2022年08月11日更新
会社合併したら株価は上昇する?下落する?【事例あり】
M&Aによる会社合併をすると、株価に大きな影響を及ぼすことがあります。株価の上昇や下落は、会社合併の経緯・合併後の企業の業績などによって変動する仕組みです。本記事では、合併の目的やメリット・デメリットをはじめ、合併による株価変動を、事例も紹介しながら解説します。
1. 会社合併とは?
会社合併の種類
新設合併
新設合併では、新たに会社を設立したうえで、被合併会社はすべて新設会社に統合されます。合併後に被合併会社はすべて解散する仕組みです。新設合併は、主に複数の子会社同士を合併する際に用いられます。多くの手間やコストがかかるため、一般的な合併手法としてはそれほど選択されません。
吸収合併
吸収合併は、一方の会社にもう一方の会社が統合される手法です。消滅会社は解散します。主として、親会社が子会社を統合する際などに用いられる手法です。
必要な手続きやコストなどの面で新設合併よりもメリットが大きく、デメリットが少ないです。多くの合併ケースでは吸収合併が選択されています。
新設合併の目的
新設合併にはさまざまな目的やメリットがありますが、代表例は以下のとおりです。
- 競合と組んで事業規模を拡大する
- 子会社間の経営効率化
- 平等な合併をアピール
それぞれの目的・メリットを順番に見ていきます。
競合と組んで事業規模を拡大する
合併により同業の競合企業と組めば、業界のシェアを拡大できます。特に新設合併では、類似する規模の企業同士で組むケースが多く、ライバル企業の減少により業界での順位を急速に向上させられるでしょう。
商品の大量仕入れや大量生産なども可能となるほか、商品の販売網も広がるなどのスケールメリットも得られます。
子会社間の経営効率化
特に新設合併では、グループ再編の手段として子会社間の合併を実施するケースが多いです。これにより効率的な経営の推進が可能です。
各事業が統合され組織がシンプルになると、意思決定がスムーズに進み経営スピードを上げられます。そのほか、従業員の一体感向上や管理システム費の削減などを図れる点もメリットです。
平等な合併をアピール
新設合併は、吸収合併よりも多くの手続きや費用が必要ですが、平等な合併であることを世間にアピールできる点がメリットといえます。特に競合する大企業同士の合併では、経営陣の反対や従業員の不満を減らすためにも、新設合併を採用するとスムーズに合併を進めやすいです。
吸収合併の目的
合併では主に吸収合併が多く用いられますが、吸収合併を行う目的・メリットは以下のとおりです。
- 親子会社間のシナジー効果
- 新事業立ち上げのショートカット
- 事業承継としての合併
それぞれの目的・メリットを順番に見ていきます。
親子会社間のシナジー効果
吸収合併では、親会社が子会社を吸収合併するケースが多く見られます。親会社からすると、子会社の吸収合併により、さらに直接的な関係のもとで事業に関与してシナジー効果を得ることが可能です。
ここでは人材面や技術力をはじめ、さまざまな側面から事業シナジーを期待できます。
新事業立ち上げのショートカット
新事業をゼロから立ち上げる場合、多くの時間と費用がかかるために大きなリスクが伴います。その一方で、すでに軌道に乗っている事業を吸収合併すれば、新事業を育てる手間を大幅にショートカットができるでしょう。
これは、アメリカで広く行われている経営戦略です。もともと日本では、それほど活発ではありませんでした。しかし、近年では、日本でも積極的に吸収合併を行って新事業を手に入れる企業が増えています。
事業承継としての合併
吸収合併は、事業承継としても活用できる手法です。吸収合併の場合、合併会社は被合併会社の権利義務をすべて引き継ぐ必要があります。もちろん、債務や従業員も引き受けます。被合併企業の経営者からすると、安心して経営を引退できるでしょう。
以上、会社合併のメリットや目的を紹介しました。会社合併は企業の掲げるさまざまな目的を達成するために行われるM&A手法です。しかし、失敗するリスクも存在するため、慎重に実施を検討しなければなりません。
会社合併を含むM&Aでは、自社が所属する業界の知識だけではなく、M&Aに関する専門知識・実務能力も求められます。スムーズに合併を済ませて事業を推進していくためにも、専門家からサポートを受けることがおすすめです。
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2. 会社合併による株価は上がるのか?下がるのか?
