IRR(内部収益率)とは?計算方法やNPVとの違いなど分かりやすく解説!

取締役
矢吹 明大

株式会社日本M&Aセンターにて製造業を中心に、建設業・サービス業・情報通信業・運輸業・不動産業・卸売業等で20件以上のM&Aを成約に導く。M&A総合研究所では、アドバイザーを統括。ディールマネージャーとして全案件に携わる。

不動産投資の収益性を評価するための指標の中にIRR(内部収益率)があります。
本記事では、IRR(内部収益率)とはどういったものなのか、その計算方法やメリット・デメリット、NPV(正味現在価値)との違いについて紹介します。

目次

  1. IRR(内部収益率)とは?
  2. IRRのメリット・デメリット
  3. IRRとNPVの違い
  4. IRR計算後の投資判断のポイント
  5. IRRの注意点
  6. IRR(内部収益率)は収益率の高い投資案件を見つけるために有効な手法!
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不動産投資の収益性を評価するための指標の中にIRR(内部収益率)があります。
本記事では、IRR(内部収益率)とはどういったものなのか、その計算方法やメリット・デメリット、NPV(正味現在価値)との違いについて紹介します。

1. IRR(内部収益率)とは?

長期間にわたることの多い不動産投資において、将来の収益性を評価するための指標の1つが IRR(Internal Rate of Return)です。
簡単にいうと「時間経過を盛り込んで計算を行った利回り」のことです。
投資によって将来的に得ることができるキャッシュフローと投資額のそれぞれの現在価値が等しくなる割引率を計算した数値がIRR(内部収益率)となります。
つまり、IRR(内部収益率)の高い投資案件は、投資資金を早期に回収できる可能性があるということです。

割引率と現在価値

まずは、割引率と現在価値について紹介します。
割引率とは、お金の将来の価値(将来価値)を現在の価値(現在価値)に換算するために使用する利率のことです。
お金の価値は、時間が経過するごとに変化するため現在価値と将来価値は違います。
現在の価値が最も高く、不確定要素が入り込む余地が高くなるため、時間が経つほど価値が低くなります。
お金は運用によって増やすことが可能なため、運用によって得ることができる利息によって時間的価値が発生し利益を得ることができます。
例えば、100万円を年利5%で運用したとします。
そうすると、1年後には105万円に増えている計算となります。
この場合、現在の100万円の価値と1年後の105万円の価値は同じものと考えられるため、割引率は5%といった計算になります。
現在価値とn年後の将来価値の計算方法は以下の通りです。
将来価値 = 現在価値 × (1+r)∧n
r =割引率

IRRの計算式

IRR(内部収益率)はどのように算出するのでしょうか。
現在価値と割引率が何を指しているか理解すれば、IRR(内部収益率)を計算することができます。
IRR(内部収益率)とは、「投資によって将来的に得ることができるキャッシュフローと投資額、それぞれの現在価値が等しくなる割引率を計算した数値」です。
将来的に得ることができるキャッシュフローと投資額、それぞれの現在価値がわかれば、IRR(内部収益率)を算出することができます。

IRRのExcelでの簡単な計算方法

先ほど紹介した計算式を見ていただければわかるように、、IRR(内部収益率)の計算方法は、投資期間が長くなるほど複雑なものとなります。
ですが、エクセルを活用することによって計算の時間を大幅に短縮することができます。
Excelでの計算は、「IRR(範囲,[推定値])を使用するか、「関数の挿入」内の「財務」から「IRR」を呼び出すことでも可能です。
数値は、「範囲」に初期投資額や年ごとのキャッシュフローを選びます。
推定値は計算結果の予想値なので、今回は入力する必要はありません。

2. IRRのメリット・デメリット

IRR(内部収益率)を活用することのメリット・デメリットについてそれぞれ簡単に紹介します。

IRRのメリット

IRR(内部収益率)は、「初期投資額」「保有期間中の収益」「売却の価格」といった、投資における重要な数字を考慮して算出されます。
不動産投資において、収支は保有期間中変動し続けます。
不動産では、家賃や空室率の変化による賃料収入の変動や、大規模修繕の際の出費といった収支の変動が発生します。
IRR(内部収益率)は、キャッシュフローが変動するような投資案件も、その点を考慮に入れて収益率を算出可能である点がメリットと言えます。

