2023年12月24日更新
ベンチャー企業のM&Aの成功方法【事例30選あり】
近年、ベンチャー企業のM&Aが盛んに実施されています。バイアウト件数が増加したほか、取引金額も高額化している状況です。今回は、ベンチャー企業のM&A成功に向け、買収額の決定方法・買収後のPMI・スタートアップベンチャーの買収などを成功事例とともに解説します。
目次
1. ベンチャー企業M&Aの市場動向
ベンチャー企業のM&Aといえば、2005年頃にライブドア・村上ファンドなどによるM&Aが話題となり、一時期はテレビ番組でもM&Aに関する用語が連日解説されるほどの盛り上がりを見せました。
それから10年以上もの年月が経ち、現在ではM&Aに対する企業の考え方が変化している状況です。はじめに、ベンチャー企業M&Aの市場動向について解説します。
バイアウト件数が増加
ここ数年、ベンチャー企業をM&Aによってバイアウトする大企業や、ベンチャー企業が他のベンチャー企業をM&Aによってバイアウトする件数が増加しています。
従来はIPOを目指すベンチャー企業が多かったですが、近年は大企業への売却を目的に経営する起業家が増えている状況です。
スタートアップ企業のデータベースを持つ「INITIAL」の資料によると、IPOの件数はリーマンショック前から微増という結果に留まっています。
その一方でM&Aの件数はリーマンショック後も増え続けており、2019年におけるベンチャー企業のM&A件数は全体の3割(1,375件)を記録しました。
取引金額の高額化
ベンチャー企業のM&Aでは、バイアウト件数のみならず、取引金額も高額化しています。上場企業によるベンチャー企業のM&Aは従来では10億円以下が主流でしたが、近年では10億円以上のM&Aが増えており、100億円を超える大型のM&Aも出てきました。
これまでM&Aに消極的だった大企業が方針を転換しており、事業シナジーがあると判断した場合には高額案件でも積極的にバイアウトする企業が増えています。
2. ベンチャー企業にとってのM&Aとは
ベンチャー企業にとって、M&Aはどのような目的で行われる行為なのでしょうか。ここでは、ベンチャー企業から見たM&Aの意義を中心に紹介します。
ベンチャー企業の経営戦略
ベンチャー企業の経営戦略は、大きく分けて「長期経営・IPO・M&A」の3つがあります。それぞれの特徴は、以下のとおりです。
長期経営
ベンチャー起業家が目指す経営戦略としてはマイナーですが、安定した長期経営を目指すベンチャー企業も存在します。
IPOやバイアウトでのイグジットをゴールに考えるベンチャー企業が多い中で、長期経営を目標とするベンチャー企業は上場のみならずバイアウトによる大企業の子会社化も考えません。
上記のような経営戦略の代わりに、株主や親企業に振り回されることなく安定した事業で長く生き残る経営戦略を選択します。
短期間で大きく成長する可能性は低いですが、大きなリスクを取らないため長寿企業を目指しやすいといえるでしょう。
IPO
IPOは、従来のベンチャー起業家が目指す主流のゴールでした。上場して資金調達したうえで、さらなる事業拡大が目標となります。かつては、少しでも早く上場しようと、会社を短期間で大きくするための戦略を取るベンチャー企業がほとんどでした。
しかし、実際には、上場に至るまでのお金と時間が足りず挫折する会社が大半です。たとえ上場したとしても、それまでの経営方針から切り替えることができずに苦しむ会社も多く存在します。
M&A
最近のベンチャー起業家の間では、IPOではなくM&Aを目指すケースが増えています。従来の起業家は、自身の会社を子供のように大事にする傾向がありました。
こうした起業家は、経営が苦しくてもバイアウトは拒否するという考え方を持っており、M&Aに対して懐疑的な姿勢を取っていました。
現在では、ベンチャー起業家のM&Aに対する価値観が変化しています。大企業からのバイアウトで資金を得て新たな事業を行う戦略や、大会社にバイアウトされることで豊富な経営資源を利用する戦略を取るようになりました。
また、買収を繰り返して成長までの道筋をショートカットするベンチャー企業も増えています。
国内と海外のベンチャー企業におけるM&A比較
日本に比べて海外では、M&Aを選ぶベンチャー企業が多いです。特にアメリカではその傾向が強く、9割のベンチャー企業が、IPOではなくM&Aを選択します。
近年では日本でもM&Aを選択するベンチャー企業が増えていますが、海外と比べると依然として割合が少ない現状です。
また、日本でも金額の規模が大きいベンチャー企業のM&A事例が出てくるようになりましたが、海外に比べると買収額の平均は低い状況だといえます。
3. ベンチャー企業のM&Aが増加している理由
最近はベンチャー企業のM&Aが増加していますが、その理由を買収側と売却側の各視点から解説します。
買収側の理由
M&Aが増加している理由について、はじめに買収側の視点から解説します。
