2020年11月24日更新
食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却!業界動向・相場・手法を解説!【成功事例あり】

税理士法人系M&Aブティックにて調剤薬局・食品製造業・保険代理店業等のM&Aを成約に導く。会社法、会計、税務等の幅広い知識、M&A成約の経験を活かし、調剤薬局・食品製造・保険代理店業界を中心に担当。
食品メーカー・食品会社のM&A・買収・売却(譲渡)が盛況です。食品メーカー・食品会社のM&A動向や買収・売却価格の相場を分析するにあたり、関連する精油業界、代表的商品である冷凍食品、工場などとの兼ね合いも含め解説します。
目次
1. 食品業界とは?食品会社についての基礎知識
まずは、食品メーカー・食品会社の業界と動向について確認していきましょう。
どのような会社なのかを再確認しておくことで、市場を理解しやすくなるはずです。
食品メーカー・食品会社とは
はじめに、食品メーカー・食品会社の定義から見ていきましょう。
総務省の日本標準産業分類「食料品製造業」によると、「食品製造業」は大分類「製造業」の中の中分類である「食料品製造業」です。
つまり、製造業の中の食料品製造業というくくりとなっています。
食料品製造業に含まれている業種は、具体的には以下のようなものです。
- 畜産食料品、水産食料品などの製造
- 野菜缶詰、果実缶詰,農産保存食料品などの製造
- 調味料、糖類,動植物油脂などの製造
- 精穀、製粉及びでんぷん、イースト、こうじ、麦芽などの製造
- パン、菓子、めん類、豆腐、油揚げ、冷凍調理食品、惣菜などの製造
食品メーカー・食品会社の経営をしているのであれば、自社がどのような業種になるのかを確認しておきましょう。業種について、もう少し詳しく見ておきます。
製造しているもの(業種)
総務省の定義による「食料品製造業」において製造されるものは、前述のとおりです。
なお、食料品製造業の中には、清涼飲料、酒類、茶、コーヒー、氷、たばこ、飼料、有機質肥料の製造は含まれません。これらの製造は「飲料・たばこ・飼料製造業」に分類されます。
したがって、もしも自社が上記5つの業種に含まれていないなら、定義上の食品メーカー・食品会社というくくりではないので気をつけなければなりません。
M&Aを成功させるには、自社の業種を知ったうえで相性のよい相手を探すことがポイントとなります。
市場規模
経済産業省が実施している工業統計調査の「2019年確報 産業別統計表」によると、2019(令和元)年における食料品製造業の市場規模概要は以下のとおりです。
- 市場規模(製造出荷額):29兆7,815億4,800万円(前年比2.5%増)
- 企業数従業員4名以上の事業所:24,440社(前年比1.8%減)
- 従業者総数(従業員4名以上の事業所):1,145,915人(前年比0.6%増)
業界動向
食品メーカー・食品会社をとりまく動向は、以下のとおりです。
- 国内市場は縮小傾向
- 原料価格上昇に伴い値上げ
- 食品表示偽装などによる安全性への意識拡大
- 健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現
これらの動向を押さえることで、食品メーカー・食品会社の業界への理解が進みます。それぞれについて順番に見ていきましょう。
国内市場は縮小傾向
食料品製造業界は、食料品価格の下落や少子高齢化の影響により、国内市場は縮小傾向です。
市場の縮小に加え、所得水準伸び悩みやデフレ長期化を主因とする消費者の節約志向の強まりもあります。企業側にとっては、価格競争が激化するとともに、より競争力の高い製品の開発や生産性の向上が求められることは間違いはありません。
また、近年では所得水準が伸び悩んでいます。さらに消費税率が上がったことによって、国内市場が縮小している中で、どんどん企業間の競争が激しくなっているのです。
中小規模の食品メーカー・食品会社は生き残るための経営戦略をしっかり立てていかなければならないでしょう。
原料価格上昇に伴い値上げ
食料品は、原材料の多くを輸入に頼っているため、小麦や大豆・食肉などの価格変動や為替動向の影響を大きく受けてしまうのが実情です。
近年の世界的な食料品原料の市場のトピックとして、中国の市場拡大があります。これにより、原材料価格が高騰しているほか、為替の円安進行によってコストが増加傾向です。値上げが難しい食料品製造業者にとっては、こうした価格変動は経営上の大きな課題となります。
食品表示偽装などによる安全性への意識拡大
近年、食料品の表示偽装問題の報道が相次ぎました。
