会社清算の手続きの流れ!解散との違い、費用、スケジュールもわかりやすく解説

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

後継者不在・資金繰り悪化・休眠会社整理などの理由により、会社を解散・清算したいと考えても、費用・手続き・スケジュールがわからない方もいるでしょう。本記事では、会社清算・解散に必要な手続き・費用・スケジュールなどについて詳しく解説します。

目次

  1. 会社清算・解散とは
  2. 会社解散の理由
  3. 会社解散から清算までの主な流れ
  4. 会社清算・解散の主な手続き
  5. 通常清算・解散手続きと特別清算・強制解散手続きの主な相違点
  6. 会社清算・解散にかかる費用
  7. 会社清算・解散のスケジュール
  8. 会社清算・解散のメリット
  9. 会社清算・解散に関する注意点
  10. 債務超過会社による会社清算方法
  11. M&Aでおすすめの仲介会社
  12. 会社清算の手続きの流れまとめ
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1. 会社清算・解散とは

会社清算とは、解散した会社の資産と負債を清算することをいいます。資金繰りの悪化や後継者の不在などで会社が存続できなくなると、会社解散・清算によって会社を廃業しなければならないケースも起こり得ます。

この章では、会社清算および会社解散について、基本的な意味や主な清算・解散の種類を説明しましょう。

会社清算とは

まずこの節では、会社清算の意味と、どのような種類があるのかについて解説します。

会社清算の意味

会社清算とは、解散して清算会社となった会社の資産と負債を清算することをさします。

具体的には、不動産などの資産は全て現金化し、全ての債権を回収し負債を返済していく方法です。そして、残った資産は株主に公平に分配して、最終的に全ての資産・負債を処分します。

任意清算

任意清算とは、存続期間の満了や総社員の同意など、自主的な判断で会社を消滅させるときに使われる清算方法です。任意清算では、財産をどのように処分するかを会社側が任意で決められますが、合名会社と合資会社にのみ許される清算方法です。

株式会社で任意清算すると一部の大株主が力を持ちすぎる恐れがあるため、株式会社では法定清算のみが認められています。

法定清算

法定清算とは、会社側の任意な方法ではなく、法律に従った方法で財産を処分する清算方法をさします。

法廷清算では、まず清算に関する業務を執行する清算人を選出し、清算人により債権の回収・債務の弁済・財産の分配などを行う流れです。

清算人は、定款で定められた人物あるいは株主総会で選出された人物が選ばれ、取締役と同じように忠実義務・競業避止義務・報告義務を負います。

通常清算

法定清算には、通常清算と特別清算の2種類があります。通常清算とは、会社が十分な資産を持っており、負債を全額返済できる場合にとられる清算方法です。

特別清算と違い、裁判所の監督を受けずに、清算人主導のもとで清算手続きを進めることが可能です。

特別清算

特別清算とは、清算する会社が債務超過で、負債を全額返済できない場合にとられる清算方法です。

一見破産と似ているようですが、破産は破産申し立てにより破産管財人が主導して行われる清算方法で、特別清算申し立てにより行われる方法です。

特別清算は「破産」といった悪いイメージが伴わないことや、会社が選出した清算人の主導で手続きができるなどのメリットがあります。

任意・法定清算の違い

任意清算と法定清算には、主に下表のような違いがあります。法定清算では、清算人の選出が必要であり、任意清算では債権者保護手続きが必要になります。

法定清算では、財産を処分した後に社員の承認を得た時点で清算が完了となるでしょう。
 

  任意清算 法定清算
清算人の選出 なし あり
債権者保護手続き あり なし
社員の承認 なし あり

会社解散とは

次は会社解散について、その意味と種類を解説します。会社清算と会社解散を混同しないよう、それぞれの特徴をよく理解しましょう。

会社解散の意味

会社解散とは、会社を消滅させるためにあらゆる事業活動を終了し、資産・負債の清算業務のみ行う清算会社に移行するための手続きをさします。

会社解散をした時点では、会社はまだ清算会社として存続し消滅はしていない点に注意が必要です。

任意解散

任意解散とは、会社の自主的な意思によって解散することです。任意解散が行われるケースには、主に以下の4つがあります。

  • 株主総会で解散が決議される
  • 定款で定められた解散事由が発生する
  • 定款で定められた存続期間が終了する
  • 合併により会社が消滅する

強制解散

強制解散とは、破産や法的な理由によって、会社の意思とは関係なく強制的に行われる解散をさします。強制解散が行われるケースには、主に以下の4つです。

  • 会社が破産し破産手続の開始が決定された
  • 裁判によって解散を命じる判決がくだされた
  • 12年以上登記がされていない休眠会社のみなし解散
  • 銀行法や保険業法といった特別法による解散原因の発生