合併時に消滅会社の株主に渡される株式の数は、存続会社と消滅会社の合併比率によって決定されます。存続会社の株価は、合併のメリットが市場で評価されれば上昇し、市場の期待値よりも業績が上がらなければ下落する仕組みです。
ここでは、合併で株価が上がるメリット・デメリットや、株価変動に影響を与える市場心理を解説します。
株価が上がるメリット・デメリット
合併で株価が上昇すれば、企業からするとさまざまなメリットが得られます。株価上昇のメリットを得るために、経営者はさまざまな手段を用いて株価を上げようとしますが、株価上昇にはデメリットも存在するため注意が必要です。
株価上昇によるメリットは、以下のとおりです。
- ブランド力の向上
- 資金調達のしやすさ
株価上昇によるデメリットは、以下のとおりです。
- 実態に見合わない株価上昇
- 会社売却がしにくくなる
上記のメリット・デメリットを詳しく解説します。
メリット:ブランド力の向上
株価が上昇すると、会社の信用力や知名度も向上します。ブランド力が高くなれば、商品の価格競争に巻き込まれることなく優位性を保ちやすくなるでしょう。これらに伴い、優秀な人材の確保がしやすくなるメリットも期待できます。
メリット:資金調達のしやすさ
株価が上昇すれば、新たに株を発行して市場から資金調達しやすくなります。信用力が高まるため、銀行からの融資も受けやすくなるでしょう。
株価が順調に上昇すれば、会社自身から資金調達に動かなくても、さまざまな投資機関から積極的に投資したい話を持ちかけられることもあります。
デメリット:実態に見合わない株価上昇
株価は上がりさえすれば良いわけではありません。会社の成長と関係ない要因で株価が上がると、かえって将来的に株価が大きく下がりかねません。
例えば、業界自体がバブルを迎えていたり、有名な投資家が会社の株を大量に買い進めていたりする場合などです。このように、会社の業績に関係なく大きく株価が上がるケースも見られます。
しかし、上記のケースでは、市場の評価が冷静さを取り戻した途端に、以前の株価よりも下がってしまうほどの下げ幅を見せる場合があるでしょう。かつては、企業間で株価を高く釣り上げるためのテクニックが流行した時期もありました。
リスクの高さが認識されたこともあり、株価上昇テクニックは一時期ほど積極的に用いられなくなっています。
デメリット:会社売却がしにくくなる
株価が上昇して割高感が生まれると、会社の売却を検討したときに買い手が付きにくいおそれがあります。会社売却はタイミングが重要です。タイミングによっては株価上昇がデメリットとなる場合もあります。
アメリカでは、会社を買収して育て、ある程度大きくなったら売却し、さらに収益性の高い会社を買収する、シリアルアントレプレナーが浸透しています。近年は、日本でも増加しつつある状況です。
株価が変動する市場心理
合併による株価の変動は、市場参加者の心理状態によっても上下動をします。
- 株主の期待・不安
- 世間的な見識・イメージ
- 合併までの出来事
上記の株価が変動する要因を解説します。
株主の期待・不安
合併による株価変動は、株主が合併の将来性にどれだけ期待(または不安視)しているかに影響されます。合併直後は、合併行為自体への期待で、株価が上昇するケースが多いです。
ただし、合併効果がなかなか目に見えて発生しなければ、株主は将来性への不安から株を売りはじめます。合併効果が出るまでに時間のかかる業種もあるため、場合によっては、企業が株主に対して経営プランを明確に示す必要があります。
たとえ業績が伸びていなくても、明確なプランを示せれば、将来性への期待から株価が上昇するケースもあるでしょう。
世間的な見識・イメージ
合併では、さまざまな専門家や投資家が見解を表明します。その見解をもとに、投資家が分析と予想を繰り返して株価が上昇していく仕組みです。
合併による広告宣伝・商品や店舗などの変化から、投資家が良いイメージを受け取れば株価は上昇します。企業側は、投資家に合併に対して良いイメージを持ってもらえるよう、宣伝戦略を工夫しなければなりません。
合併までの出来事