不適切な情報を提示して食料品を製造・販売していた業者があったわけですが、これにより、消費者の食の安全に対する意識はシビアになりました。
したがって、衛生管理がなっていない食品メーカー・食品会社や、消費者からの信用が薄い食品メーカー・食品会社は、競争に負けていく傾向にあります。
食品について、消費者の安全意識を裏切らないような経営が求められているのです。
健康ブーム、環境への配慮など多様なニーズの出現
食品の安全性の観点からは、トレーサビリティにも注目が集まっています。
トレーサビリティとは、物品における流通経路を生産段階から最終消費段階もしくは廃棄段階まで追跡ができる状態のことです。日本では、牛肉、コメ、コメ加工品には、この対応がすでに義務付づけられています。
さらに、健康ブームによる健康に対する意識が向上したことへの対応なども迫られてきました。
2. 食品メーカー・食品会社のM&A動向
消費者の求めるクオリティは、年々上がっています。したがって、消費者のニーズを満たせるような経営を行っていかなければなりません。
そのために、食品メーカー・食品会社ではM&Aが盛んです。
食料品製造業は大きく2つに分類が可能であり、それは「素材型」と「加工型」です。
M&A動向については、この2つによって分かれる面がありますので、最初に記しておきます。
- 素材型…加工メーカーや外食産業への原料供給が主要業務(製糖、製粉、製油、飼料など)
- 加工型…原料を仕入れ加工品を製造し家計へ供給することが主要業務(パン・菓子、調味料、冷凍食品、めん類など)
そして、食品メーカー・食品会社のM&A動向には、以下のようなポイントがあります。
- 多角化を目指す同業他社の買収が活発化
- 海外進出のための海外メーカーとのM&A増加
- 異業種からの新規参入M&Aが増加
- 地域密着型ファンドなどの参入
- コスト高を受けた業界再編
それぞれのポイントについて順番に確認し、食品業界のM&A動向を把握しましょう。
多角化を目指す同業他社の買収が活発化
多角化を目指してM&Aが活発になっているのは、「素材型」の食料品製造企業です。
素材型は、一般的には商品の差異化が難しいといわれているうえ、加工メーカーへの原料供給は規模が大きいほど効率的です。つまり、スケールメリットがとても大きくなります。一方で、関税引き下げなどに伴う輸入品との競争激化や、加工メーカーや外食産業からの値下げ圧力が働いているところで、同業他社の買収による再編が進みました。
近年の動向で大きいところでは、2014(平成26)年に砂糖大手の三井製糖が、病院・介護施設向け栄養補助食品メーカーのニュートリー(三重県)を買収しています。
海外進出のための海外メーカーとのM&A増加
日本国内は市場が飽和状態で競争が厳しく、積極的に海外に打って出ようとする動きもあります。加工型の食料品製造企業が実施している、クロスボーダーM&A(海外企業とのM&A)がそれです。
2014年に、味の素が米国におけるアジア食の冷凍食品トップのウィンザー・クオリティ・ホールディングスを買収しました。
この狙いは、ウィンザーが持つ「冷凍食品における米国消費者に精通したマーケティング力」「冷凍食品における全米に広がる流通ネットワークと営業力」「冷凍食品における全米をカバーする生産拠点」を獲得することです。
このように、大手企業を中心として海外メーカーとのM&Aは増加しています。資金力に余裕があるなら、海外企業とのM&Aを積極的に検討してみてください。
異業種からの新規参入M&Aが増加
異業種からの新規参入M&Aで、今後、増加が見込まれるのは健康食品を製造する企業の買収でしょう。いうまでもなく、昨今の健康志向の高まりの動向を受けてのことです。
また、食料品製造企業には、老舗ながら後継者不在や経営不振に陥っていたり、特定地域のマーケットに強みを持ったりする企業なども多くあります。こうした企業の買収には、今後さまざまな業種から手が挙がることも十分あり得る話です。
もしも自社がそのような状況なら、M&Aの際には幅広い視野で買い手を探すのがよいでしょう。同業者以外から、よい買い手が見つかる可能性も非常に高いのです。
地域密着型ファンドなどの参入
ファンドは、一般的に経営関与を目的として株式を取得し、その企業の経営に関与することで株式価値を高めようとするのが常です
そして、ファンドは通常、株式価値向上後に、株式の新規上場・ 再上場や他社への転売を通じた投資利益の獲得を目指していますが、後継者難をカバーするファンドもあります。よくあるのが「地域密着型ファンド」や「事業承継ファンド」などです。
