2024年04月27日更新
M&Aのネームクリアとは?意味や目的・メリット・デメリットまで解説!
M&Aにおいてネームクリアの手続きは欠かせません。本記事ではM&Aを一貫してトラブルなく進めるために必要なネームクリアの意味や目的、メリット・デメリットまで徹底的に解説します。またネームクリアに必要なノンネームシートについても解説します。
目次
1. M&Aのネームクリアの意味は?
M&Aを検討した際、「ネームクリアをお願いできますか?」と言われることがあります。
ただ「ネームクリアって何?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。M&Aにおいてネームクリアはよく使われる用語なのですが、M&Aを初めて経験される方はネームクリアの意味がよくわからないと思います。
ここからはM&Aのネームクリアの意味について解説します。
買い手候補に売り手企業の企業名を開示すること
M&Aのネームクリアとは、買い手候補に売り手企業の企業名を開示することをいいます。
一般的にネームクリアとは、企業名を相手企業に開示することを意味しており、M&A業界でもよく使われる用語です。また、譲渡対象先に対して買い手候補先名を開示することをネームクリアというケースもあります。
M&Aの検討を本格的に進めることができる
ネームクリアを行う目的として、M&Aの検討を本格的に進められることが挙げられます。
例えば、以下のような要望を満たすためにネームクリアが行われます。
- 早い段階で自社名を開示しておきたい
- ノンネームだけではM&Aの判断が難しい
- 買い手候補が重複していないかを事前に確認しておきたい
また、M&Aを多数行っている企業からすると、事前に自社がM&A対象に入るのかどうかを確認するためにネームクリアが行われることもあります。M&Aを進める段階で余計な作業を挟まなくて済むメリットがあるため、ネームクリアは一般的に行われています。
2. M&Aのネームクリアの目的
一般的にM&Aのネームクリアの目的は以下の2つが挙げられます。
- M&Aによるノンネームシートでの相手探しが第一段階
- 情報漏洩を防ぐ
それぞれ解説します。
M&Aによるノンネームシートでの相手探しが第一段階
そもそも初期段階のM&Aはノンネームシートにより行われるのが一般的です。
ノンネームシートとは匿名状態レベルで会社情報を記載している資料を意味しており、M&Aを行う初期段階ではノンネームシートが用いられます。ノンネームシートを見て「M&Aをする価値がありそう」と判断すればネームクリアを行い、M&Aに適した企業かどうかを判断するフェーズに移行します。ネームクリアと同時に秘密保持契約を締結することもプロセスに含まれます。
実際に企業の全情報が開示されるのは秘密保持契約を締結した後になります。間にM&A仲介会社やFAといったM&Aアドバイザーがいたとしても全ての情報が開示されることはありません。匿名状態レベルの情報しか開示されないため、ネームクリアが行われる前にM&Aが破談になるケースも多くあります。
ちなみにネームクリアが行われた後にもM&Aが破談になるケースがあります。
情報漏洩を防ぐためのシステム
ノンネームシートにリストアップされる会社情報は秘密保持契約が締結されていない状態です。
そのため、ひょんなことから外部へ情報漏洩してしまう可能性が高くなっています。情報漏洩をしてしまうとM&Aにおける企業価値が下がってしまうだけでなく、危機的状況を招きかねません。「あの企業はM&Aによる売却を模索している」と関係企業に情報が漏洩してしまうと取引中止の手続きを取られることもあるでしょう。
ただ、だからといって会社情報を限られた状態で公開することもM&Aの妨げになります。よって、M&Aを行う可能性が高いと踏んだ企業に対してはネームクリアを実施し、買い手・売り手の会社情報を共に公開し合います。会社情報の機密性を守りつつM&Aを前進させるためにネームクリアは欠かせません。
3. M&Aのネームクリアのメリット
M&Aにおいてネームクリアは欠かせない手続きの1つです。そんなM&Aのネームクリアのメリットをご紹介します。
不確かな売却話で人材が流出するのを防ぐため
M&Aを行う際に気をつけるべきことは人材の流出です。
M&Aにより会社状況が大きく変動し、働く環境にも大きな変化があると社員や従業員に察知されると退職手続きをとられることが少なくなりません。まだ確定していないM&Aの売却話で人材が秀出してしまう可能性がありますので、ネームクリアを行い人材の流出を防ぐ必要があります。
