【2020年最新】AIやIoT企業の動向やM&A・売却・買収の事例、ポイントを解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

AI企業・IoT企業に関する2020年の最新動向やM&A・企業売却・企業買収に関する現状のトピックスや事例を交えて、AI企業やIoT企業のM&A・企業売却・企業買収におけるメリット・デメリットなど成功ポイントを解説していきます。

目次

  1. AIやIoT企業とは
  2. AIやIoT企業の動向
  3. AIやIoT企業のM&A・売却・買収の現状
  4. AIやIoT企業のM&A・売却・買収の事例
  5. AIやIoT企業の巨額M&A・買収・売却が目立つ理由
  6. AIやIoT企業のM&A・売却・買収のメリット
  7. AIやIoT企業のM&A・売却の成功ポイント
  8. AIやIoT企業のM&A・買収の成功ポイント
  9. 【参考】AIやIoT企業に最適なマッチングサイト6選
  10. まとめ
  11. IT業界の成約事例一覧
  12. IT業界のM&A案件一覧
  • セミナー情報
  • セミナー情報
  • IT会社のM&A・事業承継

1. AIやIoT企業とは

まずは、AIを取り巻く状況を考えてみましょう。

AIは、2006年のディープラーニングの発明と、2010年以降に整備されてきたビッグデータ収集環境による第三次人工知能ブームによりとても盛んです。

具体的には、ディープラーニングや機械学習によるさまざまな予測モデルやチャットボットなどの汎用的なAIがビジネスシーンに次々と適用されてきています。

また、ビッグデータ収集の起点となるさまざまなセンサーやカメラなどのIoT機器に対するニーズも高まっており、企業の製造現場や店舗・物流などの流通拠点に関するビジネスの現場はもとより、家庭生活や医療・教育の現場にも普及してきているのです。

こうした現状から、引く手あまたな状況になっていると考えられます。

ここで、AIやIoT企業はどのようなものなのか再確認しておきましょう。

1-1.AIやIoT企業の定義

AI企業とは、ディープラーニングや機械学習を用いた画像データやビッグデータの解析技術の開発やソリューション提供を行う企業のことです。

ディープラーニングのAIアルゴリズムの開発やそれを搭載したAIチップの提供、インターネット上のビッグデータの収集・解析を行う企業などもAI企業に含まれます。

一方でIoT企業とは、様々なセンサーやカメラなどのIoT機器やそこから収集したビッグデータの解析プラットフォームの提供を行う企業のことです。

1-2.AIやIoT企業の特性

AI企業やIoT企業の場合、アルゴリズム開発やIoT機器開発などニッチな技術が必要となるため、大学や研究所などとの産学連携の親和性が高い分野です。

AI企業やIoT企業の大部分は半導体などの装置産業とは異なり、巨大な先行投資が不要です。

また、ニッチな領域であるため既存大企業のコアビジネスにはなりにくいので、大企業発も含めて中小規模のスタートアップ企業が比較的多い特徴がみられます。

1-3.AIやIoT企業の一覧

近年、めざましい勢いで成長しているAIやIoT企業業界ですが、どのような企業があるのでしょうか。AIやIoT企業を一覧にまとめたので、確認してみましょう。今回は、今注目されている世界の企業と日本の企業を一覧にまとめました。

企業名 AI・IoT関連事業の内容
Google 独自の人工知能の開発
Facebook 独自の人工知能の開発
Microsoft 画像認識技術
Dyson 掃除機に人工知能機能
Amazon ロボティクスの効率化
NEC 製品検査の自動化
ALBERT 画像への自動タグ付け
ロゼッタ 自動翻訳
フォトクリエイト 顔認識エンジン
テクノスジャパン 自動車部品への人工知能機能搭載