任意・強制解散の違い

任意解散と強制解散の違いは、解散が会社の意思で行われるか、意思とは関係なく強制的に行われるかといった点です。任意解散・強制解散それぞれにおける解散の理由は、会社法によって明確に定められています。

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会社清算と会社解散の違いと関係性

会社清算と会社解散は、どちらも会社の法人格を消滅させるために行う手続きの一つです。まず会社解散を行って全ての事業活動を終了させ、その後、会社清算によって資産と負債を処分します。

簡単にいえば、会社解散は清算に入るまでの準備段階、そして具体的な清算手続きを行うのが会社清算です。

2. 会社解散の理由

会社が解散するための理由は、会社法によって明確に定められており、これらの理由以外で会社を解散できません。会社法で定められている会社解散の理由には、以下の7つがあります。

【会社解散の理由】

  1. 定款で定めた存続期間の満了
  2. 定款で定めた解散事由の発生
  3. 株主総会の決議
  4. 合併により会社が消滅する場合
  5. 破産手続開始の決定
  6. 裁判所による解散命令
  7. 休眠会社のみなし解散の制度

①定款で定めた存続期間の満了

定款とは、会社の活動目的や構成員など会社の基本事項を記したもので、会社の憲法ともいうべき重要な規則です。定款に会社の存続期間が定められている場合は、その期日をもって会社解散の手続きに入ります。

ただし、定款に存続期間が定められている会社は非常に少なく、会社解散の理由としては少数といえるでしょう。

②定款で定めた解散事由の発生

会社を設立する時点で定款に解散事由が定められている場合は、その事由が発生した時点で会社解散になります。

定款で解散事由を定めるのは、事業内容が永続的でないなどの特殊な場合に限られています。定款の解散事由により会社解散が行われるケースは、解散の理由としては少数です。

③株主総会の決議

株主総会によって会社解散が決議されると、その会社は解散しなければなりません。株主総会の決議による会社解散は、解散の理由の中で比較的多いものの一つです。

会社解散の決議には、過半数の株主が出席する株主総会で3分の2以上の賛成を得る「特別決議」が必要になり、過半数の賛成で決議される「普通決議」よりも条件が厳しくなります。

④合併により会社が消滅する場合

吸収合併新設合併など、合併によって消滅する会社は、会社解散の手続きを行わなければなりません。合併の場合は、会社解散をするだけでなく、解散する会社の権利や義務を存続会社に承継する手続きも必要です。

⑤破産手続開始の決定

会社の負債が大きくなり、経営の継続が困難になった場合は、裁判所に破産の申し立てをします。申し立てが受理されて破産手続開始決定が下されると、裁判所の監督のもと、破産管財人によって会社解散の手続きが行われます。

⑥裁判所による解散命令

会社が不法な目的で設立されたり、社員や取締役の違法行為が反復して行われたりしている場合、裁判所の判断で会社の解散命令をくだせます

手続き自体は基本的に普通の解散・清算と同じです。まず、解散手続きによって事業を終了した後、清算人によって資産・負債の清算が行われます。

⑦休眠会社のみなし解散の制度

12年以上登記がされていない株式会社、または5年以上登記がされていない一般社団法人・一般財団法人に対しては、登記所から事業を廃止していない旨を届け出るように通知されます。

登記所からの通知があったにもかかわらず会社側から届出がない場合は、会社法により「みなし解散」の登記がなされ、会社が解散したものとして処理されます。

ただし、みなし解散後3年以内であれば、所定の手続きを踏むことで会社が継続できるでしょう。

【関連】事業承継と廃業(清算)を比較!どちらが得する?

