合併特例債とは?期限の再延長を5年に!

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企業情報第三部 部長
鎌田 実築

三菱UFJ銀行にて中堅中小企業法人担当として、企業再生支援、事業承継支援、資産活用コンサルティング等幅広く活動。その後M&Aアドバイザーとして複数の業種で成約実績を積み、規模・エリアも問わず幅広い相談に対応。

合併特例債とは、市町村合併の財源として使われる地方債のことです。2018年に合併特例債の発行期限が再延長されました。本記事では、合併特例債とはどのようなものか、再延長の理由や合併特例債のメリット・デメリットなどを事例も踏まえながら紹介します。

目次

  1. 合併特例債とは?分かりやすく解説!
  2. 合併特例債はなぜ再延長という処置が用意されたか?
  3. 合併特例債の良い点と問題点
  4. そもそも地方債とは?
  5. 合併特例債発行の実例
  6. 合併特例債のまとめ
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1. 合併特例債とは?分かりやすく解説!

合併特例債とは?分かりやすく解説!

合併特例債とは、市町村合併に関わる対象事業の財源として使用できる地方債のことです。

市町村合併には多額のお金がかかります。しかし、地方自治体の単年度予算だけでは財政を圧迫してしまうため、合併特例債を起債することで合併の対象事業費に使用するものです。債券の償還は、国からの補助金額を引いた額を地方自治体が返済していきます。

このように、市町村合併には、合併算定替と合併特例債による特例が定められているのです。

合併算定替とは

合併算定替とは、合併後の地方交付税が減少しないようにする優遇措置のことです。通常であれば国からの地方交付税は、年度ごとに算出して交付されます。

しかし、合併後に算出した地方交付税は合併前よりも少なくなり、合併後の対象事業に使うお金が足りなくなるかもしれません。そこで、国は特例として合併前の市町村ごとに必要なお金を算出し、合併前と合併後で金額の多い方を交付します。

合併特例債の優遇措置と充当率

合併特例債は、95%の充当率で合併後の対象事業に使用できます。充当率とは、債券の起債額のうち、市町村事業に使える金額のことです。

例えば、10億円の事業で充当率が50%だと、5億円分は債券を発行できます。充当率の残り半分である5億円は、一般財源での支出です。合併特例債では、充当率以外の5%分は自治体の一般財源でまかないます。

さらに、債券の償還額のうち、合併した市町村は3割だけ負担すればよく、残り7割は国が負担するという好条件の優遇措置になっているのです。

つまり、地方自治体は95%の充当率に70%を乗じた66.5%を地方交付税に算入し、残りの償還額と充当率外の5%を地方自治体が支払うことになります。

合併特例債の対象となる事業は?

合併特例債の対象事業は、総務省で定められています。

  1. 合併する市町村同士をつなぐ道路、橋、トンネルなど
  2. 住民が集まれる運動公園など
  3. 合併する市町村間の格差を埋める公共施設
  4. 合併する市町村に重複している公共施設の統合
  5. 合併する市町村同士が一体感を得られるようなイベントや事業
  6. 合併前の市町村単位での、伝統文化や地域行事、商店街の活性化
  7. 上下水道、病院などの地方公営事業

また、合併特例債の対象事業とならないものも、総務省によって定められています。
  1. 利益を得ることを目的とした施設の整備
  2. 特定の人だけ利益を得るような施設整備
  3. 民間と競合する施設の整備
  4. 土地を取得する目的だけの事業
  5. 建設費や整備費が高い施設の一定水準を超える部分

合併後15年経つとどうなる?

前述した合併算定替は、合併後10年間は合併前の市町村ごとの地方交付税を算出して交付されます。その後5年間で合併算定替は縮小され、15年経つと合併算定替は完全に終了です。

この期間で市町村合併に関わる事業が完了していればよいですが、事業がうまく進んでいなかった場合は、優遇措置がない状態で進めていかなければなりません。地方自治体は、厳しい財政のやり繰りを強いられます。

【関連】合併とはどんな手法?吸収合併や買収との違いは?メリット・デメリットを解説!

2. 合併特例債はなぜ再延長という処置が用意されたか?

合併特例債はなぜ再延長という処置が用意されたか?

