JTのM&A成功の秘訣を徹底解説!買収失敗はあるの?

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

1985年の民営化以降、JTは事業の多角化を始めましたが、多くの失敗を経験しています。しかし、その後はクロスボーダーM&Aによる海外展開へと路線を変更して、数々のM&Aに成功しました。今回は、JT特有のM&Aについて成功の秘訣や最新動向などを紹介します。

目次

  1. JTのM&Aを徹底解説!
  2. JTのM&A成功の秘訣
  3. JTのM&Aから学ぶなら本もおすすめ
  4. クロスボーダーM&AならM&A総合研究所
  5. JTのM&A成功の秘訣まとめ
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1. JTのM&Aを徹底解説!

JTの前身は、日本専売公社です。80年にも及ぶ経営の歴史がありましたが、1985年に民営化されました。ただし、現在でも財務大臣が33.35%の株式を持っている状況です。

こうした歴史を持つJTですが、1999年にはRJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI・アメリカ)を約9,400億円で、2007年にはギャラハー(イギリス)を約1兆7,310億円で、それぞれ買収しています。

いずれのM&Aも、当時の日本企業における外国企業買収として史上最高額となりました。上記の企業を買収する以前、JTの海外売上高比率は7.4%(1998年)と低く、基本的に国内をターゲットにたばこを販売していました。

その一方で、M&Aの大型案件に着手するようになってからは、積極的にクロスボーダーM&Aを狙い、海外展開を推進しています。直近の2018年においても、ロシア企業やバングラディッシュ企業を買収しています。

国内のたばこ市場が縮小する中、海外におけるたばこの売上を順調に伸ばしている点や、たばこ事業における売上の2/3を海外で獲得している点を鑑みると、JTの戦略は概ね成功しているといえるでしょう。今回は、JT特有のM&Aについて詳しく解説していきます。

2. JTのM&A成功の秘訣

ここではJTにおけるM&A成功の歴史と秘訣として、以下の項目に分けて紹介します。
 

  1. 多角化の失敗がルーツ
  2. パイロット買収の経験
  3. クロスボーダーM&Aの成功
  4. シナジー効果の最大化
  5. 独自のM&Aプロセス
  6. 買収先への権限移譲

それぞれの項目を順番に見ていきます。

①多角化の失敗がルーツ

1985年の民営化後、JTは国内たばこ事業の成長が見込めない中で、事業多角化の戦略を開始した歴史があります。

多角化の歴史を見ると、スッポンの養殖・野菜や果物の栽培・バーガーキングの経営・スポーツクラブの運営・不動産業などが該当しますが、結果的にほとんど失敗してしまい撤退しています。

多角化の失敗に関する最も最近のトピックとしては、2015年に発表された飲料事業の撤退が挙げられます。飲料事業では、1998年に自販機運営大手のユニマットコーポレーション(現・ジャパンビバレッジホールディングス)を買収して、販路拡大のテコ入れを図っていた時期がありました。

ここでは「桃の天然水」や缶コーヒー「ルーツ」といったヒット商品を生み出しましたが、その他に目立ったヒットがなく赤字経営も続いたことで、存在感をなくしてサントリーグループに売却し、撤退しています。

上記以外にも医薬事業を継続していますが、長年の赤字でJTの業績を押し下げてきました。1998年には鳥居薬品を買収するなどして、研究開発のテコ入れを図ってきた歴史があります。