素早く効率の良い経営戦略が描ける
現代は技術の進歩が速く、大企業がゼロから経営に向けた準備を行っていては世界の流れに追いつけません。M&Aによりベンチャー企業を手に入れることで、技術と人材を迅速に確保可能です。
その一方で、M&Aで買収されたベンチャー企業も慢性的な資金不足や経営力の弱さを補えるため、早期の段階でM&Aを決断して合意に至るケースが多くなっています。
オープンイノベーションを加速させるため
従来の大企業は、自社のみで製品やサービスを開発する「クローズドイノベーション」によって、独自の商品を生み出してきました。
しかし、多くの企業が安価で高性能な製品を生み出すようになった現在では、自社のみでイノベーションを起こすことは困難です。
M&Aにより異なる価値観と大企業にはないスピード感を持ったベンチャー企業を取り込むことで、オープンイノベーションを起こそうとする企業が増えています。
新たな事業領域の拡大
トレンドの移り変わりが激しい現代では、特定分野だけで経営を安定させることが難しくなっています。しかし、全くの異業種への参戦は失敗の確率が高いというのが従来の定説です。
そこで、すでに顧客や販売網を持っているうえに現時点では企業価値の低いベンチャー企業をM&Aで手に入れることで、異業種へのスムーズな参入を果たす戦略が注目されるようになりました。
現在では、IT企業を中心にさまざまな業種の企業をM&Aで手に入れて、多角化経営を図る企業が増えています。
売却側の理由
M&Aが増えている理由について、次は売却側の理由を解説します。
売却資金を手に入れるため
最近の若いベンチャー起業家の傾向を見ると、会社がある程度育った段階で、今後行う起業の運転資金を確保すべくM&Aで自社を売却するケースが多いです。
こうした起業家は会社の規模拡大にはこだわりを持たず、シリアルアントレプレナーとしてシード期やスタートアップ期の経営を手掛けること自体を目的としています。
まだ海外ほどの勢いはなくとも、日本においてM&Aを行いやすい環境が整備されたことも、自社を売却するベンチャー起業家が増えてきた要因の1つです。
IPOより資金調達が早い
多くのベンチャー企業にとって、資金調達は大きな壁となっています。とはいえ、IPOによって潤沢な資金を得るには、長い時間と大きなリスクが伴うのです。M&Aによって早く大きな金額を得られれば、円滑な経営を目指せます。
従来はIPOがベンチャー企業のステータスだったように、現在では迅速かつ規模の大きい資金調達や大きな金額のM&Aで買収されることが、ベンチャー企業のステータスとなっている状況です。
大企業とのシナジーが期待できる
ベンチャー企業はバイアウトされる側ですが、M&Aによって大企業のリソースを活用できるメリットもあります。
M&Aによって資金・人材・技術支援を一方的に得るだけでなくお互いに協力する関係になれば、より大きなシナジーを得られる可能性が高いです。
経営資源に乏しいベンチャー企業にとって、大企業によるM&Aでは大きな成長が期待できます。
廃業を回避できる
M&Aによる売却では、ベンチャー企業の経営を相手側に引き継ぎます。従業員や経営資源なども引き継ぐため、自身は廃業を回避しつつ経営者の立場から身を引くことが可能です。
これにより、廃業で発生する費用を削減できるばかりか、売却利益の獲得も期待できます。M&Aによる売却で得た利益は、経営引退後の生活資金に充てることも可能です。
以上のことから、早期の引退を希望する経営者を中心に、ベンチャー企業の売却を図る動きも目立っています。
4. M&Aに成功するベンチャー企業の特徴
ベンチャー企業がM&Aに成功する方法を紹介する前に、注意点を紹介します。注意点とは、M&Aに成功する方法を実行すればいかなるベンチャー企業でも成功するというわけではないことです。
M&Aに成功するための前提条件として、以下の条件を満たしている必要があります。これらの条件は買収側にも当てはまりますが、特に売却側の立場によく当てはまるものです。
将来性に期待できる
ベンチャー企業のM&Aで重視される条件は、現時点での売り上げや利益ではありません。将来性のある事業を行っているかどうかが、M&A成功の鍵を握ります。
将来性があれば、現時点で赤字経営であり買収額が多少大きな金額であっても、M&Aを実行するという積極的な大企業が増えている状況です。
反対に、現時点で利益が出ていても将来的に大きな成長が見込めないような事業内容であれば、希望どおりのM&Aを実施できない可能性があるといえます。
スタートアップでも利用者がいる
スタートアップの段階でほとんどマネタイズできていないベンチャー企業であっても、多額の資金調達や大きな金額のM&Aを達成できるケースも見られます。
買収側にとって、熱心なファンが多いベンチャー企業には、M&Aで手に入れる価値が大いにあるのです。