IRRのデメリット

IRR(内部収益率)は、投資を行なっている期間全体の収益率を測ることに特化していますが、収益額を考慮していないため、投資規模が把握できない点がデメリットと言えます。
前提として、投資で最も重要視されることが「利益の最大化」を追求するということです。
IRR(内部収益率)を活用して高収益率の案件を選択したとしても、収益額の大きい案件を見落とすことになってしまっては意味がありません。
IRR(内部収益率)のみに着目するのではなく、収益額を考慮した上で、その案件が最良であるかどうかの判断を下すことが大切です。

3. IRRとNPVの違い


ここまで紹介してきたIRR(内部収益率)は、その名の通り収益率をもとに投資の評価を行う指標です。
NPV(正味現在価値)は、収益額をもとに投資を評価する指標という違いがあります。
NPVは、投資によって将来的に得ることができるキャッシュフローの現在価値の総和から投資額を引くことによって算出できます。
NPVの計算結果によって、以下のような判断をすることができます。

  • NPVの数値がプラスの場合、投資を行うべき
  • NPVの数値がマイナスの場合、投資を行うべきではない
NPVを算出する上で重要な点は、投資に要求される最低限の収益率である、ハードルレートとして、割引率をいかに設定するかということです。
割引率は、様々な条件を加味した上で決める必要があり、その根拠となるデータに関しても、妥当性が重要視されます。

IRRとNPVのメリット・デメリット比較

IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)の共通点は、時間の概念が含まれていることです。
また、時間の概念が含まれているため、短期間の投資の評価が高く、長期間の投資が排除されやすいと言った点も共通しています。
では、それぞれの違いから発生するメリットとデメリットについて比較します。

①評価の対象の違い
IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)は評価の対象が違います。
IRR(内部収益率)は収益率を評価しますが、NPV(正味現在価値)は収益額を評価します。
そのため、NPV(正味現在価値)はIRR(内部収益率)よりも「収益がどの程度プラスになるか」がわかりやすい点がメリットです。
まら、投資の規模を考慮することが可能な点もメリットとして挙げられます。

②結果に安定性がある
IRR(内部収益率)は数値を明確に設定できる2つの要素から算出ができますが、NPV(正味現在価値)は割引率について設定する必要があります。
割引率の設定数値によって結果が大きな違いが出てくるため、IRR(内部収益率)の結果のように安定した結果が算出できない点が違いといえます。

IRRとNPVの使い分け方

IRR(内部収益率)とNPV(正味現在価値)の使い分けの際に考えるべき点は、投資で最も重要視されることが「利益の最大化」を追求するということです。
つまり、収益率より収益額が重要な項目となります。
そのため、メインで利用すべき指標はNPVとなります。
しかし、そうはいっても収益率が重要となる場合もあります。
例えば、予算に制限がある時、収益額がたとえ低くても収益率の高い複数の投資方法に投資することで、資産運用の効率性を高める必要がある場合などです。
こういった運用を行うことで、投資額あたりのNPVの割合を上げることになり、結果的に利益を大きくすることができます。
このような場合では、IRR(内部収益率)を活用する方法が有効です。
また、投資先が複数あり、それぞれを比較検討する場合にはNPV(正味現在価値)を活用する方法が有効です。
IRR(内部収益率)でも、複数の投資先の比較を行うことはできますが、こちらは一つの投資方法を深掘りして検討する際により有効な方法と言えます。
NPV(正味現在価値)をメインの検討方法として用い、IRR(内部収益率)がその補助的な位置付けとして活用されることが一般的に多いです。

4. IRR計算後の投資判断のポイント

投資を行う上で、IRR(内部収益率)の計算結果が判断材料の一つとして有効であると紹介しました。
では、実際にIRR(内部収益率)を活用する場面と、計算した上での投資判断のポイントについて以下の2点を紹介します。

投資をするべきかどうかを判断する

IRR(内部収益率)は、投資を行うかどうかの判断材料となります。
単一の投資における収益率を評価する場合は、IRR(内部収益率)の計算結果とハードルレートが必要となります。
一般的に不動産投資におけるハードルレートは、5%程度と言われていますが、投資の条件や目的により違いが出るため、目安として参考程度に考えましょう。
IRR(内部収益率)とハードルレートをそれぞれ比較することで、投資を実施するべきかどうかの判断ができます。
ハードルレート<IRR(内部収益率)である場合、高収益率が望めるため、投資をするべきです。
ハードルレート>IRR(内部収益率)である場合、低収益率が予想されるため、投資をするべきではないとなります。

複数の投資を比較する

複数の投資先を比較する際にIRR(内部収益率)を活用することができます。
不動産投資は、キャッシュフローが年毎に変化するため、IRR(内部収益率)により収益率を計算し、それを比較することによって、効率が最も良い不動産を選ぶことに役立ちます。
また、不動産投資と預金や債券といった方法の異なる投資についても比較することができます。

