M&Aのデューデリジェンス(DD)とは?用語の意味、項目別の目的、業務フロー、注意点を徹底解説

取締役 営業本部長
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

M&AにおいてDD(デューデリジェンス)は重要なプロセスです。DDにおける5つの項目には、M&Aを成功に導くための目的があります。手順に沿って対象企業を調査しましょう。この記事では、M&AにおけるDD項目別の目的・業務フロー、注意点を解説します。

目次

  1. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)とは
  2. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の種類
  3. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の業務フロー
  4. M&AのDD(デューデリジェンス)にかかる期間
  5. M&AのDD(デューデリジェンス)にかかる費用
  6. M&AのDD(デューデリジェンス)に関する注意点
  7. M&AのDD(デューデリジェンス)は専門のアドバイザーに相談
  8. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)まとめ
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1. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)とは

まず、M&AにおけるDD(デューデリジェンス)とは、どのような意味や役割を持つのか簡単に解説します。DDを行う際にかかる費用や種類も、詳細に説明しましょう。

デューデリジェンスの意味

DD(デューデリジェンス)とは、日本語に訳すと「買収審査」です。合併買収によるM&Aを行う場合、対象企業を細かく調査したうえで買収価格を決定し、スキーム策定を行う必要があります。

M&Aのプロセスには、DDと呼ばれる買収審査を行うプロセスが欠かせません。

デューデリジェンスの費用

M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の費用は、DDを行う対象企業の規模によって大きく異なります。

費用は、DDを行う弁護士や会計士の「1時間当たりにおける単価×作業時間数」で計算されることがほとんどです。1時間当たりの単価は、弁護士や会計士により異なりますが、大体2万〜5万円程度です。

作業時間数は、DDを行う企業の規模で大きく異なります。

デューデリジェンスの役割

M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の役割は、今後、対象企業とM&Aを進めて、どのようなメリットやデメリットが考えられるのか、調査で得られた情報から検討するために行うものです。買収価格が適正であるかどうかも検討できるので、特に買い手側には欠かせないプロセスといえます。

デューデリジェンスのタイミング

M&Aにおける全てのプロセスでDD(デューデリジェンス)が実施されるのは、対象企業が決定され、トップ面談などを終えてM&Aの内容が決定し、基本合意書が締結した後です。

DDの結果、実施するM&Aが本当に事業戦略にとってメリットの多いものなのか、買収価格は適正なのかを査定したうえで、M&Aの最終契約書を締結します。DDを実施する場合、専門家による調査が必要です。

最終契約書締結後のPMI実施を考慮し、調査しましょう。

デューデリジェンスの目的

M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の目的は、これまで社内で調査・検討した対象企業の情報は正しいものなのかさらなるリスクが潜んでいないかの調査です。売り手側と買い手側の意思表示には異なる目的があります。

買い手側は、M&Aを行うことで不利益がないようしっかりとDDを行います。ここからは、M&AにおけるDDの目的を詳細に解説しましょう。

ディールブレイカーの有無確認

ディールブレイカーは、M&Aをとりやめなければいけない程の大きな問題です。例えば、対象企業が保有する技術が目的でM&Aを持ちかけたにもかかわらず、目的の技術を所有していないことが判明した場合、M&Aをとりやめざるを得ません。

このような大きな問題がないかどうかを、DD(デューデリジェンス)によって確認します。

買収価格の検討

技術・事業・財務などさまざまな視点から、M&Aの買収価格は適正なものなのか検討します。買収価格の検討において大きなウエイトを占めるのは、事業DD(デューデリジェンス)です。

対象企業の事業は市場でどれほどの価値があるのかさらに調査することで、買収によるM&Aを行った際の価値を検討し、買収価格を査定します。

買収スキームの検討

DD(デューデリジェンス)の調査結果によっては、買収スキームの変更を視野に入れる検討も必要です。M&Aを行う対象企業全体を買収しようと計画していたものの、実際に自社にとってメリットのある事業が一部であった場合、その事業のみを買収するスキームへ変更します。

その結果、買い手側はより多くのメリットを得られる可能性があります。スキーム策定は、M&Aの最終契約書締結後におけるPMI実施を予想して行いましょう。

契約内容の検討

DD(デューデリジェンス)により、これまで調査してきた内容と差異があった場合、契約内容を再検討する必要があります。例えば、M&Aを行う対象企業が、これまで調査してきた内容よりも多くの技術を持っていた場合、対象としていた事業だけではなく、買収する範囲を広げることも検討しましょう。

