合併特例債とは?発行期限の再延長は5年間!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

合併特例債は、市町村合併の財源として使われる地方債です。2018年に合併特例債の発行期限が再延長されました。本記事では、合併特例債とはどのようなものか、再延長の理由や合併特例債のメリット・デメリットなど、事例も踏まえながら紹介します。

目次

  1. 合併特例債とは?わかりやすく解説!
  2. 合併特例債に再延長の処置が用意された理由
  3. 合併特例債の良い点と問題点
  4. そもそも地方債とは?
  5. 合併特例債を発行した実例
  6. 合併特例債のまとめ
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1. 合併特例債とは?わかりやすく解説!

まずは、合併特例債とは具体的にどのようなものか見ていきましょう。

合併特例債の定義

合併特例債は、市町村の合併において必要となる事業に対して、事業の財源として使用可能な地方債です。合併に伴って必要となる事業の経費を国が支援して、合併市町村の一体性を速やかな確立を図る趣旨で設けられています。

市町村の合併は多額なため、地方自治体の単年度予算のみでは財政が困難となりがちです。そこで、合併特例債を起債して対象事業費に用い、公共的施設の整備事業をスムーズに行えるようにします。

地方創生のための財政措置として、日本では、2004(平成16)年に「市町村合併の特例等に関する法律」が定められました。財政措置には、普通交付税による措置と特別交付税による措置がありますが、普通交付税の措置の具体的な措置として、合併特例債と合併算定替えというものがあります。

合併特例債は、合併した市町村が、市町村建設計画に基づく事業を実施する際に、特例として認められている借入金です。対象となる事業費の95%の金額を上限として借り入れできるため、地方創生の地方債として活用できます。

借り入れできる期間は合併後20年までと長期間であるのも合併特例債の特徴です。国による補助金を引いた額を地方自治体が返済して償還されます。

合併算定替とは

合併算定替は、合併後の地方交付税が減少しないようにする優遇措置です。通常であれば国からの地方交付税は、年度ごとに算出して交付されます。

しかし、合併後に算出した地方交付税は合併前よりも少なくなり、合併後の対象事業に使うお金が足りなくなるかもしれません。

そこで、国は特例として合併前の市町村ごとに必要なお金を算出し、合併前と合併後で金額の多い方を交付します。

合併特例債の上限額と活用見込み額

合併特例債を活用できる事業の目安として、合併後の人口、増加人口および合併関係市町村数の多寡から算出される標準全体事業費が設けられています。

3町合併した際、まちづくりにおける建設事業への合併特例債起債上限額は、141億3,000万円です。財政計画で計上している借入見込み額は、約64億4,000万円です。つまり、上限額の約45.6%です。

主な活用事業は、防災行政用無線の統合、幹線道路の整備、消防ポンプ自動車・屯所の整備などです。

合併特例債の対象

合併特例債の対象事業は、総務省で定められています

どのような対象事業が定められているのか見ていきましょう。

公共施設などの整備

総務省で定められた公共施設などの対象整備は、下記です。

  • 合併市町村同士をつなぐ道路、橋、トンネルなど
  • 住民が集まる運動公園など
  • 合併する市町村間の格差を埋める公共施設
  • 合併市町村にある公共施設の統合

地域振興のための基金の造成

総務省で定められた地域振興のための基金の造成を対象としたものは、下記です。

  • 合併市町村が一体感を得られるイベントや事業など
  • 合併前における市町村単位での伝統文化や地域行事、商店街の活性化対策など

地方公営企業への出資・補助

総務省で定められた地方公営企業への出資・補助を対象としたものは、下記です。

  • 上下水道、病院などの地方公営事業

合併特例債の対象外事業

合併特例債の対象事業とならないものは、下記です。

  • 利益を得ることを目的とした施設の整備
  • 特定の人だけ利益を得る施設整備
  • 民間と競合する施設の整備
  • 土地を取得する目的だけの事業
  • 建設費や整備費が高い施設の一定水準を超える部分

合併特例債に対する国からの財政支援

合併特例債に対する国からの財政支援の概要は、下記です。

  • 起債対象経費の95%は、合併特例債で財源調達が可能(5%は自己財源)
  • 合併特例債の返済額(元利償還金)の70%に対し、10ケ年間、普通交付税における額の算定に使う基準財政需要額に算入

