2023年10月31日公開
PEファンドの仕組みや種類を徹底解説!M&Aで活用するメリットは?
PEファンド(プライベートエクイティファンド)は、財政面で課題を抱える企業の経営再建への支援を行う投資ファンドの1つです。当記事では、PEファンドをM&Aで活用するメリットやデメリットを踏まえながら、業務内容や仕組み、種類と役割を詳しく解説します。
目次
1. PEファンド(プライベートエクイティファンド)とは?
PEファンド(プライベートエクイティファンド)とは、上場されていない株式に対して投資を実行するファンドのことを言います。買収を行い投資先会社の企業価値を高めてから株式を売却し、投資資金を回収するのが特徴です。まずは業務内容からファンドの種類を確認しましょう。
PEファンドの業務
まずはPEファンド(プライベートエクイティファンド)が行う主な業務の流れを確認しましょう。PEファンド設立からどのようなプロセスを経て利益を獲得するのでしょうか。5つのステップに分けて業務内容を解説します。
①投資家からの資金調達
PEファンドの業務で最初に行われるのが、資金調達です。このプロセスは「ファンドレイズ」とも呼ばれます。ファンド運営者が各投資家に対して投資を打診し、必要資金を確保する作業が行われるのが一般的です。この際、期待できる利益やリスクの程度を説明した上で投資を提案します。
②買収案件の発掘・選定
投資家に必要な資金の調達が完了したら、PEファンドが設立されます。ファンド設立後に行われるプロセスが、買収を実行する案件の発掘です。このプロセスは「ソーシング」とも呼ばれ、ターゲットに定めた企業から情報を受けた上で、最適な投資・買収方法を策定します。
③投資の実施
買収先(ターゲット)企業と条件交渉を行い、基本合意を取り交わした上でデューデリジェンスが実施されます。このプロセスを経てPEファンドが最終契約書を締結し、投資を実行するのが一般的です。このプロセスは、別名で「エクゼキューション」とも呼ばれています。
④価値向上支援・運用
次に価値向上支援に関する施策が実施されます。これは「バリューアップ」とも呼ばれ、PEファンドが投資による利益を獲得するために行う特に重要なプロセスです。収益化を目指すために、業務の効率化や商品の質向上、コストの削減といったあらゆる施策が実施されます。
⑤投資資金の回収
PEファンドは上記の価値向上支援を実施しながら、5年程度投資資金を運用します。その後投資資金を回収するためにM&Aにて会社経営権や保有事業を売却するのが一般的です。このプロセスは「EXIT」と呼ばれています。このようにして利益を獲得するのがPEファンドの特徴です。
PEファンドの種類
PEファンド(プライベートエクイティファンド)には、4種類のファンドが存在します。
- ベンチャーキャピタル
- バイアウトファンド
- 再生ファンド
- ディストレストファンド
それぞれどのようなファンドなのでしょうか。各ファンドの特徴を詳しく確認しましょう。
①ベンチャーキャピタル
上場されていないベンチャー企業(新興企業)に対して投資を実行するのが、ベンチャーキャピタルです。新興企業の多くは資金面で課題を抱えているため、買収によって資金を提供します。投資後は助言や支援を行い企業価値を高めた上で株式売却し、売却益を獲得する点が特徴です。
②バイアウトファンド
バイアウトファンドは対象企業の株式の過半数以上を買収し、会社経営権を獲得するPEファンドです。会社経営権を持つので、ファンドは比較的短期間の投資でさまざまな企業価値向上施策を実行できます。中小企業で後継者が不在の場合に活用する企業が多く見られるのが特徴です。
③再生ファンド
経営不振を抱える企業に対して投資を実行するのが、再生ファンドです。金融機関や公共機関によって設立されるケースが多く見られ、企業における事業再生のためにさまざまな施策を講じます。経営不振状態から脱却させ、事業を軌道に乗せた上で売却を実行し、売却益を得るのが特徴です。
④ディストレストファンド
税制面で危機に陥っている企業の株式に投資して企業の再建をはかるのがディストレストファンドです。安価で株式を購入し、企業再建を達成した際に株式売却し利益を得ます。再生ファンドと似た側面がある点が特徴ですが、こちらではリストラを含めた施策が実行されます。
2. PEファンドの仕組み
