2024年11月24日更新
学校法人・専門学校のM&A・事業承継の動向!事例や価格相場を解説
学校法人・専門学校では、様々な理由によりM&A・事業承継が行われています。学校法人・専門学校のM&A・事業承継は、一般企業と異なる点が多いです。当記事では、学校法人・専門学校におけるM&A・事業承継のスキームや最新動向を解説します。
目次
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継に関する基本知識
- 学校法人・専門学校の業界動向
- 学校法人・専門学校がM&A・事業承継を行う理由
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行うメリット
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継スキーム
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継の案件例
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継の事例
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継の価格相場
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行う流れ
- 学校法人・専門学校がM&A・事業承継を成功させるには?
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継におすすめの相談先
- 学校法人・専門学校のM&A・事業承継まとめ
- 学校法人・専門学校業界の成約事例一覧
- 学校法人・専門学校業界のM&A案件一覧
1. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継に関する基本知識
近年、少子化などの理由により、学校法人・専門学校の経営環境は厳しく、その状況を少しでも打破するために学校法人・専門学校の業界ではM&A・事業承継が盛んに行われている状況です。
この記事では、学校法人・専門学校のM&A・事業承継に関する事例や業界動向、相場価格などについて解説します。
学校法人・専門学校とは
学校法人とは公益法人の1つで、私立学校の設置を目的として設立される法人をいいます。設立できる私立学校は、小学校・中学校・高等学校・大学などです。義務教育を含めた学校の種類は学校教育法第1条で定められ、俗に「一条校」と呼ばれます。
一方、専門学校とは、学校教育法が定める正規の学校で、教育施設である専修学校のうち専門課程を置いている専修学校をいいます。
専門学校は、学校教育法第1条に規定がなく、俗に「準一条校」と呼ばれ、高校を卒業後、就職する前における専門分野の就学や特定の技能を修得するための場です。
学校法人・専門学校は、株式会社などの営利組織とは異なり、以下の特徴があります。
- 許認可が厳しいこと
- 制度の規制を受けること
- ガバナンス体制が特殊であること
- 収益が学生数によって影響を受けること
許認可が厳しいこと
学校法人・専門学校は、他の業種と比べて許認可が厳しくなっています。学校教育の事業は社会的に非常に重要であるため、高い公共性と安定性が求められるからです。
許認可を得るためには文部科学省などの所轄官庁に許可・指導・監督を受けなければなりません。学校法人・専門学校を設立する際は寄付行為で設立し、法令で定めた手続きに従って許認可を得る必要があります。
制度の規制を受けること
2つ目の特徴は、制度の規制を受けることです。学校法人・専門学校は、ある程度の自主性が許容されています。
しかし、教育水準を維持するため、学校制度の厳格な規制に従う必要があるのです。例えば、最低限の教員数を確保すること、学校の新設・新規学部の新設などに許認可が必要なことなどです。
ガバナンス体制が特殊であること
学校法人・専門学校の教育事業は、高い公共性が求められるため、広い意見を反映させて運営を行う必要があります。学校法人の最高意思決定機関である理事会、学校法人の監査を行う監事、理事会の諮問機関である評議員会の設置が義務付けられています。