合併後の株価には、合併までの経緯も大きく影響します。特に競合企業同士の合併や大企業同士の合併では、交渉が長引いたり最終的に決裂したりと、問題も多く生まれやすいです。
合併交渉の過程では、経営陣同士の対立・株主の反対だけでなく、社内従業員の間でも合併に対する考え方の違いから派閥が生まれるケースもあります。こうしたネガティブな出来事が外部に伝われば、たとえ合併契約が成立しても、投資家には不安が残り株価に悪影響を与えます。
3. 株主のための会社合併の知識
会社合併は会社間のみで進められる行為ではありません。株主としても、合併に賛成か反対か意思表示する必要があります。
ここでは、合併の流れ・スケジュールを紹介しながら、株主が合併時に知っておくべきことをまとめました。
合併の流れ・スケジュール
企業が吸収合併を行う場合、一般的に以下のようなスケジュールで進行します(3月中旬から準備に着手する場合)。合併を行う会社同士で合併契約を締結する前に、取引先・金融機関・債権者などにあらかじめ合併を行う旨を説明する段取りです。そして、取締役会で合併契約締結の承認が得られれば、合併契約を締結します。
合併契約締結後は、合併の内容を告知する事前開示書面を、存続会社と消滅会社の本店に備置しなければなりません。債権者に合併行為を周知するために、官報公告・電子公告などに掲載したり個別に催告したりします。
合併を行うには株主から承認を得る必要があるため、株主総会への招集通知を送らなければなりません。株主総会で承認されれば、合併の効力発生日に合併が成立します。効力発生日前日までに、債権者は異議申し立ての実施が可能です。合併に反対する株主は、株式の買取請求権を行使できます。
その後は効力発生日を迎えたら、存続会社は変更登記申請を行う段取りです。一方の消滅会社は解散登記申請を行って、会社を清算します。
日程 | 存続会社 | 消滅会社 |
3月中旬 | 準備(合併契約書の準備・債権者への説明) | 準備(合併契約書の準備・債権者への説明) |
4月上旬 | 吸収合併契約締結の承認 | 吸収合併契約締結の承認 |
4月中旬 | 吸収合併契約の締結、官報公告の掲載申し込み | 吸収合併契約の締結、官報公告の掲載申し込み |
4月下旬 | 官報公告の掲載、債権者への個別催告、契約書などの準備 | 官報公告の掲載、債権者への個別催告、契約書などの準備 |
5月上旬 | 株主に株主総会への招集通知発送 | 株主に株主総会への招集通知発送 |
5月下旬 | 株主総会で吸収合併契約の承認決議 | 株主総会で吸収合併契約の承認決議 |
6月上旬 | 債権者異議申述期間満了、吸収合併の効力発生 | 債権者異議申述期間満了、吸収合併の効力発生 |
6月上旬以降 | 合併の登記申請~合併完了 | 解散登記、清算手続き |
会社合併の際には通知や告知がある
合併を行う企業は、株主総会で株主から承認を得る必要があります。合併を行う告知は、官報公告や電子公告の形で周知されるほか、株主総会への招集通知は1週間前までに届く仕組みです。上場企業の場合や電子投票などの場合は、2週間前までに届きます。
会社合併の際には買取請求の期間がある
合併に反対する場合、会社に対して株式の買取請求ができます。請求期間は、企業から買取請求ができる旨の通知が届いてから合併の効力発生日前日までです。
会社合併における株価算定方法は複数ある
会社合併時には、株価算定が重要な役割を担います。株価の算定は合併比率を決定する要因となるため、株主の会社では、いかなる方法で合併の株価を算定するのか把握しておくと良いでしょう。
ここでは、会社合併を含むM&Aの代表的な株価算定方法をまとめました。
- DCF法
- 市場株価法
- 純資産価額法
DCF法は、企業の将来性に注目した算定方法です。将来性を判断材料に用いるため、合併の株価算定方法の中でも合理的といえるでしょう。会社側の主観的・恣意的な算定が行われやすい点がデメリットです。
会社が実態から離れた事業計画を作成すれば、算定される株価は現実的でなくなります。DCF法を用いる際は、公平かつ綿密な事業計画が作成されていることが前提として求められます。
