合併のメリット・デメリット25選!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

合併とはM&A手法の一つであり、複数の法人格を統合して一つの法人格にする行為です。合併にはメリット・デメリットの双方があるため、実施を検討する場合には事前に把握しておきましょう。本記事では、企業が合併するメリット・デメリットについてさまざまな面から解説します。

目次

  1. 合併とは?
  2. 企業が合併をする目的
  3. 合併のメリット15選!
  4. 合併のデメリット10選!
  5. 合併のメリットを最大化する方法
  6. 合併を行う際の手続き
  7. 合併のメリットまとめ
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1. 合併とは?

合併とは?

合併とは、二つ以上の法人が統合して一つの法人になるM&A手法のことです。合併を行う当事者には、権利義務を引き継ぐ存続会社と権利義務を引き渡す消滅会社が存在します。合併の手法は、吸収合併新設合併の2種類です。

吸収合併

吸収合併では、存続会社が消滅会社の権利義務をすべて引き継ぎます。消滅会社は、吸収合併の効力が発生した後に解散する仕組みです。手続きの手間や合併にかかる費用などを考慮して、合併を行う企業の大半が吸収合併を選択しています。

新設合併

新設合併では、新たに会社を設立したうえで、被合併会社の権利義務をすべて新設会社に移行します。効力発生日以降に被合併企業はすべて解散して、新設会社のみが存続する仕組みです。

新設合併には多くの手間や費用がかかることから、吸収合併に比べてそれほど採用されない手法です。複数の子会社同士の合併ではメリットも大きいため、新設合併が採用されるケースも見られます。

合併と買収との違い

合併と買収は時折り類似する行為として語られますが、各行為は似て非なる概念です。合併は、企業や事業を買収するさまざまな方法のうちの一つという位置づけにあります。

合併以外の買収方法は、例えば、株式譲渡事業譲渡株式交換株式移転などです。合併と一般的な買収の大きな相違点には、「一つの会社になるかどうか」が挙げられます。

合併は、二つ以上の会社が一つになる行為です。これに対して一般的な買収では、売却対象企業の資産および経営権などを取得しますが、必ずしも会社の消滅は伴いません。

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2. 企業が合併をする目的

企業合併は、主にグループ企業の再編に用いられます。子会社が製造会社と販売会社に分かれていたり、別々の子会社で類似する商品を扱っていたりする場合、子会社同士が合併すると経営の効率化を実現可能です。

業界再編を促すために、大企業同士が大型合併するケースも見られます。業界の市場規模が小さかったり、業界が成熟期・衰退期に入っていたりする場合、業界トップクラスの企業同士が合併すれば業界の成長を促せるでしょう。

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3. 合併のメリット15選!

ここからは、合併のメリットを以下の項目に分けて紹介します。

  • 組織力から見た合併のメリット
  • 資金面から見た合併のメリット

それぞれの面から、合併のメリットを把握しておきましょう。

組織力から見た合併のメリット

組織力から見た合併のメリットは、以下のとおりです。

  1. 同業他社と合併することでライバルが減る
  2. 仲間の結びつきが強くなる
  3. スケールメリットが得られる
  4. 組織をシンプルにできる
  5. 事業シナジーによるメリットが得られる
  6. 内部統制を強化できる
  7. 人件費や設備費などのコストを削減できる
  8. 事業承継の心配がなくなる

これらのメリットを解説します。

メリット①:同業他社と合併することでライバルが減る

同業他社と合併すれば、業界での順位を向上させて、競争力を高められます。特に近い業績を持つ企業同士が合併すると、ライバル企業が減るため、必然的に業界での優位性が高まるでしょう。

メリット②:仲間の結びつきが強くなる

合併すると、一般的な買収や提携よりも従業員の一体感が強まります。合併では、同じ会社の従業員としての仲間意識が生まれやすいです。

ただし、合併直後は、差別意識や派閥が生まれるケースも見られます。社内制度をしっかりと整備するほか、従業員同士がコミュニケーションを取れる機会を確保するなどのアフターケアが重要です。

メリット③:スケールメリットが得られる

合併により会社の規模が大きくなれば、スケールメリットが得られます。これにより、販売網の拡大だけでなく、大量仕入れや大量製造によるコスト削減など、さまざまなメリットを享受可能です。

メリット④:組織をシンプルにできる

合併により会社ごとに独立していた指揮系統・社内制度・管理システムなどを統一すれば、組織運営をシンプル化できます。組織運営をシンプル化させることで、迅速な意思決定を行ったり業務の効率化を図ったりできるでしょう。