なお、理事会で予算などの重要事項を話し合うときは、理事長は事前に評議員会に意見を聞かなければなりません。
収益が学生数によって影響を受けること
4つ目の特徴は、収益が学生数によって影響を受けることです。学校法人・専門学校における収益の約70%は、学納金といわれています。つまり、学生数によって収益が変動するため、学生数を確保することが重要です。
一条校と準一条校の相違点
一条校である学校は、学校教育法第1条に則して運営される教育機関です。日本人のほとんどが社会生活を送るために必要な知識を、小児から10代、20代初めまでの間に習得する場所になります。
準一条校である専門学校・専修学校は、基礎的な教養課程を終了した人が、より専門的な知識を得るために通う学校と定義することが可能です。それ以外の各種学校は、専門分野に重点を置いた教育の場所になります。
学校法人・専門学校の現状
ここでは、学校法人・専門学校の現状を詳しく紹介します。
顧客・消費者(学生)数の推移
文部科学省の「学校法人を取り巻く現状と課題等について」によると、18歳の人口は、1992年の205万人をピークに減少しており、2009年~2020年までは120万人前後と、ほぼ横ばいで推移しているものの、ここ10年間で約40%減少している現状です。2040年には、約88万人まで減ると予想されています。
文部科学省によると、2022年度の大学(学部)進学率が56.6%と過去最高を記録しました。近年は、男女とも進学率は上昇傾向にありますが、女性の上昇幅が大きい状況です。
時代のニーズに沿った学部(IT、環境、医療福祉など)の新設、留学生の受入れ増加、短期大学の減少などの理由により、全体の学生数は維持されています。
参照:文部科学省「学校法人を取り巻く現状と課題等について」(令和元年)
文部科学省「大学等進学者数に関するデータ 関係」
教員数の推移
大学における教員数は、学生数の増加とともに教員数も増加しています。実際に、2019年には18万5,918人だったのが、2022年には18万8,842人まで増加しています。
教員数の増加は、大学の増加との関連も大きいですが、授業のコマ数の増加や、学部・学科の細分化による増加も理由として挙げられるでしょう。
文部科学省の「令和元年度学校教員統計調査」では、大学教員の平均年齢は上昇しており、2019年では49.4歳でした。大学の給与水準は、月額の平均が47万円前後ですが、月額25万円~55万円、65万円以上の給与の教員数が増加傾向にあります。
近年は、学部新規卒業者の割合や官公庁からの転職者が減少傾向であり、博士課程を修了したポストドクターや他の職業を経験した人、他の職業を経験し博士課程を修了した人、臨床医など、大学側も幅広い採用を行っている現状です。
参照:文部科学省「令和元年度学校教員統計調査」
文部科学省「学校基本調査-令和5年度 結果の概要-」
競合の動向
顧客・消費者(学生)が、学校法人・専門学校のブランドや立地条件、教育内容などによって、学校を選択しているケースが強まっています。学校法人・専門学校でも、競争が厳しくなっています。
定員割れの大学の割合は1990年代より急激に上昇し、近年は約45%に達するなど、供給過剰です。日本私立学校振興・共済事業団の「私立大学・短期大学等 入学志願動向」(2021年度)によると、定員割れしている私立大学が、集計対象の半数近い46.4%にあたる277校となっています。
今後は、新しい時代のニーズに応える学部・学科の見直し、学校独自の教育活動、経費削減などの経営効率化を図る必要があるでしょう。短期大学は、学生の4年制大学への進学志向によって、定員割れは約65%に達するなど学校数も急速に減少しており、非常に厳しい市場環境です。
M&A・事業承継における特徴
学校法人・専門学校のM&A・事業承継は、株式会社などの一般的な法人とは異なる部分があります。ここでは、以下の特徴・相違点を見ていきましょう。
- スキームが一般的なM&A・事業承継と異なること