主な流れとしては、ファンドが会社の株式を取得し、新たなオーナーとして経営をします。その中で、人材を育て、適任者を見つけて後継者の育成も並行していくのです。その後、後継者に会社を任せて、確実に存続させていくという形になります。
コスト高を受けた業界再編
食料品業界は原料費が高騰傾向にあることに加え、加工メーカーや外食産業からの値下げ圧力にもさらされています。
こうした中で、「素材型」の食料品製造企業では、M&Aによる業界再編が進みました。統合によって、原材料調達や間接業務の効率化、工場統廃合などによるコスト削減や、販売先との価格交渉力の向上を目指したものです。
この業界再編で最も象徴的だったのは、精油業界になります。2000年代前半に、それまでの精油上位7社が精油3社(J-オイルミルズという精油企業、日清オイリオグループという精油企業、昭和産業という精油企業)に集約されました。
このように、値下げ圧力に対抗するためにM&Aによる業界再編は進んでいます。自社が素材型の食品会社であれば、M&Aで業界が変わっていくことを念頭に入れて経営していきましょう。
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3. 食品メーカー・食品会社がM&Aするメリット
食品メーカー・食品会社がM&Aするメリットを押さえて、自社が実施する際に多くのメリットを受けられるようにしておきましょう。
譲渡側と買収側のメリットに分けて順番に見ていきます。
譲渡側のメリット
食品メーカー・食品会社のM&Aでは、譲渡側のメリットとして以下が挙げられます。
- 後継者問題が解決
- 雇用の継続
- 負債の解消と創業者の利益確保
- グループに入ることによる経営の安定
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
後継者問題が解決
後継者不在の問題を抱えている会社にとっては、M&Aによる会社売却が問題の解決手段になり得ます。
後継者がいなければ、会社を存続させることが難しく、廃業を検討することもあるでしょう。その前に、他の会社にM&Aによって売却して、経営を引き継いでもらうのです。
そうすると、後継者は売買した相手側から選ばれます。つまり、後継者がいなくてもM&Aであれば問題なく会社が存続していくことになるのです。
もしも、身近なところに後継者が見つからなくても、事業の存続をあきらめずにM&Aを検討してみましょう。
雇用の継続
M&Aによる事業・会社の売却では、通常は会社・工場と従業員の雇用関係もそのまま引き継がれます。
経営者であれば、今まで会社や工場に貢献してくれた社員を、会社都合で失業させてしまうのは心苦しいはずです。中小企業の場合、M&Aによる事業・会社売却の目的が、この雇用の維持に置かれていることも少なくありません。
食品会社や食品メーカーを廃業してしまいそうなときが来たのであれば、M&Aによって従業員の雇用を守ることを考えてみてください。
負債の解消と創業者の利益確保
個人事業主や中小企業では、代表者が個人保証を利用しているケースが多いです。
これらは、廃業を選んでも残り続けます。そうすると、リタイア後の生活が苦しくなるということはないでしょうか。
M&Aで会社を売却すれば、負債にまつわる個人保証も買収側に移動します。また、廃業のように設備などの処分に必要なコストも抑えられるのです。
さらに、売却の対価として、まとまった資金を得られます。経営者(創業者)にとって、負債の解消と利益を得られるのも、見逃せないメリットとなるでしょう。
グループに入ることによる経営の安定
現状において、経営不安を抱えている場合や業績見通しが悪い場合には、自社より規模も大きく資本力のある会社もしくはグループに吸収してもらうことで、当面の経営不安からは逃れられます。
もちろん、立て直せるかどうかはその後の運営次第ですが、資金や経営ノウハウが集まれば、経営立て直しの初期条件は大きく改善されるでしょう。大手企業の傘下に入ることで経営が安定することは珍しくありません。
自社の経営難をあきらめる前に、M&Aで改善できないかどうかを考えてみましょう。
買収側のメリット
食品メーカー・食品会社のM&Aでは、買収側のメリットは以下のとおりです。
- 市場の拡大
- 商品開発力・商品群・ブランド力の強化
- 製造拠点の拡大
- 販売チャンネルの獲得
- 人材確保
- スケールメリットの享受
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
市場の拡大
M&Aによる企業買収では、相手の会社・工場を丸ごと買収できます。取引先や従業員まで全てです。
