2023年08月27日更新
M&Aにおける課題とは?現状から対策までを解説
昨今、M&Aは大企業だけでなく中小企業から個人事業主まで幅広く行われています。そこで本記事では、M&Aにおけるさまざまなシチュエーションに潜む課題を明らかにし、それぞれのケース別に課題・対策を掲示します。
目次
1. M&Aとは
M&Aとは、2つ以上の法人が1つの法人に統合する合併(Merger)と、法人や個人が事業の経営権の一部またはすべてを取得する買収(Acquisition)の略称です。
M&Aには株式譲渡・事業譲渡・株式交換・株式移転・会社分割などさまざまな手法があり、広義には資本提携なども含まれます。
2. M&Aにおける現状
近年、日本のM&Aには、以下のような特徴が見られます。
- 中小企業のM&A件数が増加
- 大手企業によるクロスボーダーM&Aが増加
- イグジット戦略としてのM&Aが増加
①中小企業のM&A件数が増加
日本のM&Aはバブル経済の頃に活発となり、その後は商法改正や会社法施行により、さらにM&Aが増加しています。かつて、M&Aといえば上場企業などの大企業が行う特別な経営戦略が一般的なイメージでした。ハゲタカファンドとも呼ばれた外資系投資ファンドが注目されたことで、M&Aに悪いイメージを持つ人も少なからずいました。
しかし、近年は後継者不足で事業承継問題を抱える中小企業が増加していることを受けて、国や自治体がM&Aによる第三者への事業承継を後押しする動きがあり、中小企業がM&Aを実施するケースも増加しています。
②大手企業によるクロスボーダーM&Aが増加
今後、日本では少子高齢化により国内市場の縮小が進んでいくと予測されています。一方で、東南アジアなどの新興国の経済は成長中です。さまざまな業界が先端技術の急速な進歩による転換期を迎えていることから、技術開発競争が激しくなっています。
これらの変化に対応するためには、日本国内での業界再編のみでは間に合わず、海外企業の買収によって海外の事業エリアを開拓したり、海外の優秀な人材や先端技術を獲得したりする経営戦略が欠かせません。
そこで近年の日本企業は、今後の成長機会獲得に向けた海外企業を買収するクロスボーダーM&Aを重要視しています。クロスボーダーM&Aによる戦略は、大手企業だけでなく中堅企業や中小企業にまで広がっています。
③イグジット戦略としてのM&Aが増加
イグジット戦略とは、投資資金を回収するための出口(イグジット=EXIT)戦略のことです。従来、日本のベンチャー企業はIPO(Initial Public Offering=新規株式公開)を主要なイグジット戦略としてきました。
しかし、株式の上場には煩雑な手続きや準備に時間もかかることなどが背景となり、昨今のベンチャー企業やスタートアップでは、IPOよりは手軽に実施できるM&Aをイグジット戦略とするケースが増加しています。
3. M&Aにおける課題と対策
M&Aを行う際は、以下の課題に対応しなければなりません。ここでは、それぞれの課題と対策を解説します。
- 従業員の処遇・待遇
- 顧客・取引先への対応
- M&A後のPMI
- 費用面・キャッシュフロー
①従業員の処遇・待遇
あらゆる業界で人材不足が深刻となっている現代において、買い手側からするとM&Aによる人材の獲得は重要な目的の1つです。売り手側にとっても、経営者は自社の大事な従業員を託すことになるので、会社売却後に従業員がどのように扱われるかは気になるところでしょう。
実際に、M&A後に従業員が新しい環境になじめなかったり、待遇に不満を持ったりしてモチベーションが大きく低下するケースも少なくありません。
最悪の場合、M&A後に短期間で離職してしまうこともあるため、従業員に対する対応方法は、M&Aを成功させるための課題の1つです。
対策
従業員の処遇・待遇に関する課題の対策の1つとして、買い手側はじっくりと時間をかけて買収先の従業員を新しい環境に慣れさせることが大切です。急速に自社の企業風土やルールに適応させようとすると、従業員の不安・不満を招いてしまいます。
売り手側は、課題解決に必要な準備を事前に行っておくことが大切であり、買い手側との交渉では、従業員の処遇・待遇に関して綿密に話し合い、細かいところまで明確にしておくことが必要です。