契約の内容は事業だけでなく、買収後に人材をどのように活用するかも検討する内容に含まれます。

買収手続きの確認

M&AのDD(デューデリジェンス)で調査した内容をもとに買収手続きの確認を行うのも、DDにおける目的の一つです。M&Aの対象企業が保有する権利などによっては、より多くの法的手続きが必要な場合もあります。

法的手続きを怠ると罰則が課される可能性もあるため、DDは正確・慎重に行いましょう。

買収後の事業運営方針の検討

M&AのDD(デューデリジェンス)の実施で、最終契約締結後に行われるPMIの実施をより具体的に検討できます。M&Aは事業戦略を進めていくうえで、M&A締結後の事業運営をより良いものにできるよう目的をもって行いましょう。

DDでわかった内容をもとに、買収後における事業運営方針の検討に役立てます。

セルサイドデューデリジェンスの概要

売却側の経営者が費用を負担して行うのが、セルサイドデューデリジェンスです。売却側は、専門家へセルサイドデューデリジェンスを依頼し、考えられる提出資料を前もって準備します。それだけでなく、質問事項の事前対応を行い、M&Aがスムーズに進むように取り組みましょう。

セルサイドデューデリジェンスを行うと、専門家によるデューデリジェンスにより、経営者が自社の問題点や課題を把握し、明確化できます。これからの経営にも役立つため、選択肢の一つとして知っておきましょう。

2. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の種類

M&AにおけるDD(デューデリジェンス)では、さまざまな視点から対象企業を詳細に調査しなければなりません。DDには人事DDや技術DD、事業DDなど、さまざまな種類があります。ここでは、12種類のDDの概要を見ていきましょう。

①人事DD(デューデリジェンス)

M&Aにおける人事DD(デューデリジェンス)とは、M&Aの最終契約書締結後に行われるPMI実施を想定して、メリットやデメリットを調査します。M&Aでシナジー効果を得るためには、社員の協力が必要不可欠です。

最終締結後にPMIを実施する際、人事の異動を含む手続きが行われます。PMIを実施するときは人事が非常に重要な役割を持ちます。

DDを行う企業にとって、役員が担う事業に対するウエイトが大きい会社であるほど、人事DDは大切な調査です。

②技術DD(デューデリジェンス)

M&Aにおける技術DD(デューデリジェンス)では、M&Aの対象企業は、どのような商品やサービスを提供する技術を保有しているのか調査します。調査の方法は、対象企業の技術的分野を専門とする社員へインタビューを行います。弁理士などの専門家による内容の評価です。

大きな企業ほど、商品やサービスが多くなり内容も複雑になるため、技術DDには膨大な時間を要します。技術DDの目的は、対象企業が持つ技術を調査し、その技術がM&A後どれほどの市場価値があるのかを見極めることです。

対象企業が持つ技術を把握するとともに、対象企業が所属する市場における技術のレベルも調査しましょう。

③法務DD(デューデリジェンス)

M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)では、対象企業とM&Aを実施した場合、法務上どのようなリスクが考えられるか調査します。

調査の方法は、M&Aを行う対象企業が法的手続きをもって届け出している書類などの確認をします。法務DDにより、M&Aを行う際に必要な手続きが明確になるでしょう。

M&Aにおける法務DDの目的は、法律面からDDの対象企業を調査し、M&Aを行って重大なリスクが生じないか、新しく手続きが必要なものはないかを調査することです。

重大なリスクが判明した場合、新しく手続きが必要なものを把握していないと、法律により罰則が与えられる可能性もあります。しっかりと現状を把握するとともに、M&A締結後に問題が生じないか検討しましょう。

④事業DD(デューデリジェンス)

M&Aの事業DD(デューデリジェンス)では、所属する市場で対象企業がどのようなポジションにあり、合併や買収を行うことで、どのようなシナジー効果が得られるかを調査します。市場全体から対象企業を見る「外部環境分析」と、企業内の経営を見る「内部環境分析」に分けて調査が行われます。

M&Aにおける事業DDの目的は、M&A対象会社の事業を内部・外部の両方から調査し、将来性を見極めることです。M&A締結後における事業のあり方がわかることで、合併や買収によるM&A締結後、より多くのシナジー効果が期待できます。