新しい事業を成長させる時に最も苦労するのが、初期の熱心なファン作りだといえます。ファンの人数が一定数を超えると、加速度的にファンの人数が増えていきますが、その段階に至るまでには運やタイミングも必要です。
すでに熱心なファンを持っていれば、スタートアップだったとしても希望どおりの条件で売却に成功する可能性があります。
優秀な人材がいる
ベンチャー企業のM&Aを検討する際に大きな魅力となる要素が、優秀な人材です。日本では、2000年前後から、大企業よりもベンチャー企業に就職して力を付けたいという優秀な人材が増えました。
特にIT関連の優秀な人材は、勢いのあるベンチャー企業に就職するケースが多いです。
大企業とは違った経験と技術を積み重ねたベンチャー企業の優秀な人材をM&Aによって確保すれば、企業にとって貴重な資産となります。
5. ベンチャー企業がM&Aを成功させる6つの方法
実際にベンチャー企業がM&Aを成功させる方法は、以下のとおりです。
- 業界トレンドを狙う
- 競合がいない市場を狙う
- 業績上昇時に売却する
- 株式譲渡の手法で売却する
- 買収後PMIの事前計画
- 買収後にシナジー効果が期待できる企業を狙う
それぞれのポイントを順番に見ていきます。
①業界トレンドを狙う
ベンチャー企業がM&Aを成功させるには、M&A時点の業界トレンドを狙うと良いでしょう。ITバブルの頃は、IT関連企業のIPOであればいかなる案件でも取引価格が高騰していましたが、現在は有望なIT関連企業でも高騰する案件が減っています。
その代わりに、トレンドに乗った有望なベンチャー企業は、高い買収額により売却されるケースが多いです。
近年では、IoTや自動運転に関わるベンチャー企業が、高額のM&Aにより高額取引されるケースが多くなっています。また、買収側も、成長産業のベンチャー企業をM&Aで手に入れた方が将来的な利益につながりやすいです。
②競合がいない市場を狙う
ベンチャー企業をM&Aで売却する場合、競合がいない分野を狙った方が、M&Aによる売却可能性が高まります。
実際に、ベンチャー企業が立ち上げ当初とは異なる事業で経営を続けるケースは多いです。もしも途中からイグジットを考える場合には、売れやすい事業に転換した後で、M&Aにより売却する戦略も有効策となります。
買収側も、競合がいない市場を狙ってM&Aを行うことで業績を伸ばしやすいです。
③業績上昇時に売却する
事業をM&Aで売却する場合には、タイミングも重要です。望ましいのは、業績が右肩上がりの時に売却する戦略だといえます。
高額で売却するには、買収する企業に「勢いがあって将来性のある会社」だと認識してもらうことが大切です。
M&Aで売却する場合、その時点で赤字かどうかはそれほど重要ではありません。先行投資で赤字が出ているケースでも、ほとんどマイナス要因にはならないのが現状です。その代わりに、M&Aでは売上の伸びが重視されています。
④株式譲渡の手法で売却する
M&Aによりベンチャー企業を売却する場合には、株式譲渡の手法を選択すると多くのメリットが期待できます。株式譲渡を採用する場合、事業譲渡をはじめとする他のM&A手法と比較すると簡易的な手続きで取引を完了させやすいです。
また、他のM&A手法よりも課税割合が少なくなるケースが多く、売却利益を最大限獲得できます。以上のことから、ベンチャー企業を売却する場合には、なるべく株式譲渡を採用してM&Aを実施すると良いでしょう。
ただし、株式譲渡による売却では、自社のそれぞれの株主から株式を取得しなければなりません。少数株主などから同意を得られないケースもある点には注意してください。
⑤買収後PMIの事前計画
ベンチャー企業をM&Aで買収する場合、あらかじめ買収後のPMIを念入りに検証する必要があります。PMIとは簡単にいうと、買収後にバイアウトした企業のマネジメントする行為です。
買収後のPMIを怠ると、M&Aで買収した企業の顧客離れ・社員の流出・社長のモチベーション低下など、さまざまな問題が発生してしまいます。
結果的に、M&Aで期待していたシナジーが生み出せず、業績低下につながりかねません。しかし、M&A仲介会社によっては、買収まで完了するとサポートが終了してしまい、買収後のPMIに関するフォローが受けられないケースもあります。
M&A仲介会社と契約する際には、買収後のPMIに関するサポート内容も十分に確認しておきましょう。
⑥買収後にシナジー効果が期待できる企業を狙う
ベンチャー企業をM&Aで売却する場合、シナジー効果が期待できる企業を選ぶことが重要です。M&Aは企業の成長拡大のためでもあるため、買収後、短期間で成長することも期待できるでしょう。
ベンチャー企業にとってもシナジー効果は必要であり、譲受企業側から得られるシナジー効果も大きいと高く評価がされれば、譲渡価額にも反映されます。
6. ベンチャー企業がM&Aで失敗する3つの理由
ここでは、ベンチャー企業のM&Aでよくある失敗例として、以下の3つを紹介します。