PEファンド(プライベートエクイティファンド)の主な役割と種類を確認しましたが、実施どのような仕組みで利益分配まで進められるのでしょうか。ここでは、PEファンドによる資金調達から運用益(リターン)の分配まで、基本的な仕組みを解説します。
資金集めの方法
PEファンドが投資活動を開始するには、資金調達が必要です。ファンド設立後投資家から資金を募るわけですが、目標出資額に到達するまで投資家に出資を打診します。この際打診を行うのが、機関投資家や個人投資家です。出資規模は数百億円規模から数千億円規模のものまで存在します。
資金の運用
PEファンドでは投資家からの資金を活用し、さまざまな案件に対し買収を実行します。一般的な運用期間は5年程度とされ、短期的なリターンを求める運用方式ではありません。収益性を上げるべく業務の改善や事業効率の向上、事業拡大のためのさらなる買収などで運用益を生み出します。
リターンの分配
運用益は資金提供してくれた投資家に対し、ファンドが投資資金を回収した際の余剰金をリターンとして分配するのが一般的です。多くの場合、全ての余剰金がリターンとして分配されるのではなく、マネージメントフィーと呼ばれる管理報酬を差し引いた金額が投資家に分配されます。
3. PEファンドをM&Aで活用するメリット
国内ではPEファンドをM&Aで取り入れる事例が見られますが、当事者には具体的にどのような恩恵が得られるのでしょうか。ここでは、PEファンドをM&Aで活用するメリットを確認しましょう。主にメリットとして挙げられるのは、以下の4つです。
- 資金支援やビジネスマッチングで立て直しできる
- 経営ノウハウ獲得できる
- 企業価値が向上しやすい
- 自分の会社に合った人材を紹介してもらえる
では以下でそれぞれのメリットを詳しく解説します。
資金支援やビジネスマッチングで立て直しできる
PEファンドを活用する最大のメリットは、投資により資金が得られることです。当事者企業が経営資金で課題を抱えている場合、PEファンドの出資した資金を得ることができるので、事業再生や経営課題の解決が目指せます。また、ファンドを介して別の企業と繋がることもできるでしょう。
経営ノウハウ獲得できる
PEファンドは利益を得るため、多くの場合企業経営に介入します。経営再建など専門知識を蓄えたプロフェッショナルにより施策が実行するケースが多く、経営課題を抱える企業は事業再建に必要なノウハウを獲得できるでしょう。客観的な視点から自社課題を分析できる点が魅力です。
企業価値が向上しやすい
PEファンドを活用すれば企業価値が上がりやすい点も大きなメリットです。経営に関する知識が豊富な専門家による施策を味方にすれば、より円滑に経営課題解決を目指せるでしょう。これまで企業が大切にしてきた理念や文化を活かした施策を提案してくれるケースもあります。
自分の会社に合った人材を紹介してもらえる
PEファンドは業界問わず幅広いネットワークを持つので、自社の事業展開に必要な人材を紹介してもらえる可能性があります。ファンドとしても企業価値を高めることを目標としているので、自社で人材を発掘するよりも効率的に必要な人材を獲得できるでしょう。
4. PEファンドをM&Aで活用するデメリット
一方で、PEファンドを活用する際はどのような点に留意すべきなのでしょうか。ここでは、M&AでPEファンドを活用する際に考慮しなちデメリットを解説します。会社経営への介入や返済義務をはじめ、4つのポイントを理解した上で手続きを進めましょう。
- 過度なコスト削減策を要求される可能性がある
- LBOの場合は財務内容が悪化することがある
- 経営の自由度が制限される可能性がある
- 借り入れを行った場合は返済義務を負担する
過度なコスト削減策を要求される可能性がある
PEファンドは企業価値向上のために、収益面を改善させる施策を講じます。この中にはコストカットも含まれるケースが多く、場合によっては過度に行われる可能性もあるでしょう。長年培ってきた事業であっても、事業継続に多額の費用がかかる場合廃止が検討されるリスクも考えられます。
LBOの場合は財務内容が悪化することがある
LBO(レバレッジドバイアウト)と呼ばれる方法で買収を行うPEファンドも存在します。LBOは売却側企業の信用力を担保として融資を行う投資方法です。LBOの場合高額な資金の融資を受けることになる上、売却側企業の負債として算定されます。財務を圧迫することになるかもしれません。
経営の自由度が制限される可能性がある