単純に考えれば、買収当初は相手の売上がそのまま自社にプラスされます。同業者を買収した場合は、同じ市場で相手が得ていたシェアをそのまま獲得することになるからです。
特に、大手で市場規模が大きいほど、単に市場でのプレゼンスが高まるだけでも、市場における発言力の強化につながりますのでメリットになります。
商品開発力・商品群・ブランド力の強化
企業買収は通常、市場シェアの拡大のみを目指すものではありません。相手の会社のマーケット(エリア、対象顧客)から技術やノウハウに至るまで、自社の事業と合わせればプラス以上の効果を発揮させることを目指して行われます。これが、シナジー効果(相乗効果)です。
上記の「市場の拡大」で述べたシナジー効果は、食料品製造業において、具体的には相手の会社を買収することで「商品開発力」が強化され、「商品群」が豊富になり、「ブランド力」が強化される、というプロセスをたどると考えられます。
製造拠点の拡大
食品の種類にもよりますが、加工型の食料品製造業の場合には、この製造拠点(工場)の拡大が、他業種よりも企業買収のメリットになる場合が多いです。
製造しているものにもよりますが、食料品は品質を維持できる期間が工業製品などに比べてはるかに短くなります。このため、製造拠点(工場)から遠方の場所への配送などが難しくなってしまうのです。
つまり、食料品において自社商品を販売するエリアを広げるためには、そのエリアに製造拠点(工場)を置く必要があるケースが多いといえます。こうした場合、自社で工場を新設するのもよいですが、立地の獲得から設備投資、また従業員の採用まで、手間も時間もかかってしまうのは否めません。
M&Aによる企業買収であれば、製造拠点(工場)を立ち上げる手間と時間を大きく省略できます。
販売チャンネルの獲得
大手企業は、国内で今以上に市場シェアを広げるのは難しい状況です。そのため、手つかずの海外市場を目指す動きが活発化しています。
つまり、M&Aで海外企業を買収して、市場拡大とシェアを広げる企業が多いのです。
海外で商品を展開するには輸出する方法もありますが、ブランディングができていない地域で、一から販売先を探し、その国の市場でのプレゼンスを獲得するまでには、膨大な時間がかかります。
そこで、海外メーカーを買収することで、海外メーカーが従来、持っている販売チャンネルを一気に獲得できるのです。もちろんそれでも、その国でのブランドやプレゼンスは徐々に強化されていくものですが、少なくとも初期段階で販売先を探す時間は大きく省略できます。
また、海外の企業を買収することで、現地で事業を展開するノウハウなども得られるでしょう。
人材確保
「製造拠点の拡大」と共通しますが、自社で工場を新設すると、立地の獲得から設備投資、また従業員の採用まで、手間も時間もかかってしまいます。
従業員は採用も大変ですが、全く新しい人材を工場で一から業務に慣れさせ、教育して望ましい生産水準まで上げるには、さらに長い期間がかかるのは必須です。
ところが、M&Aによる企業買収では、すでにその会社・工場で働いている人材をベースにして、自社の望む展開を描いて行けます。何かをいきなり大きく変えることは難しいでしょうが、最初から食料品業界およびその会社でのノウハウを持っている人材が集まっているので、教育の手間と時間は少なくてすみます。
スケールメリットの享受
スケールメリットとは、事業規模の拡大によって生まれる、生産性向上や効率性上昇、知名度向上、バイイング・パワー向上といった効果のことです。特に、このスケールメリットを享受しやすいのが製造業になります。
M&Aによって企業を丸ごと買収することにより、経営ノウハウから生産能力、収益まで全て手に入れられるのです。
また、1社で大量仕入が可能となったことによる原材料の仕入れコスト削減や部品調達コストの削減といったことが可能になります。さらに、製造機械の稼働率に余裕がある中で製品の市場シェアを拡大できれば、生産量増加によって製品1つ当たりの生産固定費を減らせるはずです。
4. 食品メーカー・食品会社のM&Aポイント
メリットを見て、実際に食品メーカー・食品会社のM&Aを実施したいと考えた人も多いのではないでしょうか。そこでここからは、食品メーカー・食品会社のM&Aを成功させるためのポイントを見ていきます。
食品メーカー・食品会社に限ったことではないですが、全て食品メーカー・食品会社のM&Aにも当てはまることです。
- 相場
- 手法
- タイミング
それぞれのポイントについて、順番に見ていきましょう。
①相場
M&Aで企業を売る相場価格は、相手がどれだけ欲しがっているかにかかっています。相手が高く評価していればいくらでも相場価格は高くなりますし、買いたい相手がいない場合は相場価格がタダでも売れない可能性があるのです。