- M&A・事業承継による効果が遅れたり、タイムラグが生じたりすること
- M&A・事業承継の対象は私立学校が中心
スキームが一般的なM&A・事業承継と異なること
1つ目の特徴は、M&A・事業承継のスキームが一般的なM&Aと異なることです。学校法人・専門学校には、株主のような出資者は存在しないため、理事長や理事を交代することで対象とする学校法人・専門学校の経営権を取得します。
M&Aにより理事長や理事を交代する場合、登記変更や届け出は必要ですが、所轄官庁に許可を得る必要はありません。理事の変更は、一から学校法人・専門学校を立ち上げる資金調達・人材確保などにかかる時間と労力を省けます。
学校法人・専門学校間の合併を行う場合は、理事における3分の2以上の同意、評議員会の意見聴取、所轄官庁への合併認可が必要です。吸収合併は、知名度の低い学校がある程度有名な学校を吸収合併し、ブランド力を高めて生徒数の増加につなげる目的などで行います。
事業譲渡は、既存法人をM&Aにより事業譲渡させ、買手の法人が新経営権を得るために行われるM&Aスキームです。
M&A・事業承継による効果が遅れたり、タイムラグが生じたりすること
2つ目の特徴は、M&Aによる効果が遅れたりタイムラグが生じたりすることです。収益の約70%が学納金である点は先ほど紹介しましたが、その学納金を納める学生は毎年4月にしか入学しません。
つまり、学校法人・専門学校がM&Aを行ったり新規学部を設けたりしても、効果が出るのは次年度の4月以降です。したがって、M&Aを行ってもすぐに効果は出ず、タイムラグが生じます。
M&A・事業承継の対象は私立学校が中心
多くの日本人が通う一条校は、公立学校・私立学校です。私立学校は、「私立学校法」に則して運営され、M&A対象は私立学校が中心になります。
準一条校である専門学校や専修学校も私立が多いため、学校法人のM&Aは、経営が苦しい教育機関における買収の面が強い傾向が見られるでしょう。
2. 学校法人・専門学校の業界動向
次は、学校法人・専門学校の業界動向に関して以下の5つを紹介します。
- 人口減少に伴い生徒数が減り続けている
- 進学率は若干増加傾向にある
- 生徒数より教員数が増加しており経営を圧迫している
- 教員の年齢が高齢化している
- 一貫教育を念頭に置いたM&Aが増加する兆し
①人口減少に伴い生徒数が減り続けている
1つ目の動向は、人口減少に伴って生徒数が減少していることです。年々子どもの数は減少し、近年では公立学校でも廃校が増え、学校法人・専門学校では年々収益が減少しています。
特にバブル崩壊後は世帯所得が向上していないため、私立学校を抱える学校法人・専門学校は生徒数を確保するのが厳しい状況です。こうした業界動向から、各学校法人や専門学校は知名度向上やブランド力を向上させるために、さまざまな対策をとっています。
②進学率は若干増加傾向にある
2つ目の動向は、大学への進学率が若干増加傾向にあることです。バブル崩壊後の不景気により、優秀でない人材は解雇されたり、雇用されなかったりしています。
このような背景から、「高学歴や専門的な知識を身につければ、就職に有利なのではないか」と考える人が増えました。大学や専門学校への進学率は、平成初期に比べて増加傾向です。近年も少子化にかかわらず、若干の増加傾向にあります。
③生徒数より教員数が増加しており経営を圧迫している
3つ目の動向は、生徒数より教員数が増加し経営を圧迫していることです。私立学校を抱える学校法人・専門学校は、生徒獲得競争に勝つために教育の質を向上させようとしています。
方策の1つが、少人数クラスを編成することです。通常は、1クラスに40人以下ですが、少人数クラスでは20~30人にして教育の質を向上させます。少人数クラスを編成することで難関大学への進学率が向上し、生徒数を呼び込むことが可能です。
しかし、近年はこの方策が一般化し、公立学校でも導入されているため差別化が図りにくいうえ、今以上の授業料の引き上げはできない状況です。生徒数より教員数を増やしても収益を上げられないため、より経営を圧迫している状況といえるでしょう。
④教員の年齢が高齢化している