市場株価法は、過去数カ月間の株価平均を算定したうえで、合併時の理論株価とする算定方法です。客観性の高い株価を算定できますが、公開企業にしか適用できないデメリットもあります。ほとんど株式を公開していない中小企業の合併では、採用できないケースが多いため注意が必要です。
純資産価額法では、純資産額をもとに株価を算定します。株価の計算が簡単であり中小企業でも採用しやすい点がメリットです。しかし、将来の収益性を株価に加味できないため、合併時の株価算定方法としてはそれほど適していません。
合併比率の決定と株価
会社合併をする際、存続企業が消滅企業に自社株式を交付します。両社間には収益やブランド力の差があるため、これを考慮した株式数を決定します。つまり、消滅企業側は存続企業と同数の株式を受け取れないでしょう。
株式数を決める比率のことを合併比率といいます。双方の株主が保有する財産に変動が生じないように決定するものです。両社の株価を基準とし、合併後の株主構成などを微調整します。合併比率の決定には専門知識が必要です。双方の経営者だけで決めるのは非常に難しいため、M&Aの専門家に依頼するとよいでしょう。
M&A総合研究所では、会社合併に関する知識・経験が豊富なM&Aアドバイザーによる丁寧なサポートを提供しています。料金体系は成約するまで完全無料の「完全成功報酬制」です(※譲渡企業様のみ。譲受企業様は中間金がかかります)。無料相談を随時受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。
4. 会社合併の実例から見る株価の推移
会社合併の前後における株価の推移について、実際の会社の実例をもとに紹介します。今回紹介するのは、日本有数の大企業である以下の会社の実例です。
- 日産
- ソフトバンクグループ
- 楽天
- 三越伊勢丹ホールディングス
- ユニー・ファミリーマートホールディングス
- RIZAPグループ
- J・フロントリテイリング
- 新日鐵住金(現・日本製鉄)
- JXTGホールディングス
- 出光興産
それぞれの実例を詳しく見ていきましょう。
①日産
2018年、日産とルノーの合併に関するニュースは大きな話題となりました。2018年3月に日産とルノーが合併交渉する旨のニュースが世に出ると、日産の株価はジリジリと下がり始めました。
ルノーが日産の株式議決権を多く持つ点や、ルノーの筆頭株主はフランス政府である点などから、日産とルノーの合併によって、日産はほぼフランスの企業といえる状態にあります。
市場が日産とルノーの合併に対して低い評価を下す中で、日産会長・ルノー社長であったゴーン氏が金融商品取引法違反で逮捕されたために、株価は一段と下がりました。
今後もルノーが日産に対する支配力を維持するようであれば、日産の株価は下がり続ける可能性があります。その一方で、ゴーン氏の逮捕により日産が生まれ変わると評価されれば、将来的に株価が持ち直す可能性もあるでしょう。
いずれにしても現在の事態が収まるまでは、日産の株価は下落傾向が続くと予想されています。
②ソフトバンクグループ
ソフトバンクグループは、これまで多くの買収や合併を行ってきた会社です。ITバブルのピーク時には及ばないものの、2018年にはITバブル崩壊後の高値を更新し、依然として上昇する気配を見せました。
2014年にはイー・アクセスがウィルコムを吸収合併してワイモバイルとなり、Y!mobileのサービスが開始します。これに伴い、2015年にはソフトバンクモバイルがソフトバンクBB・ソフトバンクテレコム・ワイモバイルを吸収合併して社名をソフトバンク株式会社に変更しました。
2018年12月のソフトバンク株式会社の上場に伴い、親会社であるソフトバンクグループの株価も上昇しています。
③楽天
楽天市場や楽天ゴールデンイーグルスなどで知名度の高い楽天です。経営面では、買収や合併によって急成長してきた企業としても有名となっています。
楽天の買収や合併は、主に楽天市場とのシナジー効果を狙った事例が多いです。2014年には、宿泊予約サービスである楽天トラベルが楽天市場とのシナジー効果を高めるために吸収合併されています。