M&A完了後、しばらくの間は売り手側経営者が従業員の状況を確認し、買い手側にアドバイスすることも有効でしょう。そのほかにも、売り手側経営者は従業員の不安を招かないために、M&Aによって会社を売却する情報を伝えるタイミングや方法に十分注意しなければなりません。
②顧客・取引先への対応
従業員への対応だけでなく、M&Aの際は顧客や取引先への対応も課題の1つです。特に中小企業の場合、オーナー経営者との人間関係でつながっている顧客や取引先も少なくありません。
そのため、M&Aをきっかけに顧客や取引先が離れていかないように対策を講じる必要があります。
対策
M&A後も顧客や取引先との関係を維持していくには、M&A前の準備が必要不可欠です。売り手側の経営者が、買い手側の経営者や担当者を主要な顧客や取引先に対して紹介し、関係を築いておくとスムーズに引き継ぎやすくなります。
M&A後も売り手側の経営者がしばらく会社に残り、顧客・取引先と買い手側との関係構築をサポートすることも有効です。一方、買い手側は、買収後に契約内容などを急激に変えると、顧客や取引先の反発を招く可能性があります。
従来の契約内容などを尊重しつつ、変更する場合はしっかりと説明して、合意を得たうえで変えていくことが大切です。
③M&A後のPMI
事業の成長を図ってM&Aによる買収を行ったにもかかわらず、買収後に思ったような成果が得られなかったケースは少なくありません。一般的に、M&Aの成功率は6~7割程度といわれています。
失敗する主な原因は、経営者がM&Aの知識を十分に持たないままM&Aを行い、売り手・買い手の経営者同士がお互いの企業文化を十分に理解しないままM&Aを完了させてしまうことです。
買い手側がM&Aを成功させるためには、PMI(Post Merger Integration=M&A後の経営統合プロセス)の重要性を認識しなければなりません。
対策
PMIの成功は、デューデリジェンス(買収側企業による売却側企業の精密監査)をどれだけ入念に行えるかが重要です。デューデリジェンスによって売却側企業の収益力や想定されるリスクを洗い出すことで、PMIの進め方も決まります。
中小企業の場合、トップ面談もPMIに大きな影響を及ぼす要因の1つです。中小企業では特に経営者の影響力が大きいので、企業風土も独自性の強さが見受けられます。
そのため、買い手側経営者が売り手側経営者と価値観などの相性が合わないと、たとえ数字上は条件の良いM&Aでも、実際の現場ではうまくいかないケースもあるでしょう。
トップ面談の際にお互いの相性を確認し、どれだけ価値観を理解しあえるか判断することも、PMIを成功させるうえで重要です。
④費用面・キャッシュフロー
M&Aの買収側にとって、買収費用以外にも以下のような出費が予想されます。
- M&Aアドバイザーへの手数料
- 弁護士・公認会計士・税理士・司法書士など士業専門家への報酬
- M&Aに関わる社内スタッフの人件費
- 契約書の印紙代
- 登記費用
- M&Aスキーム(手法)によっては税金も発生
上記の費用は売却側にも生じ得るものであり、全体としてどのような出費額になるか事前に把握しておく必要があります。売却側の将来キャッシュフローは、企業価値評価(バリュエーション)に直結する重要な情報です。
売却側の提示する中期事業計画における将来のキャッシュフローによって、企業価値評価=M&Aの売買価額は左右されます。したがって、この事業計画の客観性がどこまで担保されているかが課題です。
対策
M&Aの全体費用の把握および客観性を持った企業価値評価を実施するためには、専門的知識と経験を備えたM&Aアドバイザーのサポートを受けることが得策です。したがって、信頼できるM&Aアドバイザー選びが重要なポイントとなります。
4. M&Aにおけるメリット・デメリット
M&Aの際はメリット・デメリットを考慮しながら計画を立てることが肝要です。ここでは、M&Aにおける売り手のメリット・デメリットと買い手のメリット・デメリットを解説します。
売り手のメリット
M&Aによって、売り手は主に以下のメリットが得られます。
- 後継者問題を解決
- 廃業・倒産を避ける
- 譲渡・売却益の獲得
- 従業員の雇用先を確保
- 事業・企業の発展
後継者問題を解決
中小企業のオーナー経営者がM&Aによる会社売却を行う主な理由の1つが、後継者問題の解決です。近年は子どもに会社を継がせようと考える経営者が減り、子ども側でも親の会社を継がずに別の仕事にするケースが増えています。