3. 会社解散から清算までの主な流れ

この章では、会社清算・解散の主な流れを解説します。会社清算・解散を検討している場合は、事前に全体の流れを把握しましょう。

【会社清算・解散の主な流れ】

  1. 会社解散の理由発生
  2. 会社解散のための清算を行う
  3. 株式会社の解散登記を行う
  4. 会社清算人による清算処理
  5. 会社清算・解散の完了

①会社解散の理由発生

前章で解説した7つの会社解散の理由が発生した時点で、会社清算・解散の手続きが始まります。

②会社解散のための清算を行う

会社解散の理由が発生したら、会社解散をして清算のための手続きに入ります。具体的には、解散の日から2週間以内に清算人を選出し、官報公告を出して債権の申出を求めます。

そして、財産目録や貸借対照表の作成、株主総会での承認を行い、本格的な清算手続きに入る流れです。

会社解散の清算が不要な場合

会社解散では、会社の資産と負債は清算のうえ、処分しなければなりません。ただし、中小企業の場合は、株主総会の特別決議の代わりに書面決議で済ますなど、一部手続きの省略もできます。

③株式会社の解散登記を行う

会社解散では、解散の日から2週間以内に、会社解散と清算人選出の登記を申請しなければなりません。

登記には、定款や株主総会議事録などの各種書類、および登録免許税が必要になります。登録免許税は、解散登記が3万円、清算人登記が9,000円、合計3万9,000円になります。

④会社清算人による清算処理

株式会社の解散登記を行ったら、会社清算人による具体的な清算処理に入ります。清算処理では、会社の全ての資産を現金化し債権の回収を行い、その資産で全ての負債を返済します。

資産が足らず全ての負債を返済できない場合は、特別清算や破産を申し立てることになるでしょう。

⑤会社清算・解散の完了

全ての清算処理が終わった時点で残余財産がある場合は、それを株主に分配して処分します。これで全ての資産の清算が終わり、会社清算・解散の手続きは完了です。

4. 会社清算・解散の主な手続き

会社清算・解散の流れを把握できたら、次は必要な手続きも理解しましょう。会社清算・解散の主な手続きは、以下のとおりです。

【会社清算・解散の主な手続き】

  1. 株主総会の特別決議による解散決議
  2. 解散・清算人選任の登記
  3. 労働基準監督署・税務署などへの解散の届け出
  4. 清算人による財産目録・賃貸対照表の作成
  5. 清算人による債権者保護手続きの公告・個別催告
  6. 税務署への解散確定申告書の提出
  7. 清算人による残余財産の確定および分配
  8. 税務署への清算確定申告書を提出
  9. 清算人による決済報告書の作成
  10. 株主総会の開催・承認
  11. 清算結了の登記
  12. 税務署などへの清算結了の届け出
  13. 会社清算・解散の完了

①株主総会の特別決議による解散決議

先述したとおり、会社解散には会社法で定められた7種類の事由がありますが、株主総会による解散決議は最も多い理由です。解散決議には、3分の2以上の承認を得る特別決議が必要になります。

②解散・清算人選任の登記

会社解散が決定すると、その日から2週間以内に「解散の登記」と「清算人の選任登記」を行わなければなりません。必要書類は事例によって異なる部分があり、例えば、株主総会によって清算人が選ばれた場合は、定款の添付が不要になるなどの制度があります。

解散・清算人選任登記に必要な書類

この節では、解散・清算人選任登記に必要な7つの書類を解説します。

【解散・清算人選任登記に必要な書類】

  • 株式会社解散及び清算人選任登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 清算人会議事録
  • 就任承諾書
  • OCR用紙
  • 委任状
  • 定款

株式会社解散及び清算人選任登記申請書

株式会社を解散して清算人を選任する際は、その旨を登記所に登記申請しなければなりません。解散の登記と清算人の登記は別々に行う必要はなく、「株式会社解散及び清算人選任登記申請書」の書類で両方申請できます。

書面は法務局の公式サイトからも入手が可能であり、登記すべき事項はオンライン上で提出することも可能です。

株主総会議事録

株主総会議事録とは、株主総会で議論された内容や、どのような過程で決議に至ったかなどを記録した書面です。解散・清算人選任登記には、解散・清算人を決議したときの株主総会議事録が必要になります。

清算人会議事録

解散・清算人選任登記では、株主総会議事録に加えて、清算人会議事録も提出する必要があります。清算人会議事録には、株主総会で選任された清算人が、就任を承諾した旨が記載されています。

就任承諾書

清算人の選任に際しては、清算人会議事録以外に、就任承諾書の書類も作成します。これは、清算人本人が就任を許諾した旨を書面にし、署名・押印した書類です。

OCR用紙

最近は、解散・清算人選任登記において、登記事項の提出はオンラインで行うのが一般的になっています。しかし、書面で提出したい場合や、オンライン提出がよくわからない場合は、OCR用紙に記入して提出することも可能です。