このように、さまざまな分野においてAI・IoTの開発がされています。どの業界においてもAIやIoTをいかに取り入れていくかが重要となっていくでしょう。

AI・IoT関連会社業界の動向を、次の章で詳しく確認していきます。

2. AIやIoT企業の動向

AIやIoT企業の動向には、以下3つの特徴がみられます。
 

  1. 今後も飛躍的に伸びていく業界
  2. 大手もベンチャーも多い
  3. 同業者との競争も激しい

具体的に確認していきましょう。

動向1.今後も飛躍的に伸びていく業界

現在、AIの導入が最も盛んに行われているのは金融業です。投資案件の精査や財務分析からリスク評価といった条件判定を伴う業務への応用が進められており、口座開設や債務管理、融資などの業務にもAIが適用されています。

製造業では、製造装置に設置したIoT機器からの情報をAIで処理し、工場全体の生産性管理を行う実証実験が盛んです。

今後、装置の故障予知や省エネ、出荷検査や在庫管理などAIの適用分野は多く、第四次産業革命に向けた取り組みが続きます

自動車業界では、自動運転技術などでキーテクノロジーがAIに移り、IoT機器で取得した運転データにアクセスできることが今後の強みです。

流通の分野では、AIやIoTの導入によるサプライチェーンの再構築や配送の自動化といった変化により、流通業の存在価値が問われることになります。

動向2.大手もベンチャーも多い

AI企業やIoT企業は、IT産業における「第3の市場」と呼ばれており、経済産業省は2020年代後半には「第3の市場」がITサービスの過半数に至ると予測しています。

前述のとおり、さまざまな産業分野でAIやIoTが適用されていく状況が予測されており、このような市場の活性化に伴って先陣を切っていた中小規模のベンチャー企業のみならず、大手企業による参入が目立ってきています。

具体的には、AIに関する研究機関の設立が挙げられます。2017年に設立されたマイクロソフトの「Microsoft Research AI」などが著名ですが、国内企業でもトヨタ自動車やドワンゴがAIに関する研究機関を設立するなど、大手の資本が次々に参入しています。

ベンチャー企業に比べて大きなリソースを持つ大手資本はこの分野でも有利ではありますが、まだまだスピード感を必要とする局面であるため、技術力以前に企業の体質として不利な面もあり、ベンチャー企業との連携が重要となってきます。

動向3.同業者との競争も激しい

こちらの業界では、同業者との競争も激化している動向もあります。

例えば、この4年間でAI導入企業は270%増加し、2019年1月に発表されたものでは2018年のAI導入率が3倍になり、これによってAI導入企業は全体の37%に達したとされているのです。

このような状況下でAI導入企業はどれだけの投資対効果が得られるかを真剣に考えており、AI企業やIoT企業間の競合も激しくなってきています。

AIやIoTに関する技術者の獲得競争もすでに始まっており、大手もパナソニックが取り扱う製品群へのAI導入の加速を狙いとして、AI分野の技術者を現在の約100人から今後5年以内に1,000〜1,500人に増員する計画を打ち出しています。

このように、AI・IoT関連会社業界には3つの特徴があります。市場はどんどん拡大していきますが、どの会社がいち早く「人々が求めている技術を開発できるか」がポイントです。

そんな競走の激しいAI・IoT関連会社業界ですが、M&A・売却・買収はどのような動きがあるのでしょうか。次の章で詳しく確認していきましょう。

3. AIやIoT企業のM&A・売却・買収の現状

AI企業、IoT企業を取り巻く環境は競争が激しさを増しており、優秀な技術や人財を早期に獲得するためのM&Aが頻繁に行われています。

AI企業、IoT企業のM&A・売却・買収の現状は以下のとおりです。
 

  1. 大手によるスタートアップ企業の買収が多い
  2. 巨額買収・M&A事例も多い
  3. 連日のようにM&A・買収・売却が行われている
  4. 競争力の強化・事業拡大目的のM&Aが行われている

