建設会社の事業譲渡のやり方・流れ・メリットを解説!建設業許可に関する注意点も

企業情報本部長 兼 企業情報第一本部長
辻 亮人

大手M&A仲介会社にて、事業承継や戦略的な成長を目指すM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、経営者が抱える業界特有のお悩みに寄り添いながら、設備工事業や建設コンサルタント、製造業、医療法人など幅広い業種を担当。

建設会社の事業譲渡は、どのように行えばいいのでしょうか。ここでは、建設会社の事業譲渡について、概要や現状を紹介しつつ、事業譲渡の方法と流れを紹介します。注意点やスキームのメリットを知って、建設会社の事業譲渡を行いましょう。

目次

  1. 建設会社の事業譲渡とは
  2. 建設会社業界を取り巻く現状
  3. 建設会社の事業譲渡のやり方・流れ
  4. 建設会社を事業譲渡する際の注意点
  5. 建設業の事業譲渡で高額売却しやすいポイント
  6. 建設会社を事業譲渡・M&A・廃業するメリット
  7. 建設会社の事業譲渡に関する相談先
  8. 建設会社の事業譲渡のやり方・流れまとめ
  9. 建設・土木業界の成約事例一覧
  10. 建設・土木業界のM&A案件一覧
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1. 建設会社の事業譲渡とは

建設会社の事業譲渡とは、自社の建設事業の営業について、一部やすべてを他社に譲り渡すことです。譲渡の対象となるものには、資産や負債・ノウハウ・人材などが挙げられます。

事業譲渡を選択すれば譲渡する対象を選べるため、経営方針の転換や不採算事業の切り離しが可能です。事業譲渡を実行しても会社の法人格は消滅しません。つまり、建設事業を譲り渡した後も、法人格を残したまま事業を続けられます。

ただし、事業譲渡を行った場合、譲渡した事業は競業避止義務を負わなければなりません。特別な取り決めがない限り、同じ市町村や隣接する市町村の区域内では、譲渡日から20年間は、同じ事業を営んではならないとされています(会社法第21条)。

建設会社の事業譲渡を行うと、譲渡した建設事業は一定期間事業を行えなくなるため、今後の事業展開を決めてから自社の事業を譲り渡す必要があります。

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2. 建設会社業界を取り巻く現状

建設会社業界では、許可業者数・廃業数・兼業業者数から、現在の状況が見て取れます。

まずは、建設業許可業者の数を見てみましょう。国土交通省が発表した平成31年3月末時点の調査によると、建設業許可を得ている業者の数は468,311としています。

ピークだった2012年の3月末の600,980から、132,669もの数が減少しました。とはいえ、平成26年から減り続けていた建設業許可業者数は、前年の同じ月と比べて0.7%の上昇に転じています。

廃業数は、前年度の21,600から12,823となり廃業数の減少が見て取れます。建設業以外の事業を行っている兼業業者の数は、前年の同じ月と比べて1,869も増え、建設業許可業者に占める割合は、28.2%となりました。

このように、建設会社業界の現状を調べてみると、許可を得ている・兼業を行う業者の数が増え、廃業者の数が減少していることがわかります。東京オリンピックの開催による需要の拡大が、許可業者と兼業業者の増加に現れていると考えられます。

廃業数の減少は、事業譲渡・M&Aを活用しているためといえるでしょう。建設会社業界でも、人材不足や経営者の高齢化といった問題に直面しているのが現実です。

そこで、買い手は廃業を考えている業者から、建設事業や会社そのものを譲り受けることで経験と技術力を備えた人材を確保し、売り手は事業を譲渡することで廃業を回避しているといえるでしょう。

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3. 建設会社の事業譲渡のやり方・流れ

建設会社の事業譲渡では、どのような手続きを経て、自社の事業を譲り渡しているのでしょうか。ここでは、建設会社による事業譲渡について、手続きの仕方や流れを紹介します。

建設会社の事業譲渡を計画している方は、流れを事前に把握しておき、必要な手続きを進めましょう。

【建設会社の事業譲渡のやり方・流れ】

  1. 事業譲渡の専門家に相談
  2. 譲受先との譲渡価格や譲渡内容に関する合意
  3. 取締役会による決議
  4. 株主総会による特別決議
  5. 譲受先との譲渡契約の締結
  6. 資産・負債などの移転手続き
  7. 建設会社の事業譲渡完了