PEファンドは投資によるリターンをより多くするためにあらゆる施策を実施します。ファンドが株式の過半数を買収した場合は会社経営権を持つので、売却側は経営の自由度が極端に制限される点に注意が必要です。事業の存続や経営方針に何らかの影響を及ぼす可能性があります。
借り入れを行った場合は返済義務を負担する
PEファンドが経営に介入する中で、状況によってはさらに借り入れを実行する場合があります。金融機関から資金調達を受けた際は債務が残ることになるので、売却側には返済義務が発生する点に注意してください。債務履行が大きくなり会社経営に悪影響を与えないようにしましょう。
5. PEファンドを活用した事例
ここでは、PEファンド(プライベートエクイティファンド)が投資・買収を行った事例を確認しましょう。国内ファンドだけでなく外資系の大手ファンドも含め、以下4つの事例を紹介します。
- ベインキャピタルによる買収事例
- KKRによる買収事例
- 企業再生支援機構による買収事例
- ブラックストーン・グループによる買収事例
それぞれ具体的な案件を挙げながら解説します。より詳しいIR情報は、事例部分の下のリンクから参照ください。(外資ファンドによる英語表記のIRを含みます。)
ベインキャピタルによる買収
まずはアメリカに本社を置く投資ファンドによる買収事例を紹介します。ベインキャピタルはこれまで「大江戸温泉物語」や「すかいらーく」、「東芝(半導体事業)」の買収を手掛けたことで知られる外資系ファンド大手で、この他にも数々の国内企業再生の実績を持つ点が特徴です。
では、大手広告代理店のADK(アサツーディ・ケイ)を買収した事例を確認しましょう。ベインキャピタルがADKを子会社化したことで、非上場企業になりましたが、事業を立て直した後で再上場を目指す目的を掲げ売却しました。友好的な買収事例の1つとして挙げられます。
KKRによる買収
KKR(コールバーグ・クラビス・ロバーツ)もアメリカに本社を置く外資系のPEファンドです。国内案件の中で、今回は日立国際電気の買収事例を確認しましょう。KKRは2017年に日立国際電気を買収し子会社化しました。
買収後の子会社化で売却側は非公開企業になりましたが、保有する各事業から半導体事業のみを分離させた新会社「KOKUSAI ELECTRIC」が誕生し、東京証券取引所(プライム市場)への上場を承認されました。今回の買収価格は約2,500億円規模とされています。
企業再生支援機構による買収
では次に、国内ファンドによる買収事例を確認しましょう。企業再生支援機構は、経営悪化に苦しむ中小企業の財政支援・事業再建を主な目的として2009年に設立された官民出資のPEファンドです。現在は、地域経済活性化支援機構(別名REVIC)にファンドの名称を変更しています。
2000年代後期はリーマンショックの影響で多くの企業が経営悪化が深刻な状態でした。中でも2010年に更生法を申請した日本航空に対する財政支援は有名です。企業再生支援機構は債権放棄と公的資金の注入を行い事業再建が実施されました。この間コスト削減やリストラが行われています。
ブラックストーン・グループによる買収
アメリカに本社を置く外資系ファンドによる事例をもう1つ紹介します。アメリカのPEファンドであるブラックストーン・グループは、2014年同国ゼネラルエレクトリック社の日本における不動産事業を買収しました。これは売却側が不動産事業からの撤退を検討していたことによるものです。
ファンド側は、大手企業の保有する不動産事業におけるノウハウや資源を獲得することを目的として買収が実施されました。1,900億円を超える規模とされています。また、本案件では傘下のファンドを介して実施されました。
6. PEファンドを活用して会社をさらに発展させよう
PEファンドは、経営面で課題を抱える非上場企業に投資し事業再生を目指す投資ファンドのことです。事業再生のノウハウや幅広いネットワークを持つので、有益な施策の実施により効率的に課題解決を目指せるでしょう。うまく活用することで経営不振による廃業を阻止することができます。
ただ、PEファンドはリターンを大きくするため企業価値を上げることを重視するのが特徴です。経営に介入し、状況によっては事業の切り離しやリストラが実施される可能性も想定されます。メリットだけでなくリスクも正しく理解した上で、PEファンドを活用しましょう。
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