ただし、計算上で大体の相場価格は出せますので、数ある算出方法の中から、ここでは2つを掲示します。M&A交渉においても、これらで算出された相場価格をベースに話し合うことが、売買合意への近道です。
- DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法
- 純資産法
なお、相場価格についても、詳しくはM&A専門会社に相談しながら進めましょう。
DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法
DCF(Discounted Cash Flow)法は、ディスカウントと呼ばれる将来のキャッシュフローを現在価値に割り引く方法を使って、価値を算出するものです。
売却する会社の資産や事業計画書などをもとに、M&Aの後にどれだけの収益・キャッシュフローが見込めるかを計算して相場価格を算定します。
純資産法
純資産法の具体的な手法で代表的なものは、「簿価純資産法」と「修正純資産法」があります。
【簿価純資産法】
簿価純資産法は、帳簿価額に基づいた、資産と負債の差額である純資産をもって相場価格を計算します。
【修正純資産法】
修正純資産法は、資産と負債を今の価値で再度どのくらいの価値を持つのかを調べ、純資金の金額を計算して相場価格を算出するものです。主要な土地や有価証券などの資産のみを対象にし、負債と資産全てを対象としないこともあります。
②手法
詳しく見ていきましょう。
株式譲渡
企業の株式について、全部または一部を売却する方法になります。中小企業の株式譲渡では、オーナー経営者が全ての株式を所有していることが多く、その場合、会社は丸ごと買収者に引き渡されるのです。
会社が丸ごと譲渡されるわけですから、事業や資産だけでなく、債権債務や雇用契約などもそのまま買い手に承継されます。手続きは事業譲渡よりも簡便ですが、債務なども原則として買い手に引き継がれることに注意が必要です。
事業譲渡
企業の事業について、その全部または一部を売る方法です。
売り手は、事業および資産について、売りたい部分だけを売却できますし、買い手は欲しい部分だけを買収できるメリットがあります。
事業譲渡の場合、許認可などは買い手に譲渡できないことがほとんどなので注意が必要です。その場合は、買い手側で取り直す必要があります。
③タイミング
M&Aで企業を売却するタイミングで重要なのは、以下3点です。
- 業界再編が進行中のとき
- 景気のよいとき
- 経営者が元気なとき
1つずつ、見ていきます。
業界再編が進行中のとき
再編が進んでいる真っ只中の業界は、会社を高く売るのによいタイミングだといえます。
中でも最もよいタイミングは、業界再編が進行し、売主候補企業が少なくなってきた段階です。売り手市場となり、高く売れる可能性が高くなります。
ただし、業界再編は永久には続きませんので、売り惜しみには注意が必要です。
景気のよいとき
いうまでもありませんが、景気のよいときほど企業は高く売れます。むしろ、景気のよいときしか、買いたいという相手は現れないと考えておくくらいがちょうどよいです。
逆に、買収したい会社がいくつか現れたとしても、急に景気が悪くなればその意欲は何事もなかったかのように胡散霧消してしまうことがあります。
経営者が元気なとき
M&Aで企業を売却するなら、経営者が元気なときに、なるべく早めに計画を立てながら進めるべきです。
経営者の身に何かが起こってから急に会社を売却する必要に迫られた場合は、とにかく早く売ることが最優先になってしまうからにほかなりません。そうなってしまうと、価格についての要求は、ほとんどできなくなってしまいます。
5. 食品メーカー・食品会社のM&A成功事例
近年の食品メーカー・食品会社M&Aから、3事例を掲示します。
- 不二製油グループ本社によるトーラクの売却
- 純和食品の売却
- 東ハトの売却
それぞれについて、順番に見ていきましょう。
①不二製油グループ本社によるトーラクの売却
時期 | 2020(令和2)年7月 |
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売却側 | トーラク(不二製油グループ本社) |
買収側 | 丸大食品 |
M&Aスキーム | 株式譲渡 |
譲渡価額 | 12億円 |
売却側のトーラクは、不二製油グループ本社の100%子会社でした。不二製油グループ本社はグループとして、乳化・発酵素材、植物性油脂や業務用チョコレート、大豆加工素材などの開発・生産・販売事業を行っています。