①事業譲渡の専門家に相談

1つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、事業譲渡の専門家への相談することです。M&A仲介会社などに相談をすれば、自社のみで譲渡先を探す手間が省けるだけでなく、譲渡額や契約の手続きのアドバイス・サポートが受けられます。

建設会社の事業譲渡を行うときは、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリー・銀行・公的機関・士業など、専門家に相談しながら進めるようにしましょう。

②譲受先との譲渡価格や譲渡内容に関する合意

2つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、譲渡価格・譲渡内容の合意です。譲受会社が見つかったら、次は交渉を進めるために譲渡価格や譲渡内容を取り決めます。

建設会社の事業譲渡では、譲渡額や譲渡する資産などのほか、建設業の許可も確認を取る必要があるでしょう。

建設業の許可は事業譲渡で承継されないため、譲受先には事前に許可を取得しているか、承継後に許可を得るのかをしっかり確認しておくことが大切です。

そのほかにも、譲受先が公共工事の入札により仕事を請け負う場合には、経営事項審査を受けなければなりません。譲受先がスムーズに事業を始めるためには、許可の取得・審査の日数を考慮して、事業譲渡のスケジュールを決めることが求められます。

工事・入札中の事業を譲る場合には、発注者との協議を経て契約内容を変更したり、発注者から承諾を得たりと、取引先とのやり取りを進めなければなりません。これらの対応も、契約内容を取り決める段階で可能かどうかを伝えておきましょう。

③取締役会による決議

3つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、取締役会による決議です。基本合意契約を結び、譲受側によるデューデリジェンスが実施されると、次は取締役会での決議に移ります。

取締役会を設置している会社では、重要な資産を処分する場合に取締役会の承認が必要となるので、取締役の過半数が決議に出席した状態で、出席者の半数から了承を得なくてはなりません。

④株主総会による特別決議

4つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、株主総会による特別決議です。建設会社が事業のすべてや、事業のなかで重要とされる一部の資産を譲渡する場合には、株主総会の特別決議を経なければなりません。

原則として、議決権を行使できる株主の過半数が出席する株主総会で2/3以上の賛成が必要ですが、以下の場合には株主総会による特別決議を不要です。

【株主総会の特別決議を不要とする場合】

  • 譲渡する資産が、総資産額の20%を超えない
  • 譲受先と特別支配関係にある

反対株主の株式買取請求に応じる

建設会社などの株式会社が事業譲渡を行う場合、経営への影響が予想されるので、株主には株式買取請求権が与えられています。

会社は事業譲渡に反対する株主の権利を守るために、事業譲渡の効力発生日の20日前までに、株主へ事業譲渡の実施を通知しなければなりません。

なお、建設会社が株式を公開している場合や株主総会の特別決議を経た場合は、通知に代えて公告を選択することも可能です。

株式買取請求権を行使する株主がいる場合は、協議のうえ買取価格を決定します。なお、協議可能な期間は効力発生日から30日以内、株式の支払いは効力発生日から60日以内と定められています。

もし、期間内に協議がまとまらない場合は、裁判所への申し立てを行いましょう。申し立ての期間は効力発生日から60日以内で、申し立ての権限は建設会社と株主の両者に与えられています。

裁判所によって価格が決定したら、株主に対して株式の買取額のほか、年6分の利息を支払います(効力発生日の60日以後の料率)。

⑤譲受先との譲渡契約の締結

5つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、譲受先との譲渡契約の締結です。デューデリジェンスの実施を経て、譲受先と契約条件の調整を終えると、事業譲渡契約を結びます。

契約内容は、譲渡する対象や譲渡価格・従業員との再契約・競業避止義務・表明保証・補償条項・商号の引き継ぎ・個人保証の解除などです。

特に建設会社の事業譲渡では、譲受側の建設業許可の有無、工事・入札中の事業を引き継ぎ、公共工事の入札に必要な経営事項審査の関係により、スケジュールの調整が必要とされます。

譲受側が承継した事業をすぐに始められるように、建設業許可を取得するまでの期間や経営事項審査の日数などを考慮して、譲渡日・効力発生日を定めるようにしましょう。

⑥資産・負債などの移転手続き

6つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、資産・負債などの移転手続きです。譲渡契約の内容に従い、取り決めた資産や負債などを譲受側へと移転させます。

