株式交換比率とは?決め方・計算方法を解説!例も紹介!

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この記事の監修専門家
M&A総合研究所 公認会計士
高谷 俊祐

完全子会社化による合併を行う時は、両社の株主に悪い影響が出ないように株式交換比率を決めて、株式の交付や交換を行います。この記事では、株主交換比率についての決め方や計算方法について解説します。また、実際に行われた株式交換比率の事例についても紹介します。

目次

  1. 株式交換比率とは
  2. 株式交換比率の決め方・計算方法
  3. 株式交換比率の主な計算方法
  4. 株式交換比率の具体例をご紹介
  5. 株式交換比率公開後の注意点
  6. 株式交換によるM&Aの相談先
  7. まとめ
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1. 株式交換比率とは

株式交換比率について

株式会社同士が合併を行う際に必ず株式交換比率が公表されます。株式交換比率によって株主は議決権などに大きな影響を受けることになります

この記事では、株式交換比率について過去の株式交換比率の事例も交えて、詳しく解説します。

株式交換とは

株式交換とは合併前の株式と合併後に発行される株式を交換することを言います。合併の中でも完全子会社化されるとき株式交換が行われます。合併の際、株式交換の対象となる株主は消滅会社の株主です。

合併後、消滅会社の株式はただの紙切れとなるため、株主は消滅会社に株式の買い取り請求をするか、合併後の会社の株式と交換することができます。この後者の方法を株式交換といいます。

株式交換比率が株主に与える影響

株式には自益権と共益権があります。自益権とは配当金を請求するなど、経済的利益を受ける権利のことです。

一方、共益権とは株主総会で議決権を持つなど会社の運営に参加する権利のことを言います。

詳しくは後程解説しますが、株式交換比率は一般的に株主の経済的利益に影響が出ないように、考慮して決められるため、自益権への影響はありません。

しかし、株式交換比率によって保有できる株式数が変化するため、株式総会での議決権数が変化するなど共益権には大きな影響を与えます

2. 株式交換比率の決め方・計算方法

株式交換比率の決め方・計算方法について

この章では、株式交換比率の決め方・計算方法について紹介します。

ここでは、先ほど紹介した株主の自益権と共益権がどのように変化するかがわかるように、架空の事例を設定して解説していきます。

設定の事例(架空の事例)

A社がB社を完全子会社化したという事例をもとに紹介します。それぞれの株価は株式交換比率公表から少し前の時点で、A社は1000円、B社は250円でした。

そして、B社の株主であるあなたはB社株式を400株保有しています。しかし、B社は消滅するため、あなたはB社株式とA社株式との株式交換を行うことを決めました。

株式交換比率の決め方・計算方法

株式交換比率はA社とB社の企業価値や株価などを参考に決められますが、原則は株主の資産に変化がないように決められます

そのため、この事例の株式交換比率は4:1でした。株式交換を行ったあなたはA社の株式を100株保有することになりました。

株主としての自益権について、出資額は株式交換前は10万円、交換後も10万円なので変化はありません。一方、共益権について株主総会での議決権はB社の時400票あったのですが、A社では100票と減少してしまいます

つまりこの事例の場合、株主総会での発言力が低下することになります。これが株主交換で株主に影響を与える事例の1つです。

株式交換比率は株主から見た言い方ですが、企業側ではこのことを合併比率と呼んでいます。以下の記事では、企業側から見た比率の決め方などについて紹介していますので、ぜひあわせてご覧ください。

【関連】合併比率とは?決め方や計算式を紹介【具体例あり】

3. 株式交換比率の主な計算方法

株式交換比率の主な計算方法について

次は株式交換比率の主な計算方法について解説します。先ほど紹介したように、株式交換比率は原則的に両社の株価によって決められますが、その株価はどのようにして決められるのでしょうか。

上記の株価は企業価値をもとにして決められています。つまり、株式交換比率を算出するためには企業価値を算出しなければならないということになります。

その企業価値の算出方法は、大きく分類すると以下の3種類があります。
 

  1. コストアプローチ
  2. インカムアプローチ
  3. マーケットアプローチ

コストアプローチ

コストアプローチとは、財務諸表をもとに企業価値を算出する方法です。コストアプローチには、以下の2種類の計算方法があります。
 

  1. 時価純資産法
  2. 簿価純資産法

①時価純資産法

時価純資産法とは、時価での純資産の額を企業価値を算出する方法です。算出時は、財務諸表のうち貸借対照表を用いて計算し、対象会社の総資産額から負債の額を差し引いて求めます。