合併特例債の優遇措置と充当率

合併特例債は、95%の充当率で合併後の対象事業に使用できます。充当率とは、債券の起債額のうち、市町村事業に使える金額です。

たとえば、10億円の事業で充当率が50%だと、5億円分は債券を発行できます。充当率の残り半分である5億円は、一般財源での支出です。合併特例債では、充当率以外の5%分は自治体の一般財源でまかないます。債券の償還額のうち、合併した市町村は3割だけ負担すればよく、残り7割は国が負担する好条件の優遇措置です。

つまり、地方自治体は95%の充当率に70%を乗じた66.5%を地方交付税に算入し、残りの償還額と充当率外の5%を地方自治体が支払います。

合併後に15年が経過するとどうなる?

前述した合併算定替は、合併後10年間は合併前の市町村ごとの地方交付税を算出して交付されます。その後5年間で合併算定替は縮小され、15年たつと合併算定替は完全に終了です。

この期間で市町村合併に関わる事業が完了していればよいですが、事業がうまく進んでいなかった場合は、優遇措置がない状態で進めなければなりません。地方自治体は、厳しい財政のやり繰りを強いられます。

2. 合併特例債に再延長の処置が用意された理由

合併特例債が開始したのは、1999年です。当初は、2005年までに合併した市町村について、合併が行われた年度およびこれに続く10年に限って発行可能な地方債として整備されました。

しかし、2011年の東日本大震災をきっかけに、被災地は合併後20年間に延長され、被災地以外は15年間に延長されています。

2018年には発行期限の再延長が決定し、被災地は25年、被災地以外は20年の再延長となったのです。2度の法改正を経て、合併特例債によって借入れができる期間は被災地では、2024年までとなりました。

この再延長には、2016年の熊本地震の影響も考慮されています。実際、熊本県が国に対して再延長の要望を行っていました。

このように、東日本大震災の被災市町村における人口動態の変化、全国的な建設需要の増大、合併市町村の計画に盛り込まれた事業の実施に支障が生じている状況などが背景にあります。全国で災害が相次いだ点や、東京オリンピックなどの影響で公共事業の入札が不調だったため、多くの地方自治体が合併特例債の対象事業を完了できない事態に陥りました。

その結果、全国160市町村の首長が参加する「合併特例債の再延長を求める首長会」が、総務省に再延長の要望書を提出したのを受けて、国は合併特例債の再延長を決定し、現在に至っています。

3. 合併特例債の良い点と問題点

合併特例債は、通常の地方財源では実施が難しい大規模な事業が行える一方、地方自治体が大きな借金を抱えます。合併特例債の使途や、自治体間の格差問題などが指摘されているのも事実です。合併特例債の良い点と問題点を解説します。

合併特例債の良い点は?

合併特例債で最も大きなメリットは、国が債券償還額の7割を負担するのにほかなりません。これにより地方自治体は、通常ではできない大規模な公共事業が実施可能です。

自治体の規模によって合併特例債の上限額は決まっていますが、上限いっぱいまで活用する自治体もあります。

合併特例債の問題点は?

合併特例債で国が7割負担するとはいえ、残り3割は地方自治体が返済しなければなりません。

自治体は合併による税収増加や財政の健全化などを見越して合併特例債を起債しますが、想定よりも合併の効果が得られなかった場合は、大きな借金を返し続ける必要があります。

地方交付税が減少している中、特例が使えない状態で債券を償還し、地方自治運営を行うのはかなり大変です。実際、すでに合併特例債によって財源を圧迫している事例が増えています。相次ぐ災害や公共設備整備の遅れから、自治体はさらに厳しい状況です。合併特例債の使途も疑問の声が出ています。

合併特例債の対象事業は総務省で定めていますが、細かい使い方は地方議会での決定に任されており、総務省によるチェックはありません。

総務省は今後も、合併特例債の対象事業であれば、それ以上は地方議会に任せる方針です。ほかにも、合併市町村と非合併市町村の格差も問題です。

合併特例債の期限が延長されるほど、合併特例債を活用できる市町村と合併特例債を使えない非合併市町村の間に不平等感が増します。総務省としても、これ以上、合併特例債の期限が延長しないよう対処するとしています。