以上の4つの特徴を確認していきましょう。

現状1.大手によるスタートアップ企業の買収が多い

2016年頃には、GoogleやApple、IntelなどIT大手による大学発ベンチャーなどのAIスタートアップ企業のM&Aが盛んに行われていました。

AIが普及期を迎え、国内の大手企業においてもAIやIoTの技術開発ができる人材不足が深刻となっており、人材確保の手段としてスタートアップ企業のM&A・買収が増えてきています。

現状2.巨額買収・M&A事例も多い

AIチップやIoT機器の設計から開発、製造まで独自に行うAI企業やIoT企業の場合、半導体製造などの装置産業となり資産も大きくなります。

そのため巨額買収・M&A事例も多く、後述するソフトバンクグループによるARMのM&Aなど巨額買収のような事例も見られるのです。

現状3.連日のようにM&A・買収・売却が行われている

IT業界では、ベンチャー企業のM&Aが活性化しています。

京セラコミュニケーションシステムによるAIベンチャーRistの買収などのAI関連M&Aや、IoT関連では組込ソフト開発の分野で製造業・通信業界などの異業種との提携が加速しており、連日のようにM&A・買収・売却が行われているのが現状です。

現状4.競争力の強化・事業拡大目的のM&Aが行われている

近年では、マーケティングソリューションにおける競争力強化のため、AI技術開発のパートナー獲得を目的とするM&Aも増えています。

また、事業拡大の手段としてのM&Aも増えており、例えば富士通はシステム構築・運用のビジネス体制を再構築するために、AIなどの専門人材を必要ならばM&Aで獲得すると発表しています。

増加するM&Aの流れに乗り、成功するためには専門知識が必要です。AI・IoT関連企業業界でM&Aを検討しているのであれば、M&A総合研究所にご相談ください。

M&A総合研究所では、AI・IoT関連企業業界に詳しいM&Aアドバイザーが、クロージングまでフルサポートいたします。

当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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4. AIやIoT企業のM&A・売却・買収の事例

続いて、大手企業によるスタートアップ企業のM&Aなど、AI企業、IoT企業のM&A・売却・買収の事例を10選紹介いたします。
 

  1. Microsoft
  2. Google
  3. Facebook
  4. Apple
  5. amazon
  6. NTTデータ
  7. Adjust
  8. Inter
  9. ソフトバンク
  10. 資生堂

AI・IoT関連会社業界のM&Aの事例を確認し、イメージを膨らませていきましょう。

事例1.Microsoft

Microsoftによる最近の企業買収は、2018年6月のソフトウェア分散開発環境のインフラを提供するGitHubの買収(75億ドル規模)ですが、以下のようなAI企業も買収しています。
 

時期 企業名 買収額 事業内容 M&A手法 M&Aの目的
2016 Genee アメリカ 非公開 AIスケジュール
管理機能
企業買収 Office 365への統合
2017 Maluuba カナダ 非公開 自然言語処理の
ディープラーニング技術
企業買収 Cortanaのエンハンス
2017 Hexadite イスラエル 非公開 セキュリティ
オートメーション
企業買収 WDATPのエンハンス
2018 Lobe アメリカ 非公開 ディープラーニングモデル
のプラットフォーム
企業買収 Azure ML Studioの強化

事例2.Google

最近では、トヨタ自動車がGoogle傘下のロボット開発会社ボストン・ダイナミクスのM&Aに乗り出すという話がでています。

GoogleによるAI企業買収では、2014年1月に囲碁AI「AlphaGo」で有名なDeepMind Technologiesを買収したことが有名です。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2016/7 MoodStocks フランス 非公開 機械学習によるスマート
フォンの画像認識技術
企業買収 高精度な画像検索
2016/9 API.AI アメリカ 非公開 自然言語対話プラット
フォーム
企業買収 Google Home
アプリ開発
2017/3 Kaggle アメリカ 非公開 機械学習によるビッグ
データ分析プラット
フォーム
企業買収 データサイエン
ティスト獲得
2017/7 Halli Labs インド 非公開 機械学習によるソリュー
ション提供
企業買収 AI分野での機能強化
2017/11 Banter アメリカ 非公開 会話型の商取引プラット
フォーム
企業買収 同プラットフォーム
の提供