事業譲渡は株式譲渡とは異なり、営業に関する権利義務を個別に移転させなければいけません。事業のすべてを譲渡する場合でも、資産・負債・営業権・ノウハウ・土地・建物・機械などは、個別に譲り渡すことが求められます。

譲渡する対象に不動産や預金などがある場合は名義変更が必要でしょう。譲渡側の名義で、これらの財産が登記・登録されている場合は、譲受側への名義変更を行います。

事業に関する債務を引き継いでもらうには、債権者と譲受側の同意が必要です。このほかには、雇用・取引契約も、包括的に承継されないため、譲渡側で従業員・取引先の同意を得た後、譲受側と再契約を結んでもらいましょう。

⑦建設会社の事業譲渡完了

7つ目に紹介する建設会社の事業譲渡の方法と流れは、建設会社の事業譲渡完了です。資産や権利などを譲り渡し、譲渡の対価を受け取ります。効力発生日を迎えると、事業譲渡の完了です。

資産・負債などの移転手続きは、効力発生日と同じ日か、近い日に実施されることが一般的です。

対価の受け取りは、譲渡する財産価値が変動することを考慮しましょう。譲渡契約日から対価の受け取り日までは日が空くため、財産の価値が下がったり上がったりします。

不利益を被らないためにも、譲渡契約には第三者によって財産の再評価を行うことを明記しましょう。

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4. 建設会社を事業譲渡する際の注意点

建設会社の事業譲渡では、どのような点に注意をすればよいのでしょうか。建設業の事業を譲渡する場合には、以下のポイントを押さえて譲渡を進めるようにしましょう。

  1. 建設業許可の扱い
  2. 経営事項審査について
  3. 施工中の工事の扱い
  4. 競争入札参加資格の扱い
  5. 競業避止義務に関する注意
  6. 商号使用に関する注意

①建設業許可の扱い

1つ目に挙げる建設会社の事業譲渡での注意点は、建設業許可の扱いでしょう。建設会社の事業譲渡では、譲渡側が取得していた建設業許可は、譲受側には承継されません。

建設会社の事業譲渡では譲受側に、承継する建設事業の営業に必要な建設業許可の取得が求められるでしょう。

建設業許可の種類は29種に分類されているので、譲受側が建設業を営み建設業許可を取得していても、承継する事業の建設業許可を得ていなければ、事業を始められません。

建設業許可は下請けに発注する工事の規模によって、一般建設業と特定建設業に分けられています。建設会社が事業譲渡を行うときは、譲受側に対し、承継する事業の建設業許可を取得する必要性を伝えておきましょう。

建設業許可の有無を把握しておけば、承継側が事業を始めるまでの期間を短くすることも可能です。事業譲渡のスケジュールに許可取得までの期間を反映させることで、空白期間を短くでき譲受側の事業開始を早められるといえるでしょう。

ちなみに、建設業許可を取得するまでの期間(申請~審査)は、以下の通りです。

建設業許可を取得するまでの期間
都道府県知事の許可 約30日
国土交通大臣の許可 約3カ月

軽微な工事は許可を必要としない

建設会社の事業を譲渡しても、軽微な建設工事だけを請け負う場合には、建設業の許可を取得しなくてもよいとされています。軽微な建設工事と見なされるのは、以下のような基準を満たす工事のことです。

軽微な建設工事
工事の種類 工事内容
建築一式工事 以下のどちらかに該当すると軽微な工事と見なされます
  • 工事一件の請負額が1,500万円未満
  • 延べ面積が150平方メートル未満の木造住宅工事
建築一式工事以外の工事 工事一件の請負額が500万円未満

建設業許可の事業譲渡に関する新制度

2020年10月より、建設業許可の事業譲渡に関する制度が新設されました。建設業者が事業譲渡、会社合併、会社分割などを行う場合、あらかじめ事前の認可を受けることで、買い手が売り手における建設業の許可を承継できるようになりました。

事前認可は、買い手の建設業者が許可要件を備えている必要があるでしょう。建設業者の地位を承継するため、監督処分や経営事項審査の結果も当然に承継します。

認可手続きの流れ

認可申請に関する流れを見ましょう。

  • 相談
  • 申請書提出(窓口審査)
  • 受付
  • 審査
  • 認可
  • 認可通知書送付
  • 後日提出資料の提出

事業承継の認可申請をする場合は、あらかじめ相談を行い、申請後に認可を受けます。すると、事業譲渡の日に買い手の有している建設業の許可を承継先が承継できる流れです。

例えば、神奈川県の場合、事業譲渡の承継認可申請は、承継日の3カ月以上前を目安に申請をしましょう。直前に申請した場合は、承継日までに認可が行えないので注意が必要です。