フリマアプリのフリルを運営していたFablicも、楽天のフリマアプリであるラクマと統合された後、2018年7月に吸収合併されました。しかし、上記に挙げた楽天の買収・合併は株価上昇にはつながらず、2019年初頭まで下落傾向が続きました。
昨今の楽天は業績のほぼ半分を金融関連が占めており、主力事業である楽天市場が伸び悩んでいます。さまざまな分野に事業が分散しており、買収や合併による楽天市場とのシナジー効果が最大限に得られない状態となっていることが一因です。
④三越伊勢丹ホールディングス
百貨店の三越と伊勢丹は2008年に経営統合し、2011年には三越を存続会社として吸収合併を行いました。しかし、合併のシナジー効果はそれほど発揮されず、売上高は百貨店業界で3位にまで低下しています。
訪日外国人のインバウンド消費・日本経済の堅調さなどが影響して合併後の株価は一時的に上昇しました。しかし、国内需要の低迷やインバウンド消費が落ち着いたことで株価は再び下落している状況です。
2019年以降は、合併時よりも低値の株価となる時期もあるなど三越伊勢丹の業績は厳しく、今後も株価は下落するのではないかと推測されています。
⑤ユニー・ファミリーマートホールディングス
コンビニエンスストアのサークルKとサンクスは、2001年に経営統合し、サークルKサンクスとなった後に合併しています。2016年9月には、ファミリーマートがサークルKサンクスの親会社であるユニーホールディングスを吸収合併しました。
これにより、2016年9月に7,000円前後だった株価は、2018年11月には16,000円を超えています。2017年にはユニー・ファミリーマートホールディングスとドンキホーテホールディングスが提携したことで、株価はさらに上昇しました。
その後は、ユニー・ファミリーマートホールディングスの筆頭株主である伊藤忠商事が、ユニー・ファミリーマートホールディングスの株を買い増しています。これらの要因によって株価は大きく上昇しました。
しかし、ユニー・ファミリーマートホールディングスの業績自体が株価に見合った成果を上げていたわけではありません。
コンビニ業界全体が厳しい状況の中で、ユニー・ファミリーマートホールディングス(現在はファミリーマートに社名を変更)も新たな戦略を次々と打ち出し続けていますが、依然として厳しい状況が続いています。
⑥RIZAPグループ
トレーニングジム運営などのRIZAPグループは、主力事業のRIZAPトレーニングで会員数・店舗数ともに大幅な伸びを見せています。株価は2017年末まで驚異的な勢いで上がっていきました。RIZAPグループも、これまでさまざまな企業に対して合併や買収を行ってきた会社です。
買収や合併を行ってきた企業の中には、女性用補正下着販売・インテリア雑貨製造卸および小売・エンターテインメント商品小売・アミューズメント事業など、一見すると本業とは関係ないと思われる事業が多く見られます。
買収や合併を行ってきた企業の中には、業績の良くない企業や赤字企業も多くあります。このような経営状態の良くない企業を再建する前に買収や合併を繰り返してきたことから、結果として業績が大きく落ち込みました。
一連の買収・合併の失敗がうわさされるようになってから株価は急速に下落し、2017年末のピークから2018年末の1年間にかけて5分の1程度まで株価が落ち込みました。2020年6月現在も下落傾向が続いています。
買収や合併では事前の統合計画や統合後のマネジメントが重要です。RIZAPグループは、会社の成長スピードを重視して、負ののれんによる数字上のテクニックに走りすぎたため、結果的にほとんどの買収・合併は失敗となりました。
しかし、主力事業のトレーニングジムは好調であることから、今後どのように会社を立て直していくか大きな注目が集まっています。
⑦J・フロントリテイリング
2007年、大丸と松坂屋が経営統合してJ・フロントリテイリングが誕生しました。もともと百貨店業界の売上高は、1990年代から下がり続けています。