しかし、オーナー経営者としては、自身が大事に育ててきた会社を廃業にしたくないと考えるのは当然のことです。大切な従業員を路頭に迷わせるわけにはいかない使命感から、会社の継続を模索する経営者が非常に多いです。
M&Aを活用して第三者への事業承継に成功すれば、子どもへの負担などを気にせずに会社を存続させられます。
廃業・倒産を避ける
中小企業庁が発表している「中小企業白書」によると、全国の社長の年齢分布は、70代以上の占める割合が年々増加しています。経営者の高齢化が進むにつれて、年齢を理由に引退を考える経営者が今後も増えるとの予想です。
しかし、M&Aによる事業承継で第三者へ会社を引き継げれば、廃業や倒産を回避し、会社の存続が可能です。業績の悪化や先行きの不安から、倒産せざるをえなくなる前に会社の売却を検討する場合もあります。経営不振に陥った後での売却は買い手が現れにくいリスクもありますが、買い手が見つかれば会社の立て直しも可能です。
もしも買い手が見つからなかったとしても、会社売却に向けて自社の状況を客観的に見直したり、専門家からアドバイスをもらって企業価値の向上を図ったりしているうちに、経営状況が上向いた事例もあります。
譲渡・売却益の獲得
会社を売却して経営から退くにしても、その後の生活などを考えるとまとまった資金が必要です。近年は、会社の売却益で新たに事業を始めるシリアルアントレプレナー(連続起業家)も増加しています。
もしも廃業・倒産する場合は資金が得られないばかりか、会社清算の費用を持ち出しでまかなう必要性も出てきます。しかし、M&Aの場合は、引退後の生活資金や次の事業資金を獲得できる点がメリットです。
従業員の雇用先を確保
従業員の雇用先を確保できる点もM&Aのメリットです。廃業を検討しているものの、従業員のことを考えるとなかなか廃業に踏みきれない経営者も少なくありません。
しかし、経営者が事業へのモチベーションが下がったまま事業を続けたり、業績が下がっていく中で事業を続けたりしていると、最終的には従業員に負担をかけることにもなるでしょう。
M&Aであれば、多くの場合、買い手側はさらに良い雇用条件で従業員を引き受けるので、雇用を確保できるだけでなく雇用条件の向上も見込めます。
事業・企業の発展
会社・事業が大きくなっていくにつれて、経営者に求められる能力も変化していきます。新事業の立ち上げが得意な経営者もいれば、会社を成長させていくのが得意な経営者、成熟した会社を維持していくのが得意な経営者など、適性はさまざまです。
時代の流れに自身の感性が合わなくなってきたと感じる経営者もいます。そのような場合、さらなる事業の発展を考え、M&Aでの会社売却によって事業の成長を図ることも可能です。
買い手のメリット
M&Aによって、買い手は主に以下のメリットが得られます。
- 人材・技術・事業の獲得
- 発展・拡大の速度を早める
人材・技術・事業の獲得
会社を成長させていくには、既存事業をさらに成長させるか、新規事業を立ち上げて育てていく方法を取るのが一般的です。そのためには、人材や技術、ノウハウを獲得しなければなりません。しかし、限られた経営資源の中で、これらすべてを社内で構築するのは難しいです。
M&Aによって人材・技術・事業を同時に獲得すれば、効率的に会社の成長を図ることが可能です。特に慢性的な人材不足と技術の進化が加速している現状では、M&Aの必要性がさらに高まっています。
発展・拡大の速度を速める
会社をさらに発展させるためには、業界でのシェア向上、事業エリアの拡張、関連事業の立ち上げ、異業種への進出などの方法が取られます。これらの事業拡大を単独で行うには、多くの時間がかかるうえに、失敗するリスクも無視できません。
M&Aによって経営戦略に合った会社を買収すれば、成長速度を加速させられます。
売り手のデメリット
M&Aによって、売り手は主に以下のデメリットを被る可能性があります。
- 希望どおりの売却先が見つかるとは限らない
- 希望条件での売却ができない可能性
- M&A前後に社内が混乱する可能性
- 情報漏えいにより契約が不成立になる可能性
希望どおりの売却先が見つかるとは限らない
M&Aによる売却ではタイミングが非常に重要です。自社の状況や業界の流れ、経営者の状態などによって、最適な売却先がすぐに決まることもあれば、なかなか見つからないこともあるでしょう。