- 決断に時間をかけすぎる
- 社長同士の相性が合わなかった
- 買収後に社員が流出する
それぞれの項目を順番に見ていきます。
①決断に時間をかけすぎる
ベンチャー企業がM&Aを行う際、決断までの時間が長すぎると交渉が決裂してしまいかねません。金額などの条件でなかなか折り合えず、気が付いたら相手側から断りの連絡が来てしまうケースが多いです。
特にベンチャー企業同士のM&Aではスピードが求められます。時間をかけるほどM&A費用がかさむこともあって、ベンチャー企業同士のM&Aでは大きな負担になりやすいです。
②社長同士の相性が合わなかった
ベンチャー企業の創業社長の中には、会社を子供のように大事にしている人や、個性の強い人もいます。M&Aによる会社売却では、大事な会社を売却しても良いほどに信頼できる相手なのか、相手社長の人柄も重視されるのです。
ここで信頼関係が築けなかった場合、たとえ条件が良かったとしても話が決裂してしまうことがあります。M&Aでは、社長同士の相性も重要なポイントです。
③買収後に社員が流出する
M&Aでは買収後のPMIが非常に重要となります。M&Aは社員にも秘密で進められるケースがほとんどであるため、突然M&Aについて聞かされると離職する社員が発生しかねません。M&Aにより社長のみが利益を得ていることに不満を持って離職するケースも見られます。さらには、新しい企業文化に馴染めずに辞めてしまうケースも少なくありません。
せっかく優秀な人材の確保を目的にM&Aで買収したとしても、M&A後のマネジメントを丁寧にしなければ人材を失うことになるため注意が必要です。
7. ベンチャー企業M&Aの買収額決定方法
ここでは、M&Aの買収額を決定する際に広く用いられている算定方法を紹介します。
DCF法
DCF法とは、簡単にいうと、対象企業の将来的な資産価値を表す算定方法です。売却対象となる企業の数年後までの成長から数年間に起こり得るリスクを割り引いて計算します。
ベンチャー企業はリスクが高めに設定されるため、M&Aの買収対象として魅力的な数字を出すには、数年間で大きな成長を遂げなければなりません。
ベンチャー企業をM&Aで買収する際には、将来性が大事な要素となります。DCF法によって算出された数字を参照すれば、対象企業の将来性をある程度予測可能です。
マルチプル法
マルチプル法とは、簡単にいうと、類似する企業との比較により対象企業の企業価値を算定する方法です。
具体的には、類似した複数の企業をピックアップしたうえで、各社の株価から事業価値や評価を簡単な計算式に当てはめて平均値などを算定します。ここで求められた数値に評価対象企業の主要指数をかけて、企業価値を推定する仕組みです。
マルチプル法は計算が簡単で数値がわかりやすいため、多くのケースでM&Aを検討する初期段階で参考にされています。
以下の動画でM&Aアドバイザーが計算例を用いてマルチプル法について解説しておりますので、是非ご覧ください。
8. ベンチャー企業M&Aの成功事例30選
ここからは、実際に行われたベンチャー企業のM&A成功事例を紹介します。
大企業のスタートアップベンチャー買収事例
はじめに、大企業がベンチャー企業をM&Aで買収して成功した事例を紹介します。
ベンチャー企業M&Aの成功事例①富士フイルム
富士フイルムは、積極的なM&Aで多角化経営を進めている会社です。特にカメラのフィルム技術を医療に応用する試みの中で、最先端の分野でも積極的にM&Aを行なっています。
2015年にはアメリカの再生医療ベンチャーであるセルラー・ダイナミックス・インターナショナルを約368億円という金額で買収しており、大型のベンチャー企業M&Aとして話題になりました。
攻めのM&Aによって、富士フイルムはiPS細胞を用いた再生医療の先陣を切っています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例②パナソニック
2018年4月、パナソニックは、ハードウエアのスタートアップベンチャー企業であるCerevoに対し、子会社を設立させたうえで、その子会社を買収するという複雑な手法を用いてM&Aを行っています。
このM&Aは、特に製造業全体を驚かせました。もともとCerevoはパナソニック出身の技術者が作った会社であり、業界で有名なベンチャー企業です。
ハードウエア製造において、ベンチャー企業は資金繰りで苦労しており、大会社は世界との競争に苦戦しています。
ここでCerevoが設立した子会社shiftallのM&Aを、パナソニックが行ったことで、Cerevoは資金に余裕ができて、パナソニックはCerevoが有していたIoTに関する専門技術を手に入れることができました。両社にとって、大きなメリットのあるM&Aとなっています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例③資生堂