M&Aにおいて企業価値が決まるのは売上高や利益だけではありません。利益を生んでくれる人材もM&Aにおいて重要視されるポイントですからM&Aが始まる前に人材が流出してしまうのは避けなければなりません。一般的に社員や従業員はM&Aにネガティブな印象を持ちやすく、世界的にもM&Aが始まる前に人材が流出してしまったケースは後を断ちません。
内密に取引の検討ができるため
売り手企業にとって、M&Aを検討していることはなるべく隠すべきです。
例えば、M&Aによる売却を検討していることが取引先に伝わってしまうと新規契約を打ち止められたり金融機関からの融資がSTOPしてしまいかねません。また、社内にM&Aを検討している情報が伝わってしまうと先ほどもありましたが人材の流出につながったり変な混乱を招いてしまうこともあります。早期退職者が多く出てしまうと企業価値がぐんっと下がってしまうことになりますから、M&Aが破談になるだけでなく今後の経営にも大きく影響してくることが考えられます。
ネームクリアの手続きを行っておけば混乱を招くことなくM&Aを検討できるためメリットしかありません。
4. M&Aのネームクリアのデメリット
ネームクリアはM&Aにおいて欠かせない手続きではありますが、いくつかデメリットもあります。
情報が限られるためM&A実行に踏み切りにくい
買い手企業からすると、ノンネームシートに記載されている情報だけでM&Aに踏み切るのはリスクが高いです。
例えば、ネームクリアを行い実際にM&Aの面談をした際に「意外と経営者と反りが合わない」と感じるケースがあります。条件面はマッチしているが経営における考え方や人としての相性がマッチせずにM&Aが破談になるケースはよくある話です。ただ、企業としての情報を全て開示してしまうのは情報漏洩のリスクがあるため危険です。
つまり、以下のような懸念点があります。
- 買い手企業:情報を網羅的に知ることができない
- 売り手企業:情報を開示したいが漏洩のリスクがありできない
もし売り手企業が全ての情報をオープンにできていたら買い手企業が魅力的に感じていたかもしれません。たらればになりますがこういったケースが実際に多く存在します。お互いにデメリットしかない状態ですが、M&Aをスムーズに進めるためには情報を制限する必要があります。
買い手企業としては売り手企業が提示する数少ない情報からどういった企業なのか、M&Aに適した企業なのかを適切に判断できるようにしておく必要があります。分析力を磨くことにより望まないM&Aを避けることも可能です。
売り手側が魅力をアピールしにくい
売り手企業からすると、買い手企業に魅力をアピールしにくいことがデメリットとして挙げられるでしょう。
ノンネームシートに記載されている情報は売り手企業のごく一部の情報に過ぎず、企業価値を十分に買い手企業に伝えられるかというとそうではありません。ロングリストやショートリストには会社を特定できる情報を記載することができないため、売り手企業の情報に具体性が欠けてしまいます。
ただ、ネームクリアの仕組み上すべての情報を開示することができないため資料づくりを徹底する必要があります。売り手企業としてどういった魅力があるのかを資料にすべて盛り込み、買い手企業が判断しやすいようにしておくべきです。売り手企業の全貌を明らかにできるような魅力的な資料を作成することが必要になります。
5. M&Aのネームクリアの手続きの方法と流れ
ではここからはM&Aのネームクリアの手続きの方法と流れについて解説します。
- ノンネームシートを作成する
- ノンネームシートを提示する
- 買い手が検討に入る
- ネームクリアを打診する
- M&A交渉と手続きの開始
それぞれステップごとに方法を解説します。
①ノンネームシートを作成する
ネームクリアを行うためには、ノンネームシートが欠かせません。
ノンネームシートはM&A仲介会社やFAなどが作成を担当しており、以下のような情報が記載されています。
- 事業分野
- 事業規模
- 業績
ノンネームシートから企業情報を特定できないようにする必要があり、かなり慎重に作成することが求められます。例えば、従業員数や売上高をそのままの数値で記載してしまうと、ネット検索で企業を特定されかねません。買い手企業から企業を特定されてしまうと情報漏洩のリスクが高まってしまうため企業を特定できないレベルで情報を公開する必要があります。