事例3.Facebook

FacebookによるAI企業買収は主に自社のSNSを活用するための買収であり、以下に示すような買収があります。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2016/11 FacioMetrics アメリカ 非公開 顔画像解析技術による
感情判断
企業買収 顔認識技術の
向上
2016/11 CrowdTangle アメリカ 非公開 ソーシャルデータ分析
ツール
企業買収 SNS上のデータ
分析
2017/8 Ozlo アメリカ 非公開 テキストベースの
AIアシスタント
企業買収 Messengerを
強化
2018/7 Bloomsbury.AI アメリカ 非公開 自然言語処理API 企業買収 自然言語処理
能力の強化
2019/2 GrokStyle アメリカ 非公開 AIを活用した家具や室内
装飾品の検索サービス
企業買収 AI機能の強化

事例4.Apple

AppleによるAI企業買収は主にiOSのエンハンスのための買収であり、以下に示すような買収があります。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2016/9 Tuplejump インド 非公開 オープンソース
プロジェクト
「FiloDB」
企業買収 ビッグデータの
リアルタイム分析
2017/2 RealFace イスラエル 非公開 顔認識ソフトウェア 企業買収 iPhoneへの顔認証
機能搭載
2017/5 Lattice Data アメリカ 2億ドル ダークデータ(非
構造データ)から
有用な価値を検出
企業買収 AIアシスタントの
改良
2017/6 SensoMotoric
Instruments
ドイツ 非公開 視標追跡技術 企業買収 VR/AR技術向上
2018/11 Silk Labs アメリカ 非公開 AIベースのパーソナ
ルアシスタント技術
企業買収 スマートスピー
カーの改良

事例5.amazon

amazonによるAI企業買収は主にAmazon Cloud Driveのエンハンスのための買収であり、以下に示すような買収があります。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2016/4 Orbeus アメリカ 非公開 写真にタグを付けるアプリ
「Photo Time」
企業買収 アプリケー
ションの質向上
2016/9 Angel.ai アメリカ 非公開 チャットボット技術 企業買収 会話型コマース
でのチャット
ボット利用
2017/1 Harvest.ai アメリカ 1,900万ドル データセキュリティ技術 企業買収 セキュリティ
強化
2018/1 Sqrrl アメリカ 非公開 機械学習を利用した
セキュリティ脅威の追跡
企業買収 セキュリティ
強化
2018/2 Ring アメリカ 10億ドル スマートドアベル 企業買収 スマートホーム
関連事業の拡充

事例6.NTTデータ

NTTデータは近年、AI企業やIoT企業との資本業務提携によるビジネス拡大を図っています。以下にNTTデータのM&Aの事例を示します。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2016/11 SELTECH 日本 非公開 組み込みシステム向け
仮想化セキュリティー
技術・AI技術
第三者割当
による株式の
一部取得
IoTビジネス・
AIビジネスの拡大
2017/9 テクノスデータ
サイエンス・
エンジニアリング
日本 非公開 データアナリティクス・
AIソリューション
第三者割当
による株式の
7.96%取得
AIインテグレー
ション案件の
共同実施
2017/10 LeapMind 日本 非公開 ディープラーニング
圧縮技術
第三者割当
による株式の
一部取得
エッジサイドでの
AIソリューション
提供力強化
2018/10 AC&M 日本 非公開 Beacon/IoTソリュー
ション
第三者割当
による株式の
16.7%取得
NTTデータCCSの
IoTビジネス強化