4つ目の動向は、教員の年齢が高齢化していることです。近年、若い教員が減少しています。その原因はさまざまですが、長時間労働などの厳しい職場環境が報道され、社会問題化したことも大きいでしょう。
朝から夜遅くまでの勤務や保護者の苦情対応など、教員の仕事に対する魅力を感じず教職員を志す若者が減少し、教員の平均年齢は高くなっていると考えられます。
⑤一貫教育を念頭に置いたM&Aが増加する兆し
5つ目の動向は、一貫教育を念頭に置いたM&Aが増加する可能性があることです。近年は、学校教育における成績だけでなく、さまざまな物事に対する思考力や柔軟性が必要になっています。思考力や柔軟性を得るためには、長期的な視点で考えられた独自のカリキュラムが必要です。
こうした背景により、一貫教育の需要は今後さらに高まると考えられます。公立学校や他の学校法人と差別化を図るためにも、一貫教育を念頭に置いたM&Aが増加する兆しがあります。
3. 学校法人・専門学校がM&A・事業承継を行う理由
次は、学校法人・専門学校がM&A・事業承継を行う理由を紹介します。各学校法人や専門学校によって、M&A・売却・譲渡を行う理由は異なりますが、ここでは共通する以下の理由を見ていきましょう。
- 後継者問題の解決
- 生徒数の減少による競争激化
- 教職員の獲得が難航
- ブランド力の獲得
- 譲渡・売却益の獲得
- 取引先銀行からの提案
①後継者問題の解決
理由の1つ目は、後継者の問題です。中小企業と同様、学校法人・専門学校でも後継者問題を抱えるところは少なくありません。
しかし、学校法人・専門学校の場合は在籍する生徒や学生がいるため、簡単に廃校するのは不可能です。私立学校なので廃校を理由に転籍させられないため、後継者問題を解決する方法としてM&A・売却・譲渡が行われています。
②生徒数の減少による競争激化
2つ目の理由は、生徒数の減少による競争激化です。各学校法人・専門学校は、激化する競争に勝つためのブランド力構築を目的としてさまざまな方面に投資しています。
例えば、進学校の場合は難関大学合格率の向上、専門学校の場合は就職率の向上、知名度を向上させるために部活動に力を入れて全国大会に進出させるなどです。
しかし、独自のブランド力が構築できなければ生徒数は確保できないため、学校法人・専門学校は運営できなくなります。その場合、有名な学校法人・専門学校とM&A・売却・譲渡を行って学校を存続させる方法もあります。
③教職員の獲得が難航
3つ目の理由は、教職員の確保に難航することです。教職員も生徒と同様、やりがいのある仕事が行える学校を選びます。若手の教職員が減少している背景もあり、学校法人・専門学校は教職員の獲得に苦戦している状況です。
教職員が確保できない場合、他の学校法人・専門学校とM&A・売却・譲渡を行い、教職員を派遣してもらって学校を運営する方策をとるケースもあります。
④ブランド力の獲得
4つ目は、学校法人・専門学校におけるブランド力の獲得です。ここまで紹介したとおり、生徒や教職員を獲得するためには学校法人・専門学校にブランド力が必要です。
内部調達でブランド力を構築することも可能ですが、M&A・売却・譲渡を行い、外部からブランド力を獲得する方法もあります。
⑤譲渡・売却益の獲得
5つ目は、M&A・売却・譲渡による譲渡・売却益の獲得です。M&Aや法人合併では、吸収合併される理事長や理事は、譲渡・売却益の代わりとなる退職金を得られます。事業譲渡の場合は、譲渡する資産の対価だけでなく、のれん代も得られます。
後継者問題や生徒獲得競争の激化を背景として譲渡・売却益を獲得するために、M&A・売却・譲渡を行うケースもあるでしょう。
⑥取引先銀行からの提案
6つ目は、取引先銀行からの提案です。経営が難しくなり銀行など金融機関への負債が多く、債務超過の学校法人・専門学校もあります。
学校法人・専門学校は、学校といった公的要素が強い法人なので、金融機関は競売にかけにくいです。就学のチャンスを確保するため、新しいスポンサーを探すために、金融機関からM&Aを提案されることがあります。
4. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行うメリット
