般的ですが、そのほかに信用金庫や事業承継・引継ぎ支援センターなどの選択肢があるので、自分に合った相談先を探しましょう。

7. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡に関する相談先

婚礼・ウェディング業界の事業譲渡・事業売却と株式譲渡を成功させるには、経験豊富な専門家のサポートのもとで進めていくことをおすすめします。M&A総合研究所では、M&Aアドバイザーが専任につき、交渉からクロージングまで丁寧にサポートします。

料金体系は、完全成功報酬制(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)で、着手金は譲渡企業様・譲受企業様ともに完全無料です。無料相談を受け付けていますので、婚礼・ウェディング業界の事業譲渡・事業売却と株式譲渡をご検討の際は、お気軽にお問合せください。

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8. 婚礼・ウェディングの事業譲渡/売却と株式譲渡まとめ

本記事では、婚礼・ウェディング事業の事業譲渡・事業売却と株式譲渡を解説しました。事業の特性やメリット・注意点を把握し、納得のいく条件で売却できるよう準備しておきましょう。

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