2022年07月13日更新
吸収合併消滅会社とは?消滅会社の手続きを解説!決算公告・申告は必要?
吸収合併における消滅会社では、株主・債権者などの利害関係者にとって合併の影響が大きく、利害関係の調整のための情報提供や決算を含む各種手続きが設けられています。今回は、消滅会社で必要となる吸収合併の手続きや決算公告を解説します。
1. 吸収合併消滅会社とは
まずは、吸収合併消滅会社の基礎知識をまとめて取り上げます。
吸収合併とは
M&Aとは、複数の企業を統合するための手法のことです。Merger(合併)と買収(Acquisition)の略称であり、大きく「合併」と「買収」の2つのパターンがあります。
このうち「合併」は、買い手側の企業が売り手側の企業を自社にそのまま組み入れる形の組織再編手法であり、異なる企業同士が完全に同一の企業になる取引形態です。この合併には、2つの種類があります。それは新設合併と吸収合併の2つです。
新設合併とは、複数の企業を1つにする取引を、合併時に設立した新しい企業を受け皿として実施する形式の合併のことをいいます。新しく設立した会社(新設会社)が合併の主体となり、合併後の事業活動を行うことから、新設合併と呼ばれます。
一方で、吸収合併とは、複数の既存企業での合併であり、合併によって消滅する会社(消滅会社)が有する権利・義務の全てを、合併後に存続する会社(存続会社)に引き継ぐ形で実施する形式の合併のことです。
合併当事者である会社が、存続会社に全て吸収されることから、吸収合併と呼ばれます。会計処理や税務申告上も存続会社に全て消滅会社の資産・負債が全て引き継がれます。通常、合併という場合、2つの企業が統合されて1つが消滅するケースが多いため、一般的なケースで想定されるのは吸収合併です。
以上を踏まえて、吸収合併消滅会社とは、吸収合併の実施に伴い消滅する会社をさします。
吸収合併の当事者
上述のとおり、吸収合併とは、合併に際して1つの企業だけが生き残り、吸収される側の企業が消滅する形態の合併です。吸収合併では、生き残る会社と消滅する会社という2つの当事者がいます。
このうち、生き残る会社(合併をする側の会社)は存続会社、消滅する会社(合併される側の会社)は消滅会社と呼ばれています。
存続会社
存続会社とは、合併によって消滅する会社(消滅会社)が有する権利・義務の全てを引き継ぐ会社であり、合併後の主体となって生き残って活動していく会社のことです。いい換えると、M&Aにおける買い手側企業です。
存続会社では、吸収合併を通じて消滅会社の権利・義務を引き継ぐことで、事業における重要な資産であるヒト・モノ・カネを拡充できます。販路や活動エリアの拡大や新規事業への進出など、事業を伸ばす機会を得ることが可能です。
会計処理面でも、消滅会社の資産や負債を全て引き継ぐため、決算書上では事業規模が大きく見える効果もあります。
消滅会社
消滅会社とは、合併によって自社の権利・義務の全てを存続会社に引き継ぐ会社のことです。消滅会社と呼ばれているとおり、合併の成立により存続会社に全てが吸収されるため、完全に消滅する会社です。消滅会社は、M&Aにおける売り手側の企業であるといえます。
M&Aにおける買い手企業は、「企業規模が大きい」「業績が好調である」など、これから伸びる要素を持つ場合が多いでしょう。消滅会社の事業は、存続会社に吸収されることで結果的に経営が安定する傾向にあります。消滅会社の業績が好ましくないケースの場合、業績の良い存続会社に吸収合併されることで、従業員の雇用の安定・強化につながる効果もあります。
なお、消滅会社の経営者(大株主)がリタイアを想定して他社に事業を承継するために、吸収合併の手法を採用するケースも多くあるでしょう。これは、いわゆる「後継者問題の解消」「事業承継」のために使用される手法の1つです。
2. 吸収合併消滅会社の手続き
吸収合併は、組織再編のための会社法で定められた手法です。会社のあり方も大きく変わる行為であるため、関係者の利害調整の観点から、会社法上でも非常に厳格な手続きが求められており、実行に際しては注意が必要です。
ここでは、吸収合併で必要とされる手続きを解説します。
吸収合併の手続き
吸収合併を実施する際の手続きは、社内での意思決定や承認・相手会社との合意・契約の締結・事前開示書類の開示・利害関係者の保護手続き・社内の意思決定機関での承認・事後的な対応と非常に手順が多く、時間がかかる点に特徴があります。