ただし、現在はオンライン申請が法務省により推奨されているので、できるだけオンラインで申請する方がよいでしょう。

委任状

解散・清算人選任登記を代理人に委任する場合は、委任状にその旨を記載して提出します。

定款

清算人選任登記には、定款の添付が必要です。ただし、清算人会の設置について定款の規定を確認するためのものなので、特例有限会社など清算人会が存在しない場合は添付不要です。

③労働基準監督署・税務署などへの解散の届け出

解散・清算人選任登記に必要な書類を用意して登記を済ませたら、次は労働基準監督署・税務署などへ異動届出書を提出するなどして、解散の届け出を行います。

④清算人による財産目録・賃貸対照表の作成

株主総会により会社の解散が決議されると、清算人によって解散日時点での財産目録と賃貸対照表の作成が行われます。財産目録・賃貸対照表の作成は、その後の清算手続きを円滑に進めるためにも重要なプロセスです。

⑤清算人による債権者保護手続きの公告・個別催告

債権者の中には、解散に対して異議がある人がいる可能性もあります。そういった債権者が異議を申し出る権利を与えるために、清算人は官報に解散を公告し、個別に連絡できる債権者に対してはその旨を通知します。

異議のある債権者に対しては、2カ月間の申出期間が与えられるでしょう。

⑥税務署への解散確定申告書の提出

会社の解散も、通常の確定申告と同様に、解散確定申告書を提出する必要があります。

解散確定申告に必要な書類は通常の確定申告書と同じですが、事業年度の月数が12未満になる場合の調整や、税額控除について認められないものなどがあるので、税理士や税務署と相談しながら慎重に手続きを進める必要があります。

⑦清算人による残余財産の確定および分配

全ての債権を回収し債務を弁済した結果、財産が残っている場合は株主に分配することになります。財産の分配は、株主平等の原則に従い、各株主が保有している株数に応じて配分されます。

⑧税務署への清算確定申告書を提出

清算人による残余財産の確定と分配が完了したら、次は税務署へ清算確定申告書を提出します。申告書自体は通常の確定申告の書類を使用しますが、申告内容は異なる部分があるので注意しておかなければなりません。

特に残余財産がある場合と債務超過の場合とでは、申告内容に違いが出ます。税理士や税務署と相談しながら、慎重に進めていく必要があります。

⑨清算人による決済報告書の作成

債権・債務の処理が終わり株主への分配が完了したら、清算事務決算報告書を提出し、清算の完了を報告します。清算事務決算報告書には、債権と債務や諸費用の額、そして剰余財産や分配額などを記入します。

⑩株主総会の開催・承認

残余財産の額と分配額が確定したら、株主総会を開催して承認を得ます。承認を得た時点で清算結了となり、登記所や税務署などに清算結了の登記や届出を行います。

⑪清算結了の登記

株主総会により清算が結了したら、登記所にその旨を登記します。清算結了の登記は、株主総会で決算報告が承認されてから、2週間以内に行う必要があります。

清算結了登記に必要な書類

清算結了登記に必要な書類は以下のとおりです。

【清算結了登記に必要な書類】

  • 株式会社清算結了登記申請書
  • 株主総会議事録
  • 決算報告書

株式会社清算結了登記申請書

株式会社の清算結了登記では、「株式会社清算結了登記申請書」の書類を提出します。登記すべき事項は、法務局の公式サイトからオンラインで提出する形になります。CD-RやDVD-Rに登記すべき事項を記録して提出することも可能です。

登録免許税は2,000円です。しかし、支店がある場合は4,000円となるので注意しましょう。

株主総会議事録

清算結了登記では、株式会社清算結了登記申請書に加えて、添付書類として株主総会議事録が必要です。

決算報告書

清算結了登記では、株主総会議事録以外に、決算報告書を添付書類として提出します。

⑫税務署などへの清算結了の届け出

清算結了登記によって正式に会社が消滅しますが、他にも税務署などへの清算結了の届け出を行う必要があります。具体的には、税務署・都道府県税事務所・市区町村役場のそれぞれに「異動届出書」の書類を提出します。

異動届出書の提出に際しては、「閉鎖事項全部証明書」の登記事項証明書を添付する必要があるので注意しましょう。

⑬会社清算・解散の完了

税務署などへの清算結了の届け出が済むと、会社清算・解散は完了になります。会社清算・解散は手続きが多く期間もかかるので、税理士などの専門家の助けをかりながら、慎重に手続きを進めていくようにしましょう。