メリット⑤:事業シナジーによるメリットが得られる

合併では、事業シナジーの獲得も期待できます。各企業が抱える事業の強みがうまく融合すれば、足し算以上の成果を生み出すケースも多いです。

ただし、事業シナジーによるメリットを十分に得るには、合併前に綿密な企業調査を行うほか、統合時のマネジメントも怠らずに行う必要があります。

メリット⑥:内部統制を強化できる

合併により従業員を一つの会社に集めれば、事業に対する目的意識を統一化できます。トップからの意思伝達もスムーズに行えて、会社の統制を強化できます。

メリット⑦:人件費や設備費などのコストを削減できる

合併により一つの法人格になることで、人材が重複する部門が生まれやすいです。ここで、余剰人員を別部門に回したり新部門を立ち上げたりすれば、効率的な人材活用を目指せます。重複設備の削減によって、ランニングコストの抑制も可能です。

メリット⑧:事業承継の心配がなくなる

会社を事業承継する際に経営者が抱く不安には、後継者への債務引継ぎや従業員の雇用に関するものがあります。合併を実施すれば、債務や従業員もすべて存続会社に引き継いでもらえるでしょう。

従業員の雇用維持について合意のうえで合併すれば、消滅会社の経営者は安心して経営を引退できます。

資金面から見た合併のメリット

次に、資金面から見た合併のメリットを紹介します。

  1. 管理会計を導入しやすくなる
  2. 消費税の仕入税額控除による節税効果が期待できる
  3. 自社株評価の引き下げによる相続税対策を講じられる
  4. ブランド力を強化できる
  5. 損益通算ができる
  6. 繰越欠損金を引き継げる
  7. 資金移動が簡単になる

これらのメリットを順番に見ていきましょう。

メリット①:管理会計を導入しやすくなる

経営の方向性を定めるうえで、管理会計の導入には大きなメリットがあります。しかし、手間がかかるため企業での導入がそれほど進んでいません。

合併をきっかけに管理会計を導入すれば、経営陣は数値を用いた明確な意思決定を実現できます。特に会社の各部門に管理会計を導入できれば、より的確な経営方針を示せるようになるでしょう。

メリット②:消費税の仕入税額控除による節税効果が期待できる

消費税の納税額を決める際、課税される売上高と課税されない売上高の割合を示す課税売上割合を算出します。この課税売上割合が高ければ仕入税額控除分が多くなるため、課税売上割合の高い会社と合併すれば節税効果が期待可能です。

メリット③:自社株評価の引き下げによる相続税対策を講じられる

合併により利益や純資産額が減少すると、自社株の評価額が引き下げられるケースがあります。合併により会社規模が変化すると、株式評価の計算式が変わる場合も少なくありません。

この仕組みを活用して自社株評価を引き下げると、相続税の節税効果が期待できます。ただし、税金対策を目的とした合併の場合、税務署からペナルティを受ける可能性が高いです。

相続税対策目的の合併は株主や従業員からしても不利益となるため、慎重に行う必要があります。

メリット④:ブランド力を強化できる

ブランド力のある企業同士が合併すると、さらにブランド力を高められます。ブランド力が高まると資金調達がしやすくなるだけでなく、上場企業であれば株価にも良い影響をもたらしやすいです。

これにより、優秀な人材を確保する面でも有利に働きます。

メリット⑤:損益通算ができる

合併では法人格が一つに統合されるため、当事者である黒字会社と赤字会社の間で損益通算が可能となります。黒字会社からすると節税効果が期待でき、赤字会社からすると損失をカバーできるため、両社にとってメリットがあります。

メリット⑥:繰越欠損金を引き継げる

合併時の条件によっては赤字会社の繰越欠損金を使えるため、節税効果を得られるメリットがあります。ただし、繰越欠損金目的の合併と判断されてしまうと、税務署からペナルティを受けるため要注意です。

条件が厳しくリスクも高いため、繰越欠損金がある場合には、合併を慎重に検討する必要があります。

メリット⑦:資金移動が簡単になる

たとえグループ内企業同士であっても、企業間の資金移動には手続きが必要です。しかし、合併すれば同一法人となるため、資金の移動時に別会社のような手続きを取る必要がありません。複数の子会社同士の合併などでは、大きなメリットを享受できます。

【関連】吸収合併存続会社とは?資本金の決め方や登記・決算などの手続きも解説!

4. 合併のデメリット10選!