資生堂は、有望なベンチャー企業に投資する「資生堂ベンチャーパートナーズ」という会社を運営するなど、ベンチャー企業への積極的な支援を行っています。2018年、資生堂は、ヘルステックベンチャーであるFincにM&Aを行なったことが話題になりました。
Fincは、AIを使ったヘルスケア事業を行う会社です。この他にも、資生堂は国内外のテック系ベンチャー企業に積極的なM&Aを行うことでオープンイノベーションを起こしており、世界規模で勝てる資生堂を3年計画で作ろうとしています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例④ヤフー株式会社
ヤフーはベンチャーキャピタルを子会社で運営するなど、スタートアップへの投資を積極的に行なっています。大企業でありながらベンチャー気質を依然として残しているヤフーですが、近年は大企業病にかかっていると批判もされていました。
そこで近年では、ホテル予約サイトの一休・オフィス用品販売のアスクル・料理動画サービスを運営するdelyなど勢いのあるベンチャー企業に対してM&Aによる買収を行っています。
これにより、事業シナジーを得るだけでなくベンチャー企業としての価値観を取り戻すことにも成功しました。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑤Facebook
Facebookは学生ベンチャーから急速に世界の大企業にまで発展しました。巧みなベンチャー企業のM&A戦略があったためです。
Facebookは、優秀な人材がいる会社を買収します。会社ではなく人を目的にM&Aを行なった事例が複数あります。M&Aを仕掛ける国もさまざまであり、事業シナジーがあるとなれば国籍にこだわりません。
Facebookにとって最も大きなインパクトがあった事例は、2012年に行われたInstagramの買収です。それまで人材目的の買収が多かったFacebookはInstagramのサービスに魅力を感じて、810億円という大きな買収額でM&Aを行いました。
その結果としてFacebookはInstagramとの間で、アカウント連携による大きな事業シナジーを獲得しており、両社ともに大きく成長していくきっかけとなっています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑥デンソー
デンソーはM&Aに力を入れていて、1兆円までの買収額であればM&Aに投資できるとも語っています。現在の自動車業界は環境変化が激しく、スピード感がないと置いていかれる状況です。
こうした中で、デンソーは、自動運転やシェアリングなど現在のトレンドに積極的に投資して、M&Aを進めています。日本の自動車業界全体が厳しい環境にある昨今において、デンソーは危機感を持って攻めのM&A戦略を展開しているのです。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑦DMM
一般人からすると、DMMは、メイン事業がよくわからないという印象を持たれている会社です。それほどにさまざまなベンチャー企業をM&Aで買収し続けており、多角化経営しています。
最近で最も話題になったM&Aは、即時買取アプリのCASHを運営するスタートアップ「BANK」の買収(2017年)です。
当時BANKの買収額は数億円程度が適正とされていましたが、DMMは70億円という金額でM&Aを提案し買収しています。
業界では有名なBANKの代表取締役社長である光本氏をグループ会社に招き入れたいという戦略から、大きな金額のM&A買収額となりました。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑧KDDI
2017年、KDDIは、loTプラットフォームを提供しているスタートアップのソラコムを200億円という金額で買収しました。ソラコムは創業からたったの2年半で200億円という買収額によりイグジットを達成しており、M&Aによる大成功ベンチャー企業となっています。
ソラコムは買収された後、社員にストックオプションを配ったことで、M&A後にありがちな社員の大量離職を防ぎました。KDDIの買収額にはストックオプション目的の資金も含まれており、M&Aによる買収後はPMIの成功事例として話題になっています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑨旭化成
旭化成は、自動車分野へのM&Aを積極的に進めています。現在の日本で流行の兆しがある海外M&Aにも取り組んでいる会社です。
一見すると旭化成と自動車業界は事業シナジーがないように見えがちですが、環境が大きく変化している自動車業界にとって、旭化成の高度な素材開発技術は今後必須になると見込まれています。