【関連】有限会社の解散・清算の手続きまとめ!必要書類や費用、注意点を解説

5. 通常清算・解散手続きと特別清算・強制解散手続きの主な相違点

通常清算・解散手続きと特別清算・強制解散手続きには異なる点が多いので、正しく理解して手続きを進める必要があります。

【通常清算・解散手続きと特別清算・強制解散手続きの主な相違点】

  1. 裁判所への特別清算の申立
  2. 特別清算の開始・負債額の確定
  3. 裁判所への協定案の提出
  4. 債権者集会で協定案の決議・裁判所の認可
  5. 協定内容の実行

①裁判所への特別清算の申立

特別清算では、清算人が裁判所へ特別清算の申し立てを行う必要があります。特別清算の申し立ては添付書類が多いので、漏らさず用意するように留意しましょう。

一般的に、申し立ては清算人が行いますが、株主や債権者が申し立てることも可能です。

②特別清算の開始・負債額の確定

特別清算の申し立てをして、裁判所から特別清算開始決定が下されると、裁判所の監督下で特別清算の開始および負債額の確定を行います。

③裁判所への協定案の提出

負債額が確定したら、債権者と和解できるような協定案を作成して、裁判所へ提出します。債権者への招集通知は、2週間前までに書面で通知、または3週間前までに公告で通知します。

④債権者集会で協定案の決議・裁判所の認可

債権者集会では、会社が提出した協定案を認めるかどうかを債権者が判断します。議決権は、債権者が保有する債権の金額に応じて与えられます。

協定案が否決された場合、裁判所の判断で破産手続へ移行することもあるでしょう。

⑤協定内容の実行

債権者集会で協定案が可決され、さらに裁判所で認可決定が下されると、次は協定内容を具体的に実行します。財産の処分は会社が自由にできるわけではなく、裁判所の監督のもとで行われます。

6. 会社清算・解散にかかる費用

会社清算・解散にはもちろん費用がかかるので、あらかじめ把握して費用を確保しておかなくてはなりません。この章では、会社解散・会社清算それぞれにかかる費用を解説します。

会社解散にかかる費用

会社解散にかかる費用は、実費としては解散登記と清算人選任登記の費用が3万9,000円、そして官報公告の掲載費用が約3万円かかります。

これに加え、司法書士や税理士に依頼する場合は、手数料が10万円から20万円程度かかります。

会社清算にかかる費用

会社清算の費用は、実費としては清算結了の登記費用が2,000円かかる程度です。しかし、一般的には司法書士や税理士に依頼するので、手数料数万円程度が上乗せされます。

7. 会社清算・解散のスケジュール

以下に、会社清算・解散の大まかなスケジュール表を示してあります。清算人の登記や債権者への公告など期日が決まっているものもありますが、それ以外の手続きは順番が多少前後しても問題ありません。

全ての手続きを終えるまでに、スムーズに進んだ場合でも最低3カ月程度を要します。
 

解散日 株主総会での解散決議と清算人選任
解散日から2週間以内 解散と清算人の登記
解散日から2カ月以内 債権者への公告と個別通知
  財産目録・貸借対照表の作成
  株主総会で財産目録・貸借対照表の承認
  解散確定申告
  債権・債務の整理
  残余財産の確定
  株主総会で決算書の承認(清算結了)
  清算結了登記と移動届出書の提出
残余財産確定から1カ月以内 清算確定申告

8. 会社清算・解散のメリット

会社清算や解散には債務超過や破産といったマイナスイメージがありますが、一方で早めに会社清算・解散を決断するメリットも存在します。

【会社清算・解散のメリット】

  1. 法人税の納付義務がなくなる
  2. 税務署への決算申告が不要

①法人税の納付義務がなくなる

事業を営んで利益を上げると法人税を納付しなければなりませんが、会社を清算・解散すれば、法人税などの税金を納付する必要がなくなります。

②税務署への決算申告が不要

会社を設立すると、毎年決算報告書を作成しなければなりませんが、会社を清算・解散すればその必要がなくなります。

9. 会社清算・解散に関する注意点

この章では、会社解散および会社清算に関する注意点を解説します。

会社解散に関する注意点

会社解散に関する主な注意点は以下です。

【会社解散に関する注意点】

  • 会社解散には時間がかかる
  • 会社解散には複雑な清算手続きが必要
  • 会社解散年度の確定申告が必要
  • 早めに解散・清算する

会社解散には時間がかかる

会社解散は手続きが多く、全て終えるまでにはかなりの時間を要することに注意しておかなくてはなりません。具体的な時間は事例にもよりますが、スムーズに進められた場合でも3カ月程度を要するケースが多いです。