事例7.Adjust

Adjustは楽天、LINE、メルカリなどにモバイル計測・アドフラウド防止サービスを提供するドイツ企業です。AdjustにおけるAI企業やIoT企業のM&A事例を以下に示します。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2018/12 Acquired.io アメリカ 非公開 データ集約プラット
フォーム
企業買収 マルチチャネル
キャンペーン
管理の自動化
2019/1 Unbotify イスラエル 非公開 サイバーセキュリティー
ならびにAIの開発
企業買収 アドフラウド防止
ツールへの統合
2019/2 ADWAYS 日本 非公開 スマートフォンアプリ
向け効果測定システム
「PartyTrack」
事業買収 高度なアプリ
マーケティングの
実現

事例8.Intel

Intelは半導体大手ですが、半導体チップのエンハンスのためのAI企業やIoT企業のM&Aも手掛けています。IntelにおけるAI企業やIoT企業のM&A事例を以下に示します。
 

時期 企業名 買収金額 事業内容 M&Aの手法 M&Aの目的
2016/5 Itseez アメリカ 非公開 コンピュータビジョン
(画像認識
ソフトウェア)
企業買収 IoT分野での
強化
2016/8 Nervana
Systems
アメリカ 3億5,000万ドル〜
5億ドル(推定)
半導体レベルで
最適化した
ディープラーニング
企業買収 AI計算処理の
最適化
2016/9 Movidius アメリカ 非公開 ビジョンプロセッサ
(画像認識
アクセラレータ)
企業買収 AI専用
プロセッサ
の開発
2017/3 Mobileye イスラエル 153億ドル 単眼カメラによる
自動車の運転支援
システム
企業買収 自動運転
システムの
チップ製造

事例9.ソフトバンク

2016年のソフトバンクグループによるIoTで優れた能力を有し、AIチップなども開発するグローバルな半導体メーカーであるARMのM&A(完全子会社化)は、買収金額が約310億ドルという大型買収であり話題になりました。

事例10.資生堂

資生堂は中長期戦略「VISION 2020」の達成に向けて、AI企業の買収に積極的に取り組んでいます。

具体的には、2017年1月にスマートフォン・アプリケーションによる肌色測定で一人ひとりの肌色にあったファンデーションを提供するMATCHCo(アメリカ、買収金額非公開)を、2017年11月にはディープラーニングを活用したバーチャルなメーキャップ技術を持つGiaran(アメリカ、買収金額非公開)を企業買収しました。

5. AIやIoT企業の巨額M&A・買収・売却が目立つ理由

AIやIoT企業のM&Aでは、スタートアップ企業の買収も多く、この場合はそれほど買収金額が大きいM&Aではありません。

AIチップやIoT機器の設計から開発、製造まで独自に行うAI企業やIoT企業を買収する場合、半導体製造などの装置産業となり資産も大きくなることから、前述のソフトバンクグループによるARMのM&Aなど巨額買収も多いです。

また、同業内でのM&Aが実施された場合、人材確保を目的としていることも取引価格が巨額となる要因の1つでしょう。AI・IoT関連の技術は日々開発し続けられていますが、競合他者よりもはやく開発する必要があります。

そこで、巨額な費用を支払ってでも人材を確保したいという買い手企業が生まれます。AIやIoT企業のM&Aの取引価格が巨額となりやすいのには、このような理由があると考えられます。

6. AIやIoT企業のM&A・売却・買収のメリット

AIやIoT企業のM&A・売却・買収のメリットには、どのようなものがあるのでしょうか。この章では、売却側と買収側それぞれの立場から解説していきます。

6-1.売却側

AIやIoT企業を売却する場合のメリットには、主に以下の5点が挙げられます。
 

  • 従業員の雇用確保
  • 売却・譲渡益の獲得
  • 社員教育の機会・大資本による安定経営
  • ブランド力の強化
  • 負債などの清算を回避できる

以上の5つのメリットについて確認していきましょう。

メリット1.従業員の雇用確保

会社を売却するということは、買収先企業に経営権がわたるということであるため、従業員の雇用が気になる経営者の方も多いでしょう。

AIやIoT企業の売却の場合、雇用は維持されることが多く、より良い待遇で雇用されることも珍しくありません。

これは、AIやIoT企業を買収する企業の多くは自社の事業にAIやIoTの技術を導入することが目的であり、技術の担い手である従業員の待遇が保証されるためです。

メリット2.売却・譲渡益の獲得

前述のとおり、AIやIoTは多くの企業が今後の競争力の強化・事業拡大目的でその技術を採用していく将来性のある領域であり、大手企業によるAIやIoTスタートアップ企業のM&Aが頻繁に行われています。