2017年には2度目の黒字化を達成しましたが、事業開始から約30年という歴史におけるほとんどの期間で赤字を計上しています。

このように、JTが多角化に向けて始めた事業は、初期段階からことごとく失敗を繰り返していました。

②パイロット買収の経験

JTというとクロスボーダーM&Aによる大型買収案件が大きな話題を集めましたが、成功の裏には綿密な準備がありました。

初のクロスボーダー形式による大型M&A実施の7年前にあたる1992年、JTはマンチェスター・タバコ(イギリス)を買収していました

本件買収時にはすでにRJRナビスコの買収を視野に入れており、パイロット買収(試験的買収)としての役割を担わせています。

本件によってJTは海外展開のノウハウを獲得しており、RJRナビスコ社の海外たばこ事業買収への足がかりとしました

あらかじめ大型買収に向けて経験や知識を蓄えておいたことで、その後のM&Aを成功させる道筋を作っていたといえるでしょう。

③クロスボーダーM&Aの成功

多角化の失敗があり、JTを存続させる鍵は「たばこ事業」にかかっていましたが、これまでほとんど国内のみで展開していた「たばこ市場」は徐々に縮小されていきます。

そこでJTは海外に活路を見出すべく、クロスボーダーM&Aに積極的に取り組むようになりました。

1999年にRJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI・アメリカ)を傘下に収めた買収を皮切りにして、各国のたばこ事業買収を積み重ねていきます。

最も買収規模が大きかった事例は、2007年のギャラハー買収(1兆7,310億円)です。

直近の事例は2018年で、ロシアのドンスコイ・タバックおよび、バングラディッシュのアキジグループを買収しています。

JTは「成長の時間を買う」手段としてM&Aを位置づけており、業界では「M&AはJTのお家芸」とも呼ばれている状況です。

ちなみに、現在のJTがたばこ市場で1位のシェアを獲得している国は、日本・ロシア・台湾となっています。

④シナジー効果の最大化

JTが買収で期待するシナジー効果の具体例を挙げると、2007年のギャラハー(イギリス)買収時のプレスリリースに掲載された、「規模拡大によるスケールメリットの享受」「両社の相互補完性」「技術・流通インフラの強化」のほか、「売上増」や「事業効率化」などが挙げられます。

上記は一般的なM&Aでも広く期待されるシナジー効果であり、JT特有のものではありません。

結果として、1999年にRJRI(アメリカ)を買収した際には、海外市場において従来の約10倍となるたばこ販売本数の実現に成功しています。また、パッケージの配色やデザインの統一といった積極的なマーケティング投資によりブランド強化を行ったこともあり、世界的な知名度向上も実現しました。

2007年のギャラハー(イギリス)買収では、欧州展開のブランドとともに、英国・アイルランド・オーストリア・スウェーデンなどの販売基盤も獲得しています。これに伴い技術・流通のインフラも強化されており、海外における販売本数が急増しました。

世界のたばこ販売を見るとJTは世界4位のシェアに留まっていますが、M&Aによる事業拡大とシナジー効果の獲得によって世界1位〜3位と争うための基盤を整えています。

⑤独自のM&Aプロセス

クロスボーダーM&Aを繰り返し行った歴史を持つJTですが、M&Aで一般的に活用される投資銀行・コンサルタントなどをそれほど利用していません。

日頃から自社の中でM&A候補となりそうな企業を検討しているほか、現地・候補先企業の情報収集からシナジー効果の検討に至るまで、ほとんどの準備を自社内で行っています。

投資銀行やコンサルタントを活用する機会を見ると、例えば、発展途上国において地元の投資銀行のみが把握している情報を獲得したいときなど、情報収集のため一時的に依頼するのみです。

サポートの依頼に関しても買収成立まででストップし、企業統合(PMI)プロセスはすべて当事者で済ませています。JTがM&Aプロセスにおいて大切にする点を要約すると、以下のとおりです。
 

  • 買収・統合に関わる社員には、当事者意識を強く持たせるようにする
  • 「進駐軍」にはならず、買収先の人的側面を大切にする
  • 買収後、顧客・株主・従業員・社会という4者の満足度を高めていくための経営理念「4Sモデル」から目を離さないようにする

⑥買収先への権限移譲

JTにおいて買収の成否を決定付ける要素は、買収プロセスではなく、買収後の統合作業にかかっています。

JTの反省材料は、クロージングから統合計画の完成までに8カ月を要したRJRI買収時の失敗です。このときに、RJRIの社員・役員たちの将来を不透明な状況に長く置いてしまい、人材のモチベーションを大きく低下させてしまった苦い経験があります。

