2023年03月27日更新
株主割当増資とは?メリットとデメリットから方法や注意点まで解説!
本記事では、株主割当増資はどのような増資方法なのか、類似する手法との比較やメリット・デメリット、手順を解説します。企業が新規事業を始める際の資金調達方法として新規株式発行があります。その具体的な手法の1つが株主割当増資です。株主割当増資を知りたい方は必見です。
目次
1. 株主割当増資とは
新規株式を発行する方法として、株主割当増資があります。本記事では、株主割当増資はどのような増資方法なのか、メリットやデメリットも含めてまとめました。
本章では、株主割当増資の概要や目的、株主割当増資と第三者割当増資の違いなどを解説します。
株主割当増資の2つの特徴
株主割当増資には、主に以下2つの特徴があります。
- 既存の株主に割り当てること
- 株式の持ち分に応じて割り当てること
既存の株主に割り当てること
株主割当増資の1つ目の特徴は、株主割当増資では増資分株式を既存の株主に割り当てることです。新規株式を発行する場合、株式を割り当てる相手には大きく既存株主と新規株主とに分けられます。
株主割当増資では、既存株主に新規株式を割り当てますが、新規株式を引き受けるか否かは株主の判断です。
既存株主に割り当てると買い取ってもらえる可能性が高くなる(=資金調達がしやすい)ため、不特定多数の株主に株式が分散しないメリットがあります。株主割当増資では、自社への割り当てはできません。
株式の持ち分に応じて割り当てること
株主割当増資の2つ目の特徴は、株式の持ち分に応じて割り当てることです。新規株式を発行の際に重要なことは、誰にどれだけ割り当てるかだといえます。
一定のルールに従って割り当てないと、株主が不満に感じたり、新規発行のたびに株主総会可決が必要になってしまったりするためです。
株主に不満がなくかつ簡便な手続きで新規株式が発行できるよう、株式の持ち分に応じて割り当てることが決められています。
株主割当増資の目的
株主割当増資の主な目的は、事業運営の資金調達です。一般的な資金調達の方法には、金融機関からの融資と自己資本があります。
融資の場合、金融機関が得られるリターンは少ないですが、借主は元本と利息をすべて返済することが義務です。新規事業などリスクに対する融資は、行われないケースも多々あります。
一方で自己資本の場合、自身の資産であるため返済する必要はありません。株式も自己資本の1つにあたるため、返済の必要がない資金です。
新規事業に株主も魅力を感じる場合、返済のリスクがなく資金調達しやすいのが株式の特徴です。
2. 株主割当増資のメリットとデメリット
株主割当増資を行う場合、メリットだけでなくデメリットも正しく理解しておくことが大切です。この項では、株式割当増資を行うメリットとデメリットを解説します。
株主割当増資の3つのメリット
株主割当増資によるメリットには、主に以下の3つがあります。
- 自己資本の比率の拡大
- 株主構成の比率が変わらない
- 時価と比べて低価格で行える
自己資本の比率の拡大
株主割当増資の1つ目のメリットは、自己資本比率の拡大です。会社の財務の安全性を示す指標に自己資本比率があります。総資産(自己資本+負債)と自己資本との比率であり、この値が高いほど安全性が高いと判断されます。
安全性が高くなると、金融機関からの融資が受けやすくなったり、株主からの資金調達がより容易になったりするでしょう。
株主構成の比率が変わらない
株主割当増資の2つ目のメリットは、株主構成の比率が変わらないことです。公募増資のように広範囲から資金調達すると、株主数が増加し、割り当てる株式数も任意であるため、株主構成比率が大きく変化する可能性があります。
株主構成比率が変わると、議決権数が減る・配当金が減少するなど、既存株主は不利益を被る可能性もあります。しかし、株主割当増資の場合、割当先は既存の株主で割り当てる数も持ち分に応じたものなので、株主構成の比率が変わりません。
時価と比べて低価格で行える
株主割当増資の3つ目のメリットは、時価と比べて低価格で行えることです。これにより、株主はリスクを取りやすくなり、資金調達がしやすくなります。
一般的に、企業から株式を購入するときは、自身が損をしないよう会社の財務状況・収益力・将来性などを調査し、問題がなければ株式を購入します。
これは株主割当増資も同様であり、新規事業にリスクが大きいと判断されると資金調達ができなくなりますが、リスク分だけ低価格で販売することで資金調達がしやすいでしょう。
株主割当増資の2つのデメリット
株主割当増資によるデメリットは、主に以下の2つがあります。