契約を締結して終わりというわけにはいかず、株主総会での承認などを経て、最終的に吸収合併が成立するまでには、法務面での対応漏れに注意しながら慎重に進める必要があります。
吸収合併で必要とされる主な手続きは、以下のとおりです。
- 合併契約書の締結
- 合併契約書の事前開示
- 株主総会での承認
- 官報公告
- 株主を保護する措置
- 債権者保護の措置
- 吸収合併の効力発生日
- 登記手続き
合併契約書の締結
まず吸収合併を実行するための前提として、条件面などの合意事項を記載した「合併契約書」を当事者である会社間で締結します。
合併契約書は、合併当事者の存続企業、消滅企業それぞれの詳細、交付する金銭・株式などの内容、合併の効力発生日などが記載されるもので、合併の前提となる非常に重要な契約書です。
なお、合併契約書の締結は合併条件に関してすでに合意されている状況を作り出すため、事前に当事者間で合併条件に関して十分な協議を行うことが必要です。一般的には、契約締結に至るまでの当事者間での協議は非常に長い期間がかかります。
契約締結に際しては、それぞれの当事者の会社内での正式な意思決定・承認を経る必要があります。具体的には、当事者間で条件面の合意が取れた段階で、取締役会での承認の手順を踏んで初めて、合併契約書の締結が可能です。
合併契約書の事前開示
合併契約書の締結が完了しても、合併の手続きが終わったわけではありません。合併契約書の締結が完了したら、合併契約内容の事前開示書類の公開の手順が必要です。
合併は会社法上の取引であり、株主や債権者など会社に関連する関係者に対しても、承認を得るもしくは異議を述べる機会を与える必要があります。
この後の手続きで、株主総会決議や債権者保護手続などの手順がありますが、その前提として株主や債権者に合併に関する意思決定を行うための材料を提供するために事前に内容を開示することが求められます。このことから、合併契約内容の事前開示書類の公開が求められているでしょう。
特に債権者は株主とは異なり、会社情報を入手する権利が限られているため、事前開示書類は重要な情報源です。
株主総会での承認
吸収合併では、合併当事者である会社で非常に大きな組織変更が生じるため、原則的には合併契約書に定めた合併の効力発生日の前日までに、主総会の承認が必要とされます。
株主総会の承認決議は、通常の決議よりも決議の要件が厳格である「特別決議」が必要でしょう。合併は、企業のあり方だけでなく会計処理・税務申告などにも大きな影響があるためです。
株主総会の特別決議による承認とは、議決権保有株主の過半数を有する株主が出席し、出席株主の議決権の2/3以上が賛成した場合を決議要件とする決議です。株主は事前開示書類の内容や招集通知を見て、合併に関する意思決定を行います。
なお、一部要件を満たす吸収合併の場合は、例外的に簡易合併と呼ばれる簡略された手続きによる合併が認められるケースもあり、特別決議が求められないこともあります。
官報公告
吸収合併は、会社の事業内容や財政状態などに大きな変更を生じさせる行為であるため、会社の利害関係者である株主・債権者の双方に大きな影響を及ぼします。株主は株主としての権利に基づいて合併に関する意思を反映させられますが、債権者は株主に比べると権利が制限されているため、必要な情報を十分に入手できません。
吸収合併を実行する際は、単に手続きを経るだけではなく、債権者が吸収合併に関して十分に検討するための情報を提供することが担保されています。この債権者のための情報提供の観点から求められている手続きが、官報公告です。
吸収合併に関して決議する際は、債権者の権利保護を行うために、官報で合併を行う旨の公告を実施することが求められており、これを官報公告と呼びます。ここでは、貸借対照表などの計算書類の情報や合併の対価に関する情報などを記載する必要があります。
官報公告は口述の債権者保護手続きの一環です。しかし、官報で公告を行うことで債権者に個別に合併に関する催告を省略することが可能です。定款に定めている場合に、官報公告のほかに日刊新聞や電子公告などの方法も採用できます。
株主を保護する措置
吸収合併の承認は、株主総会の特別決議による承認といった厳格な意思決定の手順を要するため、多くの株主が承認しない限り、吸収合併が実行されることはありません。
しかし、特別決議といっても株主全員の承認が必要とされるわけではないため、株主総会で承認されているとはいっても、吸収合併を承認せずに反対している株主が存在する可能性があります。