この章では、学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行うメリットを、買収側と売却側に分けて見ていきましょう。
買収側のメリット
買収側のメリットは、3つあります。まずは、ブランド力の強化です。都市圏の学校法人が地方に進出するとき、地元の学校を買収して自校のグループに取り入れるケースがあり、全国に校名を知らせてブランド力を強めるために最適な方法になります。
次に、人材の確保です。専門学校を新しく作るのは容易ではありません。そこで、すでに存在する学校を買収すれば比較的容易になり、買収した学校で育成した生徒に自社で働いてもらえば優秀な人材確保にもなります。
3つ目は、不動産の確保です。多くの生徒が集まって学ぶ場なので、広い土地、建物、設備を持つケースが多く、そのような不動産を獲得できればこれからの事業計画にプラスに働くといえます。
売却側のメリット
続いて、売却側のメリットを2つ見ていきましょう。まずは、教育機関の継続です。経営が難しくなり通常業務ができなくなっても、M&Aにより通常業務が継続でき教育現場での混乱が回避できます。学校の生徒は安心して勉強が続けられ、教育機関における社会的目的の継続が可能です。
2つ目は、退職金の支給です。学校が経営破綻すれば教職員や事務員は解雇となり、退職金などの支払いが厳しい状況になることもあるでしょう。M&Aで買収されると、買収側からリストラが行われても退職金が払われることがあります。
5. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継スキーム
この章では、学校法人・専門学校のM&A・事業承継スキームについて見ていきましょう。
経営支配権の譲渡
学校法人は一般的な会社と違い、株式の発行を行えないので、一般的な会社同士のM&Aでよく利用される株式譲渡のスキームは用いられません。しかし、経営支配権の譲渡により経営権を移転することが可能です。
経営支配権の移転は、理事長および理事の立場を譲渡、譲受しなければなりません。そのときに、譲渡側の理事長や理事へ、退職金の支払いが対価として必要です。
事業譲渡
譲渡側の学校法人が持つ個別の学校や施設のみを譲渡するのが、事業譲渡のスキームです。事業譲渡では、譲渡側の学校法人は、解散あるいは事業規模の縮小により事業が継続します。
このスキームでは、譲渡する学校や施設における設置者の名義を、譲受側の名義に変える必要があり、財産、債権債務、契約関係、労働契約なども個別に移さなければなりません。そのため、手続きが煩雑です。
合併
学校法人の合併では、理事の3分の2以上における同意が必要です。また、所轄庁の許可も要します。学校法人間でのみ可能といった条件もあります。
学校法人の合併にも、一般的な会社の合併と同じく新設合併と吸収合併がありますが、吸収合併のほうがよく利用されている状況です。
M&Aで合併のスキームを利用する際は、一定の要件を満たすか満たさないかにより適格合併と非適格合併に分かれます。適格合併の場合は、税制上の優遇を受けられるでしょう。税金の仕組みは複雑なので、専門家に相談することをおすすめします。
6. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継の案件例
弊社M&A総合研究所が取り扱っている学校法人・専門学校のM&A・事業承継の案件例として、首都圏の学校法人(幼稚園・学童保育)をご紹介します。
公共性の高い事業です。英語教育に力を入れており、近隣幼稚園との差別化を図っています。
エリア | 関東・甲信越 |
売上高 | 1億円〜2.5億円 |
譲渡希望額 | 2.5億円〜5億円 |
譲渡理由 | 後継者不在(事業承継) |
7. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継の事例
ここでは、学校法人・専門学校のM&A・事業承継の事例を見ていきましょう。
天理大学と天理よろづ相談所学園の統合