許可の有効期間は、承継前に売り手および買い手が受けていた許可の有効期間の残存期間にかかわらず、事業譲渡の日に承継した許可および従前から有していた許可の全てが更新され、事業譲渡の日から5年間有効です。

②経営事項審査について

2つ目に挙げる建設会社の事業譲渡での注意点は、経営事項審査です。経営事項審査とは、公共工事の発注者からじかに請け負う場合に必要とされる審査をさしています。

公共事業の入札では、入札資格の審査を経て、客観的事項・主観的事項について参加者が評価されるでしょう。経営事項審査は、この入札の客観的事項にあたる審査で、経営状況・経営規模・技術的能力・その他の客観的事項に関して評価を行います。

経営事項審査の結果は総合評定値によって点数化され、経営状況・経営規模・技術的能力・その他の客観的事項の総合的な評価が示されます。

なお、経営事項審査を受ける場合は、以下の機関に対して申請を行いましょう。

審査の種類 申請先
経営状況の分析 国土交通大臣が指名した機関
経営規模等評価 国土交通大臣の許可を得ている業者 北海道開発局長
地方整備局長
沖縄総合事務局長
都道府県知事の許可を得ている業者 都道府県知事

必要書類について

経営事項審査を申請する場合は、以下のような書類が必要です。ただし、経営状況分析と経営規模等評価とでは、必要となる書類が異なるため、申請する場合には注意をしましょう。

必要な書類は申請先によって異なるケースもあるため、経営事項審査を申請する前に確認するようにしましょう。

  • 経営状況分析の必要書類
  • 経営規模等評価の必要書類

経営状況分析の必要書類

経営状況の分析には、以下のような書類を必要とします。

  • 経営状況分析申請書
  • 財務諸表
  • 建設業許可通知書か、建設業許可証明書のコピー
  • 減価償却実施額を確認できる書類
  • 委任状(代理申請の場合)
  • 経営状況分析申請の追加シートなど(初めて申請する、個人事業主・新設法人などが申請する場合)

経営規模等評価の必要書類

経営規模等評価には、以下の書類を必要とします。

【申請書】

  • 経営規模等評価申請書と総合評定値請求書
  • 工事種類別完成工事高/工事種類別元請完成工事高
  • 工事種類別完成工事高付表
  • その他の審査項目
  • 技術職員名簿
  • 経営状況分析結果通知書(原本)
  • 審査手数料印紙貼付書

場合によっては、以下の書類も必要です。
  • 外国子会社並びに建設業者および外国子会社の数値の認定書(原本)
  • 委任状(士業などによる代理申請)

【添付書類】
  • 工事経歴書(様式第2号)

【確認書類】
  • 法人番号指定通知書
  • 消費税確定申告書の控えと添付書類
  • 消費税納税証明書(審査対象年度のもので、発行から3カ月以内)
  • 工事経歴書に記載されている工事請負契約書か、注文書と請書
  • 直前3年の各事業年度における工事施工金額(様式第3号)
  • 法人税確定申告書・貸借対照表・損益計算書
  • 技術職員の常用的雇用を証明する書類
  • 技術職員の資格を証明する書類
  • 雇用・健康・厚生年金保険への加入を証明する書類
  • 建設業退職金共済・退職一時金・企業年金制度の加入を証明する書類
  • 法定外労働災害補償への加入を証明する書類
  • 防災協定の締結を証明する書類
  • 監査の受審を証明する書類
  • 公認会計士・建設業経理士の資格を証明する書類など

③施工中の工事の扱い

3つ目に挙げる建設会社の事業譲渡での注意点は、施工中の工事の扱いでしょう。譲渡する事業に、施工中の工事が含まれている場合は、譲渡前に発注者と協議を行う必要があります。

協議によって請負契約の変更を行い、施工中の工事を引き継いでもらいましょう。ただし、譲渡側の建設業許可に効果があるときに締結された請負契約は、事業を譲り受ける会社に請負契約が引き継がれます。