旭化成は、将来的に大きなトレンドとなる分野にスピード感を持って取り組んだ大企業として高く評価されました。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑩DeNA
DeNAもこれまでさまざまM&Aを行なってましたが、キュレーションメディアの問題や旅行会社の売却など、M&A後におけるPMI失敗が目立っています。しかし、自動運転の分野では、自動運転タクシーや自動運転バスなどを開発しており、一定の成果が出始めている状況です。
ベンチャー企業ではありませんが最も成功したことで有名なM&Aは、横浜ベイスターズの買収(2011年)だといわれています。
横浜DeNAベイスターズとして生まれ変わった後は、DeNA自体のイメージが格段に良くなりました。独自の運営方針も成功を収めており、観客動員数は増加を続けています。
特に、これまで野球にそれほど興味のなかった層の取り込みにも成功しており、DeNAの本業にも良い効果を生み出している状況です。M&Aの成功と失敗から学びつつ、成長し続けている会社だといえます。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑪サイバーエージェント
サイバーエージェントの藤田晋社長は、インターネットテレビのAbemaTVの運営に全力を注いでいます。これまで運営していた事業を削りつつ、莫大な金額を注ぎながら長期計画でAbemaTVを育てている状況です。
なるべくM&Aを行わず自社での新規事業創出を売りにしてきたサイバーエージェントですが、AbemaTVの成長のため、M&Aにも積極的に取り組むようになりました。スピード感があるうえに大きな金額でM&Aを行い、さまざまな業界から注目を浴び続けています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑫RIZAP
トレーニングジムの運営で有名企業となったRIZAPは、M&Aによる企業買収を立て続けに行ったことでも有名です。単純にM&Aを成功させるのではなく、買収企業のほとんどで大幅な収益改善を達成しています。
RIZAPのマーケティング力を生かして、買収後のPMIを徹底して実行していることが成果につながっているのです。また、プロサッカーチームである湘南ベルマーレとのM&Aも発表(2018年)しており、どのような運営力を見せていくかが注目されています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑬Z会
Z会は、さまざまな教育サービスを展開しています。オンライン学習サービスへのニーズが増える中で、2017年にアオイゼミを運営する葵をM&Aで買収しました。
Z会からすると、豊富なオンライン学習サービスのノウハウと数十万人の会員を手に入れることに成功しています。
一方の葵も、教材とコンテンツを育てていくための資金・人材・ノウハウ・時間を手に入れました。双方の「より良いサービスを提供したい」という思いが一致した結果、M&A成功に至ったという好例です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑭ソフトバンク
数々の大型M&Aを成功させてきたソフトバンクですが、その中でも珍しい買収事例があります。Schaft(シャフト)は東大発のベンチャー企業であり、二足歩行ロボットの開発を行なっている会社です。ロボット技術が世界的に高い評価を受け、SchaftはGoogleに買収されました。
しかし、その後の2017年にソフトバンクがGoogleからSchaftを買い取っています。それまでのソフトバンクは、どのようなシナジーを生み出すのかわかりやすい企業を買収するケースが大半でした。
ところが、Schaftに関しては、どのように技術が応用されるのかよくわからない中で買収しています。上記の点が反対に注目を浴びることとなり、孫社長の先見の明に期待が集まっている案件です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑮楽天
楽天はこれまでM&Aを繰り返しており、成功も失敗も経験しています。2016年に元祖フリマアプリのFRILを運営するFablicを数十億円の買収額でバイアウトしており、楽天が運営しているラクマと統合させました。これにより、フリマアプリで首位を走るメルカリに追いつく目論見です。
現在楽天は統合後のラクマに力を注いでいます。その一方で、メルカリも順調に成長を続けており、今後の競争に注目が集まっている状況です。
有力ベンチャーの他企業買収事例
次に、ベンチャー企業が他企業を買収した成功事例を紹介します。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑯XTech(クロステック)
XTechは、2018年1月に創設されたばかりのスタートアップ企業ですが、立ち上げ当初から高い注目を浴びています。XTechの事業は、スタートアップを複数生み出して支援する「スタートアップスタジオ」という分野です。