業界3位に陥落して不振が続く三越伊勢丹ホールディングスに対して、J・フロントリテイリングは、2012年頃から経営状態が上向き、大きな上下動を繰り返しながらも、2018年初頭までは株価が上昇傾向にありました。
2018年以降の株価は下落傾向にありますが、2019年も増収増益を達成して三越伊勢丹を抜いています。J・フロントリテイリングは、近年は不動産事業にも注力して脱百貨店路線も視野に入れており、今後の事業展開に注目が集まっている状況です。
⑧新日鐵住金(現・日本製鉄)
新日鐵住金は、2012年の新日本製鐵と住友金属工業の合併により誕生した会社です。鉄鋼業界の再編が進み、リーマン・ショックの影響なども相まって合併に踏み切った新日本製鐵と住友金属工業ですが、合併後も鉄鋼業界は厳しい環境が続きました。
とはいえ、合併後の新日鐵住金は、中国の存在や原料の高騰などの危機を乗り越え、株価も大きく崩れることなく推移しています。2018年5月に新日鐵住金は社名を日本製鉄に変更すると発表しました。グローバル規模の変化にも柔軟に対応する姿勢を見せています。
しかし、韓国の徴用工訴訟問題や設備の老朽化によるトラブルなど難しい課題を抱えており、最近の株価は下落傾向にある状況です。国内需要の落ち込みやこれ以上国内での再編ができない状況において、今後どのように外国企業とのM&Aを進めていくかが株価に大きく影響を与えていくものと見られています。
⑨JXTGホールディングス
2017年、JXホールディングスの子会社であるJXエネルギーが東燃ゼネラル石油を吸収合併したことで、JXTGエネルギーが誕生しました。これにより、親会社であるJXホールディングスの社名もJXTGホールディングスに社名を変更しています。
JXTGホールディングスに変更されて以降、2018年10月ごろまで株価は一時的に上昇しました。主要事業であるガソリンスタンドでの燃料油販売は国内需要の低下や燃料費の高騰で厳しい状況ですが、国内だけでなく外国企業への積極的な買収も進めていました。
ただし、2019年以降は株価の下落傾向が続く状況にあります。とはいえ、国の後押しもあることから、業界で国内トップであるJXTGホールディングスは、業績も株価も今後まだ伸びていく可能性が十分にある会社です。
⑩出光興産
2019年4月、出光興産は、経営統合により昭和シェル石油を完全子会社化しました。完全子会社化に至る経緯を見ると、長らく出光興産の創業家が反対してきたことで統合の話は停滞していました。
最終的には出光創業家が賛成に転じたことで状況が一変し、統合の話がまとまったことで、両社の株価は一時的に上昇しています。
業績の好調さと合併による経営効率化の期待もあって、両社の株価は上昇しました。しかし、合併後には出光興産の創業家に対する処遇の問題など不安要素が残されていたこともあり、2018年終わり頃から下落傾向が続いている状況です。
現在はJXTGホールディングスの一強状態ですが、昭和シェル石油と出光興産の統合に関する不安がすべて解決されて石油業界の競争に加われば、業界の健全化が進むと期待されています。
5. 会社合併による株価のまとめ
本記事では、合併による株価の変動について解説しました。会社合併とは、2社以上の企業を統合するM&A手法のことです。権利義務を引き継ぐ存続会社と合併後に解散する消滅会社に分かれます。
合併の種類には吸収合併と消滅合併がありますが、大半の企業が吸収合併を採用している状況です。合併の目的には、事業規模の拡大・事業シナジー効果の獲得・経営の効率化などが挙げられます。
合併によって株価が上がると、ブランド力や信用力が上がり資金調達がしやすくなりますが、合併によって株価が上がるわけではありません。株主の期待や不安・投資家の見識やイメージ・合併前後の出来事などによって、株価は上下動をします。
今回は実例として、企業の合併前後の出来事および株価の推移を紹介しました。合併の経緯・合併後の業界状況・企業の業績などによって、株価の推移はまったく異なった結果を見せています。たとえ好条件で合併したとしても、必ずしも株価が上がるとは限らないことがわかります。
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