- すべての株主が同じ割合で増資できるわけではない
- 大きな資金調達はできない
すべての株主が同じ割合で増資できるわけではない
株主割当増資の1つ目のデメリットは、すべての株主が同じ割合で増資できるわけではないことです。株主割当増資は、既存株主の持ち分に応じて割り当てます。しかし、割り当てられた株主は、すべての新規株式を購入する必要はありません。
株主が何らかの理由により購入しない選択をすることもあり、株主構成比率は大きく変化しなくても株主に対して均等には割り当てられないため、有利不利が出る場合があります。
大きな資金調達はできない
株主割当増資の2つ目のデメリットは、大きな資金調達ができないことです。株主割当増資は、時価よりも安価で株式を譲渡できます。その差額は発行する会社が負担します。
新規発行株式数が増えると多額の資金調達は可能になりますが、その分だけ費用がかかるため、株主割当増資では大きな額の資金調達はできません。
プロラタ(プロラタ方式)については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
3. 株主割当増資を行う方法と流れ
続いて、株主割当増資を行う方法・流れを解説します。株主割当増資を行う際は、主に以下のような流れで進みます。
- 取締役会の決議
- 株主総会の招集
- 新株募集事項の公示
- 募集株式・引受の申込み
- 株式割当の決定
- 出資金の支払い
- 株式の発行・登記の変更
①取締役会の決議
まずは、取締役会で株主割当増資を決議します。それと同時に、新規株式に関する募集事項の決定も必要です。
公開会社の場合、取締役会の決議で株主割当増資を行えて、非公開会社の場合でも定款に別段の定めがある場合は取締役会の決議で株主割当増資が行えます。
②株主総会の招集
公開会社・非公開会社のいずれでも、定款に定めがある場合は株主総会で決議を得る必要はありません。
しかし、取締役会非設置会社や定款に別段の定めのない会社の場合は株主総会を招集する必要があり、株主割当増資をする場合、株主総会の特別決議を得て募集事項を決定します。
③新株募集事項の公示
取締役会・株主総会で決議した後は、新株募集事項の公示を行います。既存株主に対して新株募集事項の通知は、引受申込みの2週間前までに行わなければなりません。
株主へ通知する内容は、募集事項・当該株主が割当てを受ける募集株式の数・引受けの申込期日の3点です。
④募集株式・引受の申込み
新株募集事項の公示・既存株主への通知後は、募集株式・引受の申込みの開始です。引受申込みを行う際、株主は自身の氏名または名称および住所・引き受けようとする募集株式の数を記載した書面を株式会社へ提出します。
⑤株式割当の決定
会社では、引受申込みを受けて株式割当を決定します。決定後は、株式割当通知や出資金の振込用紙を当該株主に送付します。
⑥出資金の支払い
株主は、通知を受けて払込期限までに出資金を支払います。金銭出資の場合、期日までに発行会社の金融機関の口座に振り込まれていなければなりません。
実質のタイムリミットは金融機関の窓口が閉まる15時までとなるため、払い込みを行う株主は注意が必要です。
⑦株式の発行・登記の変更
株式を発行することで、資本金の額や発行済株式数が増加するため、登記変更を行います。登記変更は効力が発生してから2週間以内に行うことが義務づけられているため、新株発行後はできるだけ速やかに登記変更を行いましょう。
株式譲渡した際の手続きについては、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
4. 株主割当増資を行う際の2つの注意点
この項では、株主割当増資を行う際の注意点として以下の2点をあげます。
- 株価に影響を与える可能性がある
- 発行可能株式総数を確認する
①株価に影響を与える可能性がある
株主割当増資の1つ目の注意点は、株価に影響を与える可能性があることです。通常、株価は株式の需給関係によって決まります。会社の業績を見て株式が欲しい人が増えると株価は上がり、逆に売却したい株主が増えると株価は下がる仕組みです。
新株を発行すれば、発行される株式数が増加するために供給量が増えて、一時的に株価が下がります。その後、新規事業に成功したり、業績が上がったりすれば再び株価は上昇しますが、一時的な株価下落の可能性があることは覚えておきましょう。
②発行可能株式総数を確認する
株主割当増資の2つ目の注意点は、発行可能株式総数を確認することです。会社法により、定款で発行可能株式総数を記載することが義務づけられており、発行可能株式総数を超えると会社法違反となります。