ここからは合併のデメリット10個を、以下の項目に分けて解説します。

  • 組織力から見た合併のデメリット
  • 資金面から見た合併のデメリット

それぞれの側面から見たデメリットを把握して、合併の実施を検討しましょう。

組織力から見た合併のデメリット

組織力から見た合併のデメリットは、以下のとおりです。

  1. 社内ルール統合の難しさ
  2. 新たな人間関係構築によるストレス
  3. 人員増加によるコストの増加
  4. 業務量増加による混乱とストレス
  5. 責任の所在が曖昧になる

これらのデメリットを解説します。

デメリット①:社内ルール統合の難しさ

合併において当事会社同士が納得する社内ルールの統合は、決して簡単には進みません。これまでなじんできたルールが大幅に変更されれば、日々の業務が滞って従業員の不満やストレスがたまってしまいます。

新しい社内制度への対応は、合併経験者が抱いた不満の中でも人間関係に匹敵する悩みです。合併の際は、専門家の協力を得ながら、PMI(合併後のマネジメント計画)を十分に実施する必要があります。

デメリット②:新たな人間関係構築によるストレス

従業員の不安や不満の中でも、合併後の人間関係は大きく問題視されています。外部の会社との合併では、ライバル意識や差別意識を持った従業員が相手企業の従業員に対して不当な扱いをするケースも少なくありません。

親会社と子会社の合併においても、合併前に交流がなかった場合には、親会社の従業員が横柄な態度で接してくる場合もあります。たとえ相手に意図がなかったとしても、差別されていると感じる場合もあるでしょう。

デメリット③:人員増加によるコストの増加

合併により従業員が増加すると、大幅な人件費増加につながるデメリットがあります。外部の会社同士の合併では、従業員の雇用維持や待遇維持が前提となるケースも多く、合併後に人員整理ができずに人件費が負担となりやすいです。

合併後は給与水準の高い会社に合わせるケースが多いため、しばらくの期間、人件費の負担が大きくなる点はデメリットとして挙げられます。

デメリット④:業務量増加による混乱とストレス

合併の際には、必要な関連業務が急激に増えます。合併を繰り返していて専門の部署を立ち上げている企業でない限り、普段の業務に加えて合併に関する業務もこなさなければなりません。合併による業務量の増加は、合併の不安と相まって大きなストレスを生み出します。

デメリット⑤:責任の所在が曖昧になる

合併により事業が統合されると、業績に対する責任の所在が曖昧になるケースが見られます。特に複数の事業が存在する場合には、責任者が会社に対して抱く責任感が薄くなってしまいがちです。

事業ごとや部門ごとに数字を算出しながら、責任の所在を明確化させる必要があります。

資金面から見た合併のデメリット

次に、資金面から見た合併のデメリットを紹介します。

  1. 業績をまとめにくい
  2. 企業規模の変化による税負担の増加
  3. 株価への悪影響
  4. 合併によるコストの増加
  5. 偶発債務の発覚

これらのデメリットを解説します。

デメリット①:業績をまとめにくい

合併前に分かれていた事業が統合されると、事業ごとの数字を把握しにくくなります。これにより、経営陣は的確な経営判断を下しにくくなってしまうでしょう。

経営者は大ざっぱな数字は把握していても、細かい数字までは把握していない人が多いとされています。合併の際には、部門ごとに会計を整理する工夫も重要です。

デメリット②:企業規模の変化による税負担の増加

法人税法上の中小企業として認定されていると、さまざまな優遇措置が受けられます。しかし、合併によって資本金が大きくなると、法人税法上の中小企業から除外されて優遇措置が受けられなくなるおそれがあるでしょう。

デメリット③:株価への悪影響

基本的に、合併の成果が出るまでには時間がかかります。業績が上向くまでの期間は、合併によるコストの増加によって一時的に業績が下がるケースが多いです。これにより、短期的に見て株価が下がるおそれがあります。

合併の際には、ステークホルダーに対して合併の目的と将来性を入念に説明しておくと良いでしょう。

デメリット④:合併によるコストの増加

合併にはさまざまな側面から多額のコストがかかります。合併にかかるコストは小規模の合併でも数千万円に及び、中規模になれば数億円の合併コストがかかるケースが多いです。

株主や債権者への対応コストだけでなく、合併の専門業者への手数料支払い・システム整備などあらゆる場面で資金が必要となります。想定外のコストがかかるケースも多いため、注意が必要です。