そのため、研究開発投資などでかかった費用以上の売却金額になることが多く、会社を売却して売却益・譲渡益を獲得する投資として考えた場合にも、AIやIoT企業は対象として最適であるといえます。

メリット3.社員教育の機会・大資本による安定経営

中小規模のAIやIoTスタートアップ企業では資金面が脆弱なため社員教育の機会が少なく、経営の安定性といった面でリスクがあります。

大手企業によるAIやIoTスタートアップ企業のM&Aの場合は大資本が入ることになるため社員教育の機会も増え経営も安定します。

メリット4.ブランド力の強化

中小規模のAIやIoTスタートアップ企業では、際立った技術があったとしてもブランド力という面では弱く、うまく収益に結びついていないケースが少なくありません。

大手企業によるAIやIoTスタートアップ企業のM&Aにより大きなブランド力を手にすることができるので、一気に認知度が向上します。

メリット5.負債などの清算を回避できる

中小規模のAIやIoTスタートアップ企業では、ブランド力不足などの要因で収益が上がらず、資金不足で負債の清算に追い込まれるようなケースもあります。

そのような場合でも際立った技術があれば、大手企業によるAIやIoTスタートアップ企業のM&Aにより、大資本が入り負債などの清算を回避できます。

6-2.買収側

AIやIoT企業を買収する場合のメリットには、主に以下の5点が挙げられます。
 

  • 新技術・ノウハウの獲得
  • 異業種・異分野への参入がスムーズ
  • ブランド力の強化・新サービスの提供
  • 新たな顧客・取引先などの獲得
  • 事業規模の拡大

以上の5つのメリットについて確認していきましょう。

メリット1.新技術・ノウハウの獲得

企業が競争力の強化や事業拡大を目的として、AIやIoTの新技術・ノウハウを必要とする場合、自社で研究開発すると人的資源の獲得から始めなければならず、膨大な時間と研究投資が必要となります。

しかし、すでにAIやIoTの新技術・ノウハウを持つスタートアップ企業をM&Aで買収すれば、短期間でコストも抑えて新技術・ノウハウを獲得できます。

メリット2.異業種・異分野への参入がスムーズ

企業がAIやIoTの新技術・ノウハウを利用した新規のビジネスモデルを開発し、事業の多角化によって異業種・異分野への参入が必要となることがあります。

この場合も、参入しようとする業種・分野の知識・ノウハウ持つAIやIoTのスタートアップ企業などをM&Aで買収すれば、スムーズに異業種・異分野に参入できます。

メリット3.ブランド力の強化・新サービスの提供

すでにその業種・分野でブランド力を持っている企業であっても、競争力の強化・事業拡大のためにAIやIoTの新技術・ノウハウが必要になることがあります。

この場合、AIやIoTのスタートアップ企業などをM&Aで買収することで、AIやIoTの新技術・ノウハウを利用した新サービスを提供でき、ブランド力を強化できます。

メリット4.新たな顧客・取引先などの獲得

企業がAIやIoTの新技術・ノウハウを活用した新サービスを提供する場合、新たな顧客層がターゲットであったり、いままで取引したことのない企業との取引が必要となることがあります。

この場合、すでに顧客や取引先を持つAIやIoTのスタートアップ企業などをM&Aで企業買収することで、新たな営業・購買活動をすることなく、新たな顧客・取引先などを獲得できます。

メリット5.事業規模の拡大

AIやIoTのスタートアップ企業などをM&Aで企業買収し、AIやIoTの新技術・ノウハウを活用した新サービスを提供することで、通常の営業活動では得ることのできない事業規模の拡大が図れます。