こうした少数の反対株主の権利を保護するために、会社法では一定の手続きが設けられています。具体的には、反対株主の株式買取請求権と呼ばれる権利です。
反対株主の株式買取請求権とは、合併を承認せずに反対している株主に認められる保有している株式の買取を請求できる権利のことです。この権利により、投資している資本を回収するための手段を確保されます。反対株主にとっては、承認できない事業展開を行っている会社の所有者の地位から外れる選択肢が与えられるでしょう。
なお、株式の買取請求における買取価格は会社と反対株主の協議で決定されますが、協議で決定できない場合は裁判所により決定されます。
債権者保護の措置
会社における外部の利害関係者として重要なのが、会社に対する債権者です。債権者は、会社に対して金銭などの請求権を有している者であり、吸収合併のような会社のあり方が大きく変わる事象では、債権者の権利に関しても株主と同様に保護する必要があります。
しかし、債権者は株主とは異なり、吸収合併を決定する株主総会での決議に参加できないため、会社法では別途、債権者を保護するための手続きを設定しています。
具体的には、事前開示書類の公開や合併に関する公告や個別催告を行ったうえで、反対する債権者がいる場合、会社は弁済・担保提供・財産の信託といった方法で対応する必要があるでしょう。
まず、事前開示書類や公告・個別催告(債権者への個別の通知)によって、組織再編をする旨・会社の商号・計算書類に関する事項・異議を述べられる旨などを債権者に伝達し、吸収合併に関する判断材料を提供します。
そのうえで、特に異議を申し立てなかった債権者は吸収合併に同意したとみなされ、異議がある債権者は会社に対してその意思を示すことで、上述の個別の対応を求められます。
なお、吸収合併によって債権者の権利が害されることがない場合、会社による担保提供などの個別対応は不要です。これは、特に不利な状況になることがないケースでは、権利を保護する必要がないことから定められている対応です。
吸収合併の効力発生日
吸収合併は、契約締結・株主総会の特別決議・債権者保護といった手続きを経て初めて成立します。
会社法上の組織再編では登記が必要とされているため、登記日で効力が発生するとも考えられますが、吸収合併では登記が効力発生要件とはなっておらず、あくまでも契約書において効力発生日と定めた日に効力が発生するとされています。
登記の日付ではなく契約上の効力発生日も踏まえて、全体のスケジュールを想定し合併に関する契約書を締結する必要がある点に注意が必要です。
登記手続き
上記の効力発生日を経過したら、最後に吸収合併に関する登記を行う必要があります。具体的には、効力発生日から2週間以内に登記を行うことが必要です。
注意点は、吸収合併における存続会社の変更登記と併せて消滅会社の解散登記も必要である点です。会社組織に関する変更は、常に登記が必要となる点は注意しなければなりません。
なお、合併に関する登記申請における必要書類には、合併契約書・株主総会議事録・官報公告などを証明する書面や、委任状(司法書士に依頼する場合)などです。登記手続きは手数料が発生するうえに、合併時の登記は重要性も高いため、委任状を使用して登記手続きの専門家に依頼することが一般的です。
3. 吸収合併消滅会社の会計処理
吸収合併による消滅会社は、合併により会社が消滅します。会社が消滅するため、吸収合併の効力発生日の前日を決算日とした会計処理を行ったうえで最終の決算書を作成し、税務申告も行います。
合併により消滅するため、合併会社の会計処理とは異なるでしょう。消滅会社では合併自体の会計処理は発生しないものの、最終の決算書を作成するための会計処理が発生します。
消滅会社の決算公告
株式会社は決算公告を行う必要があり、消滅会社でもこの点は同じです。ここでは、吸収合併における決算公告を確認します。
事前開示情報の決算
事前開示情報として、消滅会社は直近の決算情報を開示しています。そして、吸収合併の効力発生によって消滅会社の最終の決算が確定するため、この決算では決算公告を行う必要があるでしょう。
消滅会社では最終の決算書を作成するために、決算に関連する会計処理を行い決算書を作成し、公告します。消滅したとしても、決算公告が必要となる点は注意が必要であり、併せて税務申告も必要です。
消滅後も5年間は決算公告が必要?