学校法人天理大学と学校法人天理よろづ相談所学園は、2021年4月に統合に向けた基本合意書を締結しました。この統合の目的は、教育文化の融合、研究分野での連携、地域社会に貢献する人材の育成、そして大学運営における財政基盤の強化など、多岐にわたります。
その後、2023年に統合が実現し、両法人が法人合併基本合意書を締結。これにより、天理大学と天理医療大学が統合され、新たな一歩を踏み出しました。
東京工業大学と東京医科歯科大学の統合
国立大学法人東京工業大学と国立大学法人東京医科歯科大学は、2022年10月14日に統合に向けた基本合意書を締結しました。この統合により、理工学と医歯学が連携することで新たなシナジー効果を生み出し、先端的な研究の発展が期待されています。統合の実施は2024年度10月に実施されました。
8. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継の価格相場
学校法人・専門学校におけるM&A・売却・譲渡のプロセスは一般的な会社と異なるため、価格相場も違うでしょう。先ほど紹介したとおり、学校法人・専門学校のM&Aや合併を行う場合、理事長や理事を入れ替える必要があります。
理事長や理事に対する退職金を支払えば入れ替えられるため、この退職金がM&A・合併の価格相場です。学校法人・専門学校のM&Aや合併の価格相場は、規定や理事の人数により異なりますが、数千万円~数億円かかります。
一方、事業譲渡を行う場合は、理事長や理事を入れ替える必要はないので、退職金は価格相場に含まれません。事業譲渡の価格相場は、対象とする学校法人・専門学校の純資産額とのれん代の合計額が価格相場です。
学校法人・専門学校のM&A・売却・譲渡価格の算出方法
学校法人・専門学校におけるM&A・売却・譲渡価格の算出方法は、M&A・合併と事業譲渡で異なります。ここでは、それぞれのケースにおける算出方法を見ていきましょう。
学校法人・専門学校のM&A・合併は、理事長や理事を入れ替えることで手続きが完了します。理事長や理事の退職金が取引金額となるため、対象とする学校法人・専門学校の規定や理事の人数を確認しましょう。
事業譲渡では、経営権を取得するのではなく、学校事業の資産や認可を取得します。学校事業に必要な資産などの対価として、取引金額が決まります。その学校が「難関大学の進学率が高い」などのブランドを有する場合、資産に対する金額に加えてのれん代を支払う必要があるでしょう。
事業譲渡は、M&Aや合併より取引金額が高くなる場合があります。なお、一般企業における企業価値の算定方法は、以下の記事で詳しく紹介していますのでご確認ください。
9. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行う流れ
この章では、学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行う流れを見ていきましょう。
事前準備・調査
M&A市場には、あまり学校法人があがりません。仲介会社が持つ学校関連におけるM&Aの情報は、多くないでしょう。
学校法人・専門学校が、M&A・売却・譲渡を検討しているなどの情報は、金融機関が最初に情報を得ることが少なくありません。学校法人・専門学校のM&A情報を求める場合は、金融機関から探すのが良い場合もあります。学校関係者自身がスポンサーを探すケースもあるでしょう。
大まかな流れ
学校法人・専門学校のM&A・売却・譲渡を行う流れは、民間企業の流れとほとんど同じです。しかし、対象が一条校のケースでは、都道府県知事や文部科学省など行政などが絡むこともあります。当事者同士が合意していても、調整するべきことが多いです。
学校名が変わる4月(新学期)に合わせると、混乱を最小限に抑えられるでしょう。学校名の変更は、この時期が良いタイミングなので、しっかりと事前準備を行ってください。
監督官庁の許可申請
学校法人は理事変更の場合、届出のみです。しかし、M&Aなど経営権の譲渡には、監督官庁の許可が要ります。事業譲渡の場合は設置者の変更許可が必要で、買収側も寄付行為における変更の許可申請を出さなければなりません。
10. 学校法人・専門学校がM&A・事業承継を成功させるには?