IRRの活用方法

IRR(内部収益率)を実際の投資案件にどのように活用することができるかについての方法について、以下の3つの項目に分けて紹介します。

最終的な投資の利回りを確認することが可能

不動産投資などにおいて最も一般的とも言える指標は「利回り」でしょう。
表面利回りか実質利回りかで考慮される要素は違いますが、一年で得ることのできる利益の見込みを算出した額です。
しかし、不動産投資では、時間経過によるお金の価値の違いが発生する案件も多いです。
そのため、IRR(内部収益率)によって、単純な利回り計算のみでは考慮することのできない点も確認することができます。

客観的指標として利用できる

IRR(内部収益率)は、投資額と見込まれる収益の2つの要素のみで算出することができるため、客観的指標として利用することができます。
IRR(内部収益率)の数値が高い投資案件であるほど高収益率となるため、基本的にはIRR(内部収益率)の数値が高い物件に投資が行われます。

収益性の高い物件の主な特徴

収益性の高い=IRR(内部収益率)が高い物件の主な特徴について以下の3点を紹介します。

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早期にプラスのキャッシュフローを得られる物件

利益を得られるタイミングが早期である物件ほどIRR(内部収益率)の数値は高くなります。
例えば、古い築年数の木造のアパートなどは、減価償却費を最初の数年間で大きく取ることによって、キャッシュフローを大きなプラスで得ることができるためです。
一方、同じ木造アパートでも新築の場合は、長い期間をかけて減価償却をするため、長期的に安定した利益を得られる傾向が高いことから、IRR(内部収益率)の数値は相対的に低くなります。

融資を受けやすく自己資金が少なくて済む物件

自己資金を抑えることができる、融資を受けやすい物件はIRR(内部収益率)が高くなります。
融資を受けることができれば、自己資金での投資額が抑えられることによって、資金回収を早めることができます。
そうするとキャッシュフローを早期に得ることができる状態になるため、結果的にIRR(内部収益率)が高くなるのです。

資産価値が下がりにくく高値で売却できる物件

資産価値の下がりにくい物件は、高い売却額を維持できるためにIRR(内部収益率)も高い傾向があります。
例えば、駅から近いと言った利便性の高いエリアや人口の減りにくい首都圏地域、「住みたい街ランキング」上位に入っているようなエリアにある物件です。

5. IRRの注意点

投資案件の選定を行う場合においてIRR(内部収益率)の算出は便利な方法ですが、注意しなければいけない点もあります。
主な注意点について以下の2点を紹介します。

投資規模は把握できない

IRR(内部収益率)は投資を行なっている期間全体の収益率を測ることに特化していますが、「どの程度の収益額なのか」=「投資規模」を把握することができません。
これは不動産投資を含む投資全般に言えることですが、投資において収益の最大化が重要な要素です。
IRR(内部収益率)の数値によって、高い収益率の案件を見つけることは可能ですが、収益額を把握することはできないため、収益額の大きい案件は見逃してしまうこともあります。
そのため、IRR(内部収益率)の数値のみを参考に案件を検討するのではなく、NPV(正味現在価値)といったアプローチ方法の違いのあるものも活用しましょう。

IRRが高い物件は投資リスクも高め

IRR(内部収益率)が高い物件であるほど高い投資リスクがあります。
一般的に、IRR(内部収益率)では、不動産投資の際に自己資金をいかに効率よく運用できるかについての判断を行います。
ただし、借り入れを行うことでレバレッジによる投資の際の自己資金額を減らす場合はIRR(内部収益率)は高くなります。
IRR(内部収益率)が高数値の優良投資物件に見える場合でも、実はハイレバレッジの案件である高リスクの物件であることがあります。
特に、フルローンに近い状態であるほど、IRR(内部収益率)は高くなる傾向があります。
投資全体の収益率や、効率的に自己資金を運用できるかどうかといったことを把握して判断することが大切です。

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6. IRR(内部収益率)は収益率の高い投資案件を見つけるために有効な手法!

本記事では、IRR(内部収益率)とはどういったものなのか、その計算方法やメリット・デメリット、NPV(正味現在価値)との違いについて紹介しました。
IRR(内部収益率)は、収益性の高い投資案件を見つけるために有効な手法の一つです。
もちろん、デメリットや注意点もありますが、今回紹介したそれらに気をつけながら積極的に活用していきましょう。

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