M&A対象企業の事業を、客観的な視点で調査しましょう。

⑤財務DD(デューデリジェンス)

M&Aにおける財務DD(デューデリジェンス)では、対象企業がどのような資産をどのくらい持っていて、財務的な取引はどのくらい行っているのか調査します。主な内容は、土地や株式などの資産や債権はどのくらいあるのか、職員に対する賞与や退職金などの契約はどのようなものなのかなどです。

財務DDの目的は、M&A対象企業が所有する資産をきちんと把握し、M&A締結後、有効的に使えるように調査することです。大きな目的の一つに、財務状況の把握があります。

財務DD対象企業におけるお金の動き方を知るためには、どのような資産をどれほど所有しているのか把握しなければなりません。その資産はどのように運用されているのか財務状況を確認し、対象企業におけるお金の流れを詳細に把握します。

財務状況が把握できたら、その財務状況にはどのようなリスクが考えられるのか分析します。財務DDでは、企業が実際に所有するビルなどの資産だけでなく、取引がある企業も財務状況の一つと考えましょう。

M&Aを行うことで、取引のあった企業との関係が変わるようであれば、リスクがあると捉えます。

⑥不動産DD(デューデリジェンス)

不動産DD(デューデリジェンス)では、対象企業の不動産分析や権利関係に関する調査、鑑定評価などの不動産鑑定業務を行います。DDで物件の価値が明らかになるため、値下げ交渉やM&A自体の見送りといった判断が可能です。

不動産は、地価によって大きく変動するリスクがあるため、不動産鑑定士による分析・評価が必須です。

⑦環境DD(デューデリジェンス)

環境DD(デューデリジェンス)では、対象企業が工場・研究開発施設などを所有している場合に、環境汚染のリスク、土壌汚染・大気汚染などが発覚した際の影響などを事前に調査します。

将来、環境汚染リスクの懸念がある場合は、事業計画に反映させる必要が出てきます。原状回復に多額のコストが見込まれる場合は、関連する事業を譲渡対象から切り離すなどの対応が可能です。

⑧知的財産DD(デューデリジェンス)

知的財産DD(デューデリジェンス)は、対象企業が著作権や特許権、技術などを取得している場合、知的財産実効性の確認、特許権に無効となる理由がないかなどを確認します。

市場における技術評価やブランド力、将来予測などを評価してもらうことで、対象会社の価値を把握できます。

⑨顧客DD(デューデリジェンス)

顧客DD(デューデリジェンス)は、M&AのDDでそれほど多くはありません。新規顧客や既存の顧客など、顧客の本人確認を行い、マネーロンダリングなどをしていないか調べるために実施します。

⑩ITDD(デューデリジェンス)

ITDD(デューデリジェンス)とは、事業に使うシステム関連の資産査定や、M&A成立後における買収側へのシステム統合に関する障害、投資費用を予測し、事業計画にしっかりと反映させるための調査を実施することです。

近年は、IT活用の重要度が上がり、統合プロセスの複雑化、統合による業務の効率化が下がるリスクなどがあります。経営者は自社のIT資産・IT戦略をトータルで把握しなければなりません。

買収側の質問にも対応できれば、円滑にM&Aが進むでしょう。

⑪税務DD(デューデリジェンス)

税務DD(デューデリジェンス)とは、過去の税務処理や納税状況など税務に関する資料を調査するものです。この調査は、買収価格に反映されるので、重要なスキームといえます。

このデューデリジェンスの目的は、事前に対象企業の税務リスクを把握し、買収後の対策を講じることにあります。あるいは、税務リスクを負ってでも買収する価値があるのか検討するための調査です。

調査結果によっては、予定していたスキームを変更することもあり得ます。特に株式譲渡の場合は、税務リスクも引き継ぐことになるため、リスクが高すぎる場合は、M&A自体の見直しや、事業譲渡への変更などの検討が必要になるでしょう。

⑫人権DD(デューデリジェンス)

人権DD(デューデリジェンス)とは、対象企業による人権侵害の有無を調査するものです。特に原材料などの調達先である海外の途上国に現地工場を保有している場合、就労条件などが問題になります。

具体的には、過度の長時間労働、賃金の未払い、強制労働、児童労働、各種ハラスメントなどの人権リスクを調査して、適切に対処するために必要なプロセスです。

【関連】M&AにおけるビジネスDD(デューデリジェンス)とは?手法と目的を解説!

3. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の業務フロー

上記に挙げた目標を果たすため、M&AにおけるDD(デューデリジェンス)の業務フローを解説します。手順に沿ってプロセスごとに説明します。

①資料開示請求

M&AにおけるDD(デューデリジェンス)で、はじめに行われるのが資料開示請求です。この段階では、DDを行う対象企業の資料や情報は、ほとんどないといっても過言ではありません。

対象企業が所持していると思われる資料の開示請求を行います。対象企業がその資料を所持していない場合は、「該当資料存在せず」と回答する場合もあります。

②資料精査

資料開示請求で入手した資料を精査します。このタイミングで不足している資料があれば、即時開示請求を行います

資料開示請求がなされない資料は、DD(デューデリジェンス)を受ける企業側は、自主的に資料を開示する責任がありません。DDを行う企業側は、不足がないよう開示請求を行う必要があります。

③方針の検討

資料精査終了後、その結果をもとに、どのような内容でDD(デューデリジェンス)を進めていくか、方針の検討を行います。DDを行う対象企業によって必要となる調査内容は異なります。どの部分を重視して調査するかも変わるでしょう。

資料の内容をもとに、対象企業にふさわしいDDの方針を検討し決定します。

④インタビュー

方針が決定した後にインタビューを行いましょう。M&A担当者や会社役員をメインに、DD(デューデリジェンス)対象企業の事業や技術に関することなど、資料だけでは不足していた情報をインタビューによる質疑応答によって補います

DDを行う時点では、M&Aの最終契約書は締結前のため、インタビューを行う際は必要以上に対象企業の社員に悟られないよう注意しましょう。

⑤現地調査

インタビューを終えたら、実際にDD(デューデリジェンス)対象企業へ出向き、現地調査を行います。「百聞は一見に如かず」との言葉があるように、実際に見て確認するのもDDを行ううえで重要なプロセスです。

現地調査を行う際は、必要以上に社員に悟られないよう注意が必要です。対象企業のことを考え、休日に出向くなどの心遣いも必要でしょう。

⑥報告書作成

現地調査まで終えれば、資料やインタビューなどから得た情報も含めて報告書の作成を行います。ここまでのDD(デューデリジェンス)プロセスでわかった対象企業の情報が漏れないよう、報告書にまとめてください。

⑦結果の検討

最後に、報告書にまとめた内容をもとに、結果の検討をします。DD(デューデリジェンス)で得た情報から買収価格や契約内容の見直しを行い、M&Aを成功に導くための検討をしましょう。

M&A締結後、事業をどのように展開していくか、将来の運営方針を検討することも大切です。M&Aを検討している経営者は、その都度M&A仲介会社、アドバイザリーに実務サポートを受けると効率的に進められます。

M&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、専門的な知識や経験が豊富なアドバイザーが在籍しており、案件をフルサポートします。

M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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人事DD(デューデリジェンス)の業務フロー

M&Aにおける人事DD(デューデリジェンス)とは、DDの中でも、人事面に特化して調査することです。主な内容は、経営戦略で重要となる能力を持つ人事に関する分析、人件費や退職金などお金に関する項目などが挙げられます。

人事DDでは、まず全体の人事を調査します。全体で何名の人員があり、どこにどれくらい配置されているのか把握しましょう。

次に役員や技術者など、DDの対象企業にとってキーポイントとなる人材を調査します。そして、人員を雇うためにかかるお金の調査を行います。

全体にかかる人件費から、一人ひとりの人件費まで調査しましょう。次に労働組合があるかなど、人事の周りに関することを調査します。最後に役員と社員の関係性など、人員同士のつながりも調査しましょう。

技術DD(デューデリジェンス)の業務フロー

技術DD(デューデリジェンス)は、対象企業がもっている商品やサービスを開発・販売するための技術を調査します。M&Aを行う際は、DD対象企業の技術が目的であることも多く、技術DDは、それほど重要な項目です。

