2023年03月14日公開
M&Aのタームシートとは?重要性や作成タイミング・内容まで徹底解説!
M&Aのタームシートとは、契約書の中でも重要なポイントをまとめ、明確にさせられる便利なものです。
また、効率的に交渉を進めるのに大切になります。
今回は、そんなタームシートの重要性や作成タイミングなどについて徹底解説します。
目次
1. M&Aにおけるタームシートとは
M&Aにおけるタームシートとは、契約書の中でも重要なポイントをまとめたものです。
M&A交渉では、さまざま情報を読み取り、慎重に交渉を進めていくことが大切なので、タームシートを作っておくと効率的に交渉を進めることができます。
そのため、必ず作成する必要はありませんが、M&A交渉の場面では利用されることが多いです。
タームシートの重要性
タームシートは、M&Aで締結する複雑な契約書の内容を多数の関係者に効率的に理解してもらうのに、とても重要になります。
複雑な情報を多数の関係者に効率的に理解してもらうためにはタームシートの存在が必要であり、実際に多くのM&A交渉の場で活用されています。
また、短時間で理解してもらうことができれば、M&A交渉を効率的に進めることができます。
タームシートの役割
タームシートの役割は、基本合意契約書の内容を効率的にまとめることです。
M&Aが成立するまでには、数ヶ月から数年ほどかけて交渉する場合が多いので、重要項目から順に話し合い合意したものをタームシートに記録していきます。
そして次回の交渉ではそのタームシートを元に交渉を行うことができるので、長期に渡る交渉をスムーズに進めるために大切な役割です。
タームシートの作成タイミング
タームシートの作成タイミングは、基本合意契約書を用意する前になります。
また、M&Aでは主に以下の順で5種類の契約を締結します。
- 秘密保持契約書
- アドバイザリー契約書
- 意向表明書
- 基本合意契約書
- 最終契約書
この中の後半、「基本合意契約書」を用意する前のタイミングでタームシートを作成することが多く、場合によっては基本合意契約書を用意せずにタームシートから最終契約書に移行することもあります。
2. タームシートのメリット・デメリット
タームシートは、M&Aにおいて重要な役割があり、多くの場面で作成されることが多いです。
そのため、メリットばかりと考えてしまいますが、デメリットもあります。
ここでは、タームシートのメリット・デメリットについて、それぞれ解説します
タームシートのメリット
タームシートのメリットはいくつかありますが、主にメリットは以下の4つです。
- 契約内容の要点を把握しやすい
- 最終段階で決裂するリスクの低減
- ドラフト作成の費用を抑える
- 社内・関係者との情報共有が自由に行える
ここでは、以上4つのメリットをそれぞれ解説します。
契約内容の要点を把握しやすい
タームシートの1つ目のメリットは、契約内容の要点を把握しやすいことです。
契約内容の要点が把握しやすくなることで多岐に渡る交渉がスムーズに進みやすくなり、交渉相手に理解や説明を聞かせる負担を少なくさせられます。
また、相手がスムーズに理解することができれば、交渉意欲も下げてしまうリスクも減ります。
最終段階で決裂するリスクの低減
タームシートの2つ目のメリットは、最終段階で決裂するリスクが低迷することです。
タームシートを使ってわかりやすく効率的に交渉を進めていけば、早い段階でお互いの条件を合意させることができ、最終段階までスムーズに進めることができます。
また、順調に合意を貰っているので、最終段階で突然決裂してしまうリスクの低迷も可能です。
ドラフト作成の費用を抑える
タームシートの3つ目のメリットは、ドラフト作成の費用を抑えられることです。
弁護士に契約書の作成を依頼する場合、できるだけドラフト作成の費用を抑えるためには、良質なタームシートが必要になります。
そしてタームシートがあれば、弁護士と重要な条件などを話し合うことができるので、ドラフト作成にかかる負担が少なくなり、ドラフト作成の費用を抑えることが可能です。
社内・関係者との情報共有がスムーズに行える
タームシートの4つ目のメリットは、社内・関係者との情報共有がスムーズに行えることです。
重要な内容や条件をタームシートにまとめておくことで、実際に交渉現場にいなかった社内・関係者にもスムーズに情報共有が行えます。
また、課題や検討箇所がわかりやすくなるので、次回の交渉のための参考書としても活用できます。
タームシートのデメリット
タームシートのデメリットは、主に以下の2つがあります。
- 法的束縛力に関する事項でトラブルの可能性がある
- 各項目の設定が前提であるという誤解を招きやすい