電子公告の方法で決算公告を行う場合、計算書類の承認後5年間を経過する日まで開示をする必要があります。この点、合併による消滅会社は消滅するために継続した開示が行えなくなり対応が問題となりますが、消滅会社の公告も含めて、存続会社が当該開示義務も継続します。
4. 吸収合併消滅会社と存続会社の手続きの違い
吸収合併では、存続会社と消滅会社と呼ばれる2つの当事者が存在します。それぞれの会社で手続きが異なるため、手続きの違いを把握しておく必要があります。ここでは、それぞれの手続きの相違点を確認しましょう。
事前開示情報の違い
吸収合併の必要な手続きである事前開示情報は、株主・債権者に対する意思決定情報として非常に重要です。主な事前開示書類の記載内容も吸収合併により受ける影響が異なるため、存続会社と消滅会社で記載内容が少し異なります。
合併対価の相当性に関する事項
事前開示書類で必要な事項の1つに、合併対価の相当性に関する事項があります。これは、吸収合併における買取対価の決定方法に関する開示です。合併における対価は、存続会社・消滅会社の企業価値の相違を前提に合併後の想定も考慮して決定されます。
存続会社にとっては、支払う金額であり合併後の財務諸表におけるのれん計上額などの会計処理・税務申告・確定申告に影響があり、消滅会社にとっては自社の売買価格として受け取る金額であるため非常に重要な要素です。その計算方法も実務上さまざまです。
合併の対価に関してどのような前提によって決定されたのか、意思決定のための参考情報として事前開示書類で開示します。株主や債権者は事前開示書類で合併対価の前提などを確認することで、意思決定のための重要な情報として利用可能です。
存続会社・消滅会社ともに合併対価の前提を開示しますが、消滅会社では合併対価に関して参考となる事項として、合併対価の決定方法の詳細を開示します。
なお、税務申告上、算出される合併対価は計算される税額にも大きな影響が生じるため、各事業年度の税金計算も想定しながら検討を行うことが重要です。
決算について
吸収合併における事前開示では、合併の相手企業の決算情報は合併に関する意思決定情報として非常に重要なものであるため、決算情報も開示が必要です。
開示される決算情報は、貸借対照表・損益計算書・株主資本や変動計算書などを含む計算書類であり、直近の決算期のものが開示されますが、存続会社と消滅会社では開示内容に大きな相違はありません。
株主への対応
吸収合併では、存続会社と消滅会社の双方で株主の合意を得る必要があります。ここからは、株主への対応手続きを確認します。
反対株主の株式買い取り請求
反対株主の株式買取請求権は、合併に反対する株主の投資回収の手段を確保するために設定されている手続きであり、存続会社の株主・消滅会社の株主それぞれに権利として認められています。
存続会社・消滅会社のいずれでも、吸収合併について株主総会の特別決議が必要となります。しかし、自身の意に反して吸収合併の決議が決定された場合は、株主が会社に対して株式の買取請求を行うことが可能です。
具体的には、合併の効力発生日の20日前から前日までの間に、買取請求を行う必要があります。
新株予約権買取請求
株主の株式買取請求と同様に、合併時に新株予約権を発行している場合は、新株予約権者には新株予約権の買取請求権が認められています。
消滅会社の新株予約権者にとっては新株予約権は当然に消滅するため、存続会社の新株予約権が発行される場合や、条件が異なる権利の発行となる場合は、買取請求が可能です。
登録株式質権者への通知と公告
登録株式質権者とは、株式に対して質権を設定しており、当該事項が株主名簿に記載されている者のことです。登録株式質権者は、株主と同様に合併によって大きく影響を受けます。官報公告や個別の通知により、合併に関する情報を開示することが必要です。
登録新株予約権質権者への通知と公告
登録新株予約券質権者とは新株予約権に質権設定・登録している者のことであり、登録株式質権者と近い存在です。登録株式質権者と同様に、合併により大きな影響を受けるため、公告などにより合併に関する情報を開示されます。
株券提供公告
株券提供公告とは、合併に際して保有している株券を提供することを開示する公告であり、吸収合併における消滅会社で必要となる手続きです。
株券不発行を定款で規定している会社はそもそも株券が発行されていないために必要性が生じません。株券発行をしている会社(消滅会社)では合併に際して発行している株券が消滅するため、株主にこの提供を依頼する必要があります。
なお、閉鎖会社と呼ばれる非公開会社(株式の譲渡が制限されている会社)であれば、公告や通知ではなく株主名簿に株券不所持の申し出がある旨を記載したもので、この手続きを代替できます。
吸収合併の効力発生日以降承継される権利義務
吸収合併により、消滅会社の銀行口座・固定資産・債権債務といった資産・負債などの権利義務が存続会社に引き継がれます。合併の効力発生により権利義務は移転しますが、銀行口座の名義のほか、実質的な承継が効力発生日以降になる権利義務があります。
社員の承継