【請負契約が引き継がれるケース(建設業法第29条の3より)】

  • 許可更新の規定によって効力を失った
  • 建設業法第28条第3項か、第5項の規定によって営業の禁止を命じられた
  • 前2条の規定により許可を取り消された

これらのケースに該当する場合は、効力を失ったり処分を受けたりしてから2週間以内に発注者へ通知することも必要となるため、期間内の通知を忘れずに行ってください。

④競争入札参加資格の扱い

4つ目に挙げる建設会社の事業譲渡での注意点は、競争入札参加資格の扱いでしょう。公共工事への入札参加資格は、事業譲渡による承継が認められています

ただし、競争入札参加資格の譲渡には、発注者への通知をはじめ、申請や審査が伴います。発注者によって定められた規定が異なるため、事前に申請の方法や審査の基準を確かめておきましょう。

⑤競業避止義務に関する注意

5つ目に挙げる建設会社の事業譲渡での注意点は、競業避止義務です。競業避止義務を負うと、同じの市町村や隣接する市町村において、譲渡した事業の営業が譲渡日から20年の間禁止されます。

事業譲渡では、特別に取り決めを行わない限り、契約内容に競業避止義務が盛り込まれるため、建設会社の事業を譲り渡してからも、同じ事業を行う場合は譲渡契約に競業避止義務を排除する旨を明記しましょう。

⑥商号使用に関する注意

6つ目に挙げる建設会社の事業譲渡での注意点は、商号の使用です。建設会社の事業譲渡で、譲渡側が使用していた商号を譲受側が引き続き使う場合、債務の弁済を譲受側が負うとしています。

ただし、以下の場合には、譲受側が商号を使用しても、債務の弁済は譲渡側にあるとしています。

  • 譲受側が遅延なく、本店の所在地で債務の弁済を負わないことを登記する
  • 譲渡・譲受側が、承継後に遅延なく、第三者に債務の弁済を負わないことを通知する

このように譲受側が引き続き商業を使用する場合には、登記・通知によって、譲渡側に債務の弁済が残ることを覚えておきましょう。

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5. 建設業の事業譲渡で高額売却しやすいポイント


建設業の事業譲渡で高額売却しやすいポイントを見ていきましょう。

資格・技能を有する人材が多い

建設業就業者の高齢化が課題となっています。今後、熟練労働者の大量離職と若年入職者の減少により、資格・技能を有する人材が大幅に不足することが予測されています。

人材確保が経営課題となっている企業も多いことから、資格・技能を有する人材の多さは売り手にとって大きなアピールポイントになるでしょう。

業界全体の課題でも人材不足への対策として、在留資格「特定技能」による外国人の受け入れ制度がスタートしています。そのため、外国人の人材定着に成功している企業であれば、売却しやすいポイントともなるでしょう。

コンプライアンス上の問題がない

建設業でもコンプライアンスが重要とされています。問題となるケースとして、以下が挙げられます。

  • 独占禁止法違反
  • 建設業法違反
  • 多重取引に伴う契約管理におけるコンプライアンス
  • 労務管理におけるコンプライアンス

独占禁止法は、競争を制限する行為を不当な取引制限として禁止しています。談合は、公共工事などの競争入札において、競争するはずの業者たちが、事前に話し合って協定を結ぶ行為であり、不当な取引制限の一つです。

建設業における下請企業では、社会保険へ未加入、未払い残業代などが発生しているのにも関わらず、事業を行っているケースが少なくありません。

これらの問題を抱えている売り手企業は、買い手企業にとって潜在的なコスト・負債となるため必ずチェックされ、価格交渉も不利となります。売り手企業は、事前にコンプライアンス上における問題の有無をチェックし、可能な限り是正していきましょう。

経営事項審査・競争参加資格審査の評価が高い

国、地方公共団体などが発注する公共工事の入札に参加するためには、経営事項審査と競争参加資格審査を受ける必要があります。

経営事項審査は、建設業者の経営規模、経営状況、技術力などが審査され、総合評点が算出されるでしょう。競争参加資格審査は、経営事項審査の総合評点に加え、各機関独自の審査項目による評価が行われ、両者を総合した点数により建設業者の格付けされます。