デメリット⑤:偶発債務の発覚

合併の場合は存続会社がすべての権利義務を引き継ぐため、合併後に簿外債務・偶発債務などが発覚すると、訴訟問題となり突発的な支払いが生じる可能性があります。

特に偶発債務は完全な想定が難しく、被合併会社の経営陣ですら正確に把握できていないケースが多いです。偶発債務が発覚すれば、多額の支払いが生じるだけでなく、企業の信用にも悪影響を与えてしまいます。

合併前には、自社の債務・負債について念入りに調査しておきましょう。

【関連】新設合併とは?メリット・デメリットを解説!【事例11選あり】

5. 合併のメリットを最大化する方法

合併のメリットを最大化するには、デメリットを最小限に抑える工夫が必要不可欠です。合併のデメリットの中でも特に深刻なものは、簿外債務や偶発債務の発覚による訴訟問題への発展といえます。

非合併会社における簿外債務や偶発債務の有無を調べるためにも、合併会社側では、デューデリジェンスと呼ばれる調査を徹底的に実施しましょう。調査には高度な専門性が求められるため、税理士・弁護士などに依頼して実施してもらうケースが一般的です。

非合併会社側としても、資料提供などをとおして、デューデリジェンスが円滑に進むための協力をしてください。デューデリジェンスでは、こうした合併時のデメリット・リスクだけでなく、想定しているメリットを享受できる可能性も調べられます。

合併会社・非合併会社問わず、合併でメリットを最大限獲得するには、デューデリジェンスの実施が必要不可欠です。

合併のメリットを生かすにはM&Aアドバイザーに相談

合併のメリット・デメリットを紹介してきましたが、デューデリジェンスを実施しつつ、メリットを最大化・デメリットを最小化するには、M&Aの専門家による協力が欠かせません。合併で最大限のメリットを得て、その後の経営に生かすためにも、専門家からサポートを得るようにしましょう。

M&A総合研究所には、M&Aの知識・経験を豊富に持つアドバイザーが在籍しており、資金面のメリット・デメリットを鑑みて最適な方法を模索します。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談は電話・Webより受け付けていますので、M&Aをご検討の際はお気軽にご連絡ください。

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6. 合併を行う際の手続き

合併を行う際にはさまざまな手続きが必要です。主な手続きは下記のとおりです。

  • 合併契約書を作成
  • 事前開示書類の備置
  • 取締役会決議を実施
  • 合併契約を締結する
  • 債権者に対する異議申述広告と個別催告を実施
  • 反対株主に株式買取請求通知、公告を実施
  • 株主総会招集手続き
  • 株主総会決議を実施
  • 合併の効力発生
  • 事後開示書類の備置
  • 変更登記申請

合併の際の基本的な手続きは以上のとおりです。簡易合併と略式合併では手続きが異なりますので、確認しておきましょう。合併手続きは煩雑であるため、M&A仲介会社などの専門家の協力を得ながら進めると良いでしょう。

7. 合併のメリットまとめ

合併のメリット・デメリットを25個ご紹介してきました。

合併のメリットは、組織力の面では以下のとおりです。

  1. 同業他社と合併することでライバルが減る
  2. 仲間の結びつきが強くなる
  3. スケールメリットが得られる
  4. 組織をシンプルにできる
  5. 事業シナジーによるメリットが得られる
  6. 内部統制を強化できる
  7. 人件費や設備費などのコストを削減できる
  8. 事業承継の心配がなくなる

資金面では、以下のようなメリットがあります。
  1. 管理会計を導入しやすくなる
  2. 消費税の仕入税額控除による節税効果が期待できる
  3. 自社株評価の引き下げによる相続税対策を講じられる
  4. ブランド力を強化できる
  5. 損益通算ができる
  6. 繰越欠損金を引き継げる
  7. 資金移動が簡単になる

合併のデメリットは、組織力の面では以下のとおりです。
  1. 社内ルール統合の難しさ
  2. 新たな人間関係構築によるストレス
  3. 人員増加によるコストの増加
  4. 業務量増加による混乱とストレス
  5. 責任の所在が曖昧になる

資金力の面におけるデメリットは以下のとおりです。
  1. 業績をまとめにくい
  2. 企業規模の変化による税負担の増加
  3. 株価への悪影響
  4. 合併によるコストの増加
  5. 偶発債務の発覚

合併のメリットを最大限生かしてデメリットを減らすには、経験豊富な専門家の協力が欠かせません。合併を検討する際は、まずM&Aの専門家に相談することをおすすめします。

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