解散や債権者への公告は2カ月以上と定められているので、これより短い期間で会社解散・清算はできません。

会社解散には複雑な清算手続きが必要

会社解散自体にも手間がかかりますが、その後の清算手続きは複雑で、特に債務超過で特別清算や破産をする場合は時間がかかります。

会社解散年度の確定申告が必要

会社を解散しても、解散年度の確定申告は必要になります。解散前・清算中・残余財産確定後と事業年度の分け方が複雑になるので、通常の確定申告と違う部分が多く手続きがわかりにくいです。

したがって、税理士などの専門家と相談しながら、間違いのないように手続きを進めていく必要があります。

早めに解散・清算する

解散・清算による廃業のタイミングが遅れて債務超過になれば、通常の清算手続きではなく破産や特別清算をしなければなりません。解散・清算の手続きに必要とする費用が用意できなくなることもあります。

貸付金のある社長が清算前に亡くなってしまうと、会社貸付金に相続税がかかります。以上のことから、解散・清算は債務超過となる前に早めに行うのがおすすめです。

会社清算に関する注意点

続いて、会社清算の注意点を見ます。

【会社清算に関する注意点】

  • 清算人に課せられる義務の遂行
  • 清算形式が変更になる可能性
  • 清算中の各種確定申告が必要

清算人に課せられる義務の遂行

清算人には、法定や定款を守り忠実に仕事を実行する「忠実義務」、同業種の取引が制限される「競業避止義務」、会社との取引が制限される「利益相反取引の制限」、会社に損害をおよぼす事実を隠さずに報告する「報告義務」が課せられます。

清算形式が変更になる可能性

資産が十分にあると思って通常清算の手続きを進めても、後で債務超過であることが判明して、特別清算や破産手続に移行することがあります。

途中で清算方法を切り替えるとそれだけ手続きも煩雑になるので、清算を始める時点で、会社の財務状況をできるだけ正確に把握しておくことが大切です。

清算中の各種確定申告が必要

会社清算中の確定申告は、通常の確定申告とは異なる部分があるので注意が必要です。清算中の確定申告は、事業年度開始日から解散日までを1つの事業年度(解散事業年度)とし、その翌日から1年間を「清算事業年度」の別な事業年度として取り扱います。

残余財産が確定したら、その年度の事業年度開始日から残余財産確定日までを、1つの事業年度(残余財産確定事業年度)とします。

10. 債務超過会社による会社清算方法

債務超過とは、会社が抱えている負債の総額が資産総額を上回る状態をいいます。債務超過会社の清算は、特別清算あるいは破産のいずれかの方法を用います。

2つの方法はどちらも清算型の法的整理手続きであり、破産には倒産といったマイナスのイメージが伴うでしょう。一方、特別清算には特段そのようなイメージがありません。手続き面でも、特別清算の方がメリットは大きいでしょう。

破産は個人・法人を問わず適用の対象となり、裁判所によって選任された破産管財人に会社財産の管理処分権が委ねられ実施される方法です。特別清算とは、清算中の株式会社のみ適用となり、会社が選任した清算人が会社財産の管理処分をできるため、取引先(債権者)との関係を維持したうえで清算が可能です。

債務超過会社は、特別清算を適用すると迅速かつ柔軟に会社を清算できるでしょう。なお、債務超過会社を登記上個人で営んでいる場合、破産手続しか適用できないため注意が必要です。

11. M&Aでおすすめの仲介会社

会社解散・清算には専門的な知識や経験が必要となるため、弁護士やM&A仲介会社などの専門家のサポートを受けることがおすすめです。会社解散・清算をせずとも、M&A事業承継で会社を存続させる選択肢もあります。

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12. 会社清算の手続きの流れまとめ

会社解散・清算は手続きが複雑で期間もかかるので、専門家のサポートを受けながら慎重に進めていくことが大切です。

特に債務超過の場合は特別清算や破産手続が必要になるので、税理士・弁護士や裁判所としっかりコミュニケーションをとりつつ、債権者と和解できる条件を模索していかなくてはなりません。

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