合併特例債が開始されたのは、1999(平成11)年です。当初は、合併後10年間だけ発行できるとされていました。しかし、2011(平成23)年の東日本大震災をきっかけに、被災地は合併後20年間に延長され、被災地以外は15年間に延長されています。

さらに、2018(平成30)年には発行期限の再延長が決定され、被災地は25年、被災地以外は20年の再延長となったのです。

その背景として、全国で災害が相次いだことや、東京オリンピックなどの影響で公共事業の入札が不調だったことから、多くの地方自治体が合併特例債の対象事業が完了しないという事態がありました。

それで、全国160市町村の首長が参加する「合併特例債の再延長を求める首長会」が、総務省に再延長の要望書を提出したのです。そして、総務省からの要望を受けて、国は合併特例債の再延長を決定しました。

3. 合併特例債の良い点と問題点

合併特例債の良い点と問題点

合併特例債は、通常の地方財源では実施が難しい大規模な事業が行える一方、地方自治体が大きな借金を抱えることになります。また、合併特例債の使途や、自治体間の格差問題などが指摘されているのも事実です。

合併特例債の良い点と問題点について解説します。

合併特例債の良い点は?

合併特例債で最も大きなメリットは、国が債券償還額の7割を負担してくれることに他なりません。これにより地方自治体は、通常ではできないような大規模な公共事業が実施可能です。

自治体の規模によって合併特例債の上限額は決まっていますが、上限一杯まで活用している自治体もあります。

合併特例債の問題点は?

いくら合併特例債で国が7割負担してくれるとはいえ、残り3割は地方自治体が返済しなければなりません。

自治体は合併による税収増加や財政の健全化などを見越して合併特例債を起債しますが、想定よりも合併の効果が得られなかった場合は、大きな借金を返し続けなければならなくなります

地方交付税が減少している中、特例が使えなくなった状態で債券を償還し、地方自治運営をしていくのはかなり大変です。実際すでに、合併特例債によって財源を圧迫している事例が増えています。

さらに、相次ぐ災害や公共設備整備の遅れから、自治体はさらに厳しい状況です。

また、合併特例債の使途についても疑問の声が出ています。合併特例債の対象事業は総務省で定めていますが、細かい使い方は地方議会での決定に任されていて、総務省によるチェックはありません。

総務省は今後も、合併特例債の対象事業になっていれば、それ以上は地方議会に任せる方針です。ほかにも、合併市町村と非合併市町村の格差も問題となっています。

合併特例債の期限が延長されるほど、合併特例債を活用できる市町村と合併特例債を使えない非合併市町村の間にあるのが不平等感です。総務省としても、これ以上、合併特例債の期限が延長されることのないように対処していくとしています。

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4. そもそも地方債とは?

そもそも地方債とは?

総務省のホームページにある定義では、「地方債とは地方公共団体が1会計年度を超えて行う借入れのこと」とされています。

地方債とは、地方自治体が財源の不足を補うために発行する債券のことです。地方自治体は単年度で予算を見積もって予算内で事業を行いますが、単年度予算でまかなうことが難しい事業の場合は、地方債を起債することで財源を確保します。

しかし、地方自治体の財政難などから、地方債の発行額は大きく膨らんでいるのが現実です。地方債の発行が増えすぎると、財政が悪化する可能性もあります。

地方債の対象となる事業

地方債の対象となる事業は、地方財政法5条で定められています。

  1. 交通事業、ガス事業、水道事業などの経費
  2. 出資金や貸付金の財源とする場合
  3. 地方債の借換えのための経費
  4. 災害応急事業費、災害復旧事業費、災害救助事業費の財源
  5. 学校などの教育施設、保育所などの厚生施設、消防施設、道路・河川・港湾などの公共施設、公用施設の建設事業費、公共用・公用の土地購入費

また、特例として事業対象となる項目もあります。

  1. 辺地債(辺地に係る公共的施設の総合的整備のための財政上の特別措置に関する法律)
  2. 過疎対策事業債(過疎地域自立促進特別措置法)
  3. 減税補てん債(33条の5)
  4. 臨時財政対策債(33条の5の2)
  5. 退職手当債(33条の5の5)
  6. 第三セクター等改革推進債(33条の5の7)
  7. 再生振替特例債(地方公共団体の財政の健全化に関する法律)