もしもAI・IoT関連企業業界でM&Aを検討しているのであれば、M&A総合研究所にご相談ください。

AI・IoT関連企業業界に詳しいM&Aアドバイザーが在籍しており、ご相談からクロージングまでしっかりサポートいたします。

当社は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)となっております。無料相談はお電話・Webより随時お受けしておりますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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7. AIやIoT企業のM&A・売却の成功ポイント

AIやIoT企業をM&Aで売却する際に必要な成功ポイントは、以下に示す5点です。
 

  1. 他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
  2. 特許・権利・技術などを持っていること
  3. 優秀な技術者・設備・システムなどを持っている
  4. 将来性があること
  5. 会社売却の専門家に相談すること

それぞれ見ていきましょう。

ポイント1.他社にはない強み・アピールポイントを持つこと

まずは、AIやIoTを活用したサービスやAIやIoTの要素技術の開発競争が激化している中で、他社にはない強み・アピールポイントを持つことが重要です。

具体的には、利用できる用途が広い顔認識などの画像認識や自然言語処理などの分野での新技術や新たなアルゴリズムなどのアピールポイントを持つことです。

また、装置の自動運転技術や製造装置に取り付けるIoTの技術など特定の産業分野に特化した技術などで、その業界・分野では他社には負けない強みを発揮することも必要となります。

ポイント2.特許・権利・技術などを持っていること

前項の「他社にはない強み・アピールポイントを持つこと」と関連しますが、AIやIoTを活用したサービスのビジネスモデル特許やその権利、またはAIやIoTの要素技術やその特許を持っていれば、当然ですがそれは他社にはない強みになります。

また、上記のような特許・権利・技術などを持っていれば、他社にその使用権を提供することで対価として収入が期待できる知的財産になりますので、企業売却の際には含み資産となります。

ポイント3.優秀な技術者・設備・システムなどを持っている

前項の「特許・権利・技術などを持っていること」と関連しますが、AIやIoTを活用したサービスを提供するためには、ITシステムやその構築に必要なアルゴリズムなどを開発できる技術者がいることが必須であり、売却の成功ポイントになります。

同様に、AIやIoT関連のデバイスを提供する場合には、開発・製造するための設備やその設備を開発・運用できる技術者が必要になりますので、優秀な技術者・設備・システムなどを持っていることが売却の成功ポイントになります。

ポイント4.将来性があること

さまざまなAIやIoT関連のサービスやデバイスを開発する際に必要となるような汎用的な要素技術の特許を持っているなど、将来性があることも売却の成功ポイントになります。

具体的には、顔認証などに必要となる画像解析の技術やチャットボットなどに必要となる自然言語処理の技術、機械学習やディープラーニングの独自アルゴリズムなどが汎用的な要素技術です。

ポイント5.会社売却の専門家に相談すること

AIやIoT企業に限らず、会社を売る側は「会社を高く売りたい」と考え、会社を買う側は「会社を安く買いたい」と考えます。両社の利益は対立関係にありますから、利益が相反する両社の調整のためには会社売却の専門家に相談することが必要です。

具体的には、前述したM&A・売却のポイントで示したAIやIoT企業の知的財産やM&Aによって見込まれる将来の利益、顧客・取引先のネットワークといった無形の価値をきちんと算定できる専門家に相談することがポイントになります。

8. AIやIoT企業のM&A・買収の成功ポイント

AIやIoT企業をM&Aで買収する際に必要な成功ポイントは以下3点です。
 

  1. M&A仲介会社に相談する
  2. M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
  3. 金融機関や行政機関などに相談する

さっそく見ていきましょう。

ポイント1.M&A仲介会社に相談する

売却の成功ポイントでも触れましたが、AIやIoT企業に限らず会社を売る側は「会社を高く売りたい」と考え、会社を買う側は「会社を安く買いたい」と考えます。両社の利益は対立関係にありますから、利益が相反する両社の調整のためにはM&A仲介会社に相談する必要があります。