技術DD(デューデリジェンス)では、はじめに対象企業が持つ技術について調査します。次にその技術が対象企業の属する市場で、どのくらいのレベルなのか調査しましょう。

M&Aを締結した後にどのようなポジションを取れるのか検討します。技術の価値は模倣困難性や希少性の高さなどを基準として価値を求めます。

法務DD(デューデリジェンス)の業務フロー

M&Aにおける法務DD(デューデリジェンス)とは、企業がどのような権利などを保有しているのか、法律面から調査することです。法務DDに不備があると、今後M&Aにより統合や買収を行った場合、重大な問題が発覚してしまう恐れがあります。弁護士などの専門家に依頼し、不備がないように実施しましょう。

法務DDは、細かく手順が分かれています。ここでは、法務DDの業務フローを手順に沿って見ていきましょう。

社内規定の閲覧

まずDD(デューデリジェンス)の対象企業における社内規定の閲覧を行います。社内規定は、法律に基づいて作られており、企業全体でルールとして守られているものです。

DD対象企業に、社内規定の開示請求を行い閲覧します。社内規定には、法律に関するものもあれば、社内独自で規定している内容も含まれます。

法的事項の検討

次に閲覧した社内規定のうち、法律に関わる規定を抜き出しましょう。そして、その法的事項はどのような法律に基づいて作られた規定なのか検討します。

現在施行されている法律と照らし合わせるとともに、今後施行予定の法律も加味して検討してください。

契約書記載事項の検討

M&Aを行う際に交わした、またはこれから交わす予定の最終契約書に記載している事項と照らし合わせ、検討を行います。社内規定と契約書に記載している内容に食い違いがないかを検討するとともに、合併や買収によるM&Aを行った際に、問題となる事項がないかも検討しましょう。

リスクが生じるようであれば、どう改善すれば良いのかなども検討します。

許認可の精査

M&Aを行う際は、対象企業が持つ技術や許認可の取引が重要です。対象企業が保有している技術や商品には特許があるのか、許認可の申請はしてあるのかなどを精査します。

合併や買収によるM&Aを行った際に、新しく届出が必要なものがないかについても検討します。

Change of control条項の確認

Change of controlは、日本語で「支配権の変更」です。Change of control条項の確認では、DD(デューデリジェンス)対象企業が保有している支配権を把握し、合併や買収によるM&Aを行った際は、その権利はどのように移行するのか確認します。

例えば、DD対象企業が商品を開発し、販売は提携している企業に依頼していたとします。この場合、販売店契約はM&A締結後にどのように変更されるのか確認しましょう。

金銭リスクの確認

法務DDでは法務的な債権なども調査の対象です。DD対象企業における債権の有無、債権をもっていればどのような条件なのか調査します。債権も詳細に調査することで、M&Aを行った際に考えられる金銭リスクを確認できるでしょう。

企業価値の調整

法務DD(デューデリジェンス)における最後のプロセスは、これまでの法務DDによって入手した情報から、対象企業の価値を再検討して調整を行うことです。

特に債権に関する情報において、M&Aの売り手となるDD対象企業は、最初は情報を開示したがらないことがあります。法務DDで得た情報をもとに、対象企業の価値を検討し直す必要もあるでしょう。

事業DD(デューデリジェンス)の業務フロー

M&Aにおける事業DD(デューデリジェンス)では、M&Aを行う対象企業が行っている事業を、外部環境と内部環境、両方の視点から調査します。企業が行う事業は企業内部で生産・販売されますが、外部からの影響を強く受けます。両方の視点から調査が必要です。

M&Aにおける事業DDは、外部環境分析と内部環境分析に分けて調査をしましょう。外部環境分析では、M&Aの対象となる企業の事業を経済や政治、世論など、外部から受ける影響に重点を置いて調査します。内部環境分析では、対象企業の事業を内部的要因から調査します。

外部環境分析

事業DD(デューデリジェンス)の外部環境分析で、よく用いられるフレームワークは、PEST分析と5フォース分析です。PEST分析は、政治的要因・経済的要因・社会的要因・技術的要因における英語の頭文字をとっています。

5フォース分析とは、事業にとって脅威となる要因を、新規参入・競合・代替品・供給者・購入者の5つに分けて分析します。

内部環境分析

事業DD(デューデリジェンス)における内部環境分析で、よく用いられるフレームワークは、VRIOフレームワークとバリューチェーンモデルです。VRIOフレームワークでは、事業の価値を内部で分析する際に、経済価値・希少性・模倣困難性・組織の視点から調査します。