この章では、学校法人・専門学校がM&A・事業承継を成功させる6つのポイントを見ていきましょう。
- M&Aの計画・スキームなど戦略を練ること
- 生徒数・教員数を充実させること
- 成長市場を教育できる人材がいること
- 施設・設備投資が適切に行われていること
- イメージがよく経営にマイナスな点がないこと
- M&A・事業承継の専門家に相談すること
①M&Aの計画・スキームなど戦略を練ること
1つ目のポイントは、M&Aの計画・スキームなど戦略を練ることです。一般的な企業のM&Aと同様、M&Aを成功させるための重要なポイントとなります。
一般的に、各学校法人・専門学校は多額の資金を支払っても獲得したいメリットがあるため、M&Aが行われますが、メリットを明確にしなればM&Aに失敗する確率が高くなります。M&Aを行う際は専門家と相談のうえ、十分な計画・スキームなどの戦略を練りましょう。
②生徒数・教員数を充実させること
2つ目の成功ポイントは、生徒数・従業員数が充実していることです。学校法人・専門学校にとって、生徒数・従業員数が充実していることは大きな強みになります。
売り手側における学校法人・専門学校の生徒数・従業員が充実していれば、買い手側がすぐに見つかったり、取引金額が高くなったりすることがあるでしょう。買い手側における学校法人・専門学校の生徒数・従業員数が充実している場合、多数の売却案件がくる可能性があり、より理想に近い売り手を見つけられます。
生徒数・従業員数が充実していることは、M&A・売却・譲渡に成功する確率を高める要素の一つです。
③成長市場を教育できる人材がいること
3つ目の成功ポイントは、成長市場を教育できる人材がいることです。これは、専門学校におけるM&A・売却・譲渡に当てはまります。
成長している分野の専門学校では生徒数が確保でき、かつその分野を育成できる人材がいるため、多くのM&A案件がくる可能性があります。理事会でM&Aを考えていた場合、この中から売却先を選べば、M&Aで成功する確率が高まるでしょう。
④施設・設備投資が適切に行われていること
4つ目の成功ポイントは、学校法人・専門学校で施設・設備投資が適切に行われていることです。学校法人・専門学校も一般企業と同様、限りある経営資源の中で施設・設備投資を行わなければなりません。
経営者感覚のない理事長や理事が運営する学校法人・専門学校は、資金繰りが悪化したり適切な投資ができなかったりする可能性があります。こうした要素の有無を判断する材料として、施設・設備投資を確認する方法があるでしょう。
施設・設備投資が適切に行われている学校法人・専門学校は評価が高くなるため、希望どおりの売却益が得られたり、目的の学校法人・専門学校を買収できたりする可能性が高くなります。
⑤イメージがよく経営にマイナスな点がないこと
5つ目のポイントは、イメージがよく経営にマイナス点がないことです。このような学校法人・専門学校が売り手側の場合、評価が高くなるので多額の売却益を得られます。
買い手の場合は、従業員の雇用確保や生徒が求めるブランドを維持できるため、より良い売却先として多くの案件がくるでしょう。
その中には、買い手が求める学校法人・専門学校が含まれている場合が多いので、結果としてM&Aに成功する確率も高くなります。
⑥M&A・事業承継の専門家に相談すること
最後のポイントは、M&A・事業承継の専門家に相談することです。M&Aや売却には専門的な知識が必要なため、学校法人・専門学校の理事長や理事会だけで対応できません。M&Aに関する豊富な知識や高い交渉力も必要なので、M&Aの専門家に依頼してサポートを受けながら進めましょう。
11. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継におすすめの相談先
学校法人・専門学校のM&A・事業承継におすすめの相談先をご紹介します。
金融機関
近年、金融機関が企業の合併や買収(M&A)を支援する専門部署を設ける動きが加速しています。特に大手の投資銀行やメガバンクは、資金調達のサポートや取引戦略の立案など、多岐にわたるサービスを提供し、M&Aのスムーズな進行を支援しています。
これらのサービスを利用することで、企業は事業承継や資金調達といった複雑な課題を効率よく解決し、専門家のアドバイスを受けながら取引の成功率を高めることが可能です。
一方で、大規模案件が優先されることが多いため、中小企業が十分な支援を受けられない場合もあります。そのため、自社の規模や目的に合った支援機関を慎重に選ぶことが求められます。
また、これらのサービスは高額な費用が発生することがあるため、事前に料金体系を確認し、費用対効果を十分に検討することが大切です。
公的機関
最近、事業承継やM&Aを支援する公的サービスが大幅に拡充されています。全国に設置された「事業承継・引継ぎ支援センター」では、後継者不足に悩む中小企業を対象に、無料で情報提供やアドバイスを行っています。