ポイント2.M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す

平成30年度税制改正において、事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられました。

これにより、いま国内でM&Aのマッチングサイトが急増しています。M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を自分で探してAIやIoT企業をM&Aで買収することも一つの選択肢といえるでしょう。

ポイント3.金融機関や行政機関などに相談する

M&Aによる企業の売却・買収の相談は金融機関や行政機関などでも可能です。

銀行などの金融機関は預金情報など、大量のデータを保有しています。これを利用して、メガバンクは社内にM&A専門チームを持ちアドバイザー業務を行っています

金融庁が発表した金融仲介機能の行動指針(ベンチマーク)にも「M&A支援先数、事業承継支援先数、転廃業支援先数」などM&Aに関連する項目が多数入っており、地方銀行や信用金庫なども今後はアドバイザー業務に参入してくることが予想されます。

また、行政機関など公的な機関では、国の支援機関である再生支援協議会や事業引継ぎ支援センター、商工会議所、後継者バンクなどがあり、それぞれ相談の窓口を設置して専門家とのマッチングを行っているのです

9. 【参考】AIやIoT企業に最適なマッチングサイト6選

本記事でも触れたマッチングサイトについても参考として紹介しておきます。

ご紹介するのは以下の6つです。

  1. ビズリーチ・サクシード
  2. MAfolova
  3. Batonz(バトンズ)
  4. M&A市場SMART
  5. M&Aプラス(ma-plus)
  6. トランビ(tranbi)

それぞれわかりやすく解説するので参考にしてみてください。

1.ビズリーチ・サクシード

日本最大級のM&Aプラットフォームで、無料登録することで利用できます。

方針 すべての経営者に事業承継M&Aの選択肢を
運営元 株式会社ビズリーチ
直接交渉 可能(審査あり)
開始年 2017年11月

2.MAfolova

良質な案件を保有していることから、質の高い案件情報をアドバイザーから紹介してもらえます。

方針 案件ソーシングをもっと合理的に
運営元 エンジャパン
直接交渉 可能(審査あり)
開始年 2018年5月

3.Batonz(バトンズ)

国内最大級の成約支援実績を持ち、M&Aについて詳しい解説が付いたマッチングサイトです。

方針 国内制約実績No.1のM&Aマッチングプラットフォーム
運営元 株式会社バトンズ
直接交渉 (不明)
開始年 2018年4月

5.M&Aプラス(ma-plus)

中堅・中小企業向けに開かれているマッチングサイトで使いやすさがあります。

方針 M&A実務者らが開発したオンラインM&Aプラットフォーム
運営元 デロイトトーマツ ファイナンシャルアドバイザリー合同会社
直接交渉 不可
開始年 2018年3月

6.トランビ(tranbi)

売り手は無料で利用可能なマッチングサイトで、個人から大企業まで豊富な買い手が揃っています。

方針 国内最大級のM&Aマーケット
運営元 株式会社トランビ
直接交渉 可能
開始年 2011年7月

10. まとめ

AI・IoT関連企業業界は、現在急激に成長している業界です。今後も飛躍的に伸びていく業界といっても良いでしょう。大手もベンチャーも多いことから、M&Aも活発に行われています。

【AIやIoT企業のM&A・売却の成功ポイント】

  1. 他社にはない強み・アピールポイントを持つこと
  2. 特許・権利・技術などを持っていること
  3. 優秀な技術者・設備・システムなどを持っている
  4. 将来性があること
  5. 会社売却の専門家に相談すること

【AIやIoT企業のM&A・買収の成功ポイント】

  1. M&A仲介会社に相談する
  2. M&Aのマッチングサイトなどの募集案件を探す
  3. 金融機関や行政機関などに相談する

11. IT業界の成約事例一覧

12. IT業界のM&A案件一覧

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