合併特例債が地方債とは違う点

合併特例債と地方債には違う点があります。合併特例債の対象事業は、地方債の対象事業と違って合併の合理化、効率化を進める事業のみです。

また、地方債の充当率は、毎年度総務省が告示する事業ごとの充当率で変わりますが、合併特例債は95%の充当率と決められています。

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5. 合併特例債発行の実例

合併特例債発行の実例

合併特例債を実際に活用している地方自治体について、合併特例債の使途や費用、地方自治体ごとの成功、失敗例などを紹介します。

事業名と事業費の事例一覧

合併特例債発行の事例を、一部抜粋して掲示します。下記の事例は、2003(平成15)年に合併推進事業を行った市町村と対象事業内容の事例です。

全国市民オンブズマン連絡会議による調査事例では、1999年度から2003年度の間に、全国地方自治体の総事業費のうち6割以上が道路建設に使われていました。次に事例として多かったのが、庁舎や文化施設の建設となっています。

2003年度 合併推進事業 (単位:千円)

都道府県名 合併市町村名 事業名 事業費 合併推進債・特例債
青森県   国道4号線 30,000 27,000
    国道340号線他4路線 1,190,000 516,000
    八戸環状線他13路線 3,236,973 1,987,000
    合計 4,456,973 2,530,000
岩手県 大船渡市 ふるさと林道緊急整備 470,000 423,000
    普通林道整備 280,000 69,000
    農免林道整備 90,000 40,000
    県単道路改良 200,600 161,000
    合計 1,040,600 693,000
茨城県 つくば市 緊急地方道路整備事業
谷田部藤代線
100,000 40,000
    県単道路改良事業
谷田部藤代線
30,000 27,000
    小計 130,000 67,000
  潮来市 道路橋梁改修事業
国道355線
272,500 121,000
    小計 272,500 121,000
  常陸太田市・金砂郷町・
水府村・里美村
緊急地方道路整備事業
常陸那珂港山方線
140,000 56,000
    県単道路改良事業
常陸那珂港山方線
13,100 11,000
    街路改良事業(都)木崎
稲木線
10,000 4,000
    小計 163,100 71,000
    合計 565,600 259,000
栃木県 佐野市・田沼町・
葛生町
県道佐野環状線新設① 200,000 90,000
    県道佐野環状線新設② 160,000 64,000
    県道黒袴迫間線
バイパス 整備①
12,000 5,000
    県道黒袴迫間線
バイパス 整備②
146,000 59,000
    県道田沼インター線新設 340,000 137,000
    県道山形寺岡線バイパス 整備 100,000 40,000
    県道多田吉水線拡幅 76,000 68,000
    合計 1,034,000 463,000
群馬県 神流町 市町村合併支援道路等
整備事業
144,600 59,000
    合計 144,600 59,000
埼玉県 さいたま市 直轄国道負担金 2,612,051 2,350,000
    道場三室線 795,515 379,000
    中山道(北部) 282,380 254,000
    中山道(南部) 66,809 60,000
    赤山東線 958,428 502,000
    田島大牧線 443,482 256,000
    赤山東線 138,000 55,000
    八幡通り線 517,176 237,000
    合計 5,813,841 4,093,000
千葉県 野田市 我孫子関宿線ほか道路
整備事業
160,599 143,000
    合計 160,599 143,000
*全国市民オンブズマン連絡会議 合併特例債等の使途に関する実態調査結果より抜粋

今後の計画実施事例

2000(平成12)年度から2005(平成17)年度に合併を実施した各市町村では、合併特例債の期限が切れてしまった自治体も出始めています。そのような情勢の中、まだ合併特例債の期限を残す市町村としては、残る時間を活かしてできるだけ有効に合併特例債を活用したいところです。

2020(令和2)年7月現在において、合併特例債の期限を有している市町村が計画または実施中の事業について、日経BP総合研究所の調査資料を基に全国各地方から抜粋して以下に掲示します。