さらに、企業間のマッチングを支援する仕組みが整備され、地方企業でも専門的なサポートを受けやすい環境が整っています。個人事業主に向けた支援も拡大されており、必要に応じてM&A仲介会社や専門家の紹介を受けることも可能です。
一方で、公的サービスは民間仲介会社に比べて対応スピードや柔軟性に制約がある場合があります。そのため、利用の際にはこれらの特性を理解し、自社に合った選択をすることが重要です。
これらの公的支援は、リスクを抑えながら事業承継やM&Aを進めるための信頼できる選択肢といえるでしょう。
M&A仲介会社
M&A仲介会社は、企業の買収や売却を円滑に進めるための専門サービスを提供します。単に売り手と買い手をつなぐだけでなく、交渉の進行管理、企業価値の評価、契約書の作成など、幅広いサポートを行います。そのため、M&Aの経験が少ない企業でも安心して取引を進められる体制が整っています。
特筆すべきは、豊富なネットワークを活用して迅速に最適な取引相手を見つけられる点です。このネットワークはM&A成功のカギとなっています。また、初心者にも理解しやすい説明を心掛けることで、取引への不安を軽減する姿勢も高く評価されています。
ただし、仲介会社のサービスを利用する際には、着手金や中間報酬などの費用がかかる場合があります。そのため、事前に料金体系を確認し、費用対効果を慎重に検討することが重要です。コストを抑えたい場合は、成功報酬型のサービスを選ぶことで、経済的かつ効率的な支援を受けることが可能です。
12. 学校法人・専門学校のM&A・事業承継まとめ
学校法人・専門学校では、生き残るために生徒獲得競争が激化しています。その競争に負けても生徒が在籍していれば、簡単に廃校にできません。M&A・事業承継を検討する必要があるでしょう。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行う際は、一般的なM&Aと異なる点が多いので、あらかじめ知識を得ることも大切です。
学校法人・専門学校のM&A・事業承継を成功させるためには、業界の特性を把握し、M&Aに関する幅広い知識や交渉力も必要になります。学校法人・専門学校のM&A・事業承継を行う際は、M&A仲介会社など専門家のサポートがおすすめといえるでしょう。
13. 学校法人・専門学校業界の成約事例一覧
14. 学校法人・専門学校業界のM&A案件一覧
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【首都圏】高収益の留学支援業
人材派遣・アウトソーシング/人材紹介/教室・教育・ノウハウ/関東・甲信越案件ID:2200公開日:2024年08月29日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
短期留学や海外の大学へ進学したい方の支援を行っている。
【EBITDA50M/PR支援/広告制作】教育機関向けコンサルティングサービス
IT・ソフトウェア/出版・印刷・広告/教室・教育・ノウハウ/関東・甲信越案件ID:2170公開日:2024年08月19日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
5000万円〜1億円
譲渡希望価格
4億5,000万円(応相談)
教育機関向けコンサルティング 広告制作 PR支援
【希少/格安案件】日本入国後講習学校
人材派遣・アウトソーシング/人材紹介/教室・教育・ノウハウ/中部・北陸案件ID:1967公開日:2024年06月21日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
3,000万円(応相談)
日本入国後講習学校の運営を行う会社様でございます。
【海外/EBITDA1億円超】シンガポール私立学校運営事業
教室・教育・ノウハウ/海外案件ID:1641公開日:2024年02月28日売上高
2.5億円〜5億円
営業利益
1億円〜2.5億円
譲渡希望価格
10億円〜15億円
シンガポールにて20年以上続くO-Level/A-Levelの私立学校を運営しております。1クラス12名にて授業を展開しております。
【首都圏】コンピュータ関連書籍に強みをもつ出版社
出版・印刷・広告/関東・甲信越案件ID:1588公開日:2024年02月07日売上高
5000万円〜1億円
営業利益
赤字経営
譲渡希望価格
株価1円+役員借入金3,500万円の返済 (応相談)
ニッチな分野ではあるが、業界内では一定の知名度を誇る出版社
【首都圏/学校法人】幼稚園.学童保育
教室・教育・ノウハウ/関東・甲信越案件ID:1409公開日:2023年11月27日売上高
1億円〜2.5億円
営業利益
1000万円〜5000万円
譲渡希望価格
2.5億円〜5億円
幼稚園の運営
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