したがって、これらの格付けのランクにより、入札参加が可能な公共工事の規模などが変わってくるため、評価の高い会社は買い手にとって大きなアピールポイントとなります。

6. 建設会社を事業譲渡・M&A・廃業するメリット

建設会社が選択するスキームには、どのようなメリットがあるのでしょうか。この章では、事業譲渡やM&A、廃業によるメリットを取り上げて解説しますので、それぞれの利点を把握しましょう。

  1. 建設会社を事業譲渡するメリット
  2. 建設会社のM&Aを実行するメリット
  3. 建設会社を廃業するメリット

建設会社を事業譲渡するメリット

建設会社が事業譲渡を行うと、次のようなメリットが得られます。

  • 不採算事業の切り離しにより、資本の選択と集中が行える
  • 建設事業を譲渡することで、事業の切り替えが行える
  • 負担の少ない事業を残すことで、体調・年齢に合わせた経営が可能
  • 法人格を残せる
  • 後継者問題が解消され、会社のブランド・ノウハウを引き継いでもらえる
  • 大手の傘下に入ることで、経営の安定化が望める
  • 同意を得ることで、雇用・取引契約を引き継いでもらえる
  • 個人保証・担保の解消も可能
  • 売却益を債務の弁済に充てられる

事業譲渡は、包括的に権利義務が承継されないものの、譲渡する財産を選べます。今後の経営方針に見合った譲渡が可能といえるでしょう。

従業員や取引先の同意を得られれば、契約を引き継いでもらえるため、従業員の生活を守る・取引先との関係を維持することも可能といえます。

建設会社のM&Aを実行するメリット

建設会社がM&Aを行うと、どのようなメリットが得られるのでしょうか。よく利用される株式譲渡では、以下のようなメリットが挙げられています。

  • 複雑な手続きを必要としない
  • 権利義務が包括的に承継される
  • 創業者利益を獲得できる
  • 後継者問題を解消できる
  • 従業員の雇用を維持できる
  • 買い手の資本・ノウハウを活用できる

株式譲渡によるM&Aは、権利義務が包括的に承継されるため、個別に手続きを進める必要がありません。後継者問題や雇用の継続などは、事業譲渡と変わりがないものの、譲渡による対価は創業者(オーナー)に入ります。

建設会社を第三者へ譲渡し、引退する場合には、老後の生活に必要な資金を得られるといえるでしょう。

建設会社を廃業するメリット

建設会社が廃業を選ぶ場合には、以下のようなメリットが得られます。

  • 早期に廃業を決めることで、資産の減少を避けられる
  • 会社経営からの解放
  • 親会社の負担を減らせる(子会社への貸付・税金の支払い)
  • 会社維持のための費用を支払わずに済む

廃業を選ぶことで、経営から解放され、会社を維持するための費用を捻出せずに済むといえます。早い段階で建設事業に見切りをつければ、負債が資産を上回る前に清算を終え、財産を手元に残すことも可能です。

しかし、廃業を選んでしまえば、従業員や取引先との関係を断ち切る必要があるため、関係者の生活・経営に影響を与えます。

建設会社を支えてくれた社員や、付き合いの長い取引先に影響が及ばないようにするには、事業譲渡やその他のM&Aを選択して、譲受側に雇用・取引を引き継いでもらいましょう。

7. 建設会社の事業譲渡に関する相談先

M&A総合研究所では、中小・中堅企業を中心としたM&A仲介を行っており、案件ごとに専任のアドバイザーが就き、クロージングまでのフルサポートを行っています

料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより随時、受け付けていますので、建設会社の事業譲渡をご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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8. 建設会社の事業譲渡のやり方・流れまとめ

建設会社の事業譲渡に関して、譲渡の内容や現状、方法・流れなどを紹介しました。建設会社の業界では、許可を取得し、兼業を行う企業が増えて、廃業する数が減っていることがわかります。

需要の増加に伴って新規に参入する企業が増え、高齢化や人材不足、後継者問題を解消するために、事業譲渡などのM&Aが増加しているといえるでしょう。しかし、建設会社の事業譲渡では、許可や審査、資格における注意点が見られます。

自社に事業譲渡の専門家を置いていない場合には、M&Aの専門家に依頼するのがベストです。専門家に依頼することにより、対象企業のピックアップ、適切な譲渡価格の提示、煩雑な手続きのサポートなどを受けられます。

9. 建設・土木業界の成約事例一覧

10. 建設・土木業界のM&A案件一覧

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