例えば、数字を丸めたりレンジで記載するなどの工夫がなされます。
②ノンネームシートを提示する
続いて、M&A仲介会社やFAは買い手企業として手を挙げてくれると見込んだ企業を選定し、ノンネームシートを送付します。
買い手企業を選定する際にはロングリストの作成を行い、その中からノンネームシートを送付する企業をさらに絞り込んでいきます。ロングリストは以下のような企業として基本的な情報がまとめられています。
- 企業名
- 代表者名
- 本店所在地
- 資本金
- 事業内容
- 売上高・利益
- 売却理由
ロングリストからM&Aが成立する可能性がある買い手企業を絞り込んで選定します。選定する際にはシナジーが見込まれたり買収予算に問題がなかったりと様々な観点から選定を進めます。
ちなみに、M&A仲介会社やFAを利用せずにM&Aマッチングサイトを利用した場合だとHPにノンネームシートが開示されます。
③買い手が検討に入る
ノンネームシートが送付されてきた買い手企業は、シートを見てM&Aをするかどうかの検討に入ります。
ただノンネームシートは限定的な情報しか記載されていません。そのため、自社の経営戦略にマッチするかどうかを大雑把に判断しM&Aに踏み切れるかどうかを検討します。この段階でM&Aに踏み切れると判断した買い手企業はM&A仲介会社やFAに連絡をします。
連絡を受けたM&A仲介会社やFAは売り手企業と買い手企業で秘密保持契約を締結するように手続きを行います。秘密保持契約を締結する目的としては、万が一情報が漏洩した際に適切な処置を施せるようにするためです。M&Aに関する情報は経営根幹を揺るがすような情報があるため情報が簡単に漏洩してしまうような取引をしてはいけません。過去にM&Aを検討する段階で情報が漏洩してM&Aが破談になったケースも多々あります。
リスクヘッジの観点からネームクリアの前には売り手企業と買い手企業で秘密保持契約を締結することが必要です。
④ネームクリアを打診する
売り手企業と買い手企業で秘密保持契約を締結できれば、買い手企業に対してネームクリアの手続きを行います。
M&A仲介会社やFAはネームクリアを行うと同時に、対象企業の情報パッケージ(インフォーメーション・メモランダム)を受け取ります。この情報をもとに条件交渉に進むかどうかの分析を行うのです。分析方法はM&A仲介会社やFAによって異なりますが、大きく分析方法が異なることはありません。
この情報パッケージ(インフォーメーション・メモランダム)には以下のような情報が記載されています。
- 対象会社の概要
- 役員構成
- 株主構成
- 組織図
- 事業概要
- 過去3~5年間の財務情報
- 事業計画
情報パッケージ(インフォーメーション・メモランダム)を受け取った買い手企業は売り手企業に情報の追加開示を求めることができます。ただ、追加開示に応じるかどうかは売り手企業が決めます。
⑤M&A交渉と手続きの開始
ネームクリアを行い対象企業の分析が完了すれば、買い手企業は売り手企業に対してM&Aの条件交渉を行います。
M&A交渉における最終ゴールは、以下のような基本的な条件についての合意を得ることです。
- 取得シェア
- M&A金額
- スキーム
- スケジュール(契約締結日・クロージング日)
続いて、トップ会談やその他MTGを経て基本的な条件についての合意があったあとに基本合意書にサインをします。基本合意書へのサインが完了すればデューデリジェンスを行い最終契約書へのサインを行います。ただ、デューデリジェンスの段階で条件にズレが見られればこの段階でM&Aが打ち切られることも少なくありません。
もし、M&Aが破断になればネームクリアを行う前に締結している秘密保持契約に従って機密情報を破棄する必要があります。
6. M&Aのネームクリアはまだ途中経過・その後の交渉が大事
M&Aのネームクリアが実施されれば買い手企業は売り手企業に対してM&Aの交渉を行えます。
ただ、実際にM&Aの交渉を行えるような状態になれるかどうかはネームクリアにより買い手企業が売り手企業を魅力的だと思うかどうかです。あくまでもネームクリアはM&Aの途中段階であり、その後の交渉が大切であることを覚えておきましょう。M&Aを一貫して成功させられるかどうかはネームクリアを含むあらゆる手続きをミスなく進められるかどうかです。
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