こうした特徴を持つXTechですが、2018年にポータルサイト運営のエキサイトや留学事業を行う地球の歩き方T&Eを買収したことで一躍話題となりました。創設されたばかりのスタートアップ創出会社が、今後どのように事業展開を進めていくのか注目されています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑰株式会社Clear
2018年、日本酒専門のメディアを運営しているベンチャー企業のClearは、創業50年以上の老舗酒販店を買収して完全子会社化しました。新事業として日本酒の製造販売をスタートしており、注目を集めています。
現在はオリジナル日本酒を販売するEコマースサービスを開始するなど、日本酒を若い人や外国に広める事業を進行中です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑱メタップス
スマホアプリの収益化事業を行なっているメタップスは、短期間で数々のM&Aを繰り返してきました。具体的には、モバイル広告プラットフォーム・動画編集アプリ・EC事業決済会社・EC事業支援会社など、スピード感のあるM&Aで注目を集めています。
なお、創業者である佐藤航陽氏の著書「お金2.0」は、ビジネス書でベストセラーになるなど注目度の高い会社です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑲ZOZO
前澤友作前社長の動向が注目され続けているZOZOですが、ZOZOSUITを開発したベンチャー企業を買収した時にも話題となりました。
このときのM&Aでは、ニュージーランドの開発会社であるStretchSenseの株式をコールオプションを使って取得して、失敗した場合の損失を最小限に抑える戦略をとりました。
当時はZOZOSUITがうまくいくかどうか未知数でしたが、無料で配布するコスト負担も考えられた巧妙なM&Aであったと高く評価されています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例⑳クックパッド
ここ数年で急成長を遂げたクックパッドですが、成長のきっかけとしては、2014年に集中的な海外レシピサイトのM&Aを行った事例が挙げられます。
海外展開に力を入れているクックパッドは数多くの国に対応していますが、単純に言語を対応させるだけでなく、買収後のPMIも十分に検討したうえで、その国に馴染むよう修正を繰り返しているのです。この徹底した海外戦略が、クックパッドの成功につながっています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉑GREE
GREEといえばゲーム事業のイメージが強いですが、ゲーム事業以外でもM&A成功事例を持っています。2014年にオンラインリフォームサービスを提供しているセカイエを13億円の買収額でバイアウトしており、セカイエは大幅な増収を達成しました。
また、オリジナル動画コンテンツ企画制作事業などを行なっている3ミニッツは、GREEが43億円の買収額によってバイアウトした後にファッション動画メディアを急成長させています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉒マネーフォワード
家計簿アプリを運営しているマネーフォワードは、2017年に会計データのスキャンサービスを運営しているスタートアップ企業のクラビスを買収しました。
マネーフォワードは、上場直後にM&Aを行ったことや8億円という大きな買収額だったことで話題を集めており、買収後に評価を上げています。M&Aはタイミングも非常に大事だということを示すM&A事例といえるでしょう。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉓ジラフ
ジラフは、買取価格比較サービス・修理料金比較サービス・スマートフォンのフリマサービスなどを運営している会社です。優秀な人材が揃っている会社としても注目されています。
2017年、ジラフは、質問を募るサービスのPeing質問箱を買収しました。たった2日間でのスピード感あるM&Aが話題となっています。買収後に炎上騒動はあったものの、将来的にスピード感あるベンチャー企業のM&Aが増えることを予感させる案件でした。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉔エイチーム(Ateam)
2017年、ゲームアプリを運営しているエイチームは、プログラマーの情報共有コミュニティを運営しているQiitaを買収してIT業界で話題となりました。
一見すると直接的な事業シナジーは得られそうにない両社ですが、Qiitaの優秀なエンジニアを取り込む目的だったのではないかといわれています。