M&Aまでの準備期間が短いほど、最適な売却先と出会える確率は低くなる傾向があります。最適な売却先と出会う確率を上げるためにも、早い段階からM&Aに向けて準備を進めることが大切です。
希望条件での売却ができない可能性
M&Aは売り手と買い手の希望をすり合わせることで条件が決まるので、当初に希望していた条件で最終契約まで至るとは限りません。
すべての希望条件を通すことは簡単ではありませんが、交渉の際は希望条件に優先順位を付けておき、譲れない条件と妥協できる条件のラインを明確にするなどの対策が必要です。親身に対応してくれるM&Aアドバイザーに依頼することも、円滑な課題解決につながります。
M&A前後に社内が混乱する可能性
M&Aによる社内の変化は従業員に大きな戸惑いを与えます。特に経営者への依存度が高い企業ほど、M&Aによって経営者が変わる影響も大きくなるので注意が必要です。
社内の混乱により従業員のモチベーションが下がったことで離職してしまうと、M&Aの交渉にも影響が出てきます。そのため、従業員へ伝えるタイミングや説明の仕方、M&A後の統合プロセスを丁寧に進めることが課題です。
情報漏えいにより契約が不成立になる可能性
M&Aの際は情報漏えいに細心の注意が必要です。情報漏えいは信頼関係に影響するだけでなく、相手企業の経営にダメージを与える可能性もあります。交渉が進んでいくにつれて、M&A相手には自社の重要な情報を提供し、相手からも情報提供を受けます。
その際、自社から情報漏えいする可能性だけでなく、相手企業からの情報漏えいや、仲介業者からの情報漏えいの可能性も想定しなければならないため、いかに信頼できる相手と仲介業者を選ぶかが課題です。
買い手のデメリット
M&Aによって、買い手は主に以下のデメリットを被る可能性があります。
- 雇用条件の変化により離職の可能性
- 簿外債務・のれんの減損が発覚する可能性
- 買収費用が必要
- 想定した売上や成長が見込めない
雇用条件の変化により離職の可能性
M&Aによる買い手の課題の1つ目は、M&A後に買収先企業の従業員が離職してしまう可能性です。多くの場合、買い手側は買収先企業の雇用条件よりも良い条件を出すことで、買収先従業員からの不満が出ないように対処します。
しかし、抱える不満は従業員ごとに異なる場合があり、全員が納得する条件を提示することは簡単ではありません。
実際には買収先企業の経営者やコンサルタントにサポートしてもらい離職を抑えようとするケースもありますが、現実には従業員の離職リスクをゼロにできない点が課題です。
簿外債務・のれんの減損が発覚する可能性
M&Aでは、想定どおりに買収後の統合が進むとは限りません。買収後に買収先企業の簿外債務が発覚し、想定よりも事業シナジーが得られず、のれんの減損が発生する可能性があります。
簿外債務やのれんの減損は徹底したデューデリジェンスを行うことでリスクを下げられますが、リスクをゼロにすることは簡単ではありません。
特にのれんの減損は、東証一部上場企業でものれんの減損によって大損失を被った事例が相次ぐほどリスク回避が課題です。M&Aによる買収の際は、簿外債務とのれんの減損リスクを織り込んだうえで買収する必要があります。
買収費用が必要
買収には資金が必要であり、多くの場合は現金による買収が行われます。しかし、買収規模にもよりますが、買収資金を自社の内部留保からキャッシュで支払えるケースは限られるのが実情です。
多くの場合、買収によって負債を抱えることになり、投資資金の回収には数年から十数年の期間が必要です。そもそもリスクのない投資はないため、投資による利益とリスクのバランスをいかに調節するかが課題といえます。
想定した売上や成長が見込めない
多くの買い手企業は、買収シナジーが得られることを期待してM&Aを行います。つまり、買収によって売上増加やコスト削減が果たせれば買収は成功です。
しかし、売上の減少やコストの増大だけでなく、顧客・取引先離れや従業員の離職が起きることでM&Aが失敗となるケースもあります。環境の変化が速く複雑化している昨今、想定どおりの買収シナジーを得るには、どれだけ徹底した準備ができるかが課題です。
5. M&A手法別の課題と対策
M&Aは手法によって特徴やメリット・デメリットに違いがあります。ここでは、中小企業や個人事業主のM&Aでよく用いられる、事業譲渡と株式譲渡による売却の課題と対策を解説します。