さらに、その額から現在までの減価償却費などを考慮し、時価として補正を行います。時価純資産法は時価で企業価値を求めるため、合併時の正確な企業価値を求めることができます。

②簿価純資産法

簿価純資産法とは、年度末など財務諸表を作成した時の純資産の額を企業価値を算出する方法です。時価純資産法との違いは、次のようになります。
 

  1. 時価純資産法 = 合併時の企業価値を求めてる方法
  2. 簿価純資産法 = 直近の年度末の企業価値を求める方法

簿価純資産法での計算においても、財務諸表のうち貸借対照表を用いて算出します。計算方法はその会社の総資産額から負債の額を差し引いて求めます。

簿価純資産法では、時価純資産法のように補正は行わないため、計算間違いなどのリスクを低減できる点が、メリットであるといえます。

インカムアプローチ

インカムアプローチとは、将来得ることができる利益の額を考慮して企業価値を求める計算方法です。インカムアプローチには以下の2種類の計算方法があります。

  1. DCF法(ディスカウントキャッシュフロー法)
  2. 配当還元法

①DCF法

フリーキャッシュフローとは、会社の利益から必要経費を差し引いた金額のことで企業が投資など自由に使える資金のことを言います。

DCF法は、合併時から先の5年間得られると予想されるフリーキャッシュフローを現在価値に割り引き、合計して企業価値を算出します

②配当還元法

配当還元法は、株式の配当金をもとに企業価値を算出する計算方法です。基本的に業績と株式の配当金は連動しているため、配当金をもとに企業価値を算出することができます。しかし、この計算方法は現在あまり使われていません。

特にM&Aの売却金額の参考になる企業価値の算出の際には使われません。その理由は、株式の配当金額を取締役会などで自由に決めることができるからです。つまり、会社売却時を見越して、配当金を増額し、一時的に企業価値を上げておくことで不正に売却金額を上げることができます。

マーケットアプローチ

マーケットアプローチとは、市場の取引価格をもとに企業価値を算出する方法です。特に上場していない中小企業の企業価値の算出方法としてよく使われています。

マーケットアプローチには、以下の2種類の計算方法があります。
 

  1. 類似企業比較法
  2. 類似取引比較法

①類似企業比較法

類似企業比較法とは、会社の規模が似ており、かつ同業種である企業の企業価値を参考にして計算する方法です。

他企業数社の企業価値を参考にするのでより客観的な企業価値を求めることができます。

②類似取引比較法

類似取引比較法は、会社の規模が似ており、かつ同業種である企業の取引を参考に計算する方法です。ここでいう取引とは、株価や会社売却時の金額のことを言います。

この方法では企業価値を求めることはできませんが、株式交換比率を求めるために必要な株価をすぐに求めることができます。

企業価値の決め方・計算方法については以下の記事でも紹介していますので、興味のある方は是非ご覧ください。

【関連】会社買収の価格(金額)の算定方法や相場を解説!事例10選!

プレミアムの支払いについて

プレミアムの支払いとは、株式交換をした際に比率などの影響で不利になるときに支払われる対価のことを言います。株式交換比率の決め方は、原則両社の株価をもとに決められます。

しかし、買収後の株主構成の調整など買収側の戦略により株式交換比率を低下させるケースもあります。この場合、売却側の株主の出資額(株式の資産)は減少することになります。

先ほどの例をもとに説明すると、株式交換比率が40:1となると、出資総額が10万円から1万円に減少します。

これに対してプレミアムなど何の補填もないと会社と株主間でトラブルになる可能性があります。これを避けるため、株主が不利になると考えられる場合はプレミアム支払いを行うようにしています。