優秀な人材が何よりの資産となるIT系ベンチャー企業にとって、高い金額を払ってでも優秀な人材を確保する戦略は事業を拡大させるうえで生命線です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉕クルーズ
クルーズは、ソーシャルゲームやファッションなど中核事業を複数回変えながら生き残ってきました。2016年、クルーズは、Candleという企業を買収しています。Candleは、女性向けメディアや仮想通貨情報メディアを運営しており、多角化経営を掲げている企業です。
当初はIPOを目指していたCandleですが、両社の社長が意気投合したことでM&Aが成立しました。事業シナジーだけでなく、お互いの企業文化を理解して協力し合う、人間的なシナジーが生まれている点も特徴的です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉖Candee
モバイル動画のメディア事業を展開するCandeeは、2017年にライブ配信事業を展開するアポロ・プロダクションを買収しました。
動画制作会社やライブ配信会社は企画・制作・コンテンツ力などに弱点を抱えるケースが多いですが、企画制作に強いCandeeと高い配信技術力を誇るアポロが組むことによって、他の企業にはないすべての流れを自社だけで完結できる企業が生まれています。
企業の弱点となっている部分を補完し合う、絶妙なM&A成功事例です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉗じげん
じげんは、さまざまなメディア運営事業を行なっています。個性的な社長や独特の人材採用も相まって話題を集める企業です。インターネット上での事業が多いじげんですが、2016年に新聞折込広告企業の三光アドを買収すると発表しました。
一見すると事業シナジーの獲得が期待できないように感じる両社ですが、実はお互いにさまざまな利益を獲得するM&Aとなっています。積極的にM&Aを繰り返してノウハウを蓄積してきた、じげんならではのM&A事例です。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉘モンスター・ラボ
モンスター・ラボは、世界中のITエンジニアチームに開発を依頼できるサービス「セカイラボ」を運営しています。世界中に開発拠点を持っており、世界規模で事業を拡大する企業です。
モンスター・ラボは、2017年にデンマークのアプリ開発会社を買収するなど、困難とされている海外M&Aをスムーズに進めました。文化や価値観の違いを十分に考慮したうえで、買収後のPMIを行なっています。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉙お金のデザイン
2017年、お金のデザインは、資産運用業務のプラットフォームを提供しているリオシーを買収しました。お金のデザインは、THEOという資産運用ロボアドバイザーを運営しています。
M&A手法に株式交換を採用するという未上場企業では珍しいケースだったこともあり、当時は大きく注目されました。この事例は、非常に高い事業シナジーの獲得が確定していたために実現したM&Aでもあります。
ベンチャー企業M&Aの成功事例㉚ランサーズ
クラウドソーシング事業でトップを走るランサーズは、2017年にIT系フリーランスを支援するパラフトを買収しました。
IT人材の不足は、業界全体で深刻な問題となっています。その一方で、IT系を含めたフリーランスは、年々増加している状況です。フリーランスのマッチング事業に精通した両社が組むことで、日本の労働環境が変化するきっかけになると期待されています。
9. ベンチャーのM&A相談ならM&A総合研究所
ベンチャー企業のM&Aをご検討の際は、ぜひM&A総合研究所へご相談ください。M&A総合研究所には、ベンチャー企業のM&Aに関する知識や経験が豊富な専門家が多数在籍しております。
案件ごとにM&Aアドバイザーが専任につき、ご相談からクロージングまでフルサポートいたします。
当社は完全成功報酬(※譲渡企業のみ)を採用しており、着手金は完全無料です。ベンチャー企業を対象とするM&Aをご検討の際は、お気軽に無料相談をご利用ください。
10. ベンチャー企業のM&Aまとめ
今回は、ベンチャー企業のM&Aを成功させる方法を成功事例とともに解説しました。とはいえ、ベンチャー企業のM&Aは教科書どおりには行かず、状況に応じた柔軟な対応が求められます。特に買収後のPMIでは、トラブルになることも多いです。
経験豊富なM&Aアドバイザーに相談するなど、専門家の力を借りながらスムーズにM&Aを済ませましょう。
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