事業譲渡・売却の場合
事業譲渡とは、会社内の事業や資産の一部または全部を売買する手法です。事業譲渡による売却の課題と対策を以下に掲示します。
考えられる課題
事業譲渡を行う際の主な課題は、手続きの煩雑さと税負担の大きさです。事業譲渡の場合、買い手側は各種許認可をあらためて取り直し、契約関係を再度結び直す必要があります。
許認可や契約の種類によっては多くの時間と手間がかかり、事業譲渡の規模が大きいほど負担も大きくなる点がデメリットです。
事業譲渡は売却益に法人税などの課税が発生するほか、売却資産の種類によっては消費税も発生するため、規模の大きい買収になるほど、買い手は資金の準備が課題となります。
有効な対策
事業譲渡によって事業を獲得する場合、許認可の取得や再契約にかかる期間を逆算して、M&A完了に合わせてあらかじめ準備しておくことが重要です。
事業譲渡によって発生する税負担がいくらになるかはM&Aのタイミングによっても変わるので、税負担を抑えられるタイミングを見計らって計画的に進める必要があります。
株式譲渡・売却の場合
株式譲渡とは、売り手企業の株主が買い手側に株式を売却し、買い手側は対価として現金を支払って経営権を獲得する手法です。株式譲渡による売却の課題と対策は主に以下のような内容があります。
考えられる課題
株式譲渡は手続きが簡便であることから、M&Aの際に多く用いられている手法です。しかし、手続きが簡便であることがかえって手続きのミスにつながり、後々問題が発生するケースがあります。
特に親族内など近い関係性の間での株式譲渡では、手続きを簡素化して進めたり、しっかりと記録を残さなかったりしたことから問題が起きやすいです。株式譲渡は経営権を包括的に譲渡するので、買い手側は簿外債務など想定外のリスクを背負う可能性もあります。
有効な対策
手続き上の課題に対しては、当事者間で直接手続きを進めるのではなく、M&Aの専門家などに仲介させることでミスを防げます。想定外のリスクまで引き継いでしまう点の対策としては、M&Aの際に徹底したデューデリジェンスを行うのが重要です。
6. 状況別のM&Aにおける課題と対策
M&Aは目的や事業を引き継ぐ相手、譲渡規模によっても課題が変わります。ここでは、事業承継の課題と対策、スモールM&Aの課題と対策を解説します。
事業承継を行う場合
事業を次の代へ引き継ぐ行為が事業承継です。事業承継を円滑に進めるには、さまざまな課題を解決する必要があります。
考えられる課題
事業承継で生じる主な課題は、主に以下のとおりです。
- 後継者選びと教育
- 経営権の分散
- 税負担
- 後継者の資金確保
- 債務や個人保証
事業承継では、経営者や後継者、経営者の親族、取引先や顧客など、さまざまな人たちが関わるので、上記の課題を計画的に進めるのが重要です。
有効な対策
事業承継の課題解決には時間がかかります。事業承継の準備開始に早過ぎることはないので、経営者は若い時期から事業承継計画書を作成し、準備を進めておくことが大切です。
前述した課題の多くは支援制度の活用や専門家への相談によって負担を軽減できます。まずは、金融機関や公的機関、士業事務所など身近な専門家に相談することで、課題への具体的な対策方法が見えてくるでしょう。
個人がスモールM&Aを行う場合
スモールM&Aとは、数百万円台~1億円未満の取引規模の小さいM&Aのことです。すでにアメリカでは浸透しているスモールM&Aですが、近年は日本でも注目されており、個人がスモールM&Aにより起業するケースが増えています。
考えられる課題
スモールM&Aの場合、後継者選びと教育の難しさ、資金負担の大きさが課題です。譲渡側の個人事業主には、長年かけて積み上げてきた技術・ノウハウ、顧客が非常に重視されています。
後継者となる個人が技術・ノウハウを身につけ、顧客との関係性を築くためには、多くの時間と熱意が必要です。そのため、後継者が見つからず、時間ばかりが過ぎていくケースも多くあります。
スモールM&Aを行うための資金負担は、個人にとって大きいです。想定よりも負担が大きくなってM&Aをあきらめたり、資金負担を抑えようと専門家に相談せずに手続きを進めた結果、トラブルになったりするケースもあります。
有効な対策
スモールM&Aを成功させるには、後継者候補はM&Aを行う前に、時間をかけて経営者から技術やノウハウを学びつつ、その間に経営者や顧客、取引先との信頼関係を築くことが大切です。そして何よりも、店・会社の商品・サービスに対して強い思いを持つことが大前提です。