バリューチェーンモデルとは、事業が商品やサービスとして価値を生み出す際に行う活動を、主活動と支援活動に分け、各活動の価値とつながりを調査することです。

財務DD(デューデリジェンス)の業務フロー

財務DD(デューデリジェンス)とは、M&Aの対象企業を資産や取引があるオーナーとの関係など、財務面に焦点をあてて調査することです。財務DDは、対象となる会社が、公認会計士による監査を受けているか受けていないかによって、調査する手続きが異なります。

公認会計士による監査を受けている場合は、しっかりと管理されているはずなので、財務的な信頼性はあるといえます。財務DDは、細かく手順が分かれているので、財務DDの業務フローを手順に沿って見ていきましょう。

資料の準備

まずは、財務DD(デューデリジェンス)を行ううえで必要な書類の準備を行います。M&Aの対象となる企業が、公認会計士による監査を受けている場合は、財務管理を行っている資料を提出してもらいましょう。

公認会計士による監査を受けていない場合は、詳細な資料を受け取ったうえで、精査する必要があります。

意思決定機関の議事録等確認

次は、意思決定機関における議事録などの確認です。どのような経緯で決定がなされたのか、議事録をチェックすることで確認できます。

会計方針の確認

次に、意思決定機関における議事録等確認の情報を踏まえて、会計方針はどのような基準でどのように決定してきたのかを確認しましょう。会計方針を理解することで、その企業が持つ事業の将来性も検討できます。

外部調査

企業の財務状況は、内部の資料だけではなく、取引がある外部からの情報でも調査できます。財務状況も客観的に見ることで、より正しい判断ができるでしょう。

損益計算書の精査

損益計算書とは、事業においてどこにどれくらいのコストがかかり、どれくらいの収益が得られたのか記載された書類です。損益計算書を精査すれば、対象企業の財務状況を数字でしっかり把握できます。

貸借対照表の精査

貸借対照表には、対象となる企業における現時点での資産にあたる部分と負債に当たる部分を左右に記載し、企業における全体の損益を把握します。さまざまな資料から細かい損益を把握するとともに、全体的な把握も大切です。

税務リスクの把握

M&A対象企業の財務状況について、これまでの調査でわかった内容から、どのような税務リスクがあるのか把握します。税金はどのような事業にも関係する法律ですので、きちんと把握しましょう。

財務リスクが把握できず必要な税金が未納になると、その事業だけでなく企業全体が損害を被る危険性があるため注意してください。

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4. M&AのDD(デューデリジェンス)にかかる期間

M&AのDD(デューデリジェンス)は、対象企業の業種や事業規模、調査範囲などによって、調査にかかる期間は大きく異なります。一概には言えませんが、おおむね1~2カ月ほどと考えておきましょう。調査項目が少ない場合は、2週間ほどで完了するケースもあります。

デューデリジェンスの手続きごとに大まかに分けると、下記のとおり4つの期間になります。

  • 対象企業側の資料準備:1~2週間
  • 調査(聞き取り):数日~2週間
  • 分析・中間報告:1~2週間
  • 追加分析・最終報告:1~2週間

調査には、対象企業の資料提出や回答が十分に用意されていることが不可欠です。急いでいたとしても、対象企業側からの資料などの提出が滞れば、デューデリジェンスは一向に進みません。M&Aのスケジュールを組み直す対応が必要になる場合もあります。

対象企業側の協力を得られれば、デューデリジェンスはスムーズに進められます。各専門家が行い、時間を要することを踏まえたうえで、無理のないスケジュールを組みましょう。

5. M&AのDD(デューデリジェンス)にかかる費用

この章では、M&AのDD(デューデリジェンス)にかかる費用はどれくらいなのか見ていきましょう。

必要となる費用

デューデリジェンスで必要となる費用の相場は、「どのデューデリジェンスを依頼するか」「案件規模や複雑さ」により異なります

中小企業を対象に、会計や税務、法務デューデリジェンスを依頼すると、数十万円~数百万円くらいかかるでしょう。大規模案件や海外案件の場合は、デューデリジェンスに約数千万円かかることもあります。

必要となる会計処理

デューデリジェンスで必要となる会計処理は、個別財務諸表と連結財務諸表です。ただし、個別財務諸表は、直接取得に必要となった費用は取得原価に含め、それ以外は一括費用処理となります。連結財務諸表は、支出の際に一括費用処理します。