そして、食品会社であるトーラクは、「神戸プリン」「らくらくホイップ」などの知名度が高い代表的商品を持つ会社です。
一方、丸大食品は、食肉加工品であるハム、ソーセージなどや、各種惣菜類を製造・販売する大手食品メーカーとして知られています。
不二製油グループ本社としては、この子会社売却(譲渡)は、トーラクのさらなる発展を鑑み、かつ同社としてはコアコンピタンス追及の一環として、決断しました。
また、丸大食品としては、現事業の中でデザート部門について、さらなる収益向上を目指すうえで、トーラクの商品力・企画開発力・販売力は大きなシナジーが得られると判断した模様です。
②純和食品の売却
時期 | 2016(平成28)年7月 |
---|---|
売却側 | 純和食品 |
買収側 | ヨシムラ・フード・ホールディングス |
M&Aスキーム | 株式譲渡 |
譲渡価額 | 4億5,500万円 |
売却側の純和食品は、1977(昭和52)年の設立以来、ゼリーなどのデザート類やレトルト食品などを製造し、販売してきました。イオングループをはじめとした大手スーパー量販店などのOEM生産を手掛け、外食産業や贈答品市場にも強みがあります。
買収側のヨシムラ・フード・ホールディングスは、食品の製造や販売をする中小企業の支援と活性化を目的とした会社です。経営戦略の立案や実行、経営管理などをメインに活動しています。
ヨシムラ・フード・ホールディングスは、この買収以前にも、事業承継問題や単独での成長に限界を感じている全国の中小食品企業に対し、独自の「中小企業支援プラットフォーム」を提供することで、これらの問題を解決してきました。
純和食品は特に経営難というわけではありませんでしたが、ヨシムラ・フード・ホールディングスの子会社となることで経営基盤の強化と経営の効率化を図る目的です。
一方のヨシムラ・フード・ホールディングスは、純和食品が得意とする商品企画・開発・品質管理ノウハウを、自社の「中小企業支援プラットフォーム」に取り入れることで、強固な事業基盤を確立できると目論んでいます。
③東ハトの売却
時期 | 2006(平成18)年7月 |
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売却側 | 東ハト |
買収側 | 山崎製パン |
M&Aスキーム | 株式譲渡 |
譲渡価額 | 182億円 |
売却側の東ハトは1952(昭和27)年創業の製菓大手ですが、バブル期に関連会社が手がけたゴルフ場事業が失敗し、2003(平成15)年に民事再生法の適用を申請し倒産しています。
買収側の山崎製パンは1948(昭和23)年創業、菓子パン製造会社では最大手です。
東ハトは一度倒産したものの、本業の食品事業については黒字経営で、倒産の原因となった不動産事業は他社の支援を受ける形で分離していました。また、そのさなかでヒット商品開発に乗り出し、再建に取り組んでいたのです。実際その過程で、今に続くヒット商品も生まれています。
山崎製パンも製菓事業を行っていましたが、東ハトの持つ製品のブランドを得ることで、新しい経営の基盤とする目的で買収しました。
これにより、東ハトは倒産を乗り越え、大手の傘下に入ることができたのです。また、山崎製パンにしても、ブランド力もシェアもある製菓事業を手に入れることに成功しました。
6. まとめ
食料品製造業界は、食料品価格の下落や少子高齢化の影響により、国内市場は縮小傾向です。また、原材料価格の高騰にも悩まされています。そうした中で、多角化を目指した同業他社の買収や、スケールメリットの獲得を目指したM&Aによる業界再編が進んできました。
近年、最も激変したのが精油業です。2000年代に7社あった精油の大手企業は、J-オイルミルズ、日清オイリオグループ、昭和産業という3つの精油企業になりました。
海外へ目を向けると、大きい事例としては、味の素によるアメリカの冷凍食品会社の買収があります。
2014年、味の素は、アメリカでは冷凍食品最大手のウィンザー・クオリティ・ホールディングスという冷凍食品会社を買収しました。同社が持つ「冷凍食品における米国消費者に精通したマーケティング力」「冷凍食品における全米に広がる流通ネットワークと営業力」「冷凍食品における全米をカバーする生産拠点」獲得が目的です。
そして、食品業界・食品メーカーでM&Aをするには、相場、手法、タイミングの3点について頭に入れておくことが肝要になります。
その際、M&Aの専門家に相談することは、事実上不可欠です。M&A仲介会社であれば、M&Aに関する全てを相談できますし、疑問点も解消されます。
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