吸収合併は、包括承継と呼ばれる組織再編の手法であるため、消滅会社の資産・負債やその他権利義務の全てが、存続会社に承継されます。そこには、金銭・モノだけでなく、取引先との各種契約・社員との雇用契約といった契約関係なども含まれるでしょう。
雇用関係も引き継がれるため、社員も合併の効力発生により引き継がれ、併せて社員の処遇や労働条件も、そのまま存続会社における社員の処遇などとして承継されます。
吸収合併で多く見られるケースとして、合併に反対する社員の離職の発生や、合併後の待遇面・環境面の変化により社員の退職が発生することがあり、起業の力の源泉ともいえる社員の維持は合併で注意する必要があります。このように、吸収合併は社員にも大きな影響を与える事象であるため、社員との関係を十分に考慮した合併条件を検討し設定することが必要です。
基本的に吸収合併は包括承継であるため、消滅会社の社員の処遇や労働条件は、そのまま維持されます。社員の労働環境を良好に維持するため、処遇や労働条件を存続会社と消滅会社で統一する場合は、別途、社員の処遇などを統一にするための手続きが必要です。
社員は会社の重要な資産であり競争力の源泉です。社員が合併後も継続して勤務し続ける環境を設定し、社員の離職を防止するため、効力発生の後に実施するもしくは合併前に消滅会社の社員に関連する各種制度に関して、合併後を想定して十分に整理しておく必要があります。
不動産の移転登記
吸収合併により消滅会社の不動産も、存続会社に承継されます。そして、存続会社への承継のタイミングは合併の効力発生日であり、それ以降は存続会社保有の不動産となります。
しかし、不動産の権利移転には移転登記が必要です。効力発生日の後に不動産の移転登記を行い、登記上も不動産を消滅会社から存続会社に移転する必要があります。
銀行口座など財産の名義変更
合併の効力発生により、消滅会社の銀行口座も存続会社に承継されます。しかし、効力発生日時点では、銀行口座の名義は消滅会社のままのため、合併の効力発生日以降に銀行口座の名義を存続会社の名義に変更をする必要があります。
実務上、消滅会社から引き継ぐ銀行口座を継続して利用するためには、銀行口座名義の変更が必須です。この点に注意が必要でしょう。存続会社で銀行口座を継続して使用するためには、銀行口座を存続会社名義にしておかないと、各種振込などの場面で対応が困難になるケースがあるためです。
営業関係の回収・支払・経費精算や税務申告といった場面で使用する銀行口座のケースもあるため、銀行口座の名義変更は重要な対応事項です。
なお、銀行口座が増えすぎるようなケースでは、手数料面でのメリットを考えて、逆に合併後に保有している銀行口座の整理を行い、より効率的な資金管理方法を検討することもあります。
銀行口座は金融機関との取引関係の基礎にもなる事業運営上の重要な管理ポイントであるため、使用する銀行口座の設定に注意が必要です。
事後開示は存続会社の義務
吸収合併の手続きには、効力発生日以降にも必要となる手続きとして、事後開示があります。合併前には事前開示書類により意思決定のための情報提供を行いますが、事後的な合併手続きの確認のために事前開示書類と類似する資料の開示が求められています。
具体的には合併の効力発生日から6カ月間、法定の記載事項を開示する手続きであり、合併無効の訴えを提起するかどうかの判断材料として提供するものです。
消滅会社に関する書類
事後開示における開示書類は合併無効の訴えのための情報提供の趣旨を持つため、合併でも状況を把握できる情報が開示対象です。
具体的には、合併の効力発生日・吸収合併消滅会社における差止請求・反対株主の買取請求・債権者の異議といった手続きの経過・吸収合併消滅会社から承継した資産や負債の内容などが含まれます。
このように、吸収合併消滅会社と存続会社にはそれぞれ異なる手続きが必要とされるため、不備のないよう注意しなければなりません。それぞれの手続きには専門的な知識も必要とされるため、M&A仲介会社やM&Aアドバイザリーなど専門家のサポートを受けながら進めていくことをおすすめします。
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5. 吸収合併消滅会社の手続きのまとめ
この記事で説明したように、吸収合併消滅会社では、存続会社と同じようにさまざまな手続きが必要です。吸収合併で必要とされる主な手続きは、以下のとおりです。
- 合併契約書の締結
- 合併契約書の事前開示
- 株主総会での承認
- 官報公告
- 株主を保護する措置
- 債権者保護の措置
- 吸収合併の効力発生日
- 登記手続き
上記以外にも、合併により消滅する会社がある特徴から、株券提供の公告など消滅会社ならではの手続きも必要です。
吸収合併は、合併当事者である存続会社と消滅会社の間の交渉・合意のみならず、株主・債権者を対象とした手続きも必要となり、効力発生や全体スケジュールも考慮した形で計画を策定することが重要です。
吸収合併消滅会社の手続きは、法的な対応に合わせて会計処理面や税務申告面で検討するなど、非常に広範な検討事項があります。
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