上記は組織運営上大きな問題となっており、ここでの経験から「もっと早く統合計画を作成すべきだった」という教訓が生まれたのです。

次の大型買収となったギャラハー買収時には、統合スピードを加速すべく以下2つの工夫を実行しており、実際にクロージングから100日というスピードで統合計画を作成しています。
 

  • JTからJTI(RJRI買収時に誕生したJTの海外たばこ事業を担う組織)へ大幅に権限委譲して、「JTI主体の統合」を行うこと
  • 統合の基本原則を買収発表前から準備しておき、コミュニケーションを繰り返しながら全社での遵守を徹底すること

3. JTのM&Aから学ぶなら本もおすすめ

JTのM&Aについては、広く読まれている人気の本があります。

それが、 『JTのM&A 日本企業が世界企業に飛躍する教科書』(新貝 康司 著/日経BP社)です。

著者はこれまで幾多のJTのM&Aに関わったほか、JTやJTIの副社長を務めた経歴を持っています。現在のように、海外事業の規模が大きくなったJTの礎を築いた人です。

専売公社としての歴史において国内事業のみしか手掛けていなかったJTですが、本書を読むとグローバル化する方法として選んだM&Aは、ひとつひとつ入念に準備されていたことがわかります。

成功事例だけでなく失敗事例も原因分析を含めて記述されており、M&Aに対する社員の意識の高さも成功の鍵であると感じ取れる良書です。

話の中心はM&Aですが、海外現地法人のマネジメントに応用できる記述も多く、ガバナンスの面でも勉強になる一冊だといえます。具体的なM&A戦略・手法・自社で期待できるメリットやデメリットなどを検討したい人にもおすすめです。

4. クロスボーダーM&AならM&A総合研究所

M&A総合研究所は、国内のみならず、アジア圏のM&Aにも積極的に取り組んでいる仲介会社です。経験豊富なM&Aアドバイザーが親身になってサポートいたします。

料金体系は完全成功報酬制(※譲渡企業のみ)、着手金は完全無料となっております。ご相談は無料でお受けしておりますので、クロスボーダーM&Aをご検討の際は、お電話・Webよりお気軽にご連絡ください。

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5. JTのM&A成功の秘訣まとめ

JTは専売公社から民営化された後に事業の多角化に乗り出しましたが、多くの事例が失敗しています。

多角化の具体的な失敗例は、飲料事業です。飲料事業では自販機事業のユニマットコーポレーション(現・ジャパンビバレッジホールディングス)の買収に乗り出しましたが、シナジー効果が発揮されず撤退しました。上記は、M&Aの失敗例ともいえます。

しかしJTは、多角化に失敗した一方で、海外たばこ事業の強化を積極的に推し進めました。この過程では、アメリカやヨーロッパを対象とする大型のクロスボーダーM&Aを行った歴史を持っています。近年行ったギャラハーの買収は、1兆7,310億円という膨大な買収価格で取引された事例です。

最近でも規模は比較的小さいものの、これまで手薄だった地域・国の販路拡大戦略に目的をシフトしてM&Aを続けています。2018年には、ロシアおよびバングラディッシュの会社を買収しました。

とはいえ、JTにとってすでに多くのシェアを抱えていたロシアの買収は、将来的な展開にそれほど大きい期待は持たれていません。ロシアはたばこの規制を強化しており、この流れは今後も続いていく見込みであるためです。

JTのM&Aは、投資銀行やコンサルタントをそれほど利用しない点に特徴があります。基本的に情報収集目的で利用するのみに留まっており、サポートを依頼しても買収成立までの契約とし、経営統合はすべて当事者のみで進めている状況です。

世界のたばこ販売においてJTは世界4位ですが、クロスボーダーM&Aによる事業拡大とシナジー効果によって1位〜3位と争う基盤を整えています。

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