資金面の課題は、スモールM&Aにも対応している安価な手数料のM&A仲介会社への依頼や、公的機関にサポートしてもらうなど、専門家選びが重要になります。
7. M&A契約スキームにおける課題と対策
M&Aを行う際は、まずM&A仲介会社への依頼有無を検討し、依頼する場合はどの契約形態の仲介会社に依頼するかを決める必要があります。
本章では、仲介型の専門家と契約する場合の課題と対策、アドバイザリー型の専門家と契約する場合の課題と対策、専門家に相談しない場合の課題と対策を順番に解説します。
M&A仲介者と契約する場合
仲介型契約の場合、M&Aの専門家は売り手と買い手双方と契約し、その間に入って交渉をサポートします。仲介型は売り手と買い手の調整役を果たすので、交渉がスピーディーに進みやすい点がメリットです。そのため、中小企業などの中小規模案件で多く採用されています。
考えられる課題
仲介型は交渉が比較的スムーズに進みやすいですが、売り手と買い手の妥協点を探っていきます。したがって、当初、理想としていた条件よりも低い条件での成約となる可能性があるため、両者の妥協点を見いだすことが課題です。
有効な対策
相手との関係性やM&Aの成約スピードを重視するのであれば、仲介型の方がメリットは大きくなります。その際、譲れない条件や妥協できる条件を、明確に伝えておくことが大切です。
M&Aアドバイザリーと契約する場合
アドバイザリー型契約の場合、M&Aの専門家は売り手か買い手どちらか一方と契約し、M&Aをサポートします。相手方も別の専門家と契約して交渉を進めるのが一般的です。アドバイザリー型は、依頼者の利益を最大化できるようにサポートする点に特徴があります。
アドバイザリー型は、上場企業などの大規模案件で多く採用されています。
考えられる課題
アドバイザリー型契約の場合、自社の利益を最優先にサポートしてもらえる点がメリットですが、交渉が難航し長引きやすい点が課題です。大企業の場合、交渉に数年を要するケースもあります。
有効な対策
アドバイザリー型で交渉を進める場合は、M&A専門家の交渉能力や経験が大きく影響するので、信頼できる専門家を選ぶことが課題解決につながります。交渉期間が長引いても余裕を持って対応できるよう、時間や資金を十分確保しておくことが重要です。
相談しない場合
小規模案件の場合、M&Aの専門家に相談せず、直接交渉するケースもあります。専門家を通さないので手数料負担がなく、資金面の負担を抑えられる点がメリットです。
考えられる課題
専門家を通さない場合、いかに信頼できるM&A相手を見つけるか、どうやって交渉を円滑に進めるかが課題となります。手続きのミスなどからトラブルになる可能性にも注意が必要です。M&Aのマッチング時には、「判断材料としての情報不足」を課題に挙げる経営者が多く見られるため、必要に応じて専門家からサポートを受けることが望ましいです。
有効な対策
専門家に依頼しないことで目先の資金負担は抑えられますが、専門家に依頼した方が最終的にはメリットが大きい場合も往々にしてあります。昨今は小規模案件に対応した専門家も増えているので、先を見据えて専門家に相談した方が結果的に課題の解消につながるケースが多いです。
8. M&Aの課題に関する相談は仲介会社がおすすめ
ここまで解説してきたように、M&Aの際は大小さまざまな課題が生じます。課題を解消しながら円滑にM&Aを進めるには、豊富な実績を持った専門家によるサポートがおすすめです。
M&A総合研究所では、実務経験豊富なM&Aアドバイザーが専任につき、課題を解決しながらM&A成約を目指しフルサポートします。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。
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9. M&Aにおける課題まとめ
本記事では、M&Aにおけるさまざまなシチュエーションに潜む課題を明らかにし、それぞれのケース別に課題・対策を解説しました。M&Aの現状、課題、メリット・デメリットを把握したうえで、プロセスを進めましょう。
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