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合併特例債による自治体財政の圧迫をシミュレーション解説

合併した多くの市町村が、合併後の自治体財政のシミュレーションを公表しています。しかし、そのシミュレーションの楽観すぎる点が指摘され始めています。

合併特例債は、国による地方交付税措置の一つです。有利な条件で借入ができるものの、あくまでも借入金であることを理解しなければなりません。合併特例債の使途は、あくまでも新しい街づくりに必要な事業に限定されています。市町村が自由に使えるわけではないのです。

合併特例債の発行が認められた当初から、バブル崩壊後の景気対策の終了によって普通建設事業費が縮小する中で、地方交付税の削減に直面した自治体にとって、合併特例債が大規模な公共投資を行う最後の機会として受け取められました。市町村の合併に、拍車をかけたのは否めません。

合併特例債は借入なので、元金の返済はもちろん、利息の支払いを負担する必要があります。ただし、毎年利息も含めた返済額の70%を国が負担してくれます。実質的に市町村側の負担は30%で済むため、有利な条件の借入といえるでしょう。

しかし、合併特例債の発行が本来必要ないにもかかわらず、合併特例債の恩恵を受けたいがために合併が進んだり、建設事業の促進に使われたりしています。公共事業の奨励策に使われたり、地方自治体の財政補てんのために使われたりと、本来の目的にそぐわない使われ方をしているケースもままあります。

無用な借金が家計を脅かすのと同じように、合併特例債による借入も、地方自治体の財政を圧迫するケースとしてきちんと理解しておく必要があるでしょう。

確かに元利償還金の70%が交付税措置とされる合併特例債は、ほかの地方債と比較しても有利であるのに間違いはありません。しかし、借金には変わりなく、30%は自己負担となることを認識する必要があります。

4. そもそも地方債とは?

総務省のホームページにある定義では、「地方債とは地方公共団体が1会計年度を超えて行う借入のこと」となっています。

地方債とは、地方自治体が財源の不足を補うために発行する債券です。地方自治体は単年度で予算を見積もって予算内で事業を行いますが、単年度予算でまかなうのが難しい事業の場合は、地方債を起債して財源を確保します。

しかし、地方自治体の財政難などから、地方債の発行額は大きく膨らんでいるのが現実です。地方債の発行が増えすぎると、財政が悪化する可能性もあります。

地方債の対象となる事業

地方債の対象となる事業は、地方財政法第5条で定められています

  • 交通事業、ガス事業、水道事業などの経費
  • 出資金や貸付金の財源とする場合
  • 地方債の借換えのための経費
  • 災害応急事業費、災害復旧事業費、災害救助事業費の財源
  • 学校などの教育施設、保育所などの厚生施設、消防施設、道路・河川・港湾などの公共施設、公用施設の建設事業費、公共用・公用の土地購入費

特例として事業対象となる項目もあります。

  • 辺地債(辺地に係る公共的施設の総合的整備のための財政上の特別措置に関する法律)
  • 過疎対策事業債(過疎地域自立促進特別措置法)
  • 減税補てん債(地方財政法第33条の5)
  • 臨時財政対策債(地方財政法第33条の5の2)
  • 退職手当債(地方財政法第33条の5の5)
  • 第三セクター等改革推進債(地方財政法第33条の5の7)
  • 再生振替特例債(地方公共団体の財政の健全化に関する法律)

合併特例債と地方債の違い

合併特例債と地方債には違う点があります。合併特例債の対象事業は、地方債の対象事業と違って合併の合理化、効率化を進める事業のみです。地方債の充当率は、毎年度総務省が告示する事業ごとの充当率で変わりますが、合併特例債は95%の充当率と決められています。

5. 合併特例債を発行した実例

合併特例債を実際に活用している地方自治体について、合併特例債の使途や費用、地方自治体ごとの成功、失敗例などを紹介します。

今後の計画実施事例

2000(平成12)年度から2005(平成17)年度に合併を実施した各市町村では、合併特例債の期限が切れた自治体も出始めています。そのような情勢の中、まだ合併特例債の期限を残す市町村は、残る時間を生かしてできるだけ有効に合併特例債を活用したいところです。