市町村名 合併日 合併特例債
発行期限
事業名 事業年度 事業費(円)
北海道茅部郡森町 2005年4月 2021年3月 し尿処理施設整備事業(仮) 2016~2021 7億2,500万
岩手県花巻市 2006年1月 2026年3月 花巻中央図書館整備事業 2022~2024 24億4,328万
茨城県石岡市 2005年10月 2025年10月 広域ごみ処理施設建設 2016~2025 33億4,920万
岐阜県可児市 2005年5月 2021年3月 文化創造センター改修事業 2016~2020 19億3,610万
和歌山県海南市 2005年4月 2021年3月 駅東土地区画整理事業 1999~2021 6億5,290万
山口県萩市 2005年3月 2020年3月 新防災行政無線整備事業 2015~2023 14億9,300万
高知県幡多郡黒潮町 2006年3月 2021年3月 道路・橋梁改良事業 2016~2021 18億3,830万
長崎県南島原市 2006年3月 2021年3月 清掃運搬施設等整備事業 2016~2023 60億8,700万

地方自治体の成功・失敗事例

合併後に合併特例債を使った結果、うまくいっている自治体や財政的に追い込まれることとなった自治体、問題を抱えることとなった自治体があります。

  1. 沖縄県宮古島市
  2. 兵庫県篠山市
  3. 鳥取県鳥取市
  4. 香川県三豊市
以上、4つの地方自治体の事例を具体的に見てみましょう。

事例①沖縄県宮古島市

宮古島市は、合併特例債を活用し、ごみ処理施設や教育施設、葬祭場、し尿処理施設、保育所整備のほか、未来創造センターや総合庁舎建設などの大型事業を行ってきました。総合庁舎建設では58億3,700万円、未来創造センターでは43億円を借り入れています。

宮古島市が使える合併特例債はすでに限度額一杯なので、再延長の恩恵は得られません。しかし、これまでに合併の優遇措置を最大限活用しています。

事例②兵庫県篠山市

篠山市は、平成の大合併を行った最初の地方自治体となりました。その頃ちょうど国の合併優遇策が始まったことから、篠山市は合併特例債を活用します。

20億円で葬祭場を建設したり、80億円でごみ処理施設を建設したりしました。また、市民センター、温泉施設、図書館、温水プール、博物館などを次々と建設し、合併特例債の上限まで達します。

しかし、合併後、税収が思ったように増えず、地方交付税の減額も重なって財政危機に陥りました。

事例③鳥取県鳥取市

鳥取市は、合併特例債を活用して新庁舎を建設する計画を公表しましたが、新庁舎が豪華すぎるのではないかと市民から疑問の声が上がり、建設の是非を問う住民投票が行われました。

新庁舎の建設は一度否決されたものの、最高裁まで争った結果、住民側は敗訴し、新庁舎は建設されます。新庁舎の総工費は約97億1,000万円でした。

市民からはいまだに、財源の使い方として正しいのか疑問の声が上がっています。

事例④香川県三豊市

香川県三豊市は、地方交付税の減額に備えて、行政サービスの改革に着手しました。定年退職した市民を中心に「まちづくり推進隊」を結成し、有償ボランティアとして業務を依頼などしたのです。

有償ボランティアを活用することで職員を削減し、人件費の節約に成功しました。三豊市では、ほかにも財源を確保するためにさまざまな見直しを行っています。

【関連】地方のM&A動向や後継者難の理由を解説【成功/失敗事例あり】

6. 合併特例債のまとめ

合併特例債のまとめ

合併特例債の再延長について、事例と共に紹介しました。

合併特例債とは、総務省が推し進める市町村合併を地方自治体に促すために導入されたものです。充当率の多くを国が負担してくれるので、地方自治体は積極的に合併に関する事業を行えます。

しかし、結果的に地方自治体が大きな借金を抱えるという問題が起こりました。また、合併特例債が適切に使われているのかという疑問の声もあり、総務省も適切に対処するとしています。

今後、多くの地方自治体が合併特例債の償還に追われることは確かです。合併特例債の再延長によって、さらに借り入れを行う地方自治体も増えることになります。

国や地方自治体は、今後、合併特例債も含めた市町村合併の課題に対処していかなければなりません。

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