2013年以前は、連結財務諸表も直接取得に必要とした費用を取得原価に含めていました。しかし、企業結合会計基準が改正となったため、個別財務諸表と連結財務諸表の処理は異なりますので、注意しましょう。

6. M&AのDD(デューデリジェンス)に関する注意点

M&AのDD(デューデリジェンス)では、注意が必要な点もあります。ここでは、買収側と売却側に分けて、注意点を見ていきましょう。

買収側の注意点

まずは、買収側の注意点からです。

取引規模・予算に応じて調査範囲を決める

買収側は、M&Aの規模や予算に応じてデューデリジェンスを行わなければなりません。100万円の買収案件で、500万円のデューデリジェンスを実施すれば、経済合理性を欠きます。

逆に、100億円の買収案件で100万円のデューデリジェンスを行うと、リスクに応じたデューデリジェンスが行えているのか疑問です。デューデリジェンスの費用はかけすぎたり削減しすぎたりせず、M&Aの取引規模と自社の予算をトータルで考えたうえで行いましょう。

事前にチェックリストを作成したうえで調査する

買収側は、デューデリジェンス実施の際に、チェックすることを事前にリストにまとめれば、スムーズなデューデリジェンスが行えます。チェックリストを作成すると、確認漏れも防げるでしょう。

買収ごとにチェックリストを更新すれば、精度がより高いチェックリストが更新でき、デューデリジェンスの質も上がります。

調査対象企業の情報管理を徹底する

買収側は売却側と、秘密保持契約書を締結します。売却側の機密情報を取り扱いますが、M&Aでは売却側の経営に関する情報を手に入れるので、情報の重要性が高いでしょう。

手に入れた調査対象企業の情報が外部に漏れないよう管理を徹底しなければなりません。情報を外部に流出させてしまうと、M&Aの破談になったり、売却側から秘密保持契約に基づいた損害賠償を請求されたりするケースもあります。

売却側の注意点

次に、売却側の注意点です。

事前に把握できているリスクを相手側に伝える

売却側が、前もってM&A後に生じるリスクなどを買収側に伝えると、買収側は安心できるのでデューデリジェンスがスムーズに進みます

特にリスクにより取引に与える影響が強いケースでは、後に買収側が知ったときのインパクトが大きいです。売却側は、必ずしも詳細に情報を開示すれば良いわけではありません。しかし、買収側へ誠実にコミュニケーションを取ることは大切です。

調査には最大限に協力する

専門家から依頼のあるインタビューや資料提供に対して、売却側はできるだけ早期・正確に回答しましょう。そうすることで、デューデリジェンスにかかる期間が短縮でき、M&Aに成功する確率が上昇します。

不必要に時間をかけると、買収側に不信感を与えることもあります。調査に最大限に協力すれば、買収側は「今後も一緒にやっていける」など良いイメージを持つでしょう。

個人情報や秘密保持契約の内容に関する開示は慎重に対応する

売却側は、個人情報や秘密保持契約を規定した契約の開示に、慎重に対応しなければなりません。人件費の明細を求められた場合は、個人名や住所などの個人情報を消して提出しましょう。

秘密保持契約を規定した大事な契約は、デューデリジェンスの段階では開示せず、最終契約締結の直前に開示する方法もあります。

買収側が求める資料の提出は重要です。しかし、デューデリジェンスの時点では、M&Aが成立するかどうかは未決定です。交渉が決裂する可能性も考え、どのような情報を開示すべきか慎重に判断してください。

7. M&AのDD(デューデリジェンス)は専門のアドバイザーに相談

リスクを回避してM&Aを成功させるためには、DD(デューデリジェンス)をしっかり行うことが重要です。M&AのDDは専門のアドバイザーへご相談ください。

M&A総合研究所では、豊富な知識と経験を持つM&Aアドバイザーが案件をフルサポートします。M&A総合研究所の料金体系は、成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。

無料相談を受け付けていますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

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8. M&AにおけるDD(デューデリジェンス)まとめ

M&AにおけるDD(デューデリジェンス)は、M&Aの最終契約書締結前に行う重要なプロセスです。内容は、人事DD・技術DD・法務DD・事業DD・財務DDなどさまざまな種類に分けられます。DDは専門家へ依頼しましょう。

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