4. 株式交換比率の具体例をご紹介

株式交換比率の具体例の紹介

この章では、実際に行われた株式交換比率の具体例を10個紹介します。

①出光興産と昭和シェル石油

1つ目の事例は出光興産による昭和シェル石油の子会社化です。2018年に両社の経営統合が発表され、2019年に株式交換が行われました。

この事例の株式交換比率は昭和シェル石油の株式1株に対して、出光興産の株式0.41株を割り当てます

この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。出光興産はもともと昭和シェル石油の株式を約31%保有していましたが、約6000億円かけてさらに株式を買い増しています。

両社は石油エネルギー事業の企業ですが、この経営統合で環境問題を配慮した再生可能エネルギー事業を力を入れていく方針です。

②味の素とカルピス

2つ目の事例は味の素によるカルピスの子会社化です。2007年に完全子会社化とともに株式交換が行われました。

この事例の株式交換比率はカルピスの株式1株に対して、味の素の株式0.95株を割り当てます

この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。味の素はもともとカルピスの筆頭株主でしたが、さらに株式を買い増して完全子会社化しています。

この完全子会社化により、味の素はカルピスブランドを生かして、飲料事業を強化していく方針です。

③ユニーとファミリーマート

3つ目の事例はファミリーマートによるユニーの子会社化です。2016年に両社の経営統合が発表され、そのあと株式交換が行われました。

この事例の株式交換比率はユニーの株式1株に対して、ファミリーマートの株式0.138株を割り当てています

この株式交換により、ユニー株保有者の議決権は大きく減少しましたが、プレミアム支払いは行われていません。

ユニーは小売り事業、ファミリーマートはコンビニ事業がメインですが、この経営統合は両社の強みから来るシナジー効果に期待して行われました。

④ユニーとUCS

4つ目の事例はユニーによるUCS(クレジットカード会社)の子会社化です。2018年に完全子会社化が発表され、そのあと株式交換が行われました。この事例は特殊でUCS株式を金銭対価として株式交換を行っています。

この株式交換ではUCSの株式1株に対して、1830円の金銭が交付されています。ユニーはUCSを子会社化することで、クレジットカードを通した顧客の利便性を向上させようとしています。

⑤パナソニックとパナホーム

5つ目の事例はパナソニックによるパナホームの子会社化です。2016年に子会社化が発表され、2017年に株式交換が行われました。この事例の株式交換比率はパナホームの株式1株に対して、パナソニックの株式0.8株を割り当てます

この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。なおこの事例で、パナソニックは完全子会社化を目指していましたが、パナホームの株式を約80%しか取得できず、完全子会社化できていません。

両社はもともとパナソニックグループでしたが、この子会社化で経営のコスト削減、効率化、販路拡大などを目指します。

⑥株式会社KADOKAWAと株式会社ドワンゴ

6つ目の事例はKADOKAWAとドワンゴの経営統合です。この事例では、統合持株会社が新設され、そこの株式と株式交換を行いました。

株式交換比率はKADOKAWAの株式1.168株とドワンゴの株式1株に対して、統合持株会社の株式1株が割り当てられています

この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。両社事業のシナジー効果や統合持株会社体制による経営の機動化・効率化を目的に経営統合が行われました。

⑦セブン&アイHDとニッセン

7つ目の事例はセブン&アイHDの完全子会社であるセブン&アイ・ネットメディアによるニッセンの子会社化です。

この事例では、セブン&アイ・ネットメディアの親会社であるセブン&アイHDの株式と株式交換を行いました。

株式交換比率はニッセンの株式1株に対してセブン&アイHDの株式0.015株を割り当てます。この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。

ニッセンは赤字経営が続いていたのですが、子会社化することで抜本的な経営改革を行い、テコ入れをしています。

⑧アルプス電気とアルパイン

8つ目の事例はアルプス電気とアルパインの経営統合です。この事例での株式交換比率はアルパインの株式1株に対してアルプス電気の株式0.68株を割り当てます。この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。

両社は電気機器系を製造するメーカーなのですが、車機器系の商品開発に注力、シナジー効果を得るために経営統合を行います。

⑨太陽誘電とエルナー

9つ目の事例は太陽誘電によるエルナーの完全子会社化です。この事例での株式交換比率はエルナーの株式1株に対して太陽誘電の株式0.025株を割り当てます。この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。