発行可能株式総数が定められている理由は、新株発行は取締役会の決議だけで行えるため、取締役が職権を乱用して株式を大量に発行するおそれがあるからです。
上記のような理由で大量に株式が発行されてしまえば、株価の大幅な下落や議決権割合の低下など、より株主に大きな影響をおよぼす可能性があるため、発行可能株式総数を決めることで防止しています。
新株を発行するときには、発行可能数の上限に注意することが必要です。上限数よりも多く株式を発行したい場合は、株主総会で特別決議を得なければなりません。
自社株買いについては、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
5. 株主割当増資と第三者割当増資、公募増資の違い
本章では、株主割当増資と第三者割当増資、公募増資の間に見られる相違点を順番にわかりやすく取り上げます。
第三者割当増資との違い
株主割当増資と第三者割当増資の大きな違いは、割り当てられる対象です。第三者割当増資とは、自社や株主ではない第三者に新株を割り当てることで、関係を強化したい取引先や資本業務提携を行う企業など将来的なビジネスパートナーに割り当てます。
資本業務提携とは、互いの新規発行株式を相手の企業に買い取ってもらうことです。同時にお互いが大株主になり、経営権をある程度は掌握することになるため、協力関係は強化されます。
第三者割当増資では、その主目的は資金調達ではなく、企業間の関係強化の場合が多いのが実態です。
公募増資との違い
公募増資とは、新規株式の割当先を決めず、自社株式を購入したい人に新規株式を割り当てる増資方法です。株主割当増資に比べて割当先候補が増えるため、広範囲での資金調達が可能になり、新株発行に否定的な既存の株主が多い場合などに資金調達しやすい方法といえます。
ただし、株主が増えることで、株主構成比率が変化するデメリットがあります。大株主の株式保有比率が低下するため、公募増資は株主総会で特別決議を得なければなりません。
公募増資を行う際は、既存株主に与える影響も考慮する必要があります。
第三者割当増資については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
各増資方法のメリット・デメリット比較
ここでは、株主割当増資・第三者割当増資・公募増資のメリット・デメリットを比較します。下表に、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
株主割当増資 | ・株主構成比率は変化しない ・時価よりも安価に新規株式を譲渡できる |
・増資により株主に有利不利が出る ・大きな資金調達はできない |
第三者割当増資 | ・取引先など関係企業との関係が強化できる ・多額の資金調達が可能 |
・株主構成比率が大きく変化する ・割り当てられないと既存株主は新規株式を購入できない |
公募増資 | ・広範囲から資金調達が可能 ・既存株主も購入可能 |
・株主が増加し、株主構成比率が変化する ・株主総会で特別議決が得られないと増資できない |
新規事業をある程度、自己資本から増資したい場合は、株主割当増資を選ぶことがおすすめです。
多額の資金調達が必要な場合や対象企業との関係を強化したい場合は、第三者割当増資を選択するのが良いでしょう。新規事業の賛同者から資金調達したい場合は、公募増資をおすすめします。
増資する場合は各手法のメリット・デメリットを理解し、どの方法が最も適しているのかを判断することが大切です。
M&Aのための資金調達については、下記の記事でも紹介しています。あわせてご覧ください。
6. 株主割当増資のおすすめの相談先
株主割当増資を行うには専門的な知識が必要になるため、会社法や金融商品取引法など会社経営に関する法律に精通しているM&A仲介会社などの専門家によるサポートがおすすめです。M&A総合研究所では、豊富な知識と実績を持っているM&Aアドバイザーによるフルサポートを行っています。
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7. 株主割当増資のまとめ
本記事では、株主割当増資の概要を解説しました。株主割当増資は比較的手続きが簡便な増資方法ですが、株主に影響をおよぼすため、メリット・デメリットを理解したうえで株主割当増資を行いましょう。
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