続いては、以上2つのデメリットについて、それぞれ解説します。
法的拘束力に関する事項でトラブルの可能性がある
タームシートの1つ目のデメリットは、法的拘束力の事項でトラブルの可能性があることです。
タームシートに秘密保持義務など法的拘束力に関する項目がある場合は、相手があまり理解していない状態で合意してしまうと、契約後にトラブルになる可能性があります。
そのため、公的拘束力の事項がタームシートにある場合は、法務部門などの確認が必要です。
各項目の設定が前提であるという誤解を招きやすい
タームシートの2つ目のデメリットは、各項目の設定が前提であるという誤解を招きやすいことです。
タームシートにはいくつかの項目をまとめていますが、その内容が前提条件として提示されているという誤解を与えてしまう場合があります。
そのため、タームシートを使う場合は、相手に誤解がないように説明することが大切です。
3. タームシートのクロージングまでの手続きの流れ
タームシートのクロージングまでに必要な手続きの流れについて、ここではそれぞれ解説します。
また、クロージングがどのようなものなのか具体的に知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
ノンネームシートの検討
交渉相手を探す段階では、ノンネームシートという会社名が特定できない形で案件の考案書を作成します。
ノンネームシートには、会社所在地や売却希望額、売却理由などの想定されるM&Aスキームを記載するので、記載内容の検討が必要です。
また、最初にノンネームシートを作成する理由は、M&Aをすることが外部に漏洩しないためです。
秘密保持契約書締結
交渉を進めるためには、ノンネームシートだけではなく具体的で詳細な情報を知る必要があります。
そこで売り手と買い手が直接もしくはM&A仲介業者を介して間接的に、秘密保持契約を締結します。
また、今後の交渉では数多くの情報を交換することになるので、秘密保持契約締結はとても重要性が高いです。
IM(企業概要書)検討
秘密保持契約を締結した買い手には、IM(企業概要書)という詳細情報をまとめた書類を提示します。
そのため、交渉を進めていくためには、買収してもらうためのアピールができるIM(企業概要書)検討をすることがとても重要です。
また、買い手はIM(企業概要書)の内容を精査して交渉を進めていきます。
合意
IMなどの情報を精査して企業価値の計算やM&Aスキームの絞り込み、トップ面談などの段階を経て、買い手はM&A交渉を進めたり、合意するかどうか判断します。
ここでは、企業価値が買収に踏み切れるほど高くなかったり、不安感や不信感などの感情的な要因で交渉が息詰まる可能性もあるので、安心できません。
合意書の締結
上記のような流れを経て、M&A契約を行うことが決まったら合意書を締結します。
また、合意書では主に以下の4つの内容が記載されています。
- M&Aスキームと譲渡対価
- スケジュール
- 独占交渉権の付与
- デューデリジェンスへの協力義務
ただ、合意書を締結してもM&Aを確約するものではないので、法的拘束力を持たせることが目的です。
デューデリジェンス
デューデリジェンスは、M&Aの最終契約段階で行われるものです。
また、買い手が売り手の抱えているリスクや買収によるリターンを適正に把握するためのプロセスをデューデリジェンスと言います。
そのため、各方面の専門家により慎重に行われるため、売り手と買い手のどちらにとっても重要性の高いプロセスです。
デューデリジェンスについてさらに具体的に知りたい方は、下記の記事をご覧ください。
契約交渉
交渉や合意、デューデリジェンスなどのプロセスを経て、最終契約書の締結に向けた交渉を行います。
ここでは買い手がリスクを低迷に繋がる施策の実行や補償の設定を要求し、売り手は譲渡対価や従業員、役員の待遇、事業の継続性などを要求していきます。
そのため、お互いの争点になりやすいポイントをまとめておくことが大切です。
最終契約書締結
交渉がまとまりM&Aを行うことに合意すると、最終契約書の締結を行います。
また、最終契約書には主に以下の事項が記載されます。
- 譲渡方法、価格、調整
- 表明補償
- 契約事項
- クロージングの前提情景
- 補償
譲渡の実行・買収後の経営統合作業
最終契約書の締結が完了したら、実際に譲渡を実行し経営統合作業を行います。
経営統合作業の検討は、準備段階から始まっており、デューデリジェンスの段階で具体的になります。
また、その後クロージングまでに見直し計画がなされ、中長期的な統合計画が施策されていき、経営統合に進んでいきます。
4. タームシートの記載内容