太陽誘電とエルナーは完全子会社化以前から資本業務提携を行っており、シナジー効果を得ていました。しかし、エルナーのプリント回路事業の経営不振、債務超過など苦しい経営状態でした。

そこで太陽誘電は、引き続きシナジー効果を得るためにエルナーを救済する形で完全子会社化しました。

⑩日本無線株式会社と長野日本無線株式会社

最後に紹介する事例は日本無線による長野日本無線の完全子会社化です。この事例での株式交換比率は長野日本無線の株式1株に対して日本無線の株式0.698株を割り当てます。この株式交換によるプレミアム支払いは行われていません。

両社はともに通信機器関連の製造メーカーです。この子会社化では、両社からのシナジー効果を得ることが目的です。

5. 株式交換比率公開後の注意点

株式交換比率公開後の注意点について

最後に、株式交換比率が公開された後、株主が注意するべき点について紹介します。

経営者自身が、自社の大株主であることが多い中小企業で株式交換を行う場合は、以下のことに十分注意しましょう。
 

  1. 株価が変動する可能性
  2. 単元未満株式になる可能性

①株価が変動する可能性

株式交換比率が公表された後に株価が変動する可能性は十分にあります。このような株価変動により損をする可能性があるので注意が必要です

基本的には株式交換比率は直近の株価を参考にして決められます。しかし、株式交換比率公開後、多くの短期投資家のマネーゲームの影響で、株価が大きく変動することもあります。

それが実際に起こった例が、ストロベリーコーポレーションによるアドバネクスの完全子会社化です。この事例では、株式交換比率公開後、ストロベリーコーポレーションの株価は一気に高騰しました。

この株価のままで株式交換が実行されると、アドバネクスの株主は大損することになり、場合によっては株式交換比率の見直しが必要なのではと、意見する人もいました。

しかし、最終的には株価は元の水準に戻り、問題なく株式交換が行われました。株式交換比率公開後の株価変動で大損する例は稀ですが、注意をしておくほうがいいでしょう。

②単元未満株式になる可能性

もう一つ注意しておくべきことは株式交換後、単元未満株式になる可能性があることです。単元株式とは株式を100株単位や1000株単位で取引することで、取引時の効率化を目的として導入されています。

しかし、消滅会社の株式で株式交換を行う場合、単位に満たない株式が発生する場合があります。このような株式を単位未満株式といい、株主総会の時には議決権を与えられません。

また、単元未満株式になると株式として保有することができないため、株式交換実行時に株式の買い取りを請求するか、単元株式になるまで株式を買い増す必要があります。

6. 株式交換によるM&Aの相談先

株式交換によるM&Aの相談先について

株式交換を行う際には、そのメリットを考慮して検討しますが、それ以外に企業価値から株価を算出や、株式交換後の株価変動の可能性なども考えておかねばなりません。

なかでも、企業価値から株価を算出する際の計算には専門知識も必要となるため、M&A仲介会社などのサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。

M&A総合研究所では、株式交換によるM&Aの実績・経験が豊富な公認会計士が、一括サポートを行います。

着手金・中間報酬は無料、成功報酬は業界最安値であるため、コストを抑えつつ株式交換によるM&Aを行いという場合も、おすすめです。

無料相談を行っていますので、株式交換をご検討の方はぜひ一度お問い合わせください。

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7. まとめ

株式交換比率についてのまとめ

完全子会社化する際の株式移動には、手続きが簡便であるなど企業にとってメリットがあるため株式交換比率がよく用いられます。しかし、この方法は株主にも大きな影響を与えます。

自身が経営者として、もしくは株主として株式交換にかかわるときにはその比率に十分注意しましょう

株式交換を行うときは、以下の要点をしっかり確認しておきましょう。

  • 株式交換比率の決め方や計算方法→株式交換比率は原則的に直近の株価をもとに決める
  • 株式交換比率を求めるための企業価値の計算方法→企業価値を計算する方法には大きく3種類あり、それぞれの方法を用いて株式交換比率を計算する必要があり、その中から最適な比率を決定する

株式交換比率を求めるための企業価値算出には、専門知識が必要となる要素もあるので、専門家のアドバイスのもと進めていくのがいいでしょう。

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