2020(令和2)年7月で、合併特例債の期限を有する市町村が計画、または実施中の事業について、日経BP総合研究所の調査資料を基に全国各地方から抜粋して以下に掲示します。

市町村名 合併日 合併特例債
発行期限
事業名 事業年度 事業費(円)
北海道茅部郡森町 2005年4月 2021年3月 し尿処理施設整備事業(仮) 2016~2021 7億2,500万
岩手県花巻市 2006年1月 2026年3月 花巻中央図書館整備事業 2022~2024 24億4,328万
茨城県石岡市 2005年10月 2025年10月 広域ごみ処理施設建設 2016~2025 33億4,920万
岐阜県可児市 2005年5月 2021年3月 文化創造センター改修事業 2016~2020 19億3,610万
和歌山県海南市 2005年4月 2021年3月 駅東土地区画整理事業 1999~2021 6億5,290万
山口県萩市 2005年3月 2020年3月 新防災行政無線整備事業 2015~2023 14億9,300万
高知県幡多郡黒潮町 2006年3月 2021年3月 道路・橋梁改良事業 2016~2021 18億3,830万
長崎県南島原市 2006年3月 2021年3月 清掃運搬施設等整備事業 2016~2023 60億8,700万
(出典:「日経BPイノベーションICT研究所 合併特例債実態調査(2)――今後の活用事業」より抜粋)

沖縄県宮古島市

宮古島市は、合併特例債を活用し、ごみ処理施設や教育施設、葬祭場、し尿処理施設、保育所整備のほか、未来創造センターや総合庁舎建設などの大型事業を行ってきました。総合庁舎建設では58億3,700万円、未来創造センターでは43億円を借り入れています。

宮古島市が使える合併特例債はすでに限度額いっぱいなので、再延長の恩恵は得られません。しかし、これまでに合併の優遇措置を最大限活用しています。

兵庫県篠山市

篠山市は、平成の大合併を行った最初の地方自治体となりました。その頃国の合併優遇策が始まったことから、篠山市は合併特例債を活用します。20億円で葬祭場を建設したり、80億円でごみ処理施設を建設したりしました。市民センター、温泉施設、図書館、温水プール、博物館などを次々と建設し、合併特例債の上限まで達します。

しかし、合併後、税収が思ったほど増えず、地方交付税の減額も重なって財政危機に陥りました。

鳥取県鳥取市

鳥取市は、合併特例債を活用して新庁舎を建設する計画を公表しましたが、新庁舎が豪華すぎるのではないかと市民から疑問の声が上がり、建設の是非を問う住民投票が行われました。

新庁舎の建設は一度否決されたものの、最高裁まで争った結果、住民側は敗訴し、新庁舎は建設されます。新庁舎の総工費は約97億1,000万円でした。

市民からはいまだに、財源の使い方として正しいのか疑問の声が上がっています。

香川県三豊市

香川県三豊市は、地方交付税の減額に備えて、行政サービスの改革に着手しました。定年退職した市民を中心に「まちづくり推進隊」を結成し、有償ボランティアとして業務依頼などしています。

有償ボランティアを活用することで職員を削減し、人件費の節約に成功しました。三豊市では、ほかにも財源を確保するためにさまざまな見直しを行っています。

6. 合併特例債のまとめ

合併特例債の再延長について、事例とともに紹介しました。

合併特例債とは、総務省が推し進める市町村合併を地方自治体に促すために導入されたものです。充当率の多くを国が負担するので、地方自治体は積極的に合併に関する事業を行えます。

しかし、結果的に地方自治体が大きな借金を抱える問題が起こりました。合併特例債が適切に使われているのかという疑問の声もあり、総務省も適切に対処するとしています。

今後、多くの地方自治体が合併特例債の償還に追われることは確かです。合併特例債の再延長によって、さらに借入を行う地方自治体も増えます。国や地方自治体は、今後、合併特例債も含めた市町村合併の課題に対処しなければなりません。

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