タームシートの記載内容について、ここではそれぞれ解説します。
M&Aの基本事項
タームシートに記載されているM&Aの基本事項は、主に以下3つです。
- 売り手と買い手の情報
- M&Aの対象案件(企業・事業)
- M&Aのスキーム(株式譲渡・事業譲渡)
買収金額
タームシートに記載する買収金額は、法的拘束力がない推定の合意金額のことになります。
また、買収金額はデューデリジェンスによって変更することができるということも記載します。
買収の大まかなスケジュール
タームシートに記載する買収の大まかなスケジュールは主に以下のようなものです。
- 基本合意契約書の締結日
- デューデリジェンスの実施日
- 最終契約書の締結日
- クロージング日
以上のスケジュールを記載します。
デューデリジェンスへの協力義務
買収金額は、デューデリジェンスを実施した後に正式に算定しますが、デューデリジェンスは売り手の協力がなければスムーズに実施することができません。
そのため、タームシートにはデューデリジェンスへの協力義務についても記載します。
M&A後の経営方針や今後の従業員の処遇
M&A後、「事業をどのような経営方針で進めていくのか?」「従業員や役員の処遇について」などを明確にさせるために、タームシートにM&A後の経営方針や今後の従業員の処遇を記載します。
また、デューデリジェンス実施後の最終段階の交渉で、売り手が買い手に対して上記の作業を要求します。
独占交渉権
タームシートには、独占交渉権についても記載します。
独占交渉権とは、買い手だけが売り手と独占的に交渉を行える権利のことで、売り手がこのルールを破り第三者と交渉を行なった場合には、買い手に違約金や損害賠償を支払うことにもなります。
有効期間・秘密保持義務・情報漏洩した際の損害賠償
タームシートには、秘密保持義務や情報漏洩した際の損害賠償を請求する有効期限を記載する必要があります。
この有効期限を記載しなければ、無期限で権利や義務が発生し続けてしまうので、忘れずに記載するようにしましょう。
5. タームシート作成のポイント
タームシート作成のポイントはいくつかありますが、ここでは主に4つのポイントを解説します。
合意が必要な項目は全て記載しておく
タームシート作成の1つ目のポイントは、合意が必要な項目はすべて記載しておくことです。
合意できた項目だけではなく合意が必要な項目までしっかりと記載することで、どのように交渉が進んでいるのかや合意を得るための対策が行えます。
また、最終的には全てに合意をもらう必要もあるので、重要性の高いポイントの1つです。
合意できた項目・できなかった項目を明確にする
タームシート作成の2つ目のポイントは、合意できた項目・できなかった項目を明確にすることです。
合意できた項目・できなかった項目をそれぞれ明確にしておくことで、次回の交渉で重要性の高い部分を決めたり判断することができます。
さらに、合意できなかった項目を今後合意してもらうための対策や改善策を立案するためにも、必要になるのでしっかりと記載しましょう。
合意できなかった理由や課題を明記する
タームシート作成の3つ目のポイントは、合意できなかった理由や課題を明記することです。
合意できなかった項目を明記するだけでなく、その理由や課題を明記させることで、次回の交渉に向けた改善策を立てれたり合意できるように進められるようになります。
また、M&Aでは売り手と買い手が複数回に渡って交渉を行い、最終的には全ての合意をもらえるように交渉することが大切です。
法務部門のチェックを受ける
タームシート作成の4つ目のポイントは、法務部門のチェックを受けることです。
タームシートは正式な契約書ではないので、交渉担当者との間でのみ交わされることも多いですが、秘密保持義務などの法的拘束力に関する部分や上場企業開示義務に関する部分なども含まれます。
そのため、担当者のみで作成するのではなく、法務部門のチェックを受けながら作成することが大切です。
6. タームシートを記録として残し契約交渉をスムーズに進めよう!
タームシートを記録として残すことによって、数ヶ月から数年ほどの期間をかけて複数回行われる交渉をスムーズに進めることができるようになります。
さらに、自社の条件をしっかりと合意してもらうために必要な対策や改善案などを立案しやすくもなるので、売り手だけではなく買い手にとっても大切なことです。
タームシートを使って買い手にわかりやすく説明することができれば、短期に交渉が成立する可能性もあります。
そのため、M&Aにおける交渉ではタームシートを作成しておくことをおすすめします。
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